竹谷さんだから聞けるパン職人の理想と挑戦-対談ドイツパンに魅せられ続けて歩んだ道~絶えることない研究心とともに~
ベケライ・ダンケ 杉山 大一さん

「竹谷さんだから聞けるパン職人の理想と挑戦」。今回お話をお伺いしたのは、静岡県伊豆の国市の人気店「ベケライ・ダンケ」のオーナー・杉山大一さん。ドイツパンと言えば「ベケライ・ダンケ」を挙げる人も多い名店です。そんな名店は、杉山さんがドイツパンに魅せられたことによって誕生しました。ドイツパンとの出会い、研究、そして現在手がけている新たな取り組みなど、活動の幅も広い杉山大一さんだからこそ語れる貴重なお話を伺いました。

前編 後編

ドイツパンとの出会い。その奥深さに魅せられて





竹谷
 本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。
杉山
 こちらこそありがとうございます。
竹谷
 現在三代目とお伺いしました。名店「ベケライ・ダンケ」が誕生するまでの経緯を教えてください。
杉山
 初代である祖父は、イーストドクターとして酒造メーカーに勤めていたのですが「これからはパンの時代だ!」と会社を退職して杉山製パンを開業したんです。二代目までは学校給食などの卸しを専門にしていました。そんな杉山製パンを継いで、1997年に「ベケライ・ダンケ」をオープンしました。
竹谷
 修業先としてはどんな場所に行かれましたか?
杉山
 専門学校を出た後、東京都杉並区にあったベーカリーで修業をしました。幼少の頃から祖父や親の仕事を見ていたからでしょうか、不思議とあまり苦労せずに製パン技術を学ぶことができました。
竹谷
 幼い頃からパンづくりを身近に感じていたからこそ、自然と体が動いたのかもしれませんね。
杉山
 すぐに技術を習得できてしまうためか、ちょっと物足りなさも感じていた頃、ドイツパンに出会いました。ドイツパンの味の決め手となるサワー種など奥深く、知るほどに面白さを感じましたね。
竹谷
 私自身もドイツパンに魅せられた一人ですから、気持ちはよく分かりますよ。そんな出会いを経て、ドイツパンを追求していこうと決意されたんですね。
杉山
 やはり学ぶならば本場で勉強したいとドイツに渡り、マイスターの元で研修をさせていただきました。マイスターから学んだことは、現在も研究を重ねて、日々進化させられるようにしています。

ドイツパンづくりの強い味方!設備のなかに思い出も





竹谷
 マイスターの元でドイツパンの技術を学ばれて「ベケライ・ダンケ」では設備にもこだわっていると伺っています。具体的にはどのような設備を使用していますか?
杉山
 まず窯は、ドイツにあるワーナーフライダー社の「マタドール ベーキングオーブン」を使っています。これがドイツパンを焼くには最適なんですよ。熱源はガスを使っていて、他社のオーブンよりも大量の蒸気がでるのが特徴です。1段目と2段目はパンを焼く炉床が露出するように特別オーダーしてあります。
竹谷
 他にはどのような設備がありますか?
杉山
 ミキサーと製粉機もドイツ製のものを使用しています。ミキサーはドイツのケンパー社「ライ麦専用ミキサー」です。本物のドイツパンを捏ねるにはこのミキサーが一番適していると思いますね。生地にストレスを与えずライ麦が高配合になるに連れ、このミキサーの本領が発揮されます。
竹谷
 最近はドイツのベーカリーでもあまり見かけなくなっているミキサーですね。
杉山
 そして、製粉機にはちょっとした思い出もあるんです。実は当店で使用している製粉機は、ドイツパンの師匠であるマイスター、ヴェルヘルム・モトホスト氏からいただいたものです。
竹谷
 それは大変貴重な製粉機ですね。どのような特徴がありますか?
杉山
 ドイツは長年、ライ麦を製粉してきた国です。そのノウハウが石臼のカットによく表れていると感じますね。また、香りを飛ばさず製粉でき、摩擦などによる粉温の上昇がないこともいい。ドイツパンづくりの最高の相棒ですね。
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