紹介してくれた人

合同会社グローバルグロサリー
代表 髙山憲吾さん


ビール輸入会社勤務を経て独立し、クラフトビールや食品の輸入販売会社を立ち上げる。2016年頃から、ビールの買い付けにドイツ、オーストリアなどヨーロッパに出かけると、現地ではこぞってジンを薦められる。クラフトマンシップに基づいて、小規模ながら丁寧に今までになかったものをつくりだしていく姿勢に感銘し、「クラフトジン」に特化した酒店「グローバルジンギャラリー」を2017年8月にオープン。店内の棚には、世界20地域・約120種類の多種多彩なジンが並んでいる。

おすすめの組み合わせ

じゃがいもをベースにした北欧のジンに、じゃがいもを練り込んだライ麦パンを
「BAREKSTEN」+カルトフェルブロート

ジンといえば、「カクテルのベース」のイメージがあるかと思います。ここ数年、世界中でクラフトジンがブームになって、日本でも多彩なクラフトジンを揃えたバーやビストロが増えてきています。
ジンは、穀物などを原料にした蒸留酒(スピリッツ)に、ジュニパーベリーをはじめとした植物(ボタニカル)を加えてさらに蒸留したスピリッツです。オランダで薬酒として生まれて、イギリスで愛飲されるようになり、蒸留技術の発達により雑味の少ない、キレのあるジンがつくられるようになると、カクテルベースとして広く使われるようになりました。
ジンは、必ず「ジュニパーベリー」を使うことが決まりですが、ウイスキーやブランデーなどに比べると素材や製法の自由度が高い、と言えます。ベースとなるスピリッツに使う素材や、ボタニカルの種類、組み合わせ方、製造方法の違いによって、異なる味わいに仕上がります。「自分が欲しいものは自分でつくる」というクラフトのムーブメントにもフィットしやすく、こだわりを持ったつくり手が小さな蒸留所で今までになかった香りや味わいのジンを生み出しているのです。

おすすめはノルウエーの蒸留家シュティグ・バレクステンがつくる「バレクステン」。もとはバーテンダーだった彼もまた、これは!と思うジンになかなか出会えず、自身がつくり手に転身しました。深い森に棲む精霊フルドラからインスピレーションを得て、ボタニカルにはノルウェーの森で採取された果実やハーブ、花や根などを使っています。漆黒の森の静寂を感じさせる深い味わいに、ベリー系の甘やかな香りが彩りを添えています。
北欧ではじゃがいもからつくる「アクアヴィット」というスピリッツがおなじみですが、「バレクステン」もじゃがいもでつくった蒸留酒をベースにしています。ジュニパーベリーのほかに、リンゴンベリー、ブルーベリー、ルバーブ、バラの花と根、エルダーフラワー、ラベンダー、ローズマリーなど20種類以上を合わせて丁寧に蒸留しています。
合わせるパンは、ライ麦パン生地にじゃがいもを練り込んだ「カルトフェルブロート」などはいかがでしょう。素材としてのじゃがいもを共通点にして、「バレクステン」のフルーティで甘酸っぱい芳香は、まるでパンにフルーツのジャムを合わせるような感覚で楽しんでいただけます。

私のお店のおすすめ

菩提樹の花をキーボタニカルにしたドイツのジン
伝説の英雄の名を冠した「ジークフリート ラインラント・ドライジン」

当店は、国内、海外の蒸留所でつくられているジンを約120種類そろえています。棚にずらりと並んだボトルたちを眺めるだけでも、ネーミングにボトルやラベルのデザインに、それぞれのつくり手のこだわりや想いが込められ、百花繚乱ぶりを感じていただけるのではないでしょうか。
おすすめの1本は、ドイツの「ジークフリート」。伝統的な製法でつくられたクラシックなドライジンで、ボタニカルはジュニパーベリー、タイム、カルダモン、ビターオレンジ、ラベンダー、アンジェリカルートなど18種類。これらが醸し出す複雑な味わいとハーモニーを美しくまとめているのが菩提樹(リンデンバウム)の花です。ドイツの叙事詩「ニーベルンゲンの歌」で知られる英雄「ジークフリート」は、龍の返り血を浴びて不死身の身体を手に入れます。ところが背中に1枚だけ貼りついていた菩提樹の葉のせいで、そこを突かれて非業の最期を迎えます。
英雄の運命を分けた菩提樹。物語を紐解くように、その花が生み出す独特の味わいをぜひ楽しんでみてください。

「クラフトジンは初めてで、どれを選んだらいいかわからない」というお客様も多いのですが、そんなときは、「ワインとウイスキー、どちらが好きですか?」とお聞きして、ベーススピリッツの原料で選んでみたり、「行ってみたい国、お好きな国は?」と生産地で選んでみることをお勧めしています。クラフトジンは、ボタニカルがもたらすフレーバーとともに、ベースのスピリッツに使われている穀物などが持つ味わいや香りも感じることができます。麦芽やライ麦や小麦など麦類を素材にしたものを選ぶと、パンにも合わせやすいかと思います。
店内では、購入する前に試飲して香りやテイストをお確かめいただけます。また、週末に近くのアパレルショップで隠れ家的にバー営業を行い、お好きなジンをジントニックで楽しんでいただいています。(※不定期の営業なので事前にFacebookでご確認ください)

従来、ジントニックといえば、ジンとトニックウォーターにライムを添えるのが正式でしたが、個性豊かなクラフトジンには、使われているボタニカルをガーニッシュ(飾り)として添えるのがおすすめです。例えば、「バレクステン」なら、オレンジピールを添えたり、皮をむいた後の果実をドライオレンジにしてあしらったり、ドライのラベンダーを添えると見た目にもおしゃれです。いろいろなボタニカル素材を用意して、どれがいちばん合うか?なんてみんなでワイワイと試してみるのもいいですね。

バーでは、氷を入れたグラスにお好みのジンを注ぎ、グラスの縁にガーニッシュを添え、トニックウォーターはボトルでお出ししています。まずは、ジンそのものの味と香りを楽しんでいただき、その後トニックウォーターを加えたり、ガーニッシュを浮かべたりして味わいの変化を確かめながら、ご自分がいちばんおいしいと思うジントニックの黄金比を見つけてください。
つくり手が自由な発想で、これまでにないものをつくりあげているのがクラフトジンの魅力。味わう方にも、もっともっと自由に気軽に楽しんでもらえたらと思っています。

店内には約120種類のジンがずらりと並ぶ 中央の「NEVERSINK」はシナモン、アニスが香るリンゴのジン。デニッシュ系と相性がいい
ボタニカルに日高昆布、椎茸、切り干し大根と、だし素材を使った国産のジン「9148」は人気の1本 ハリスツイードで知られるハリス島のジンは、海のようなブルーのボトルが印象的

店舗情報

店舗内写真
店名
GLOBAL GIN GALLERY
(グローバル・ジン・ギャラリー)
住所
東京都千代田区神田紺屋町27 神崎ビル1階
TEL
03-6260-9303
営業時間
13:00~22:00
定休日
不定休 ※営業時間・休日等はfacebookで確認を
交通
神田駅から徒歩2分
URL
https://www.facebook.com/globalgingallery/

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2019年09月)のものです

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