パンのテーブル

ベトナムのサンドイッチ バインミー専門店

  • バインミー☆サンドイッチ 水道橋東口店
  • EBISU BÁNH MÌ BAKERY (エビス バインミー ベーカリー)
  • ăn di (アンディー)
  • Bánh Mì Bà Ba (バインミーバーバー)

バインミー☆サンドイッチ 水道橋東口店

高田馬場にある人気店「バインミー☆サンドイッチ」の2号店。白山通りを挟んでJR水道橋駅東口の目の前に2018年6月にオープンしました。店内にはイートイン8席を備え、自家製パンを使ったバインミーのほか、生春巻き、フォーなどの麺やごはんもの、アボカドシェイク(シントー)など本店にはないメニューも提供しています。

バインミー☆サンドイッチ 水道橋東口店
住所:東京都千代田区神田三崎町1-4-9
電話番号:03-6876-8545
営業時間:月曜 11:00~19:00
火~土曜 11:00~20:00 ※売り切れ次第終了
定休日:日曜

毎朝、粉から仕込んでパンを焼きあげています

オーナーの木坂幸子さんは、ベーカリーなどで働いた後、留学先のカナダでバインミーに出会いました。
「カナダにはベトナム人の移民が多く、ベトナム料理店やサンドイッチの店などがたくさんあります。独特なフランスパンにたっぷりの野菜とパテやハムなどをはさんだサンドイッチは、安くて、おいしくて、ボリューム満点。ベトナム人の来日が年々増えてきている日本でも、テイクアウトできる気軽な店をつくれば絶対受ける!とバインミーの店をつくることを決意したんです」と木坂さん。
今でこそ日本では「バインミー=ベトナム風サンドイッチ」という認識が定着してきていますが、もともとベトナム語のバインミーとはパンの総称で、中でもパンと言ったらフランスパンを指します。


ベトナム独特のフランスパンを使ったサンドイッチを提供する店として、2010年、高田馬場に「バインミー☆サンドイッチ」が誕生しました。
店を始めたころは、日本にはまだバインミー専門店はなく、カナダで魅了されたおいしさを再現するのは手探りの状態。江古田にあるベトナム料理店のバインミーを参考にしつつ、バインミーの肝でもあるパンをつくることから取り組んだそう。

「ベーカリーでの経験から、パンづくりの基本的なところは身についていましたが、カナダで食べたバインミーを再現するのは難しかったです。とにかく軽い感じを出すにはどうしたらいいか。パンというより、お麩などに近い感じでしょうか。いろいろな小麦粉を使って試作を繰り返しました」(木坂さん)。
ベトナムのパンは米粉を使っている、という情報もありましたが、ベトナム人に聞いても、後にベトナムに行って調べてみても、米粉を使っているところはなかったそう。試行錯誤の末に、ベトナムのパンよりもさらに軽やか、具材を活かす、サクッと歯切れのよいパンができあがりました。

同店では、毎朝店内で生地を仕込み、レギュラーサイズとミニサイズ2種類のパンを開店前に焼きあげています。クープを入れ、霧吹きでまんべんなく水をふきかけてから窯入れ。焼きあがりには、バゲットのようにクープがガリガリと立ち上がることはなく、ぷっくりとなめらかにふくらんでいます。クラストは薄くてパリッと歯切れよく、クラムはソフトさと軽さが特徴です。

食券購入時にパクチーやチリソースなどをカスタマイズ



具材の仕込みは木坂さんと、ベトナム人スタッフ2名が調理を担当しています。メニューは本店と同じ定番のほか、ホーチミンのハム専門店で修業したナムさんがつくるサイゴンのハムやカリカリ豚などを具材にした水道橋東口店限定のものもあり、それぞれレギュラーサイズ、ミニサイズのパンを選べます。注文は食券方式。券売機で、パクチーのあるなしや、チリソースの種類なども選ぶことができます。
一番人気は、同店限定の「サイゴンのハム&パテ」。きくらげ入り、コラーゲンたっぷりの豚皮入りなどハム3種類とチャーシュー、パテが入り、まるでオードブルの盛り合わせのよう。

「パテは、豚レバーと豚肉、塩、コショウのシンプルなレシピですが、現地では肉はさばきたての、まだ体温のぬくもりがのこっているものを氷でしめながらつくります。日本では、さすがにそれは無理ですが、極力新鮮なものを使うことで、くせはなく、ほのかに豚肉の甘みのあるパテに仕上がります。ハムとパテの味、三杯酢であえた大根とにんじんのなます、仕上げにシーズニングソースをかけ、パクチーの香りで全体をまとめています」(木坂さん)。

「エビとアボカド」は、サラダ感覚でいただける女性に人気のメニュー。プリッとしたゆでエビと、クリーミーなアボカドが好相性です。こうしたやわらかめの具材をたっぷりはさんでも、かじったときにパンから具材が飛び出さず、サクッと歯切れよくかみ切れる食べやすさもバインミーの魅力です。

「牛焼肉」は、ナムさんが味つけをする本場の味。牛薄切り肉のソテーに五香粉とレモングラスをきかせています。
具材は本場の味に近づけて、あとから加える調味料はマヨネーズとシーズニングソース、チリソースくらいで、ごくシンプル。醤油を使い、甘辛味を好むベトナムの料理は、もともと日本人の味覚にもなじみやすいテイストです。そして、なますや野菜をたっぷりはさむのは、サンドイッチに野菜を求める日本人の好みに合わせているそう。

「バインミーの専門店は、まだまだ数は少ないですが、2016年くらいからじわじわとブームが来ているかな、という手ごたえを感じています。ほかのバインミー屋さんたちとも一緒に、いろいろなイベントなどにも積極的に出店して、バインミーをもっともっと盛り上げていきたいと思っています」(木坂さん)。

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EBISU BÁNH MÌ BAKERY(エビス バインミー ベーカリー)

2017年8月オープンの「エビス バインミー ベーカリー」は、JR恵比寿駅のすぐ近く、昭和の雰囲気漂う「えびすストア」内に、テイクアウト専門の店舗とパン製造の工房を構えています。本場ベトナム仕込みの自家製パンを使ったバインミーは、定番メニュー8種類に加え、アイデアメニューも週替わりで登場します。

EBISU BÁNH MÌ BAKERY (エビス バインミー ベーカリー)
住所:東京都渋谷区恵比寿1-8-14えびすストア内
電話番号:03-6319-5390
営業時間:11:00~20:00 ※売り切れ次第終了
定休日:日曜

本場仕込みのパンでバインミーを

同店マネージャーを務める片岡亨さんは、オープンに当たり、ベトナム北部にある、老舗ベーカリーで修業をしてきました。もともとはイタリアンの料理人で、それまでバインミーに関する経験や知識はまったくないまま、社命で同店のマネージャーを任されることに。レストランでフォカッチャやピザはつくっていましたから、バインミーだって何とかなるだろうと、通訳役のベトナム人スタッフとともに現地へ。市内のバインミー専門店にパンを卸している、昔ながらの家族経営のベーカリーに住み込みで、パンづくりを一から仕込んでもらったそう。




「ベトナムのバインミーは、日本のバゲットとは全く違う食感。小麦粉だって日本のものと比べたら粗悪なのに、うまいパンができる。口の中を切りそうな外側のハードさがなく、ギュッと詰まったような噛み応えでもない。具材と一緒に食べたときに、パンだけが口の中に残ったりしない、スッとのどを通っていくところがいちばんの特徴です。

主に発酵でこの食感をつくっていくので、ミキシング、ホイロ、焼成それぞれの温度管理がいちばんのポイント。今はベトナムでやってきたのと同じようにつくっています」と片岡さん。
ただし、ベトナムの粉は、同じ銘柄でもタンパク量が11~14%とかなりの幅があったため、日本に戻ってからは、その間のタンパク量の粉をいろいろ試してみたそう。

「一番適していたのが『リスドオル』。ただ、ベトナムのお父さんには『粉はブレンドしちゃダメ!』と言われていましたが、最終的には、もう1種類をブレンドするのがベストな仕上がりに。イーストや塩は少なく、バインミーに最も適したミキシングを行い、オープン2日前くらいに、『このパンでいこう』というものがようやくできあがったんです」(片岡さん)。

修業先は街に1軒だけのベーカリーで、日本人がパン修業に来ている!というのはすぐに街中に広まりました。
「店にパンを買いに来ては、『日本でバインミー屋をやるんなら具材はどうする?』と、みんなで心配してくれて(笑)。向こうは、昼食以外の食事は外で食べる文化があるのですが、ビアホイ(ビアホール)で食事していると、私がコックだとわかっているから、『つくり方を教えるから、ここでつくってみんなに振る舞え』なんて、その場でつくることになったり。
東南アジアの料理はほとんど知らなかったですが、何もない状態で、いきなり現地にいってベトナムをダイレクトに知ることができました。たった15日間ですが、どっぷりベトナムのカルチャーの中に身を置いて、バインミーのレシピだけではなく、肌で感じてきたベトナムの人たちや街のこと、背中にみんな背負っているつもりで、この店で表現していきたいと思っています」(片岡さん)。


いろいろな具材を合わせて、可能性が広がるバインミー



「看板メニューのバインミーサイゴンは、最もオ―ソドックスなバインミーです。ベトナムでも、まずこれがあって、そのあといろいろなものが出てきた、という感じです」(片岡さん)。
パテはベトナムの伝統的なレシピで、豚のレバー、ホホ肉、こめかみ、ロース、背脂、皮なども入ったパテドカンパーニュ風。チャーシューには五香粉と、表面の赤い色をつけるのにベトナム食材の赤粉を使用。食紅では出せない、東南アジアらしい香りを醸し出してくれます。太めに切ったなますは、パリパリと気持ちのいい食感で甘く、豚ロースの肉でんぶはシコシコした噛み応えで、ほんのり甘みのある食材。フライドオニオンと、きゅりの薄切り、たっぷりのパクチーを添えています。
「チキンサテー焼き」は、ヌクマムと砂糖をベースにレモングラス、シナモンの香りをプラス。チリオイルをかけてピリ辛のテイストに仕上げています。
「揚げ豆腐と季節野菜」は、「ダウフー」という揚げ豆腐をアレンジしたメニューで、ヌクマムのソースで揚げびたし風に。洋食の添え野菜風にナスときのこのソテーを、なますの甘酸っぱい味に合わせて甘みのあるバルサミコ酢であえています。サンドイッチの具材に豆腐とは、なんとも斬新に感じますが、肉に負けず劣らずのうまみがあります。ちなみに、ベトナムでは、魚のすり身でつくるさつま揚げもバインミーの具材になるのだそう。

ベトナムは、日本と同じく南北縦に長いので、南部のホーチミンと北部のハノイ、それぞれ食に関しても地方色があります。北のほうは肉料理が得意で、パンも、ホーチミンは細長いのに対してハノイのほうは、太めのパンが多いそう。共通しているのは具材をはさむことを前提にしたシンプルな味わいであること。具材と一緒に食べやすいサクみがあり、塩味は強くなく、いろいろな料理を受けとめる懐の深いパンです。

同店で焼いているバインミーは、太くてコロンとした形、クラストはごく薄く、中は気泡がボコボコできて、「ヘチマのようにスカスカっとした軽さです」と片岡さん。このパンは外部のカフェやレストラン向けにも卸しています。
「中にはさむ具材は、ベトナムのものだけに限らず、日本発のものもあっていい。例えば47都道府県のご当地バインミーだとか、食事系だけじゃなくて夏はジェラート、秋からはフルーツゴロゴロのフルーツサンドも、このパンだったらできる。そういう可能性のある、広がりのあるパンだと考えています」(片岡さん)

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ăn di(アンディー)

2013年オープンのバインミー専門店「ăn di(アンディー) 」。注文後に具材をはさむ、できたてのバインミーは、定番に加えて季節限定や日替わりがあり、甘いおやつ系メニューも揃えています。店舗2階には、アジアンな雰囲気のイートインスペースを備え、セルフサービスで利用できます。

ăn di(アンディー)
住所:東京都世田谷区砧3-4-2
電話番号:03-3417-3399
営業時間:10:00~16:00 ※売り切れ次第終了 
定休日:木曜

料理のおいしさを生かすのがバインミーの魅力



オーナーシェフで、野菜ソムリエの島田孝子さんは、20代半ばに、ワーキングホリデーでオーストラリアへ。現地のベトナム料理店で働いたことがきっかけで、アジアの食への関心を深め、アジア各国を歴訪し、帰国後はアジア料理、野菜料理を中心にフードコーディネーターとして活躍。食品メーカーの商品開発や、飲食店プロデュースなどに携わり、2013年10月にバインミーを通して、ベトナムやアジアの食の魅力を伝える店「ăn di」 をオープンしました。

“ăn di“は、ベトナム語で「食べていって! 寄っていって!」の意味だそう。もとは建築デザイン会社で働いていた島田さんは、その経験を活かして店舗兼倉庫だった建物を自ら改装し、店舗2階には、つくりたてのバインミーでほっと一息つけるスペースを提供しています。
バインミーのメニューには、レギュラーサイズと「細長い」という意味の「クエ」、2種類のサイズのパンを使いわけています。
「フランス統治時代にはいってきたバゲットを、独自にアレンジしたベトナムのパンは、具材をはさんだ時に、料理のおいしさを活かしてくれるところが、いちばんの魅力です」と島田さん。

パンは、知り合いのベーカリーでつくってもらっている特注品。「何よりも重視したのは、具材のベトナム料理に合うこと。歯切れがよく、クラストは薄めで、ほどよい具合にカリッとしていることが必須で、クラムもボリュームがありすぎるのはダメ。独特の軽さと食感を伝えるのにとても苦労しました」(島田さん) 。

日本でバインミーについて調べると、パン生地に米粉を配合したレシピが多く見つかります。焼いたときの表面のパリッとカリッとした感じは、確かに米のせんべいや焼き餅と似た部分もありますが、本場のバインミーは、どちらかというと麩や最中の皮などに近い食感。同店では米粉は使わず、小麦粉のみでベトナムのパンを再現しています。

細長いクエをつかったメニューは、レバーパテとなます、パクチー、赤唐辛子をはさんだ「バインミークエ」。味つけのアクセントには欠かせないシーズニングソースで仕上げています。ほかにも「緑豆あんバター」などスイーツ系が2種類。おやつにちょうどいいサイズで、甘さ控えめで食べやすく、男性にも人気だそう。

五味<塩味・甘み・酸味・辛み・うまみ>のバランスが大事です!



「ベトナムの屋台などでは、パンにパテを塗っただけ、なますは入れてもほんの少しだけ、という場合も多いのですが、ベトナム料理は塩味・甘み・酸味・辛み・うまみのバランスがとても大事。そこにこだわって、うちではなますをたっぷりはさんで甘酸っぱい味を表現しています」(島田さん)。大根とにんじんをスライサーで3~4mmの少し太めの千切りにして、酢、砂糖、塩のシンプルな味付けで、毎日大量に仕込み、ときどき底から混ぜ返しをしながら3~4日間漬け込んだものを使っています。売れ行きに合わせて、なますの仕込み量を調整していくのが重要で、パンとともになますがなくなったら売切れじまいにしているそう。

具材は、ベトナムの定番料理や日本人好みにアレンジした、オリジナルのアジアン料理。丁寧に手づくりし、素材に合わせて、多種類のスパイスやハーブを使い分けています。パクチー以外にもレモングラスやコブミカンの葉、スペアミントやオリエンタルバジルなど、フレッシュハーブが加わることで、香りとおいしさがいっそう深まります。

バインミーの具材の中でもポピュラーな、自家製レバーパテは、ベトナムで習ったレシピをアレンジ。現地では、スパイスはあまり使わずレバー感が強めですが、スパイスを効かせてレバー臭さを消し、レバーが苦手な方にも食べやすくしています。
「ビーフとレモングラス」は、ヌクマムやオイスターソースでマリネした牛肉を、香りの強いレモングラスの茎のみじん切りをたっぷり加えて焼いたもの。
「魚とトマト」は、スパイスと赤唐辛子を入れて煮込んだトマトソースにサバ水煮を合わせてあります。サバは、水煮缶を使うことで生臭さがなく、ピリ辛&濃厚なトマトソース、なますの甘酸っぱさとの相性が抜群です。この自家製トマトソースは、鶏ひき肉とゆで卵のトムヤムバインミーや牛ひき肉のスパイシー炒めなど、日替わりメニューにもたびたび登場し、広く使いまわしの効く有能ソースです。

オープン間もないころは、「バインミーをよく知らずに食べたけれど、パクチーがダメだった!」という方も多かったそう。「海外でバインミーを知って、ご来店くださったお客様の口コミで、当店のことも徐々に浸透してきました。もちろんお好みでパクチー抜きもできますけれど、パクチーブームを経て、現在は夏場などはパクチーが品薄状態になるくらいたくさん使います。やはり摘みたてがいちばんなので、千葉、長野、岐阜など産地から直接仕入れています。春先は、地元・世田谷でもパクチーがとれるんですよ」(島田さん)。
テイクアウトの場合は、オーブントースターで温めて、パンをパリッとさせるとよりおいしくいただけます。持ち帰りに時間がかかるときは、なますだけ別容器に入れることをおすすめしているそう。
「カフェでつくりたてを召しあがっていただけるようにしたのも、おいしく食べてほしいから。ベトナムやアジア料理のおいしさと魅力をお伝えしていきたいです」(島田さん) 。

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Bánh Mì Bà Ba(バインミーバーバー)

2018年6月、下北沢にオープン。メニューはバインミー4種類のほか、緑豆のぜんざいチェーなど。ベトナム人のフォンさんご夫妻が現地の味を再現しています。通りに向けて食券販売機が置かれた売店風の外観ですが、店内のカウンター席でイートインもできます。

Bánh Mì Bà Ba(バインミーバーバー)
住所:東京都世田谷区北沢2-27-8
電話番号:03-6804-8967
営業時間:11:30~20:30
定休日:水曜

ホーチミンの屋台の味をそのまま再現しています

同店のバインミーは、1990年代にホーチミンで屋台を営んでいた、フォンさんのお母さん直伝のレシピを忠実に再現した、本場の味です。

ここ数年、留学生や研修生として来日するベトナム人が急増しています。ところが、ベトナムの国民食ともいえる、おいしい、本場のバインミーを気軽に食べられる店は、ごくわずか。「日本でおいしいバインミーを食べたい!」というベトナムの人たちに向けて、また「日本の友人たちにも、ぜひ本場の味を紹介したい!」という思いで、バインミーをつくっているのだそう。



「バインミーは、見た目はソフトフランスに似ていますが、食感は全く別物。オープン前に、お母さんが屋台で売っていた、歯切れよく、かろやかな独特の食感を再現すべく、自分たちでパンをつくるところから取り組みました」(フォンさん)。

店舗のスペースにも限界があることから、パンの製造は外部のベーカリーに依頼することに。何度もやり取りを重ねて、イメージ通りのバインミーをつくりあげていきました。
「ベトナムのバインミーを食べたことがない方でしたが、さすがは本職のパン屋さんです。おそらく私たちが自分でやるよりもずっと早く、希望通りのパンに仕上げてくださいました」とフォンさん。

バインミーのメニューは4種類。日本向けのアレンジはせず、本場のものと同じ味をつくるために、調味料などはベトナムのものを使用。メインの具材となるレバーペースト、サイゴン風ゼラチンハムやチキンフレーク、チャーシューはもちろん、マヨネーズも自家製にこだわっています。自家製具材の全部盛り、ともいえる一番人気が「バインミーバーバー」です。

バインミーのベースになるレバーペーストは、鶏と豚のレバーをミックス。ベトナムの香辛料を使い、シンプルに仕上げています。パンは横に切り目を入れて、バターのかわりに片側にマヨネーズ、片側にレバーペーストを塗るのが、同店のバインミーの基本です。キッチンのカウンターには、パクチー、唐辛子、キュウリ、青ネギなどの野菜と、大根とにんじんのなます、肉系の具材などが並べられていて、食券を買ってフォンさんに渡すと、具材を手際よく、丁寧にパンにはさんで手渡ししてくれます。

バインミーはフランスとベトナムのミックス・カルチャー


「バインミーガー」のメインの具材は、チキンフレーク。ベトナムの魚醤ヌクマムで味付けをして蒸した鶏肉を、こまかくほぐしてからさらに火にかけて水気をとばしたもの。

「ティットパテ」はベトナム風のチャーシューで、五香粉とヌクマムで味付けしています。サイゴン風ゼラチンハムの「ジョートゥー」は、豚耳やタン、キクラゲなどをフライパンで炒め、溶け出てきたゼラチン質ごと型に流し込んで冷やし固めたもの。コラーゲンたっぷりで、コリコリした食感を楽しめます。ジョートゥーは家庭ごとに「我が家の味」がある、ベトナムではとてもポピュラーな食材。現地では市販品もありますが、日本では入手が難しいため、現地の味そのままに手づくりしています。
なますは、大根とにんじんをせん切りにしたあと、さっと水にさらしてパリパリした食感を残し、酢と塩と砂糖でピクルス風に仕上げています。
野菜をふんだんに使い、さまざまな具材をはさんだバインミーは、「世界で最もおいしい屋台料理10選」に選ばれたこともあり、カナダ、アメリカ、オーストラリアなどでは、10年くらい前からチェーン展開もされています。同店にも欧米人のお客様が数多く訪れ、気軽に味わえるヘルシーなファストフードとしての人気が定着していることが伺えます。

バイク通勤が盛んなベトナム本国では、通勤途中のあちこちにあるバインミーの店や屋台に寄って4、5分で立ち食いしたり、職場に持って行ったりするのだそう。日本で、コンビニに寄っておにぎりやパンを買うのとちょうど同じような感覚。同店でも、3~4割のお客様は店内でできたてを召しあがっていかれます。
「ベトナムには親日家がとても多いですし、フランス文化が融合したミックス・カルチャーも魅力の1つです。お客様とのコミュニケーションを大切にし、バインミーを通して、そうしたベトナムのいいところを、積極的にお伝えしていきたいと思っています」(フォンさん)。

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フランスから来たパンの文化と、アジアの食文化がマリアージュしたベトナム生まれのバインミー。専門店に足を運んで、ぜひ味わってみてください。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2018年9月)のものです

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