紹介してくれた人

清澄白河フジマル醸造所 店長
室谷 統さん


20代前半から飲食店で働き、お酒を扱う仕事の楽しさに目覚め、バーテンダーを経て、和食とワインがコンセプトの店の立ち上げに携わる。同僚のソムリエから教えを受けながら、年代、産地の異なる様々なワインを味わい、掘り下げるほどに奥が深く、無限に広がるワインの世界に魅了される。さらに勉強がしたくてワインバーに転職し、2017年から「清澄白河フジマル醸造所」店長を務める。JSA認定ソムリエ。

おすすめの組み合わせ

デラウェアも小麦も、美味しいところを丸ごと使って味わい深さが生まれます
Tabletop橙色+全粒粉のカンパーニュ

当店は、清澄白河という都会の街の中でワインづくりをしています。従来の感覚では「ワイナリーはブドウ畑の近くにあるもの」でしたが、ワインを楽しむ人がたくさん集まる場所に醸造の場を設けた都市型ワイナリーです。山形、山梨、茨城、千葉県など主に東日本の契約農家さんから原料のブドウを仕入れて、毎年約10種類のワインを仕込み、できたての果実感あふれる瑞々しいワインを2階のレストランやテイスティングルームで味わっていただくことができます。

ここで醸造しているワインの中でも、「Tabletop」シリーズはビール代わりに普段の食卓に載せて、気軽に味わっていただくのにぴったりなシリーズです。おすすめは、2018年春リリースのオレンジワイン「Tabletop橙色」。「オレンジワイン」といっても、果実のオレンジでつくったワインではありません。白ワインにするぶどう品種を原料に、赤ワインの製法で醸造するワインを指し、その名のとおりオレンジがかった色をしています。ブドウから搾ったジュースを発酵させる際に皮や種も一緒に漬けこむため、渋みやほんのりとした苦みなどが加わり、柑橘系の香りも強く感じられ、厚みのあるおいしさが特長です。
果物全般そうですが、ブドウも種のまわりにくっついた果肉や皮のすぐ内側はうまみがより濃厚です。果実のおいしさを余すところなく生かすオレンジワインは、北イタリアで昔からつくられていましたし、ブドウとワイン発祥の地とされる東欧の国ジョージア では一般的な製法で、日本でも最近、少しずつ浸透してきました。「Tabletop橙色」は、山形産デラウェアを使用し、前菜から魚料理、鶏肉や豚肉など白肉系の料理にも合う万能型です。白ワインではさっぱりしすぎて少し物足りないと感じるようなときにもぜひお試しください。

合わせるパンは、ブドウなどから起こした酵母でじっくり発酵させた、全粒粉のカンパーニュを選んでみました。「Tabletop橙色」の芳ばしさ、渋みは、小麦全体を使って深みのある味わいが生まれるカンパーニュとよく合います。また、このワインには酸化防止剤を添加してありませんから、抜栓して空気に触れることで、香りはまろやかに、色合いや酸味も微妙に変わっていくのを楽しんでいただけます。時とともに味わいが変化するところもカンパーニュと共通しますね。
シンプルにワインとパンだけでもいいですし、オリーブオイルをつけたり、パンとチーズを交互にかじってはワイン、そんなふうに気軽に楽しんでいただけると何よりです。

私のお店のおすすめ

テイスティングセットで、お気に入りを見つけてください
3種類を選べるテイスティングセット。中央が「生樽・千葉県産巨峰」
「生樽」は、サーバーからフレッシュなワインをグラスに
単一農園のブドウを使う「ファーマーズ」シリーズの赤ワイン「Farmer’s Merlot City Farm」(左)、「Tabletop デラウェア」。「生樽ワイン」以外はボトルでの小売りもしています

当店は、「もっと身近に、ワインのある日常を楽しんでいただく」ことを目指しています。1階の醸造所では、毎年8月~10月の収穫期に産地から届くブドウを使って約10種類、約2万本のワインを生産しています。同じ産地の同じブドウを使っても、つくり手の個性が現れるのがワインのおもしろさですが、当店の醸造家・木水晶子は、ブドウ本来の味を大切にしたワインづくりをモットーにしています。農家さんが丹精込めて育てたブドウの個性を見極め、その魅力をしっかりと引き出すことで、ブドウのおいしさを素直に感じていただけるワインに仕上げています。

2階にはイタリアンレストランとテイスティングルームがあり、イタリア人シェフがつくる料理と一緒にワインを楽しんでいただけます。ときには、醸造に使ったデラウェアの搾りかすから酵母を起こし、自家製フォカッチャを焼いて料理に添えることもありますし、搾りかすに漬けたハードチーズやハムを前菜としてお出しすることも。醸造所と直結のレストランだからこそできる試みです。
また、ちょっとした空き時間に「1杯だけ!」という使い方も大歓迎です。平日の仕事帰りに1杯のワインでオン・オフを切り替えたり、休日の散歩途中の寄り道、ディナーの前にワインと簡単なおつまみでおしゃべりを楽しむ「アペロ」(アペリティフ=食前酒の略)としてお使いいただければと思います。

どのワインにするか迷ったときや少しずついろいろ味わってみたいときは、3種類を選んで味わい比べることができる「テイスティングセット」がおすすめです。当店で醸造した10種類からお好きなワインを選んでいただけますが、例えば次のような組み合わせはいかがでしょう。
白ワインでいちばんスタンダードな「Tabletop デラウェア」は、デラウェアのやさしい甘みとフルーティーな酸味、果実のフレッシュな香りを楽しめる、飲みやすいワインです。
「生樽ワイン」は、常時赤・白2種類を、醸造の樽から直接ビール用サーバーに移して提供しています。空気に触れる時間が少ないため、よりフレッシュな香りと味わいが保たれています。10月から出している「生樽」の赤ワインは千葉県産巨峰。色は淡めの、紫がかったワインレッドで、巨峰ならではのさっぱりとしたやさしい味わいに、甘い香りが余韻として残ります。2017年は300kgほどの巨峰を使って、8樽仕込みました。
そして、よりしっかりした飲み口の赤、「ファーマーズ メルロー City Farm」。山梨県の農園「City Farm」のメルローで、当店のワインはやさしい味わいのものが多い中、比較的しっかりと味の濃い赤ワインで、牛肉赤ワイン煮込みなどと合わせても、負けないおいしさがあります。

お食事やテイスティングをご利用いただいたお客様には、1階醸造所の見学もご案内しています。ブドウの収穫期には、親子でワインづくりの作業を体験できるワークショップを開催しています。仕込みのシーズン以外でもワインが育っていくのはどんな場所なのか、ぜひ階下に足を運んで、その空気を感じてみてください。

ナスのマリネとサラミをはさんだ「ひとくちパニーノ」は、イタリア人ニコラスシェフがシチリアでいつも食べていた想い出の味。終日オーダーできます 1階の醸造所。出来たてのフレッシュ&フルーティなワインをいただけるのは都市型ワイナリーならでは

店舗情報

店舗内写真
店名
清澄白河フジマル醸造所
住所
東京都江東区三好2-5-3
TEL
03-3641-7115
営業時間
テイスティングルーム13:00~23:00(L.O.21:30)、レストラン17:00~23:00(L.O.21:30)、土、日、祝日のみランチも営業11:30~14:00(L.O.)
定休日
月曜 ※月曜が祝日の場合は営業、翌日火曜休み
URL
http://fujimarutk.exblog.jp/

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