パンのテーブル

量り売り・カット売りの大型パン

  • BEAVER BREAD(ビーバーブレッド)
  • Boulangerie BONNET D’ANE(ブーランジュリー ボネダンヌ)
  • Boulangerie Sudo(ブーランジェリースドウ)
  • Pain des Philosophes(パン デ フィロゾフ)

BEAVER BREAD(ビーバーブレッド)

「ビゴの店」、「ブーランジェリーレカン」で腕を振るった割田健一シェフが独立、2017年11月にオープン。
街のパン屋さんではおなじみの食事パン、総菜パン、菓子パンの各アイテムを揃えつつも、素材に製法に、また人気飲食店の料理を具材に取り入れるなどで「新しさ」をプラス。売り場に並ぶパンのビジュアルや、口に入れたときの驚きも含め、新しいパンの楽しみ方を提案しています。

BEAVER BREAD(ビーバーブレッド)
住所:東京都中央区東日本橋3-4-3
電話番号:03-6661-7145
営業時間:8:00〜18:00
定休日:月曜定休、火曜不定休あり

インパクト抜群の大型パン

古くから問屋街としてにぎわってきた東日本橋にある同店。通りに面した窓側の棚に大型のハード系食事パンが並んでいます。通りすがりでも思わず二度見してしまいそうな、堂々たる存在感!
枕のようなカンパーニュは「マルディグラ」です。両手で抱えても余りあるサイズは、生地量515gの一般的なカンパーニュ11個分。フランス産の灰分多めタイプの有機小麦粉をベースに、国産小麦粉、全粒粉、ドイツ産ライ麦粉をブレンドし、自家製のルヴァン種で仕込んであります。「粉の違いで、香りの立ち方にもひきの形にも変化が生まれます。粉の香りとうまみを最大限に引き出すことを狙っての配合です」とオーナーシェフの割田健一さん。




焼成は下火をやや強めの230度、20分経ったら徐々に下げていき約1時間。やや厚めのクラストに包まれて、クラムには水分も香りもしっかり閉じ込めて、ほどよい食感に焼きあがっています。この大きな1台から、お客様のお好みの厚さでスライスし、必要な分を量り売りにしています。「だいたい厚さ1cmで100gくらいですが、クラムをたっぷり楽しめる3cm厚さがおすすめ」(割田さん)。オリーブオイルをパンの両面に塗って、熱したフライパンで両面を軽く焦げ目がつくくらい焼くのが割田さんのいつものスタイルだそう。サンドイッチにしてもおいしく、店では有機野菜と合わせて出しています。

「マルディグラ」は、肉料理で有名なレストラン「マルディ グラ」向けにつくっていた食事パンです。「昔々の山の中のレストランで、一山超えた村のパン屋さんには3日に1度しかパンを買いに行けない。だから3日分を1個の大きなパンにして焼いてもらう、そんなイメージを現代に落とし込んでみてもおもしろいんじゃないか、と。大きく焼くことで、味わいはより深まる、というメリットがあります。家族で食べるパンを大きな塊で買って、毎日少しずつ食べていく、日がたつにつれて酸味がわずかずつ生まれ、熟成による味わいの変化も楽しんでもらえます」(割田さん)。

もう一つの量り売り大型パンは、酸味を効かせた「サワードゥブレッド」。国産の小麦粉、全粒粉、ライ麦粉で仕込むパン種に加え、ルヴァン種、サワー種、隠し味にバルサミコ酢を加えてあります。
「酸の種類を増やすことで味わいを深める効果がある。ただ、むせるような酸味だけを強くするのではなく、最初に口に入れたときに感じる酸味、かみしめるうちに生まれてくる酸味、喉を通ってから感じる酸味と、いろいろな酸味が食べ進むうちに次々と現れてくる感じ。《酸》といわれるものを4種類組み合わせることで、ひと口目から余韻にいたるまでの、厚み・深みのある酸味を楽しんでもらえるようにしています」(割田さん)。

いつも買いにみえる地域のお客様のために「進化系のパン」をつくる


店を始める際に、街のパン屋さんとして地域の人たちに喜んでもらうには、食パンやメロンパン、クリームパンといった、誰にでも親しみやすいパンを、よりバージョンアップさせていくことをメインに考えていたという割田さん。
「ところが販売スタッフから『量り売りするような、大きなカンパーニュもぜひ売りたい!』との熱い提案がありました。いや、いちいちスライスして重さを測るのは手間でしょ?と言っても、『大丈夫、できます!』と譲らず。それで、オープンの日に『マルディ グラ』(当初は『カンパーニュ』の名称で販売していました)を3台焼いて、完売しました。これはいける、と手ごたえを感じました。ベーカリーの名店が揃う銀座にも近い土地柄、ということもあったかもしれません。この街の人たちは、こういう食事パンを潜在的に求めていて、量り売りのパンを抱えて家に帰る、という要望があったのです。
ショップバッグを中身が見える透明ビニールにしたのもよかった。『マルディグラ』のスライスを入れてると、『おおっ!?』と人目をひきます。最初はインパクトで買ってみて、食べたらその味わいにハマる人はハマります」(割田さん)。

現在、同店の量り売りのパンはこの2品ですが、2018年4月には街をあげての日本酒イベントで麹を使った大きなフォカッチャを焼いて量り売りにしました。今後は曜日替わりなどの形で、ラインアップに加えていくことも検討中だそう。

週末は多いときで1日500人の来店があり、食事パンがよく売れます。食パンは1日にマックスで焼いて60本(120斤分)を完売。もちろん、割田さんのつくるパンを求めて訪れる、以前からのお客様もいらっしゃいますが、大半はご近所の方々が日々の食卓にのせるパンとして買いに来てくださっています。

「ご近所のお客様の声を聞きながら、今までにないおいしさをつくり出しています。例えばクリームパンなら、カスタードクリームにリコッタチーズを入れてみたら新しいおいしさが生まれる。そのまま世界中のどこに持って行っても売れるパンにして、いつも買いに来てくださる近所の方々を喜ばせてあげたい、その積み重ねこそが、街のパン屋としてのバージョンアップにつながるのだと思います」(割田さん)。
クッキー生地にレモン果汁とすりおろした皮を入れたさわやかなメロンパンは、食事パンとしても成り立つアイテム。プレーンタイプの他にビターなカカオニブ入り「カカオニブメロン」やトマト入りもつくっています。先日は、ケータリングで生ハムをはさんだ小さなメロンパンをつくったそう。生ハムとメロンはよくあるオードブルですが、生ハムとメロンパンとはなんとも斬新です。

レーズンパンやレーズンバンズには、山梨県産巨峰のスーパーレアドライレーズンを贅沢に使用するなど価格はそれなりに高くなっても、よい素材を使っておいしくつくることも割田さんのこだわりです。MGドッグは、肉料理の名店「マル ディ グラ」の和知徹シェフ特製ソーセージをそば粉をブレンドしたソフトなコッペパンにサンド。そば粉ガレットのイメージでつくったパン生地は口どけがよく、明太フランスなどガツンと総菜系のパンにも甘いパンにも合い、日本の進化系パンの可能性をまた広げています。

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Boulangerie BONNET D’ANE(ブーランジュリー ボネダンヌ)

世田谷区三宿、大通りから奥まった住宅街にある同店は、オーナーシェフ荻原浩さんがパリで修業した、パリ14区のブーランジュリーそのままの雰囲気。記憶にとどめている現地のパンの香り、おいしさを再現しています。カンパーニュ系は大きく焼いて量り売りするスタイル。元パティシエの荻原シェフが小麦粉にこだわり石窯で焼きあげる、パン屋ならではの焼き菓子の数々も好評です。

Boulangerie BONNET D’ANE(ブーランジュリー ボネダンヌ)
住所:東京都世田谷区三宿1-28-1
電話番号:03-6805-5848
営業時間:8:00~19:00
定休日:月曜、火曜

使い道が幅広いカンパーニュ


店内のカウンターには、よく焼き込まれたパンの数々や自慢のマドレーヌなどが並び、対面方式でお客様1人ずつ順番に接客して販売する方式をとっています。
カウンター右側が定位置の大型の食事パンは、注文ごとにスライスして量り売りが基本です。オーナーシェフの荻原浩さんにお話を伺いました。

「『カンパーニュ』は、フランス産の中力粉をベースに、ライ麦の全粒粉を20%ブレンドし、ブドウから起こした自家製の酵母とライ麦からのルヴァン種の2種類の酵母で前日にミキシング、1晩じっくり発酵させて朝の10時過ぎには焼きあげています。フランスで教えてもらったのが、カンパーニュにはライ麦を20%入れて香りを出す、ということ。2種類の酵母で、ほのかな酸味と複雑な香りを引き出しています」と荻原さん。

加える水分量は76%と多め。これに酵母の水分も加わります。この生地をベースにパンオフィグやノアレザンなど副素材を入れたパンを成形し、残りをまとめて「カンパーニュ」として焼きあげます。石窯で約40分間しっかり焼くことにより、クラストはやや厚めになって内部の水分が保たれ、酵母のもたらす味わいや香りの効果もより強く発揮されます。
「小さく成形して、まわりがカリッと芳ばしくなっているのもおいしいですが、大きいパンならではの豊かな小麦粉の香り、酵母の香りをぜひ楽しんでいただきたいです」と荻原さん。

そして、ロスがほとんど出ないのも大型パンのよいところだそう。カンパーニュは、当日にすべて売れてしまうこともありますが、ほかにもクロックムッシュやマダムにしたり、ツナサラダや自家製パテのサンドにしたりと、使い道がとても幅広いのです。

そして、窯にいっぱいの長さで焼いているのが、石臼挽きの全粒粉100%の「シャルポンティエ」です。
「サフのルヴァン種をスターターにした酵母は、粉本来の持つ香りを邪魔しないので、全粒粉の香りを存分に生かした、フランスのパンに近い香りに仕上がります。水分量が多く、パン・ド・ロデヴにも似たつやっとしたクラムには大きな気泡が生まれ、しっとりとした食感です。この大きさゆえ、成形したらすぐ窯入れになるのでタイミングが難しいことはありますが、それ以外はいいことだらけです」(荻原さん)。
どなたにも食べやすく、バゲットと並ぶ同店の人気商品で、大きくあいた気泡はまるで香りを閉じ込めるカプセルのよう。とくに全粒粉の香りが好き、という人にはこたえられない魅力があります。カンパーニュと同様に、翌日でも2日目でも変わらないおいしさをキープするのも大きく焼いたパンならではのメリットです。

カンパーニュのバリエーションで食べ方の提案も


カンパーニュ生地にくるみとレーズンをたっぷり混ぜたノアレザン、セミドライのいちじくをそのまま混ぜた「フィグ」は、あえてほかのナッツなどは入れずにフィグのおいしさをシンプルに生かしてあり、パテとの相性も抜群です。

「ミューズリーブロート」はアンズ、イチジク、レーズン、アーモンド、ヘーゼルナッツと香辛料にシナモンとクローブを混ぜ、周りに数種類の穀物をまぶしつけて焼きあげてあります。生地と同量くらいのたっぷりな具材が詰まったリッチなパンは、荻原さんが修業時代にドイツで食べたものがすごくおいしくて、「具沢山のドイツパン」というイメージでつくったのだそう。

「お客様の中には、カンパーニュ系はどうやって食べたらいいんだろう、とか酸味があって食べづらいのでは?と、敷居が高いと感じる方もいらっしゃいます。おいしいカンパーニュへの入り口として、まずはぜひ、試しに召し上がっていただくことが大事だと思っています。バリエーションをつくり、スライス1枚からでもお気軽に、とおすすめしていますし、サンドイッチにして食べ方の提案もしています」(荻原さん)。


自家製パテのサンドは、日によってシャルポンティエまたはカンパーニュでつくっています。肉のこってりしたテイストにほどよい酸味が調和するカンパーニュのサンドは、荻原さんのいちおし。
「あえて酸味を出さずに仕上げている店も多いかと思いますが、ある程度の酸味はカンパーニュに必要な要素。乳酸や酢酸などの酸味があるからこそ、より味わいが深くなると思っています。そして、酵母という生き物を使うパンづくりは、時間をかけてあげることがおいしさを引き出すためには不可欠です。じっくり一晩かけて熟成が進み、時間をかけてしっかり焼き込むことでさまざまな香りが広がってきます。パテのサンドなどは、豊かなフレーバーを持ったシャルポンティエやカンパーニュも含めての1つの料理のように楽しんでいただけたらと思っています」(荻原さん)。

パンづくりにおいて、とくに香りを重視している荻原さん。粉を変えてみたら香りが激変した、ということもあれば、仕込んだ当日焼いた場合と一晩寝かせてから焼いたもの、どういう違いが生まれるかを実際に比べてみたこともあるそう。「いくら教科書を読んで勉強しても経験には勝てない。ここをこう変えたらどうなるか、うちのカンパーニュもシャルポンティエも様々なパターンを試してみて進化させてきました。何がいちばんいいのかを、これからも探りながらつくっていきたいです」(荻原さん)。

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Boulangerie Sudo(ブーランジェリースドウ)

食パンは1カ月前に予約必須の人気ベーカリー。ヴィエノワズリーと焼き菓子にも力を入れており、デニッシュや焼き込みの総菜パンなどには旬の素材を巧みに取り入れてあります。バリエーションも多彩に、見るからにおいしそうで楽しく、食べて満足のいく個性的な商品が並んでいます。

Boulangerie Sudo(ブーランジェリースドウ)
住所:東京都世田谷区世田谷4-3-14
電話番号:03-5426-0175
営業時間:10:00~19:00
定休日:日曜、月曜定休、火曜不定休

のびのび膨らむ大きなフォカッチャ

同店で人気の大型パンはフォカッチャ。季節の野菜などを満載した小型の総菜系フォカッチャは、パンマニアが選ぶコンテストでもフォカッチャ部門の金賞を受賞した人気アイテムです。ベースとなるフォカッチャ生地だけをシンプルに、大きく、厚さもたっぷりに焼き上げたのがシェフの自信作の「フォカッチャ」です。こちらは切り分けて量り売りにしています。
オーナーシェフの須藤秀男さんに、大きく焼いたフォカッチャの魅力についてお話を伺いました。



「うちのフォカッチャは、口どけのよさがいちばんの特長です。強力粉、デュラム粉を使った生地には、エキストラバージンのオリーブオイルも結構たっぷり使っていて、とてもしっとり。伸展性もよく、窯伸びしますから、総菜系から甘いパンにも合い、さまざまなメニューに展開できる生地です」

大きく焼いているほうは、サクッとかみ切れる食感を大切にしているそう。
「生地を練りすぎると、ひきが強く出過ぎてしまいます。上に具材をたくさん載せる総菜系のフォカッチャのほうは、ある程度生地もしっかりつくってあげないと具材の重みを支えきれないですが、大きいほうは、必要以上に強く練り込まず、パンチ1回だけ。小さくつくるのに比べ、成形で生地にかかる負担も少ないですから発酵がスムーズ。ゆるーく、自然に膨らんで、いわばのびのび育った自然児、という感じです。大きく焼くことで内部に水分をとどめ、よりしっとりしますし、パンの老化はゆっくりになります。1個分のサイズで小さく焼けば、お客様は取りやすいですけれど、やはり食事パンとしての味を優先すると大きく焼いたほうがおいしいですね。食卓に置いて手でちぎって食べるのもおすすめです」(須藤さん)。

焼きあがったフォカッチャは粗熱を冷ましてから、ほどよいサイズに切り分けて、乾燥しないようにプラスチックケースに入れて売り場に。お客様は、お好きなカットを選んで、レジで重さを測ってもらう方式です。
大きく焼くフォカッチャは、プレーンタイプのほかにアンチョビオリーブは通年、5月下旬ごろからは生トウモロコシ入りも量り売りで登場します。8月末から9月にかけては、青森県産の「獄(だけ)きみ」という大変甘みの強いトウモロコシが産地から届きます。こちらも期間限定でフォカッチャに使われる予定だそう。


大型パンは、ほかにカンパーニュ系


同店で大きく焼いて量り売りにするパンは、ほかに自家製ルヴァン種を使ったカンパーニュ「Sルヴァン」と、同じ生地でつくる「ノワレザン」や「フィグペカン」などがあります。
「軽い酸味をもたらすルヴァン種は、主にパンの味を深める目的で使っています。うちのパンは、だれが食べてもおいしく感じられるように、というのを目指しているので、極端にかたいものだとか、極端に酸味が強いものはつくっていません。カンパーニュ系も大きく焼くことで、クラストはしっかり芳ばしく、しっとりとしたクラムの部分が多くなって、歯の丈夫な方でなくても幅広いお客様に楽しんでいただけます」(須藤さん)。

「フィグペカン」は、クリームチーズをはさんだ白いちじく、黒イチジク、ピーカンナッツという相性抜群な素材をSルヴァンの生地でやさしく包んであります。素材を贅沢に使った断面を売り場でアピールできるのも、カット売りならではのメリット。いちじく好きには見逃せないビジュアルになっています。

大型パンは、焼成時間が長くかかる、窯から出してすぐの焼きたてを販売できない、という難点はあります。熱いうちに切ると中の水分が湯気となって逃げてしまいますから、熱が落ち着いたところでカットし、しっかり冷めたところで今度は乾燥を防ぐために1個1個を包装していきます。
「味を大切にするには、そうした焼成後のケアをしっかりやる必要があります。そのための人手、時間、作業するスペースが整っていれば、大きく焼いたパンならではのおいしさを楽しんでもらえる魅力的なアイテムだと思います」(須藤さん)。

このほか、ハードなクラストと水分量の多いしっとりしたクラムのバランスを楽しめる、ちょっと太めな「Sバゲット」は1/2本も販売。米粉、自家製レーズン酵母を使った甘くてもっちり食感の「コメパーニュ」は、1/2、1/4カットも用意しています。いろいろな食事パンを少しずつ試していただけるのも量り売りやカット売りのメリットといえます。
そして食事パンといえば、大人気の食パン「世田谷」「世田山」に加えて、もう1つお店の顔になるような食パンを開発中とのこと。「思い立ったらすぐやるのがうちの特長!」と、独特の製法を取り入れた生地を隠し味的に加える試みも始めているそうで、新しい食パンの登場が楽しみです。

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Pain des Philosophes(パン デ フィロゾフ)

神楽坂の賑やかな表通りから少し離れた、閑静な住宅街に2017年9月にオープン。「ドミニク・サブロン」でシェフブーランジェを務め、数多くのベーカリーのコンサルティングも手がけたオーナーシェフ榎本哲さんの店です。自らがイメージする「最高においしいパン」を仕上がりから逆算して、小麦粉を選び、それに合う酵母と製法を組み合わせて、じっくり長時間発酵で香りと甘み、うまみを引き出しています。16種類あるラインアップのほとんどが食事パン。地域の方々の、日々の食卓に欠かせないパンを提供しています。

Pain des Philosophes(パン デ フィロゾフ)
住所:東京都新宿区東五軒町1-8
電話番号:03-6874-5808
営業時間:10:00~19:00(売切れ次第閉店)
定休日:月曜 ほかに平日の不定休あり

ワインで仕込むカンパーニュは「ルージュ」と「ブラン」

スタイリッシュな店内は、売り場と厨房がひと続きのレイアウト。対面販売方式のカウンターに食事パンやクロワッサンが並んでいます。ひときわ目立つ、大きな丸いカンパーニュが「ル・ヴィニュロン」です。仕込みに水を一切使わず、ドライフルーツをオーガニックワインで煮込み、その煮汁を仕込み水として使っているというこのパンには、赤ワインで仕込む「ルージュ」、白ワインの「ブラン」の2種類があります。オーナーシェフの榎本哲さんにお話を伺いました。




「『ルージュ』にはスパイシーさが特徴のワイン、シラーを使い、レーズンの自家製酵母で濃厚な感じに。『ブラン』は、ワインはシャルドネ、グリーンレーズンの自家製酵母を使い、より爽やかなフルーティさを強調しています。酵母によって、引き出される香りが全然違ってきます。どんな香り、どんなテイストのパンに仕上げるのか、それに合わせてそれぞれ別な素材から酵母を育て、使っています」(榎本さん)。
粉はカナダ産と北海道産の小麦粉にライ麦粉をブレンド。
「生地量は870gでつくっています。このパンをいちばんおいしい状態にするためには、大きくつくることが必然でした。ワインとフルーツの香りをいっぱいにたたえたクラムを味わってもらいたいので、クラストが多くなる小さなパンという選択肢はなかったのです」と榎本さん。

生地に混ぜ込む具材は、「ルージュ」には小粒のドライいちじくとレーズン、くるみとピーカンナッツ。スパイシーな香りが特徴のシラーに合わせて、ドライフルーツを煮込む際にブラックペッパー、シナモンと、香りづけにオレンジを入れてあります。「ブラン」にはりんごとグリーンレーズン、くるみです。
「ワインでじっくり煮こむことで、フルーツがしっかりとワインを含み、パン生地から水分を奪うことがありません。さらに焼成後、時間がたつごとにフルーツから徐々にワインがパンへと移っていき、日持ちもするし、味わいもよくなってくるのです」(榎本さん)。

「ルージュ」は、もともとはレストランからの要望でつくったレシピだそう。「『赤』があるなら、『白』でもおいしいものがつくれるだろう、という発想から『ブラン』が生まれました。白ワインで仕込むパンは、かなり珍しいかと思います。『ルージュ』はフォアグラや強めのソース、ジビエ料理にもよく合い、『ブラン』は魚介や鶏、豚など白肉系に。それぞれ、ワインとも相性は抜群です。
ホームパーティのテーブルにホールのまま置いて、ワインやチーズと一緒に皆さんで切り分けて食べる、といった楽しみ方もしていただいています」(榎本さん)。

食卓の主役にもなれるロデヴ

同店のもう一つのスペシャリテが「パン・ド・ロデヴ」です。
「料理と一緒に食べる食事パンではありますが、『食卓で主役を張れるパン』を目指しました。料理と一緒に食べてもおいしいけれど、パンだけ単体で食べてもおいしい、ということがポイントです」(榎本さん)。
高加水のロデヴは、炊きたてのご飯のようなしっとりプルプルな食感が特長ですが、その分、味が薄くて物足りなさを感じていた、という榎本さん。そこで、配合も製法も一から独自につくりあげたのが同店のロデヴです。
「酵母はロデヴ専用にライ麦粉から起こしたルヴァン。石臼挽きの小麦粉を使い、前日からオートリーズを行って、しっかり水和させることで酵素活性が高まり、甘みがたくさん出てきます。そして、ポイントは塩の量。味としての塩を少し多めに入れることで食味のバランスが格段によくなり、粉の風味と酵母の香りを存分に味わえるパンになっています」(榎本さん)。
ロデヴが余ったら、必ず自分が持って帰って家で食べる、という榎本さん。「バターとも相性がよく、サンドイッチにしてもいい。どんな豪華な具材をはさむことよりも、パンがおいしいからこそサンドイッチはおいしくなります」(榎本さん)。


神楽坂はレストランが数多くあり、「夕食にワインと料理とパン」という文化が生活に溶け込んでいる街。3種類あるバゲットは、それぞれ1日1~2回の焼きあがりを基本に、最終は15時にして夕食用の食事パンのニーズに応えています。
中でも人気は「アルファバゲット」。100%の加水に加え、保水力を高める製法を取り入れて、お米のような甘みを引き出してあります。焼きたては、それこそおかゆのようなトロトロ加減だそう。
「バゲット」は、フランス産の小麦粉と石臼挽きのカナダ産小麦粉を使用し、粉の風味を生かしたバゲットです。お店にはフランス人のお客様もたくさん来店され、「フランスで食べていたのと同じだ!」と喜んでくださる方もいるそう。
「私としては、フランスで食べていたのよりおいしいだろう?という自負もあるのですが、自国のパン文化に誇りを持っている、彼らからの最高の賛辞だと思っています」(榎本さん)。
10時の開店前から食事パンの数々が続々と焼きあがり、朝いちばんに店に並ぶ食パン「ASAMA」は、この日は昼前にすでに完売。ご近所の常連さんたちは、お目当てのパンの焼きあがり時間に合わせて来店されているようです。

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大きくつくって窯の中でじっくり時間をかけて焼きあげた大型の食事パンには、各店シェフの食事パンへのこだわりと想いがふんだんに注がれています。大きく焼くからこそ生まれる贅沢なおいしさを、ぜひ味わってみてください。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2018年5月)のものです

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