紹介してくれた人

未来日本酒店 代官山店長
寺田 祐貴さん


もとは百貨店にて紳士服部門で商品仕入れと売り場づくりを担当。ご自身は、学生時代から「お酒は好きだけれど、日本酒はそれほどでも…」というタイプでしたが、社会人3年目にして、たまたま出会った銘柄で日本酒のおいしさに開眼。そのころ、学生時代の友人が「株式会社未来酒店」を起業することになり、手伝いをするうちに日本酒の魅力にさらにはまっていきます。同社が2017年7月にオープンした「未来日本酒店 DAIKANYAMA」には立ち上げから携わり、店長に就任。日本全国の蔵元を訪ね、これまでテイスティングした日本酒は数百種類。同店で扱う150種ほどの日本酒については、すべてその特徴をインプットしています。「日本酒にさほど詳しくない人でも、好みに合ったお酒と出会えて、気軽に楽しめる酒店」をめざしています。

おすすめの組み合わせ

酸味と甘みとうまみの濃いもの同士、リッチで濃醇な組み合わせ
山廃仕込み 有機純米酒「南遷」+くるみとレーズンのカンパーニュ

当店は、グラス1杯から気軽に味わって、好みに合った日本酒を楽しみながら見つけていただける「SAKEセレクトショップ」です。日本全国には1,400もの蔵元がありますが、都内の酒屋や飲食店のラインナップは売上規模上位100蔵に入るような有名な銘柄で占められていることが多く、どんなにおいしいお酒を醸していても地方の小さな酒蔵の商品が都内の酒屋の棚に並ぶのがなかなか難しいのが実情です。
私たちは、これからの日本酒業界を担っていくであろう若き蔵人の方々や、従来の考え方だけにとらわれず新しいことに果敢にチャレンジしている酒蔵を応援し、蔵人たちが酒造りに注ぐ熱い想いを伝えていきたいと思っていますので、結果として一般の酒屋さんではなかなか見かけることのできない希少な日本酒を取りそろえています。都内では、ここ未来日本酒店でしか出会えない銘酒や、蔵元の杜氏たちとタッグを組んでつくりあげたオリジナルの日本酒もあります。

日本酒はワインやウイスキーなどとも比較してもうま味成分を豊富に含んでいます。日本酒というと和食と合わせなきゃ!とついつい思いがちですが、和食だけに限らず様々な料理とおいしさを引き立て合う可能性を秘めたお酒です。ワイン以上に西洋料理にぴったり合う日本酒づくりなど、新しいことに取り組んでいる蔵元さんも少しずつ増えてきています。

今回は「酸味」をキーワードにして、日本酒とパンのマリアージュを考えてみました。酸味というと、「すっぱい」というネガティブなイメージを持たれることもあるかと思います。過去の日本酒の品評会などでもいかに酸味を出さずに酒を造るかという事が良しとされる時代もありました。確かに、強い酸味だけを際立たせてしまうと、おいしいとは感じにくくなります。ですが、うまみ成分と一緒になることで、酸味はただの酸っぱい味ではなく、うまみにさらなる厚みと深みをもたらす、豊かな酸味となります。

おすすめの1本は、酸味を存分に引き立たせる攻めの日本酒、奈良県吉野郡吉野町にある美吉野醸造の山廃仕込み有機純米酒「南遷」です。この蔵元さんは2017年からすべての酒を自然界から酵母を取り込んで醸造を行う伝統製法により奈良吉野の風土ならでは酒造りを行っています。「南遷」は奈良県産の有機米を使い、「山廃(やまはい)」という自然界から乳酸菌を取り込む伝統的な製法を採用して、なんといっても華やかに広がる酸味が特長です。精米歩合は80%で、米のまわりにある脂質やタンパク質、ミネラル分を生かし、仕込みの米と麹、水を4段階に分けて入れる「四段仕込み」で、一般的な三段仕込みよりもさらにうまみが強く引き出されています。

乳酸系の甘く、爽やかな香り、口に含めば白ワインのような甘みと酸味に、さらにうまみも加わった濃醇な味わいです。存在感のある料理にも負けない、しっかりとした味わいの日本酒には、濃いもの同士の組み合わせで、「くるみとレーズンのカンパーニュ」などがよく合います。パンそのものが発酵によるほのかな酸味を持ち、そこにくるみの芳ばしさとレーズンの甘酸っぱさが加わって、「南遷」の香り、酸味と甘み、うまみに共鳴し合います。お酒にパンをちょこっと浸しながら食べても、リッチなおいしさを相乗効果で楽しんでいただけます。

日本酒は、ワインなどの他の醸造酒と比較しても、合わせる食材を選ばないオールマイティさが特長ではありますが、極端に淡麗辛口な日本酒ですと、パンの苦みが強調されることがあります。とくに食パンやバゲットなどのシンプルなパンでしたら、香りは派手すぎず穏やかで、うまみのしっかりとした日本酒を合わせてあげるとよいかと思います。

私のお店のおすすめ

AIで味覚タイプを診断する「YUMMY SAKE(ヤミー・サケ)」
AIが味覚タイプを診断する「YUMMY SAKE」 2,160円(税込)。10種の日本酒試飲と、診断結果に合わせて、12種ある「オノマトペSAKE」シリーズの中から1種類がグラスで供されます
プライスカードには、「オノマトペ」のタグで、テイストのタイプを紹介しています
未来日本酒店限定の、ほかでは味わえないチャレンジングな日本酒も数多い

店内1階には、日本酒セレクトショップにバーカウンターを併設し、2階はテーブル席で、貸し切りのパーティーやイベントスペースとしても利用していただけます。
店内では、スパークリングを除く、すべての銘柄をグラス1杯から角打ち(立ち飲み)スタイルで楽しんでいただけます。また、じっくりといろいろなお酒を味わってみたい方には、2時間制の飲み放題(3,500円+税)もあります。

日本酒になじみの薄い方にとっては、酒店で自分の好みに合った銘柄を選ぶのは難しく、ついついラベルを見て直感で「ジャケ買い」して、失敗することがよくあります。最初に出会った日本酒が、自分の味覚にぴったりの1本であったら、もっと日本酒のファンが増えるのに...という想いからスタートしたのが、AIを活用した「きき酒」遊びの「YUMMY SAKE」です。10種の日本酒を1種類ずつ、ブラインドで味わっていただき、スマホから専用サイトにアクセスして、1~5段階でそれぞれお好み度を入力。また、「好きな卵焼きの味つけは?」など、味覚に関するいくつかの質問に答えると、AIが味覚のタイプを「プリプリ」「キュンキュン」「ホワホワ」など12種の「オノマトペ(擬音・擬態語)」のどれに当てはまるかを診断してくれます。それぞれのオノマトペは、いわば味覚のキーワードで、酸味とうまみが強いのは「プリプリ」、トロピカルなテイストは「キュンキュン」、ふくみ香を楽しむ「ホワホワ」など。診断結果に合わせて、当店オリジナルの「オノマトペ日本酒」をグラスに1杯お出しする、というお楽しみセットです。

ショップで販売する日本酒は、地域別や蔵元別ではなく、「ヴィンテージ」「テロワール」「オーガニック」「デザイナーズ」といったコンセプトで分類して並べていますが、それぞれの日本酒には、味わいの特徴を表すオノマトペも表示してあります。テイスティングで「プリプリ」と診断されたら、「プリプリ」のタグが付いたお酒を選んでいただくと、さほど大きくはずすことはないかと思います。
店内におつまみも用意していますから、お声をかけていただければ、選んだお酒に合うおつまみもご提案できますし、気に入ったお酒は、ボトルを買って帰ることもできます。

そして、当店で力を入れているテーマが「デザイナーズ」です。ファッションでいえば、デザイナーと服を仕立てる人は別であることがほとんどですが、日本酒は、1人の杜氏が「こんな酒をつくりたい」とデザインし、実際に同じ人が仕込みも行うプロダクトです。私たちは、都会の消費者が思わず手に取ってみたくなる、テイスティングしたくなるようなネーミングやボトルデザインなどの部分でお手伝いをして、蔵元さんと一緒につくりあげています。日本酒は、同じ蔵元、同じ銘柄でも、杜氏が変われば全く違う味わいになると言ってもいいくらい。ですから、これからは蔵元やブランド名ではなく、「誰がつくったか」に注目した選び方に変わっていってもいいのではないかと思っています。たとえば、「Stars」は、若く、意欲的な3人の杜氏に「今いちばんつくりたい日本酒」をテーマにつくってもらったシリーズで、当店でしか手に入らない純米大吟醸酒です。

これまでは、地方の小さな蔵元では、首都圏にまで新たに販路を広げることは難しかったのですが、パッションをもって、実に個性的で、うまい日本酒を真摯につくっている蔵元さんが全国各地にたくさんいらっしゃいます。つくり手の熱い想いを伝え、グラス1杯から気軽に試していただける場を設けることで、蔵元とお客様をつないで、日本酒の未来を応援していきたいと思っています。

テラス席もある1階。奥行きの深い店内には、コンセプト別に並んだ日本酒のセレクトショップとスタンディングのバーカウンター

店舗情報

店舗外観写真
店名
未来日本酒店 DAIKANYAMA
住所
東京都渋谷区代官山町14-11
TEL
03-6312-2448
営業時間
13:00~22:00
定休日
月曜
交通
代官山駅から徒歩3分、恵比寿駅から徒歩7分

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