パン屋さんで活躍する女性たち
パンとお店と“私”のストーリー

外はパリパリ、中はもちもちのベーグルのおいしさをより深めていきたいです
Pomme de terre(ポム・ド・テール) オーナーシェフ 工藤 美幸さん

Pomme de terre(ポム・ド・テール) オーナーシェフ 工藤 美幸さん

西荻窪駅・北口から伏見通り商店街を10分ほど歩いた先にあるベーグルとフレンチデリの店が「ポム・ド・テール」です。ビストロとしてスタートした店は、15年目を迎えます。ベーグルづくりが楽しくてたまらない私ですが、幼いころは極度の偏食。とにかく食べ物に興味がなかったようで、両親を心配させていました。ところが小学生のとき、テレビのグルメ番組で羽つき餃子を食べる人を見て、衝撃を受けました。ほおばった瞬間、目が輝いて「おいしい!」と表情が一変したんです。食べ物が人の表情をキラキラに変える……その秘密を解き明かしたくて、しばらくの間、1人で黙々とキャベツを刻み、餃子づくりに没頭しました。

お菓子づくりの楽しさに目覚めたのは、親戚のお姉さんと一緒にクッキーをつくったことがきっかけ。それまで、お菓子は買ってくるもの、と思っていましたが、こんなに楽しくておいしくつくれることに驚き、今度はひたすらクッキーをつくる日々。ハマると自分の手であれこれ試して、とことん突きつめる、というのは子どものころから今も変わっていないです(笑)。

高校卒業時に、ちょうど東京に「エコール辻」が開校し、パティシエをめざして一期生に。フランス校でも学んだ後に、半年間現地の菓子店でのスタージュ(研修制度)を経て帰国し、いくつかのパティスリーで働きました。店舗責任者なども経験した後、2003年にフランス校での同期で、料理人の松尾と2人でこの地にビストロをオープンしました。

私はパンとお菓子を担当し、ベーグルは、ビストロで出すパンの1つでした。私自身はNYに行ったこともなく、向こうのベーグルを意識してつくったわけではありません。ただ、あるお客様に「NY駐在中、いつも食べていたベーグルと同じ味がする!」と言っていただいたことが自信になり、少しずつバリエーションを増やしていきました。ちょうどNYスタイルのベーグルが流行り始めたころで、ポムのベーグルがネットのベーグルマニアさんたちの間で話題になったんです。「イートインできて、持ち帰りもできる店」と、遠くからも大勢のお客様が来店してくださるようになりました。本当にありがたいことでしたが、ビストロスタイルでは次第にお客様をお待たせするばかりになってしまい、6年前に改装して現在のテイクアウト専門の店になりました。

パンへのこだわり

ポムのベーグルは、生地にいろいろな素材を練り込む&巻き込んで、バリエーションをつくっています。外側はパリパリッとして中はモチモチなのが、いちばんの特徴です。生地は前日仕込み、冷蔵庫でゆっくり低温発酵、翌朝ケトリングして焼きあげます。イーストはごく少量、砂糖や塩は発酵に必要な分だけを加え、練り込む素材に合わせて12~24時間の発酵をとり、小麦粉そのもののおいしさを引き出しています。
加水量が少ないですから、生地は讃岐うどん並みの腰の強さと弾力があります。伸ばしたはずなのに戻っている(笑)ので、仕込みは力仕事! 1個分ずつの生地に巻き込む素材をのせて、くるくると巻いて棒状に。なるべく端っこまでフィリングが入り、しかも全体がきっちりと生地で覆われていることが大事。そうでないと表面にしっかりとした膜ができず、長時間発酵に耐えられないですし、ケトリングも私は3~6分間と一般的なレシピより長く茹でますから、生地がだれたり、リングが離れてしまうのです。発酵がうまくいくと、茹で上がったベーグルは、つやつや、プックリとしてかさ高で、本当に愛おしい姿です。ガスオーブンで一気に焼くと表面がパリパリの食感になります。

レシピは100種以上ある中から、毎日15~16種類をつくって並べています。今の季節なら甘夏を使ったベーグルが登場します。今年はどんな具材と合わせようかな、と毎年生地の配合から全部変えてつくっています。
夏にはベーグルの上にコーンフランをケーキのクリームみたいに絞って焼いて、仕上げにバーナーで焦げ目をつけた「焼きトウモロコシ」なども。ベーグルはどれも似たような見た目になりがち。売り場に並べたときや、切ったときに表れるフィリングで、ケーキみたいに「わぁ~」という感動があるといいな、と思うのです。

開店前に当日分のベーグルをすべて焼き上げます。 明日は定休日のため、午後の仕込みはお休み。ベーグルの成形をエアで説明してくださる表情からも、ベーグル愛が伝わります!
「ココナッツ&ホワイトチョコ」の中には、ドライメロンがゴロゴロ。これぞ「巻き込み系」のだいご味です。 成形するときに生地の端と端を斜め上下に合わせることで、焼き上がったときに、こんもりと高さが出て、かわいらしい姿に。

女性ならではの苦労

店を始める前、まわりはほとんど男性、という中で働いてきましたが、当時も今も女性だから大変だった、苦労したってことは、思いつかないんです。ただ、製パン・製菓の業界でも女性職人が本当に多くなっていますが、外部の人からすると「責任者は男性」という思い込みがまだまだ残っているのかな、と感じることはあります。この店は、デリとサンドイッチの調理担当の松尾と私のダブル・オーナー体制でやっていますが、ベーグルの用件で見えた業者さんなどでも、まず男性の松尾に話を持ちかける、なんてこともよくあります。

ベーグルをつくるのは本当に楽しくて、1日中粉まみれでも平気、力仕事も長時間労働も苦にならないです。
私は、ベーグルづくりを誰かに教わったことはありません。パティシエの経験を生かしながら、新しいことを試して、うまくいかなければ何が原因? どうしたらうまくいく?と自問しながら、手を動かして答えを見つけてきました。「理論より実践派」です。そのせいなのか、ポムのベーグルづくりを人にわかりやすく教えるのが難しい。今春、私の片腕としてタフな仕事をしてくれたスタッフが店を卒業していきました。また一から新しく人を育てるか迷ったけれど、人に教えることに時間を割くより、自分ができる範囲で自分のやりたいことを思う存分やろう!と決めました。そのほうが、今の私にとっては自然だな、と思うのです。

どんなお店にしていきたいですか?

当日分のベーグルは、開店までにすべて焼き上げ、売り切ったらおしまい。追加で焼くことはしていません。どうしていつも売り切れ?とおしかりを受けることもあります。でも、閉店時間までたくさんの種類から選べるようにすれば、毎日大量の廃棄が出ます。前の職場で働いていた時、どんなに忙しくても平気でしたが、心をこめてつくったものたちが誰にも食べてもらえず捨てられることが苦痛でした。だから、自分の店を持つなら、そうはするまい、と誓ったんです。売り場に最後の1個だけしか残っていなくても、「ポムのベーグルがあってよかった!」とお客様に言ってもらえるように、どのベーグルもおいしくつくる。そのための努力は惜しまない。そこは絶対にぶれずに続けていきたいです。

そして、ぜひまたイートインができる場をつくりたいです。テイクアウト専門だと、お客様とやりとりする時間も限られてしまい、「わざわざ行ったのに思っていたのと違う」という思いをさせてしまったことも多々ありました。ゆっくり時間をかけて、ビストロ料理やベーグルを召し上がっていただき、1人1人のお客様ともう少し時間をかけて丁寧にコミュニケーションしていきたい。これからのポムの可能性は、浅く広げるのではなく、より深く究める! それを「おもしろい」と感じてくださるお客様との出会いを大切にしていこうと思うのです。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!」

工藤 美幸さん お気に入りのパン

ココナッツとホワイトチョコ 258円(税込)ココナッツとホワイトチョコ 258円(税込)
ココナッツもホワイトチョコも、好き嫌いが分かれる素材なのですが、どちらも私のお気に入り! プレーン生地にホワイトチョコとドライメロンを巻き込み、ケトリングした後に表面にココナッツをまぶして焼き上げました。ココナッツから出たオイルで表面がカリカリッとして、「カレーパンですか?」とよく聞かれます。売り場に並べると見た目のインパクトも抜群。夏はメロンのかわりにドライパインを巻き込みます。

よもぎあんバター 400円(税込)よもぎあんバター 400円(税込)
緑の野菜はいまだに苦手なので、ベーグルによもぎを練りこむなど思いつきもしなかった私ですが、前の職場の後輩に強く勧められて……。よもぎのベーグルをつくってみたら、私も抵抗なく食べられるし、お客様にも好評で、ポムの春の風物詩になりました。今シーズンは横に切り目を入れて、グラニュー糖を混ぜてシャリシャリ感を残したバターを奥に詰め、それからたっぷりのあんこ。パカッと口が開いたような形のサンドをギュッと押さえてかぶりつくと、よもぎが香り、あんことバターがほどよく混ざり合います。

イングリッシュマフィン 146円(税込)イングリッシュマフィン 146円(税込)
水分多めで、パンっぽくない、しっとり&フワーンとした不思議な食感です。フルーツサンドにしたり、まわりにクリームチーズなどを塗ってケーキみたいにデコレーションしてもおもしろいな、と思って5~6cmの高さに焼き上げました。これを目当てに来店されるお客様も多い人気アイテムです。曜日によっては、チョコ、ほうれん草、かぼちゃの生地もつくっています。

店舗情報

店名/ポム・ド・テール(Pomme de terre)
郵便番号/〒167-0042
所在地/東京都杉並区西荻北4-8-2-101
最寄駅/JR西荻窪駅
アクセス/西荻窪駅から徒歩10分
電話番号/03-5382-2611
営業時間/10:30~15:00、16:30~20:00
定休日/火曜、水曜 ※臨時休業あり

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年6月)のものです

<オススメパン>チョコ&チョコベーグル 238円(税込) キャラメルチョコベーグル 238円(税込) ポムスペシャルサンド 378円(税込)

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