パン屋さんで活躍する女性たち
パンとお店と“私”のストーリー

素直に「おいしい」と思う毎日食べたくなるパンをお届けしたい 三好パン 店主 三好 さとこさん

三好パン 店主 三好 さとこさん

「三好パン」は2015年2月にオープンした、女性二人で運営しているパン屋です。対面販売スタイルの小さなお店ですが、焼きたてパンを食べてもらいたいと、イートインスペースも設けています。

かつての私は大工や左官になろうと建築の学校に通っていました。当時はパンを食べるのは好きでしたが、とくにパン屋になろうとは考えてもいませんでした。しかし、ふとセメントを捏ねる作業とパンを捏ねる行為は似ているように感じ、まとめる作業が面白そうと思うようになりました。そこで、未経験でも受け入れていた大手のパン屋に就職。約3年修業した後、関西ではパン職人からも一目置かれていた「青い麦」に転職。こちらで約7年弱修業させてもらい、パンづくりの基本から一通りを学ぶことができました。

その後、「青い麦」の元オーナーであり、カリスマシェフとして知られる福盛幸一氏が顧問を務めるお店の立ち上げ作業をお手伝いしたり、友人や先輩のお店のお手伝いをしたりしながら、独立に向けて物件探しをスタート。地元である大阪で、友人や先輩のパン屋と商圏が重ならない場所を探していたところ、この都島駅近くにお店を構えることになりました。あまりよく知らないエリアだったのですが、お客様のパンの好みが幅広いので、ハード系パンから菓子パンまでオールジャンルそろえています。食パンだけを買いに来られるお客様や、イートインスペースでランチを食べにお子様と一緒に親子で来られる方など、ニーズはさまざま。お客様の動向から、朝はやわらかめのパンを多めに、昼からはハード系のパンを多めに焼いています。

パンへのこだわり

パンづくりをする上で大切にしていているのは、「シンプルで、素直に“おいしい”と思えるパン」をつくること。あえてうんちくを語りたいとは思いません。ただ食べておいしいと思ってもらえるパンをお届けしたいと考えています。もう一人の女性スタッフが、パンに包むフィリングなどを手づくりしてくれているのですが、それぞれのパンの味にぴったりの味付けに仕上げてくれるので、甘さや味の濃さが絶妙。丁寧に手づくりされたおいしさを味わってもらえると嬉しいですね。

お店自体も、そんなパンにぴったりな空間にしたいと、建築家やインテリアデザイナーの方に、“素直に「おいしい。」毎日食べたいパンをつくります。”というお店のコンセプトを伝えて依頼しました。おかげでシンプルでありながら、心地よさを体感できるような空間に。イートインスペースは販売スペースの脇につくり、適度にクローズ感をもたせながら、気軽に使えるような開放的な空間になっています。イートインスペースにあえて窓をつけなかったのは、人目を気にせず寛いでもらいたいと思ったから。少しドリンクも販売していますが、イートインに飲み物の持ちこみはOKなので、気軽に焼きたてパンを食べに利用してもらいたいですね。

天然酵母を使ったパンやハード系パン、菓子パンなど、少量ずつながらラインアップは豊富 対面販売なのでお客様との会話も自然と弾みます。選ぶ楽しさも大切に、少量ずつ多彩な味わいを提供
白を基調に木のナチュラル感をプラス。「なんとなくいいな」と思ってもらえるようなイートインスペースに イートインスペースに飾られた麦のオーナメントは、同店のオリジナル。

女性ならではの苦労

女性で得していると感じることはあっても、女性だから苦労していると思うことはありませんね。昔は違ったかもしれませんが、今の機械類は女性でも扱いやすいものになっていますから。

むしろ、「女性オーナーのお店なのに…」なんて思われないように、清潔感をとても大切にしています。店内はもちろんですが、厨房の中まで清潔に保てるようにこまめに掃除をし、道具類を散らかさないなど、見た目もきちんと片付いた状態をキープするようにしています。当店のスタッフは女性だけなので、お互いに意識せずとも細かいところまできれいに保ちながら作業できています。

また、親子で買いに来ていたお客様が、慣れてくるとお子様一人で買いに来てくれたりするのも、女性のお店という安心感があるのかなと思います。お客様も女性の方が話しかけやすいのか、気さくに話しかけてくれます。夕方に常連さんが来たときにパンが少なくなっていると、「今日はよく売れたみたいでよかったね」なんて激励してくれる方もいるほど。温かいお客様に見守られているみたいで、ありがたいですね。

どんなお店にしていきたいですか?

「三好パン」は、まだ2年目を迎えたばかりの新しいお店。しばらくは現状維持をしながら、今来店してくださるお客様一人ひとりを大事にしていきたいと思っています。

そして、毎日食べたいパンの代表格ともいえる食パンは特に力をいれているので、「食パンといえば三好パン」と頭に浮かべてもらえるような存在になれたら嬉しいですね。食パンといっても好みがいろいろなので、当店では嗜好にあわせて、食感や味わいなどに変化をつけた5タイプの食パンをご用意しています。そのほか新作などは、フェイスブックやインスタグラムなどSNSを通じて、もっと発信していきたいですね。

パンづくりは、長く続けないとうまくできない仕事。私はパンに関わって10年以上経ちますが、慣れているつもりでも、水の温度や湿度、作業場のちょっとした力加減などで仕上がりが変わってきてしまいます。毎日、同じことをやっていても違う、同じ味を安定してつくり上げる難しさが面白いところです。考えることが多すぎて、飽きることがありません。これからも丁寧に手づくりして、毎日食べたくなるようなパンをお届けしていていきたいです。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!」

三好 さとこさん お気に入りのパン

きなこあんドーナツ 140円(税別)きなこあんドーナツ 140円(税別)
熱湯を使った製法を用いたドーナツ生地なので、もっちりしていながら不思議なぐらい油を吸わず、しつこくなく仕上がるところが気に入っています。揚げ油に米油を用いているのも、重くならないポイント。中に包んでいるのは、北海道産の小豆を用いた自家製の粒あんです。粒あんを手づくりするのは手間も時間もかかりますが、生地に合わせた、ちょうどよい甘みにするために手を抜けないところです。仕上げにきなこをたっぷりまぶしてあるので、サイズは小さめですが満足感はたっぷり。おやつに食べるのにぴったりなのですが、リピートされるお客様が多く、ほとんど売れ残ることがないので、なかなか私も食べられない隠れた人気パンなのです。

ブドウとクリームチーズ 160円(税別)ブドウとクリームチーズ 160円(税別)
バゲット生地で、ラム漬けしたレーズンと棒状のクリームチーズを巻き込んで焼き上げました。私が実際に食べて厳選した、お気に入りのクリームチーズを使っています。もちろんレーズンとの相性は抜群。パン生地は一晩寝かせて冷蔵熟成発酵させたバゲット生地なので、小麦の香りや甘みがひきたつシンプルな味わいが、クリームチーズとレーズンのマリアージュを引き立ててくれます。パン自体に糖分は加えておらず、レーズンの甘みだけなので、朝食に食べるのにもちょうどいいパンです。クリームチーズの割合が多い、贅沢なパンなので、ワインのお供として楽しむのにもおすすめです。

クロワッサン 140円(税別)クロワッサン 140円(税別)
フランス産の高級発酵バターを贅沢に使っています。コストはかかるものの、クロワッサンはバターが決め手。食べたときの香りがバターによって全然違ってくるので、代わりがききません。決して儲からないけれど、バターロールと同じように家族分買っていってくれるお客様も少なくないのが嬉しくて、素材にはこだわっています。製法は基本に忠実に、何層にも生地を折り込んだ昔ながらのクロワッサンです。皮はパリっと、中はしっとりとした食感、食べたときに鼻に抜ける粉とバターの香りは、クロワッサンを食べたときの至福のひとときなので、生地の温度管理などを怠らず、丁寧につくっています。私の好みで焼きめはしっかりめです。

店舗情報

店名/三好パン
郵便番号/〒534-0015
所在地/大阪府大阪市都島区善源寺町1-10-14
最寄駅/大阪市営地下鉄「都島駅」
アクセス/大阪市営地下鉄「都島駅」より徒歩約4分
電話番号/06-6926-2311
営業時間/7:30~19:00
定休日/火曜+不定休
(ただし不定休のため、同店フェイスブックでご確認を)

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2016年5月)のものです

<オススメパン>食パン 280円(税別) クリームパン 140円(税別) グラタン 220円(税別)

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