紹介してくれた人

佐野味噌醤油株式会社 代表取締役社長
佐野正明さん


東京・亀戸に昭和9年創業の「佐野みそ」の三代目。全国各地から選りすぐった良質な味噌を商う老舗に育ち、日本が誇るべき味噌の文化を守り、新しい価値を創りだすことに力を注いでいる。
味噌は昔ながらの量り売りにこだわり、調味料やだし素材、漬物、総菜なども揃えて、味噌のスペシャリスト「噌ムリエ」が接客を担当。お客様とのコミュニケーションを大切にした、温かなおもてなしを心がけている。2016年からは、こだわりの味噌汁をごはんと一緒に楽しめるイートイン「味苑」を設けるなど、味噌のある素敵な生活、豊かな食卓を提案している。

おすすめの組み合わせ

味噌+乳製品で深まるうまみとコク。パンとの相性もぴったりのおいしさが生まれます
麦みそ「薩摩みそ 櫻島甘口」+クリームチーズ+ベーグル

味噌は飛鳥時代のころからつくられ、最初は身分の高い人が貴重なおかずとして食したといわれています。鎌倉時代に中国からすり鉢が伝わると、禅宗のお坊さんが味噌をすりつぶし、湯で溶かして食べたことがみそ汁の始まりです。以来、大豆栽培の普及とともに、各地で味噌が盛んにつくられ、次第に武士や庶民の食卓に欠かせないものになっていきました。
温かなみそ汁のお椀を手に取って、湯気とともに立ちのぼる香りを楽しみ、1口すすれば、なぜかとても懐かしい気持ちになります。味噌は、私たち日本人が1300年もの長い年月を経て、慣れ親しんできた味だから、なのかもしれません。

パンによく合う乳製品や卵は、味噌との相性もとてもいい食材です。ですので、パンと味噌を合わせるなら、乳製品や卵を仲介役にしてあげると、同じ発酵食品同士の組み合わせが一段とおいしくなります。
ぜひ試していただきたいのが、さっぱりとした甘さが特長の麦みそ「薩摩みそ 櫻島甘口」です。四国産裸大麦の麹を38割(原料の大豆に対して麹を3.8倍)とたっぷり使い、九州産大豆で仕込み、天然熟成させています。クリームチーズと混ぜてベーグルのフィリングにしていただくと、クリームチーズ&ベーグルというおなじみの組み合わせに、味噌のコクとうまみと甘みが加わります。日本人にとって、どこかほっとするような、舌になじむおいしさになるのです。

味噌は、米、麦、大豆などを原料にした麹と大豆を発酵させてつくります。麹菌の出す酵素が、たんぱく質を分解してアミノ酸をつくり、でんぷんを糖に変えてうまみや甘みが生まれます。発酵が進んでいくと、酵母や乳酸菌も働いて、独特の香りや酸味も醸し出されます。
味噌の「噌」という字は、「口がたくさん集まって、とてもにぎやか」であることを表します。さまざまな味わいが集まった複雑で奥の深いおいしさは、味噌のいい面でもありますが、味がにぎやかすぎて、とくに食体験の未熟なお子さんにとっては、ちょっと手ごわい、しんどい相手でもあります。「おみそ汁は、少し苦手」というお子さんは意外に多く、お母さんたちの悩みの種でもあるようです。
そんなときは、みそ汁にバターや牛乳などの乳製品を少し加えてみてください。味わいがマイルドになって、お子さんにも食べやすくなります。また、牛乳ベースのシチューやスープに味噌を少し加えても、味わいにコクが出て、どちらもパン食によく合います。乳製品を少し加えて食べ慣れていくうちに、普通のみそ汁でも洋風のスープと同様に、パンと一緒においしく召し上がっていただけるようになります。

私のお店のおすすめ

昔ながらの素朴で力強い味わい。十種の雑穀で麹をつくる「十穀味噌」
そのまま食べてもおいしい「十穀味噌」

味噌は、麹をつくる材料の違いで、米みそ、麦みそ、豆みそに分類されます。また、麹の量、製法や熟成期間の違いで、色や味わい、香りなどにそれぞれ特徴のある、多彩な味噌ができあがります。
麹の量は多め・塩は少なめで発酵期間を短くしたものは甘みの強い白みそに、麹は少なめで塩は多め、熟成期間を長くとれば、コクや香りが強く、酸味も少し出た辛口の赤みそになります。
当店では、70種類ほどの味噌を扱っていますが、2種類以上の味噌を「合わせ味噌」にすることで、味わいのバリエーションを無限につくりだせるのが、味噌の魅力の一つでもあります。みそ汁でしたら、合わせ味噌と具材の組み合わせで、365日、毎日違うみそ汁を楽しむこともできるのです。

味噌の複雑な味わいは、様々な料理の調味料としても活かせます。塩の代わりに、ぜひ味噌を使ってみてください。味噌の種類で塩分量が異なりますが、塩1g使うところに味噌10gくらい、辛口の信州みそなら8g、甘口の西京みそなら20gくらいが目安です。味噌ならではの香りもプラスされて、驚くほど味わいに奥行きが出ます。 また、たとえばくせの強い八丁味噌とやさしい甘さの白みそを合わせると、くせの強さはマイルドになり、味わいはいちだんと深まります。プロの調理人の方が自家製甜麺醤(てんめんじゃん)をつくる際には、より日本人好みのまったりとした甘みが出るようにと、八丁味噌と京都の白みそを合わせて使ったりされています。

味噌は卵やバターとの相性抜群。十穀味噌入りオムレツ

私のおすすめは、10種類の国産雑穀の「十穀味噌」です。大豆、うるち米、大麦のほか、古代米と呼ばれる赤米、黒米、緑米や、緑豆、ひえ、はと麦、あわを使った、味噌づくりの原点のような味噌です。雑穀の種類によって、吸水率や蒸しあがる時間が異なるため、別々に麹にして仕込んでいます。雑穀には、体に必要な多種類の栄養分が豊富に含まれていますが、発酵によって分解されて、より吸収しやすくなっています。
まろやかな米みそなどに比べると、香りは強く、くせがあり、酸味も少し出ているのが特徴で、いろいろな野菜を入れた具だくさんのみそ汁にしたり、そのままおにぎりやキュウリにつけて食べたり、料理の調味料として使っていただくと、濃厚なコクと香りが生きてきます。
たとえば、十穀味噌入りのオムレツなどはいかがでしょう? 卵2個に牛乳大さじ1と十穀味噌20gを混ぜて、無塩バターを溶かしたフライパンでふんわりと焼きあげます。仕上げに黒胡椒をふると、パン食にもぴったりです。

そして、パンと味噌のコラボといえば、15年以上前に区内のパン屋さんと協働開発した「みそパン」は、当店でも人気のロングセラー商品になっています。デニッシュ生地に江戸味噌を中心としたブレンド味噌を練り込んであり、ほんのり甘く、バターと味噌が香ります。イートインで、みそパンを使ったフレンチトーストをお出ししているほか、みそパンとみそキャラメルソースのセットをネット限定で販売しています。
ご家庭で、手軽にみそフレンチトーストを楽しんでいただくのでしたら、アパレイユ(ミルク、砂糖などを合わせた卵液)に信州こしみそまたは西京みそを溶かし、食パンなどを浸して焼けば出来あがりです。こちらもぜひ試してみてください。

イートインの人気メニュー「フレンチトーストみそキャラメルソース」700円(税込)
デニッシュ生地に江戸味噌などを練り込んだ「みそパン」507円(税込)
味噌の桶がずらりと並び、味噌の香りでいっぱいの店内
イートイン「味苑」

店舗情報

店舗外観写真
店名
佐野みそ亀戸本店
住所
東京都江東区亀戸1-35-8
TEL
03-3685-6111
営業時間
月曜~土曜 9:00~19:00
日曜・祝日 10:00~19:00
※イートイン「味苑」は11:00~17:00
定休日
年初
URL
https://sanomiso.com/

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