2024.08.29

十勝の食材のおいしさだけでなく、地元への想いも伝えるパン屋さん

農業王国と言われる北海道。その中でも、全国屈指の穀物地帯である十勝地方。その中心付近にある帯広市に2022年3月26日にオープンしたパン屋さん「kanouseipan(加納製パン)」。可愛い緑の外観を目印に訪れると、ちょうど窓ガラス越しに男性がクマのぬいぐるみに本を持たせているなんとも微笑ましい光景が目に入りました。店内に入ると、優しい笑顔で迎えてくれたこの方が、店主の加納雄一さんです。加納店主は、帯広出身者です。パンの製造から販売まで1人でやられているパン屋さんであり、ハード系のシンプルなパンを多く提供しています。

ぺこパン

ぺこパン

パンが大好きで、365日パンを食べてます。InstagramやYouTube、XなどのSNSで、 パンとスイーツ情報を発信!私の夢は、世界のパン屋さん巡りをして、 その国その国のパンのおいしさをみなさんにお伝えすることです。 11年勤めた会社を退職し、パン屋さんのおいしさを広めるべく、自転車で日本一周中!

なぜパン職人になったのか!?なぜ帯広市にオープンしたのか!?

元々加納店主は、オーガニック野菜を取り扱う農家になりたかったそうですが、就農する手段が見つかリませんでした。そして外国にも興味があったことから、神戸の外国語大学に入り、「神戸といえばパンだ!」と思い、大学卒業後、23歳の時にパンづくりの世界に入りました。その時から独立することを目指し、北海道に帰るまで個人店で3店舗修行されました。地元を一度離れたからこそ、やっぱり十勝が好きだと改めて再認識をしたそうです。同時に、加納店主は、「地元の人に、地元の小麦や食材を使ったパンを食べてもらって、まずは十勝という土地がどれだけ素晴らしいのかをを知ってもらいたかったんです。」と語ります。また、加納店主の父親の顔を毎日見られるように実家の向かいにお店を構えたいという考えから、帯広でのオープンを決めました。

パンをシンプルな食事パンにした理由。パンを作るときに意識していること。

パンをシンプルな食事パンにした理由は、3つあります。まず1つ目は、廃棄ロスを減らしたかったこと。
2つ目は、十勝だからこその食材の豊かさを楽しむことができる環境を食卓に作り、それを家族で楽しんで欲しかったから。加納店主は、こう話します。「日本には主食がたくさんあります。主に米、麺、パンだと思うのですが、やっぱりパンは夜のイメージってあまりないですよね。夜にも時々楽しむことが出来るとパンはより日本の食文化にもなるかと思います。そこで、十勝の食材と一緒に楽しむことができるシンプルな食事パンをメインにしました。」
3つ目は生産者さんが一生懸命育てた小麦等の食材の味をダイレクトに感じるパンにしたかったからです。そのため加納店主は、あまり自分の手を加えないように意識しています。作り方もシンプルで湯種なども使いません。「とことん美味しく!」よりもせっかく分けていただいている小麦そのものの良い部分も悪い部分も全部そのままパンにしたいと思っているそうです。そして、そのシンプルなパンを作る時に意識していることについて、「身体を作るものとしての機能は無くさないよう咀嚼も意識し、ある程度噛みごたえがあるようにすることと、他の食材と一緒に食べることでより美味しく感じるように、ちょっと風味の物足りなさがあるようなパンを焼きたいと思っています。パンと何の食材を合わせたらご飯として美味しくなるか、お客様に考えてもらえるようなパンです。」と加納店主は教えてくれました。
そして、最後に「これからはもっと地元の食材(豆、とうもろこし、雑穀など)だけでお客様に求められるようなパンを焼けるようにしたいと思っています。そして、これからも自分でパンを焼いて、自分でそれをお客様に手渡しすることで、地元に興味を持ってもらえるような話が出来て、小麦や野菜が毎年毎年違うことが当たり前であることや、形や大きさが違うこと、農業をこれからも続けていくために必要なこと(オーガニックな考え方や取組など)についても伝え続けていきたいと思っています。」と。私はそれを聞いた瞬間、本当に加納店主は、この土地が大好きで、本気でお客様に十勝の魅力を自分自身で伝えていきたいのだと感じました。この熱い想いがあるからこそ、1人でパンを焼き、1人でパンを販売するという大変さがあっても、やり続けることができるのだなと納得しました。私も今後、パンを単に買うだけではなく、その時交わした言葉から、そのお店は何を伝えたいのかを考え、しっかり受け止めていこうと強く思いました。

ライ麦

地元の農場の北海道産ライ麦、有機栽培小麦の自家製粉全粒粉などを使用しています。ライ麦や次に紹介するレーズンなどの大きなパンの酵母はイーストや果実由来の酵母よりも消化が良いことと複雑味を感じられるため、小麦とライ麦から起こした自家製発酵種と天日塩を使用しているそう。
そして、小麦やライ麦から起こした自家製発酵種は、種継に決まった粉を使わず、その日の様子や香り、味を見て種継の粉の種類を変えているそうです。つまり、元気がなかったら自家製粉全粒粉を多めにするなど、酸っぱい時はできる限り白い粉を多めにしたり、元種の分量を減らして温度帯を変えたりします。クラム部分を一口食べると、しっとりしていて酢めしのような味わいがします。一方、クラスト部分は香ばしく、コーヒーのような味わい。それは、ダークチョコレートのビターな味わいに似ています。そこから、酸味の方に味わいはシフトし、ワインのようなベリー系の爽やかさを感じました。面白いのが、クラムとクラストを一緒に食べると、クラムは最初から酸味を感じ、クラストが時間差で酸味を感じるので、その次の酸味と重なり合った時の感覚は、音楽で言う協和音を聞いているかのような心地よさがあります。酸味のハーモニーをぜひ皆様も感じてみてください。

レーズン

北海道産小麦粉と全粒粉とオーガニックレーズン3種を使用しています。レーズンの糖が醸し出す熟した香りが広がります。カラメル化を体現しているパンです。ライ麦パンと同様にクラスト部分は、ほろ苦いビターな味わいで香りも感じます。しっかり焼き込んでおり、中に入ったたくさんのレーズンがとてもジューシーです。
プチッと甘さが広がり、口の中にはレーズンの汁がスプラッシュします。メイラード反応とカラメル化を楽しめるパンです。

あんクリームチーズ

地元農場の北海道産小麦粉、有機小麦の自家製粉全粒粉と、有機えりも小豆を使用した自家製あんこを使用しています。こちらのリュスティック生地は、小麦そのものの風味を感じてもらうためにレーズンから起こした自家製発酵種と天日塩を使用しているとのことでした。まずパン生地のみ食べると、もちんもちんで歯切れの良さを感じました。また、生地がしっとりしているので、あんことの一体感を感じます。このあんこは、粒一粒一粒の豆の味わいが濃く、食べた瞬間に鍋の中で、あんこを木べらで回しながら炊く情景が浮かびました。そして、そこにクリームチーズの酸味が加わると、一気にスッキリ感が舵を切り、後味の爽やかさに繋がるのです。まさに、パン、あんこ、クリームチーズの三位(酸味)一体です。

店舗情報

http://kanouseipan(加納製パン)
店舗名:
kanouseipan(加納製パン)
住所:
〒080-0025
北海道帯広市西15条南12丁目1-48
アクセス:
帯広駅から1,770m
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電話番号:
なし
営業時間:
水曜日から土曜日10:00〜、日曜日 7:30〜
定休日:
不定休
店舗公式インスタグラム:
@kanou_seipan
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