パン屋さんで活躍する女性たち パンとお店と“私”のストーリー

VOL.40 街にとけ込むお店づくりと毎日食べたくなるパンづくり Pain Chinon(パンシノン) 店主 早川 しのさん

Pain Chinon(パンシノン) 店主 早川 しのさん

名鉄岐阜駅から徒歩15分ほど、知る人ぞ知る老舗が立ち並ぶ岐阜・柳ケ瀬商店街の東に位置するパン屋が「パンシノン」です。このあたりでは昔からお店を営む個人店の女性も多く、いろいろ勉強させてもらおうとこの地にお店を開きました。“シノン”とはフランスにあるワインの産地の名称。パンづくりをしている中で、「パンに使うチーズやナッツなどの食材は、ワインに合うなぁ」と思っていたため、パンとワインが一緒に楽しめるお店をつくろうと思いました。

パン屋を目指し始めたのは、飲食店のアルバイトを通して小麦の奥深さを知り、一筋縄ではいかないパンづくりの面白さにハマったことがきっかけでした。それまでは、服飾の専門学校を出て子供服のデザイナーをしていたんです。飲食業には興味がありましたし、独立したいという思いもあったので29歳のときに思い切って挑戦しました。飛騨高山にある「トランブルー」や長野県の「ヴィラデストガーデンファームアンドワイナリーカフェ」のパン工房でアルバイトとして働きながら、パンのつくり方を修得。そのときにできた人脈が、今も支えとなっています。

パンシノンは10.5坪の小さいお店ですが、イートインコーナーがあります。買ったパンをその場で食べられる場所を設けたのは、つくったパンを売りっぱなしにしたくないと思ったから。たとえば、ハード系のパンを買って帰って、固くしてしまったことはありませんか?ここでは、知らない間に一つのパンをみんなでシェアして食べている感覚なんです。ワインもグラスでお出しするので、1本のボトルをみんなで分け合って飲みながら「新鮮なおいしさ」を共有している感じ。私も、つくったパンを食べて喜んでいるお客様の顔をダイレクトで見られるので、嬉しいです。

パンへのこだわり

食パンなどの食事パンは毎日食べていただくものなので、“飽きない美味しさ”が大切だと思っています。だから食パンは、かなりこだわりました。名前は「普通の食パン」。“こだわることが普通”なんです。

「何系のパンに力を入れていますか?」という質問は、困ってしまいますね。幅広い方に来ていただきたいと思っているので、ワインに合うパンだけでなく、惣菜パンや菓子パンなど、偏りなく、いろんなパンを揃えるようにしています。そのおかげか、朝は近所のおばあちゃん、昼間は近くの商店の方や主婦の皆さん、夕方は仕事帰りのOLさん、夜はサラリーマンの方など、いろんな方が足を運んでくれます。いちばんパンが多く揃うのは12時30分頃ですが、どんな時間に来ていただいても選ぶ楽しさを味わっていただけるように、閉店までなるべくたくさん並べています。

小麦粉は数種類を自分でブレンドし、酵母は4種類を用意。パンの風味や出したい食感などに合わせて使い分けています。その中のひとつである自家製酵母は、岐阜県発祥と言われる富有柿を使ったもの。富有柿は柿の中でも甘くてジューシーなのが特徴で、一般的なレーズンなどでつくったものより、やさしい味わいに仕上がるんです。

仕込みから焼き上がりまで3日かかるクロワッサン。その手間ひまがサクサク食感を生みます。 ガラス棚に並んだパンは、スタッフに注文してくださいね。 アレルギーの方やお子さんにも安心してもらえるよう、使っている材料を表記しています。 フレッシュトマトとアンチョビを使った「トマトアンチョビ」など、お酒に合うパンが揃っています。

女性ならではの苦労

パンシノンを開く11年前、アルバイト時代に知り合った経営者の方に声をかけていただき、ブライダルを主とする飲食店のパン部門を任せていただいたことがあります。その時初めてお店を立ち上げるという立場になりました。機械や材料などの手配から行ったのですが、その当時はまったく相手にしてもらえず、なんとか修業時代にお世話になった方々だけは信頼してくれて開業することができました。

パンシノンを開いた3年前はどの業者さんも話を聞いてくれて、「女性が起業しやすい時代になっているな」と感じました。今では“女性ならではの苦労”がある分、“女性だから得すること”もあるのだと思っています。
やっぱり体力的な面はハンデがあるので、なるべく無理なく続けていけるように、小ロットでパンを仕込んでいくことにしています。一度に仕込む生地を4キロまでにとどめ、何回も仕込むという方法で身体に負担のないように工夫しています。

どんなお店にしていきたいですか?

居酒屋が多いこの通りで、女性が1人でも気軽に飲みに来やすいお店にしたい!と思い、「ここに来ると落ち着くなぁ」と思っていただけるような店内の雰囲気づくりを心がけています。
飲屋街に佇むパン屋だからこそ「パンシノンのパンを買ってきてくれるなら、飲みに行っても良いよ!」と奥さんに言ってもらえるお店になればいいな、と思っています。

柳ヶ瀬は小さな街で自分のお店を持っている方が多く、みんな同じような悩みを抱えています。そんな仲間が身近にいて相談できたり、「頑張ろうね!」と声をかけてくれることが大きな励みになっています。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!」

早川 しのさん お気に入りのパン

柳ケ瀬角食パン 500円(税抜) 柳ケ瀬角食パン 500円(税抜)
北海道産小麦を100%使用し、試作を重ねた自信作。子どもでも食べられるようにと卵、バター、牛乳を一切使わない代わりに太白胡麻油を使用しています。スライスするのが難しいほど弾力のあるモッチモチの食感。ハーフサイズ250円(税抜)でも販売しています。

クロワッサン アンチョビ 200円(税抜) クロワッサン アンチョビ 200円(税抜)
仕込みから焼き上がりまで3日かかるクロワッサンにアンチョビを練り込んだ大人の一品。サクサクっと食べた瞬間バターの香りとともに、アンチョビの風味が口いっぱいに広がります。しっかりと塩味が効いているので、スパークリングワインや白ワインに合います。

チアシードとライ麦パン 980円(税抜) チアシードとライ麦パン 980円(税抜)
食物繊維が豊富なライ麦を70%使用。さらに、「スーパーフード」のチアシードとかぼちゃの種、ひまわりの種、白ごまが入っているので、いろんな食感を楽しむことができます。香ばしい風味が特徴で、見た目以上に中身がぎっしり!少しでも満足感があります。ハーフサイズ490円(税抜)もご用意しております。

店舗情報

店名/Pain Chinon(パンシノン)
郵便番号/〒500-8833
所在地/岐阜県岐阜市神田町3-4
最寄駅/名鉄「岐阜」駅
アクセス/岐阜バス「柳ヶ瀬」下車徒歩3分、名鉄「岐阜」駅より徒歩15分
電話番号/058-215-1028
営業時間/10:00~21:00
定休日/日曜・月曜

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年12月)のものです

<オススメパン> 普通の食パン 380円(税抜) いちじくとカシューナッツ 300円(税抜) チーズフォカッチャ 130円(税抜)

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