パン屋さんで活躍する女性たち
パンとお店と“私”のストーリー

常連さんでいっぱいになるような地元で愛されるパン屋をめざして

Les pains favoris 店主 石原 純子さん

「レ パン ファボリ」は大阪市営地下鉄守口駅よりすぐ、守口市役所そばにある小さなベーカリーです。実はお店が建っているのは、我が家が代々お店を営んできた場所。喫茶店だった店を、母の代からパン職人を雇ってパン屋にしていました。その母は私が高校生のときに他界。その後、姉が喫茶店を営み、私は高校卒業後そこでアルバイトとしてサンドイッチなどを作っていました。

しかしながら、姉妹でなんとなくしていた商売はそれほど甘くはなく、お店を閉めることに。とはいえ、思い出溢れる土地を人に貸すのも売る気にもなれず、ずっとそのままにしていました。

お店を閉めた後、私はもともとパンが好きだったこともあり、パン屋にアルバイトへ行きました。そこでもサンドイッチを作っていたのですが、だんだんパンの魅力にはまっていき、母との思い出の場所で「パン屋さんをやろう」と決意。バイト先とは別のパン屋で社員として就職することができ、パン職人としての修業を始めました。

当初は5年すれば独立しようと考えていたのですが、しっかり技術を身に付けようとしていたら10年経っていました。いくつかのパン屋を経験するうちに、師匠と呼べる方との出会いもあり、とうとう2014年9月に当店をオープン!修行時代にハード系パンの美味しさに開眼したこともあり、私の大好きなハード系がやや多めですが、菓子パンや惣菜パンなどバリエーション豊富に常時50種類ほど取り揃えています。

パンへのこだわり

当店のパンは、全体的にちょっと小ぶりです。というのも通常サイズだと女性は2個ぐらいしか食べられないと思うのですが、私は一回の食事でパンを3種類は食べたい派(笑)。そのため、あえて通常のサイズより小さく作っています。価格も抑えめなので、いろいろ食べて楽しんでもらえたら嬉しいですね。

また、暑くなると柑橘系、寒くなるとチョコ…といった季節によってとくに食べたくなる食材があると思いますが、それらを使った季節限定パンも随時開発しています。新商品開発で大切にしているのは、主役に選んだ素材をいろんなパン生地と組み合わせて食感などを試すこと。既成概念にとらわれず、新しい美味しさを味わっていただけるように心がけています。

お客様との会話も大切にしており、お客様のリクエストから生まれたパンもあります。これからはもっとお客様の声から生まれたパンを増やしていけたらと考えています。

お客様に小麦の豊かな風味を味わってほしいと想いを込めて、パン生地は手間も時間も惜しみません。 バゲットは前日から仕込んで低温長時間発酵。丁寧に作ることで小麦の風味を最大限に引き出しています。
フランスのカフェをイメージしたような女性らしい雰囲気の店内。 お客様に季節を感じていただけるように、旬の素材を使った新作パンを随時発売しています。

女性ならではの苦労

パン作りは体力・筋力がいります。オープン当初は手探りで進めていたこともあり、前日残ったパンをかじりながら、早朝から必死に準備をしていたときは体力的にハードでした。それにフランスパンの窯入れは気合いのいる仕事です。焼く前のずっしり重たいフランスパンがズラリと並んだものを持てなくなったら、仕事を辞めるときだと考えています。

独立にあたっては、私の師匠に機械の仕入れや業者との付き合い方など細かく教わることができたので心強かったのですが、業者さんに女性だからと舐められてはいけないと思い、人一倍男気をもって臨んでいましたね。今でも持ってきてもらった卵がちょっと古いのでは…といった腑に落ちないことがあれば、スパッとはっきり言う強気な態度を通しています。

ただ、お店の雰囲気やお客様への心遣いなど、女性ならではの良さも大切にしていきたいと思っています。ベビーカーでも気軽に入れるお店にしたいと、建築家の方の設計案を変更してもらい、店内中央に広いスペースが設けたのも女性視点から。女性が食べたいパンを感覚的にわかっているのも、女性ならではの強みですしね。

どんなお店にしていきたいですか?

当店のある守口市は、建物などが都会化されてきたものの、“大阪の下町”といった情緒が残った場所です。守口で生まれ、そのまま離れず暮らし続ける、地元愛の強い方が多く住まわれています。そんな地元の常連さんがたくさん集まるお店をめざしています。

そのため「いらっしゃいませ。おはようございます。今日は…」とお客様との会話が始まるような、そんなお店にしていきたいと、お客様との会話を大切にしています。

また、お店を始めてから知ったのは、同級生など学生時代の知り合いが私と同じように自分のお店を営んでいる方が多いということ。お互いの店との距離も近く、これほど高い割合で商売している同級生や同窓生がいるというのも珍しいのではないでしょうか。そんな横つながりもあって、現在では私と同じ中学校出身の方が営むコーヒー豆の引き渡し地点として、当店を使ってもらっています。引き渡しだけなので儲けにはなりませんが、ついでお客様がパンを買っていってくれることもあり、お互いに助け合っていると感じます。いつかその横つながりの強さを活かして、お互いの商売を活性化できるようなコラボやイベントなどができれば嬉しいですね。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!

石原 純子さん お気に入りのpan

くるみゴルゴン 240円(税別)くるみゴルゴン 240円(税別)
三大ブルーチーズのひとつであるゴルゴンゾーラを贅沢にも混ぜ込みました。青カビチーズならではの風味とやや強めの塩気が、アクセントに入れたレーズンの甘みと美味しいハーモニーを奏でてくれて、クセになる味わいです。食事パンとしてはもちろん、ワインとの相性も抜群です。くるみもたっぷり入っていて食べごたえがあり、満足度の高いパンだと思います。ふわふわとカリカリの両方の食感を楽しんでほしいと、パンの形状をまるで觔斗雲(きんとうん)のようなユニークな形に仕上げています。

栗とチョコのデニッシュ 340円(税別)栗とチョコのデニッシュ 340円(税別)
栗の濃い味わいが楽しめる刻んだ栗入りのマロンペースト、ちょっぴりビターなチョコレートクリームをそれぞれデニッシュの層に交互に挟みこむように包みました。口の中で2種類のクリームがとろけるように混ざり合い、カロリーが気になっても、ついつい手が伸びてしまう贅沢な味わいです。パンの上には刻んだクルミをトッピングしていて、クルミのカリッとした食感とパン生地のバリッとした歯ざわり、クリームのなめらかさと、さまざまな味わいも楽しめます。頑張った日や疲れた日のご褒美にもおすすめです。

クロワッサン 140円(税別)クロワッサン 140円(税別)
私の師匠直伝のレシピで作っている自信作のクロワッサン。一般的なクロワッサンよりあえて層を少なくすることで、バリッとした歯ごたえを生み出しているのが特長です。クロワッサンの味の決め手ともいえるバターには、贅沢にもフランス産の発酵バターを使っています。噛みしめるごとにバターの風味が広がり、朝食に食べるとちょっとリッチな気分になれる味わいです。通常より少し小さいサイズなので、お子さまでも食べやすいと喜ばれています。

店舗情報

店名/Les pains favoris
郵便番号/〒570-0082
所在地/大阪府守口市豊秀町2-5-11
最寄駅/大阪市営地下鉄谷町線「守口駅」、または京阪本線「守口市駅」
アクセス/大阪市営地下鉄谷町線「守口駅」より徒歩1分、京阪本線「守口市駅」より徒歩5分
電話番号/06-6996-5510
営業時間/7:00〜18:00
定休日/日曜日

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2015年7月)のものです

<オススメパン>食パン 1個 540円(税込)1/2個 270円(税込)
深めの焼き色、窯の中でのびのび膨らんだ山型の食パンです。そのまま食べると中はふんわり、トーストするとサクサクの食感が楽しめます。
バゲット 1本 302円(税込) 1/2本 151円(税込)2本 605円(税込)
料理と一緒に食べたりサンドイッチにしたり、いろいろな食材と合わせやすいよう、皮は薄めに、クラムはやわらかめ&軽めに焼き上げています。少量ずつ、手ごねで丁寧に仕込んでいます。
クリームパン 1個162円(税込)
カスタードクリームはもちろん自家製。バニラビーンズと卵の香りが豊かで、優しい甘さです。保存料など余分なものは加えていないため、気温の高い時季はお休みにしています。

パンとお店と“私”のストーリー トップに戻る