チーズの達人に聞く、パンとチーズのマリアージュ｜パンを楽しむ美食の足し算

株式会社フェルミエ事業戦略室
商品開発マネージャーファビアンデグレさん

フランスのル・マン出身。実家はマルシェでチーズ店を営んでいました。日本語を学び、2008年に来日し、日本初のナチュラルチーズ専門店「フェルミエ」に入社。モンディアル・デュ・フロマージュ 2015フロマジェコンクール（※）で優勝、世界最優秀フロマジェに。世界各国のチーズとワインに精通し、日本酒とチーズのペアリングの素晴らしさも発信しています。
※ヨーロッパ、アメリカ、日本から参加のチーズ職人が7時間にわたり、理論、芸術面を競って世界一のチーズ職人を決定するコンクール

「ラングル」は、ローマ時代から歴史のある、シャンパーニュ地方ラングルの街で生まれたウォッシュタイプのチーズです。熟成中に上下を反転させていないため、上面にフォンテーヌ(fontaine=泉)と呼ばれるくぼみができるのが特徴です。水分が多く、きめ細やか、舌の上ですっと溶けていく感じと濃厚な味わいがあります。

パンと合わせるなら、ライ麦カンパーニュがおすすめです。ウォッシュタイプのチーズはライ麦と相性がよく、ライ麦多めで、よく焼いて酸味と風味がしっかり感じられるものがよいでしょう。ラングルの塩味とライ麦の酸味は濃厚な組み合わせですが、口の中で一緒に噛んでいくうちに、ライ麦の風味で塩味がマイルドになり、やがてふわっとミルク感が立ち上がってきます。口の中にやさしいミルクの味わいが広がっていくのをぜひ楽しんでみてください。

これからの季節、パーティーなどでシャンパーニュをあける機会があったら、ラングルのくぼみにシャンパーニュを注いで一緒にいただくのもおすすめです。この場合は、パンと合わせると、泡とパンではやや重たくなってしまいますから、ラングルとシャンパーニュだけで召し上がっていただくのが最高のマリアージュです。敢えて添えるなら、シャンパーニュの上品な味わいを邪魔しにくいバゲットなど軽めのものか、クラッカーがよいでしょう。

: 長期熟成では並ぶものなし、と言われている「マルセル・プティット社」のコンテ。1玉は40kgほど。

「コンテ」は、フランシュ・コンテ地方名産のセミハードチーズです。フランスのAOP（※）チーズでは最も生産量が多く、スライスしてそのまま食べたり、料理に使ったりと、幅広く親しまれています。当社では、8カ月、12カ月、18カ月、24カ月の熟成違いと、6～8カ月のオーガニックの5種類を揃え、カット販売しています。いずれも、フランスの熟成士が手塩にかけて熟成させ、いちばんおいしい状態になったタイミングで当社に届けられています。

熟成の若いものは、まろやかなミルクの風味で、どなたにも食べやすい味わい。熟成が進むと、ナッツやコーヒー、フルーツなど、様々なアロマが醸し出され、コクが深まっていきます。

24カ月以上の熟成に耐える優良なコンテは、ゆっくりと熟成をかけることで、やがてアミノ酸が結晶してジャリジャリと口の中で音を立てるような食感が生まれます。
このような熟成により生まれる芳香や味わいの違い、また原料乳の脂肪分などのバランスにより、季節ごとにも変化する味わいを、ぜひ食べ比べてみてください。
※AOP・・・産品が原産地で正当に生産されたことを保証する、EU共通の制度