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vol.28 あんこの達人に聞く、
パンとあんこのマリアージュ

紹介してくれた人

「キノアン」(有限会社木下製餡)
代表取締役 木下公章さん

父が創業した製餡所を継ぎ、あんこ一筋。素材選びから製法の探求、製餡環境の整備まで一切手を抜かずに、よりおいしいあんを煉りあげることを極めてきた。老舗和菓子店の店主やベーカリーシェフとのコラボレーションにも積極的に取り組む。あんこをテーマにしたイベントや新しいアイテムの開発に、「キノアン」ならではのあんことあんこに関する知恵を提供している。

RECOMMENDED COMBINATION おすすめの組み合わせ

繊細なこしあんに、
バターとフルーツを合わせてバゲットサンドに

吟醸匠のこしあん 季節のフルーツ&バター+バゲット

当店のあんこは、昔ながらの銅釜を使って直火で煉り上げています。現代では、メンテナンスの容易なステンレス製の煉り釜を使うのが一般的ですが、銅は熱伝導率がよく、直火で一気に沸騰させることで熱がムラなく伝わり、まろやかでやさしい味の餡を煉ることができるのです。熱のまわりがよい分、焦がしやすい、というデメリットもありますが、あんこの状態を見ながら、火加減と煉りあがりを見極めていくところが職人の腕の見せ所です。

直火銅釜で丁寧に煉り上げ

素材も餡のおいしさを大きく左右します。小豆は「豊祝」を中心に北海道産を使用しています。北海道の豊かな大地と太陽の恵みを受け、丹精込めて育てられた小豆は、皮が薄く、旨みは強く、香り高い上品な味わいです。「豊祝」は、十勝産の小豆の中でも、もっとも粒の大きいものを集めた最高級のブランド小豆です。
砂糖は、鬼ザラ糖を使用。ザラメ糖は上白糖やグラニュー糖に比べ、甘さが後を引かない、切れのよさが特長です。ザラメ糖の中でもより純度の高い鬼ザラ糖を使うことで、上品な甘さに仕上げています。

北海道産小豆を使った「吟醸匠のこしあん」
滑らかで、やさしい藤色のあんこです

小豆のあんこには「粒あん」と「こしあん」があります。皆さんはどちらがお好みですか?
「粒あん」と「こしあん」も、小豆をやわらかく煮たあとで、砂糖と少量の塩を加えて釜で煉りあげる、という点では同じですが、煉りあげる前の工程が大きく違います。「こしあん」は、煮た小豆の皮を取り、水にさらしてアクを抜いてから煉りあげます。そのため、皮ごといただく「粒あん」に比べると、「こしあんは、あっさりしすぎて物足りない」と感じる方も多いようです。
そんな方にぜひ召しあがっていただきたいのが、「吟醸匠こしあん(豊祝)」です。上品でありながら、小豆のうまみを逃さず、味が濃いのが特長です。

バゲットにこしあんとバターといちごをサンド

こしあんにする小豆は粒あんと同じように、腹割れしないように丁寧に煮ていきます。煮ている間に皮が破れてしまうと、うま味は流れ出てしまい、えぐみが戻ってしまうのです。こうしてやさしく煮あげてから石臼で皮をむきます。ゴリゴリと皮まで一緒にすりつぶしてしまうのではなく、丸い小豆から皮だけをサラッとはぎとる感じです。ふるいを通して小豆の中身の『呉(ご)』だけを取り、大量の水にさらします。数回水を替えてこれを繰り返しますので、200kgのこしあんをつくるのに、約10トンの水を使う贅沢なあんこなのです。こうして丁寧に皮を取り、アクを抜いてから鬼ザラメ糖と天日塩を合わせて、直火銅釜で丁寧に煉りあげたこしあんは、さっぱりとして口どけは滑らか、上品な味わいに仕上がります。日本酒で言う「吟醸」のごとく、雑味はなく、豊かな香りと味わいから「吟醸匠こしあん」と名づけました。

こしあんに皮が入っていても、こまかくすりつぶしてしまえばわからないだろう、と思うかもしれませんが、水ようかんなどにして光を通してみるとよくわかります。皮の混じったこしあんを使ったものは、細かな皮がギラギラと光を反射して見えます。「吟醸匠こしあん」は、見た目にも均一で、やさしげな藤色に仕上がっています。

いろいろなフルーツ&あんこを楽しんで

あんことパンのマリアージュということでおすすめしたいのは、キノアン自慢のこしあんと季節のフルーツ、バターを一緒にバゲットにサンドした「フルーツあんバター」です。あんことフルーツはとても相性がよく、フルーツの酸味が加わることであんこのおいしさがより引き立ちます。クラストは薄めでサックリと歯切れがよく、小麦の香りがするバゲットに相性抜群のあんこと有塩バター、さらにフルーツが爽やかな酸味と香りを添えます。嚙むほどに、それぞれの香りが立ち、やがて一つに溶け合って、味わいはより深みを増していきます。イチゴ、柑橘類、ブドウなど、そのときどきで手に入るフルーツを使ってぜひ試してみてください。バターのかわりに、ホイップクリームやクリームチーズを添えてもよく合います。

STORE RECOMMENDATION 私のお店のおすすめ

フルーツとあんこのマリアージュを
気軽に楽しめる「檸檬こしあん」

キノアンでは、いろいろなベーカリーや和菓子屋、洋菓子屋、鯛焼き屋などからの依頼を受け、その店の商品に合わせてつくったオリジナルのあんこを提供しています。業務用が中心ではありますが、毎週木曜日には、近隣の方への感謝も込めて、工場前に売り場を設けて個人のお客様に各種あんこの直売を行っています。
「粒あん」「こしあん」のほか、国産の絹手亡豆(いんげん豆の一種)を使った「白あん」など、500g入りのパックから揃えています。お好みの甘さに加減していただける無糖の「粒生餡」もあります。

レモンの酸味と香りがさわやかな「檸檬こしあん」

こしあんや白あんに季節ごとにさまざまな素材を合わせたあんこも随時登場します。
さきほど、あんことフルーツは相性抜群、とおすすめしましたが、トーストなどにのせるだけで手軽にあんことフルーツのマリアージュを実感していただけるのが、瓶詰の「檸檬こしあん」です。銀座の和菓子屋「空也」さんの5代目からアドバイスをいただいて、直火銅釜煉りのこしあんにフレッシュレモンを合わせてつくりました。あんこにフルーツの酸味と香りが加わると、どんなおいしさが生まれるのか、是非お試しください。

白あんに芳ばしい黒ごまを合わせた胡麻あん
こしあん(手前)とつぶあん。どちらもパンによく合います

このほか、こしあんベースの「いちごあん」は、ベーカリーさんからのリクエストで生まれました。栃木県産とちおとめをたっぷりと使い、レモン汁で酸味をプラスしています。さっぱりとした味わいの白あんをベースにした「胡麻あん」「抹茶あん」「桜あん」なども四季折々に登場します。これらの季節のあんこは合成着色料や香料は一切使用していません。
素材ごとに、どんなあんこと合わせれば、素材の風味や香り、色合いを生かすことができるかを常に考え、パンや和・洋菓子などのプロの方々からのお知恵も拝借しながら、商品づくりをしています。皆様にいろいろなシーンでいろいろなあんこを味わい、楽しんでいただけたら、と願っています。

袋詰めの各種あんこは500g~。直売のほか、通販で購入できます
毎週木曜日に工場前で直売をしています

店舗情報

店名
(有)木下製餡・キノアン
住所
東京都板橋区幸町41-11
TEL
03-3955-5529
営業時間
9:00~17:00 ※直売は毎週木曜日
定休日
土曜、日曜、祝日
※インターネット販売:楽天市場 あんこ職人キノアン

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2021年3月)のものです

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2021年3月)のものです

パンを楽しむ美食の足し算