ソトパン パンがおいしいお店へ出かけよう!

vol.04 フレンチコースで楽しむ「パン・ペアリング」 クラフタル(東京都 目黒区)

桜の名所でもある目黒川に面したビルの2階にあるフレンチレストラン。東京・パリの名店で修業を積んだシェフの大土橋真也さんが2015年9月にオープンし、瞬く間に人気店に。料理は1カ月半から2カ月ごとに内容が変わる「おまかせコース」のみで、コース全8品のうち4品は料理とパンの唯一無二なマリアージュを楽しむ「パン・ペアリング」です。さらに料理に合わせたお酒を提案する「ドリンク・ペアリング」もあり、料理+パン+ドリンクの「トリプリング」を堪能できます。

だからリピートしたくなる!

未知の物語を読み解くように、五感で季節を味わう

店名の「クラフタル」は、手技(CRAFT)と物語(TALE)の2つを合わせた言葉です。伝統的フレンチの世界で培った、確かな手技でつくられる料理は、まずは目に飛び込んでくる色で移ろう季節を感じさせてくれます。素材の味・香り・色・形から様々な驚きが生み出され、味わう人の五感を揺り動かし、1皿の上に季節の物語が動き始めます。

例えば梅雨の季節の「紫陽花とカタツムリ」がテーマのパン・ペアリング。紫と白のカリフラワー、フレッシュハーブ、ブロッコリーのピュレなど、雨露に濡れた紫陽花を思わせる瑞々しさに、ビネガーやミントオイルが清涼感をもたらします。ディテールに目を凝らせば、カタツムリに見立てた姫サザエ。そこから海へとイメージがつながり、パンのプレートには巻貝の形をしたデニッシュの「エスカルゴ」。パセリバターを巻きこんだリッチな味わいは、伝統的カタツムリ料理「ブールドエスカルゴ」を感じさせます。このように「クラフタル」では、すべての素材が重層的につながり合い、料理とパンが一緒になって1つの物語へと完結しているのです。

「ミニマムな素材をシンプルに、というのが現代フレンチの主流ですが、敢えて<たくさんの素材を使って1つのロジックの中におさめる>というチャレンジをしています。パーツ全部を合わせたときに無駄なものは1つもなく、複雑で、しかも統一感のあるおいしさを追求していきたい。その意味で、パンは造形性に優れ、混ぜ込む、包むなどで他の素材の味や色、香りを生かせる素材。パズルの最後のピースがピタッとはまるような、そんな働きもしてくれます」と大土橋シェフ。
「アオリイカ、スズキ、竹炭のブリオッシュ」は、やさしく火入れをして甘みを出したイカとスズキに、スルメイカと野菜からとったブイヨン、表面が炭になるまで直火で焼いたナスのピュレを添えて。ペアリングするパンは漆黒のブリオッシュ。バターリッチな生地には、無味無臭の竹炭を練り込み、白~グレー~黒のグラデーションを表現しています。
大土橋シェフが料理にペアリングさせるパンは、フレンチの料理に添えられる、いわゆる「パン」のイメージにとらわれることなく、様々な形状で登場しています。ときには米粉、蕎麦粉、米を使い、またパンケーキ、パイ包みなどの形にして、広い意味での「パン」として供されるのです。

おすすめのメニュー

※コースの内容は季節ごとに変わります。これまでのパンペアリングの一例をご紹介します。

  • 鹿腿肉のロースト、
    根菜のサラダ 白すぐり、
    エシャロット シブレット ビーツの
    ジュレとカシスソース、
    鹿肉のピロシキ

    馴染みのない食材でも、試しに食べてみたら、きっと世界観が広がるはず。シェフのそんな思いからジビエも積極的にコースに取り入れる。狩人が獲物を求めて森の奥へと進み、仕留めた鹿の鮮やかな肉の色……と物語が展開し、料理とパンは「鹿肉」でつながる。ジビエに欠かせないスパイス「ネズの実」を効かせた鹿ひき肉のラグーを包んだ、ピロシキ風の揚げパン。熱々ジューシーなラグーと、サラダ仕立ての根菜とソースの酸味、合わせて食べたときにウクライナの赤いスープ料理「ボルシチ」を彷彿とさせるパンペアリングだ。

  • ブーダンノワールのオペラ、
    ブラックエクレア 飴色玉ねぎの
    ムース

    コースの前菜として供されるペアリングに、「いきなりスイーツ?」という驚きが。自家製ブーダンノワール(豚の血入りソーセージ)は、フレンチでは定番中の定番。食わず嫌いで遠ざけてしまうにはあまりにも残念、ということで、チョコレートを10%ほど混ぜたガナッシュにし、オペラに見立てた食べやすい形に。ブラックココアを混ぜたさっくりと軽いエクレアには、カスタードクリームに見立てた玉ねぎのムース。ブーダンノワールのガナッシュとエクレアが口の中で混ざり合い、溶け合ったときのペアリングの妙に、再び驚かされる。

  • 猪のロースト、アッシュパルマンティエ ベコニアのドライフラワー ガストリックのソースとサルミ・ソース 野バラのピュレとベリーのピュレ、全粒粉のパン

    早春のコースでは、猪肉=牡丹という名前から本物の花を使って花が咲くイメージを展開。ベゴニアのエディブルフラワーはバラにも似たビジュアルで、野ばらのピュレ、ベリーへとつながっていく。ペアリングするパンは、大らかに焼き上げた全粒粉のパン。全粒粉を配合することで、割ったときにふわっと立ちのぼる小麦の香りも魅力だ。前に紹介した2つのパンのように、食材を合わせて料理の要素が強いパンもあれば、この全粒粉のパンのように、ソースをおいしく食べていただくための、シンプルな食事パンも登場する。


店舗情報

店名
CRAFTALE(クラフタル)
住所
東京都目黒区青葉台1-16-11 2F
TEL
03-6277-5813
営業時間
LUNCH 11:30~14:00(LO12:30)※土日のみ
DINNER 18:00 ~23:00(LO20:30)
※ランチ、ディナー共に¥7,000(税・サ別)のお任せコースのみ。桜のシーズンは営業時間、メニューに変更あり。
定休日
水曜 ※6月より水曜、第2・第4火曜
URL
http://www.tables.jp.net/craftale/

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