京都・銀閣寺にほど近い路地に、ひっそりと佇む「germer（ジェルメ）」。パン屋として12時にオープンし、18時からはパンの販売だけでなく、ワインや料理とともにパンを楽しめる空間になります。オーナーの岡本幸一さんいわく、「パン屋バー」という新しいスタイルのお店です。バーで自分好みのカクテルをつくってもらえるように、会話から好みに合ったワインやパン、料理などを提案してもらえます。店名はフランス語で「芽吹く」という意味。お客様との出会いや会話を糧に、ぬくもりのあるひとときや、ほっとできる味わいに出会える場が芽生えればと、ご夫婦で営まれています。

岡本さんのスタートは、フランス料理店が経営するケーキショップでのパティシエです。そこでウエディングケーキを担当するまでに腕を磨き、フランスにも2年ほど修業。フランスでの生活では、ワインやパンが“血と肉”といえる根源的な食材だと、キリスト教文化を肌で体感することに。そして、もともとワイン好きだったこともあり、いつかワインとパンのお店をつくりたいと考えるようになったそうです。それからブーランジェリーでパンづくりも経験し、2012年12月に同店をオープン。ワインとパンだけでは質素なので、チーズやほっとできるような料理も加えました。ワインもワインバーにあるような、ワインだけで完結するようなラインアップではなく、パンや料理に合う、隣にあれば水のようにスイスイといただけるようなものがセレクトされています。

「目の前で子どもが食べているのを見ると、健康なものを使おうと思うでしょ。添加物とか健康を害するものを使おうとは思わなくなる。でも、お客様がいない場所でつくっていると、それはただの“作業”になってしまう。便利だから、安いから、お店のレシピで決まっているからと、添加物を使うことも平気になってしまう。それが嫌で、食べてくれるお客様の顔が見えるところで、パンや料理をつくりたいと思ったんです」と岡本さん。それゆえ岡本さんの料理は、体にいい素材を用いて丁寧に手づくりされたものばかり。3日間かけてつくるという豚ロース肉の自家製ハムなど、手間暇かけた一品をいただけるのも同店ならではです。

しかし、岡本さんの料理は丁寧なだけではとどまりません。お客様とお話して美味しかったかどうか、食べてどう感じたか、ということを聞いて料理を洗練させていくのです。それを岡本さんは「お客様が自分の舌を更新してくれる」と語ります。

「美味しいかどうかは個人の好み。どんなに料理人がこだわっても、食べてくれる人が美味しいと思わなければ料理人の自己満足にすぎない。だから、生産者がわかる新鮮な食材を取り寄せたり、手間暇かけて料理をつくったりしているけれど、それをお客様にあえて伝えていません。それよりお客様がどんな好みをしているかなどをお聞きし、その方のベストを探り当てたい」とのこと。店内がカウンターと1つのテーブル席、窓際の席だけとコンパクトなのも、“人と接したい”というのが店づくりの原点だったからこそ。それゆえ、ぶらりとパンを買いに来たお客様と、長話ではずむのも同店の日常です。夜は自分好みを伝えて、ぜひオーダーメイド感覚で提案されるパンや料理、ワインを楽しんでみてください。

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  フランスパン
  280円（税込）

  和食であれば白米にあたるパンだからこそ、料理に合う味わいのあるパンにしたいと丁寧に手づくりしているフランスパン。フランス産小麦を使い、長時間低温熟成発酵させることで、噛むほどに奥行きのある風味が広がる。

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  ブリヤ サヴァラン
  アフィネ
  800円（税込）

  脂肪分が高く、中がとてもやわらかくリッチな味わいの白カビチーズ。チーズビギナーでも楽しみやすい味わいで、パンとの相性も抜群。チーズは旬のものを、白カビチーズやブルーチーズなど3～4種類そろえており、好みに応じて提案してくれる。

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  カヌレ
  200円（税込）

  一世紀以上もの歴史ある伝統菓子だからこそ、昔ながらの製法を用いて1つ1つ銅の型にいれて焼いている。さらに上質なラム酒を使うことで、素朴な味わいに豊かな風味をプラス。手間がかかるため一日限定5個販売なので、予約がおすすめ。