カーヴドリラックスTCR事業部統括マネージャー
人見 裕介さん
学生時代に飲食店で働き、調理師免許を取得。卒業後も飲食店勤務を経て、ザ・セラーの本店にあたるワイン専門店「カーヴドリラックス」に入社。六本木店、大崎店、秋葉原店、webショップの新規出店に携わり、現在は全体の運営を統括しています。13年前に「漠然と好きだったから」という理由で跳びこんだワインの世界は、知れば知るほど深く、広く、常に新しい情報が更新されて、「飽きっぽい私が、まったく飽きる暇がないくらい」。自身は、じっくり飲み進むうちに、ようやく魅力的な素顔を見せる「かたい」ワインよりも、1口目からバーンといちばんいい表情をアピールしてくる「明るいワイン」がお好みです。
「パンとワインのマリアージュ」は、実は難しいテーマでもあります。バゲットなどのシンプルなパンは、コースの中で料理と料理の間に食べて、味覚をいったんフラットにする役割を担っています。これはワインにとっては一種の脅威です。フラットになった舌で、ワインそのものの実力が試されるからです。
おいしさに当たりはずれが少ないのがシャンパーニュ。シャンパーニュと名のつくものは、「産地」や「最低でも15カ月以上の熟成を要する」などの細かな決まりがあり、熟成で生まれるおいしさと、一定の品質が保証されたワインなのです。とはいっても、同じシャンパーニュでもつくる人によって、味はもちろん違います。
今回、おすすめするのは老舗メゾン「アンリオ」のスタンダードクラスのシャンパーニュ。ヴィンテージがついていないノンヴィンテージ(NV)シャンパーニュは、常に一定の味わいを保つために、醸造年の異なる5~3のヴィンテージをブレンドしてあります。一般的なメゾン(ワイン生産者)のNVは、3年より古いヴィンテージは5%程度ですが、アンリオではすべてのキュヴェ(発酵槽)で最低でも3年間の熟成をかけており、NVには、さらにそれ以上のヴィンテージも20%程度、贅沢にブレンドしています。
スタンダードクラスながら、熟成が生むニュアンスをより豊かに楽しめる、このシャンパーニュには、バターリッチなクロワッサンを合わせてみてください。熟成したワインが醸し出す香りは、焼いたパンの香りにとても近く、バターのコクはシャンパーニュの深みのある味わいにとてもよく合います。また、一般的にシャンパーニュの醸造過程ではドサージュ(加糖)が行われており、甘く芳醇なテイストは「ブリオッシュのような」とも表現されます。甘みが多いほど、おいしさはわかりやすくなりますが、加糖を控え、甘みではなくブドウのもつ風味だけで勝負するアンリオの「ブリュット(辛口)」は、ブリオッシュよりも甘みを抑えたクロワッサンとの相性がよいのです。
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チリのテロワールを生かし、こだわりぬいてつくった「ラポストール キュヴェ・アレクサンドル シャルドネ 2013」
「ザ・セラー六本木店」では、当社オリジナルワインを始めとしたデイリーワインから、希少価値の高いファインワインまで約450種類を揃えています。お買い上げのワインを併設のカフェにて、アークキッチンのデリや焼きたてのパン、フェルミエのチーズなどと一緒に気軽に楽しんでいただくこともできます(抜栓料500円)。
おすすめは、「ラポストール」のワイン。オレンジ・リキュールの「グランマルニエ」創業者のひ孫が、1994年にチリで設立した比較的新しいワイナリーで、チリ国内で最大級の自社オーガニック畑を所有。チリのテロワールと、フランスで培ったワインづくりの技を生かし、ニューワールド(※注)だからこそできる贅沢なワインづくりを行っています。ブドウは、自社畑で採れたものだけを使い、発酵には昔ながらの木の樽を使っているため、熟成するとブドウ由来の香りに木樽の香りも加わって、奥行きが生まれます。「キュヴェ・アレクサンドル シャルドネ 2013」は、白ワインでは最もメジャーなシャルドネ種を使い、トップ・キュヴェに次ぐ2番目のクラス。酸味はやわらかく、ふくよかでフルーティー、コクのあるリッチな味わいで、パーティーなどの手土産にしても、株が上がること間違いありません。
当ショップのテーマは体験型。ワイン試飲会も月に2回ほどのペースで行っています。「バラの香り」だとか「ブリオッシュのような」など、ワインを語るうえでよく耳にするけれど、なんだかピンとこない表現も、実際に味わい、飲み比べて「この香りのことを言っているのか」と、感じ取っていただけます。また、産地やワイナリーのこと、醸造秘話など、それぞれのワインを巡るお話もいろいろお伝えしています。バックボーンを知ることで、ワインを楽しむ五感の感受性がさらに開かれていくと思うのです。
そして、ワインと食べ物を合わせるときは、「産地を合わせる」ということをぜひ意識してみてください。イタリアワインならオリーブを使ったフォカッチャなどのイタリアのパン、といった具合に、その土地の食べ物やワインが生まれた背景も含めて楽しむと、会話も広がりますし、食事がより豊かになります。
(※注)古くから伝統的な製法でワインづくりが行われてきた、主にヨーロッパ諸国の生産地に対して、ここ100年くらいの間にヨーロッパから醸造技術が伝わり、ワイン生産を新しく始めた国・地域(アメリカ、メキシコ、チリ、オーストラリア、インド、南アフリカなど)を「ニューワールド」と呼んでいます。
- 店名
- THE CELLAR Roppongi
(ザ・セラー 六本木) - 住所
- 東京都港区六本木1-4-5 アークヒルズ サウスタワー B1F FUKUSHIMAYA Tasting Market 内
- TEL
- 03-3586-1075
- 営業時間
- 11:00~22:00(土曜、日曜、祝日は~21:00)
- 定休日
- 不定休
- URL
- http://www.the-cellar-roppongi.com/