パンのテーブル

個性的な世界のサンドイッチ

  • SANGUCHERIA KHUCHI (サングチェリア クチ)
  • オリミネベーカーズ 勝どき店
  • FERMiNTXO BOCA (フェルミンチョ ボカ)
  • Mi Choripan (ミ チョリパン)

ペルー/パン・コン・チチャロン
SANGUCHERIA KHUCHI (サングチェリア クチ)

「サングチェリア クチ」は、2014年12月にオープンしたペルーのサンドイッチ専門店です。神宮前にあるペルー料理専門店の店舗1階部分を使い、ランチタイム限定の営業。豚肉・鶏肉・牛肉を使った3種類のサンドイッチを提供しています。
ペルーの料理は、先住民の料理に大航海時代以降のスペイン料理が混じり合い、さらに中国、アフリカ、日本などからの移民料理のテイストが加わったもの。ちなみに、じゃがいも、トマト、トウモロコシ、唐辛子などはペルーが起源、アマランサスやキヌアなど近年注目されているヘルシーな雑穀の原産地でもあります。

SANGUCHERIA KHUCHI(サングチェリア クチ)
住所:東京都渋谷区神宮前2-17-6
電話:050-3825-4607
営業時間:11:45~15:00(L.O.14:45)
定休日:日曜、月1回月曜(不定休)

豚肉+さつまいも+自家製ソースのコラボ「パン・コン・チチャロン」


健康的で豊かな食材を使い、さまざまな国の料理法がミックスされたペルー料理は、世界の料理人からも注目されています。

「よりカジュアルに、気軽にペルー料理を知っていただけるようにと、サンドイッチの店を始めました。ペルー人の方もよく来店され、看板メニューの『パン・コン・チチャロン』は、『ペルーと変わらない味』と言っていただいています。味はもちろんのこと、このボリューム感もとても大切なポイントです」と店長の仲村渠さん。

「パン・コン・チチャロン」のチチャロンとは、豚バラ肉の塊を、塩を入れた湯でやわらかく煮て、その豚肉から出た脂でカリッと揚げ焼きしたもの。同店では、豚肉はバラとロース両方を使い、温めたパンにスライスしたチチャロン、レタス、さつまいも、ペルーのハーブ『ワカタイ』を使ったソース、サルサ・クリオージャ(スライスした赤玉ねぎ、塩、レモン、唐辛子、コリアンダーを和えたソース)をはさんであります。

サンドイッチに使うパンは、現地の「パン・フランセス」により近いものを数カ月かけて探したそう。皮はパリッと、中はもっちりした食感の太めのバゲットに、食材をあふれんばかりにはさんであります。

「ふっくらやわらかく、表面はカリッと焼いた肉のおいしさ、さつまいもの甘さ、サルサクリオージャのハーモニーをぜひ楽しんでいただきたいです。大きな口を開けてガブリと豪快にどうぞ!! 」と仲村渠さん。そのため、店内で召し上がるお客様にもサンドイッチ用の包み紙を添えています。

ハーブ&スパイスを繊細に使い分けています



「パン・コン・ポヨ」はお店のオリジナルのレシピで、鶏肉のオーブン焼きサンドイッチです。現地ではボイルした鶏むね肉をほぐして自家製マヨネーズで和えるだけのシンプルなものですが、同店では下味をつけた鶏肉をオーブンで蒸し焼きにし、ペルー産の唐辛子「アヒ・パンカ」を使ってマリネし、自家製ソースで和えています。唐辛子の赤い色がかなり辛そうにも見えますが、ピリピリと刺激的な辛さはありません。香りと深みのあるうまみを醸し出す「アヒ・パンカ」は、ペルー料理を特長づけるスパイスの1つです。

「ペルー料理は、ハーブやスパイスを辛さよりも、風味・うまみを引き出すために使います。数多くの香辛料を、日本の方々が想像するよりはるかに繊細に使い分けていると思いますよ」(仲村渠さん)。

そして、新しくメニューに加わったのが「パン・コン・ロモ」。こちらは、中国や日本の料理からの影響が深い「ロモ・サルタード」という牛肉の炒め料理をサンドイッチの具材用にアレンジしたもの。牛肉と玉ねぎ、トマト、青ネギ、ペルー産の黄色い唐辛子に、隠し味には醤油を使っています。

いずれのサンドイッチにもキヌアのプチプチした食感がアクセントのグリーンサラダがついています。

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トルコ/サバサンド
オリミネベーカーズ 勝どき店

オリミネベーカーズは、築地の食材店向け包装材をつくる会社が母体です。パンの包材をつくるにあたり、試用を兼ねて中身のパンを作ったことをきっかけに、「築地でパン屋をやったら面白いのでは?」と4年前の2011年に築地7丁目店をオープン。現在は築地周辺に3店舗を展開しています。商品づくりに対する真摯な姿勢と研究熱心な社風はパン作りにも生かされているようで、サバサンドを始め、パン生地も具材も素材と製法にこだわって「自分たちが食べたいと思えるパン」を追求しています。

オリミネベーカーズ 勝どき店
住所:東京都中央区勝どき3-6-3
電話番号:03-5144-5977
営業時間:8:00~20:00
定休日:水曜

イスタンブール名物のサバサンドをオリミネ流にアレンジ


サバサンドはイスタンブール名物のB級グルメ。港町の屋台で、フランスパンに鉄板で焼いたサバと玉ねぎスライスをはさみ、塩とレモンで味つけしたサンドイッチです。同店スタッフがトルコ旅行で出会ったサバサンドをベースにして、ぜひオープン時のメニューに加えようと、試行錯誤を重ねたそう。「パン生地は4種類くらいを試し、香辛料や味つけもいろいろ変えて試作を繰り返しました。最終的にたどりついたのが、サバとパンがいちばんしっくりマッチする、チャバタ生地と塩味のごくシンプルなレシピです」とスタッフの藤井さん。

築地で仕入れた新鮮な一汐干しのサバは、小骨を丁寧に取り除いてからフライパンで香ばしく焼き、たっぷりの玉ねぎ、レモンのスライスと一緒にパンにはさみます。「玉ねぎは、加熱やマリネしないで、水にさらした生のまま。シャキシャキの食感とレモンの酸味がサバとの相性も抜群です。時間が経っても魚臭さが出ることなく、冷めてもおいしくお召し上がりいただけます」(藤井さん)。

すべてはパン生地そのものを「おいしい!」と感じていただくために



「築地周辺にはパン屋が本当に少なくて、以前は銀座まで買いに行っていた、というお客様も。『近くでおいしいパンを買えるようになってうれしい』とおっしゃっていただくこともあり、励みになります」(藤井さん)。 

同店の立ち上げには、ロティ・オランを主宰する堀田誠さんにアドバイザーとして入っていただいたそう。小麦粉を使い分け、シンプルな配合とオールスクラッチで、生地の味を大切にしたパン作りをしています。折峰食パンは国産小麦100%、ブドウから起こした自家製酵母を使い、バゲットは生地の味が濃くなるようにイーストの量を減らし、長時間発酵でつくっています。サバサンドのチャバタ生地も国産小麦粉を100%使用。水分多めでもっちりした食感が塩味のサバによく合います。

「惣菜パンや菓子パンの具材には、築地ならではの新鮮な海産物や旬の果物を使ったものも数多いですが、どれもパン生地そのものを『おいしい!』と感じていただくことを目指して作っています」(藤井さん)。

パン生地によく合う具材で、藤井さんご自身がいちばん衝撃を受けたのが、先輩職人の考案した「フォカッチャいいだこ」だそう。築地で仕入れたイイダコにオリーブ、アンチョビ、ニンニク、トマトを合わせたプッタネスカ風で、こちらも同店の人気商品になっています。

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スペイン/ボカディージョ
FERMiNTXO BOCA(フェルミンチョ ボカ)

「フェルミンチョ ボカ」は、六本木一丁目駅直結の『アークヒルズサウスタワー』1Fにあるスペインバルです。スペイン料理の名店、西麻布「フェルミンチョ」のオーナーシェフが、スペインで愛され、親しまれているサンドイッチ「ボカディージョ」のおいしさを伝えたいと、日本初の専門店として2014年1月にオープン。テイクアウトもOKなボカディージョは、近隣のオフィスワーカーからも好評です。17時以降は、こだわり食材を使ったタパスも加わり、スペインワインと一緒にカジュアルに楽しめます。

FERMiNTXO BOCA(フェルミンチョ ボカ)
住所:東京都港区六本木1-4-5 アークヒルズサウスタワー1F
電話番号:03-6426-5760
営業時間:11:00~23:00、土曜は11:00~22:00
定休日:日曜、祝日

フレッシュトマトを使った「パン・コン・トマテ」がベース


ボカディージョは、バゲットに生ハムやチーズ、トルティージャ(スパニッシュ・オムレツ)などさまざまな具をはさんだスペインのサンドイッチです。「小腹がすいたとき、スペイン人が真っ先に思い浮かべる食べ物の1つ。どこのバルにも必ずあり、その気軽さと身近な感じは、ちょうど日本人にとってのおにぎりのような存在です」とシェフの薩木さん。

サンドイッチといえば、まずはパンにバターを塗る、というイメージがありますが、同店のサンドイッチは、カタルーニャ地方発祥の「パン・コン・トマテ」が基本です。バゲットにつぶした完熟トマトとオリーブオイルを擦りつけるスタイルで、パンにほどよいしっとり感をもたらし、フレッシュトマトのさわやかな香りと軽い酸味が生ハムやチーズなどの具材のおいしさをより引き立てます。

バゲットは1次発酵まで済ませた生地を仕入れ、毎朝店内でサンドイッチのメニューに合わせて太さや長さの違う3種類を焼き上げています。具材の味を邪魔しないよう、塩味を抑えた生地を使っているそう。「現地のバゲットは、かたく重ためですが、日本人の好みに合った軽い食感になるように2次発酵の時間を調整し、スチームを加えて焼き上げています。ふっくらとしてクラストはサクサク、具をはさんでもかみ切りやすくしています。トマトは常温において追熟させ、すりおろして果汁も一緒にパンに塗っています」(薩木さん)。

スペイン料理をパンにはさんで味わえる



スペイン料理は、地方ごとに素材や調理法も大きく異なります。「うちのボカディージョは、スペイン各地の料理の特色が端的に伝わるように、地名をメニュー名にしたものが多いです」と薩木シェフ。「マジョルカ」は、イベリコ豚で名高いマジョルカ島特産の「ソブラサーダ」のサンドイッチです。「ソブラサーダ」は豚の脂と肉のミンチに塩とパプリカパウダーを混ぜて腸詰にし、熟成させたもの。やわらかなパテ状でうまみが濃く、モッツアレラとスペイン産の蜂蜜を合わせます。

たっぷりの生ハム(ハモンセラーノ)とモッツアレラの「クラシコ」は、名前の通り伝統的な王道レシピです。このほか、フェルミンチョ本店で自家製している太いソーセージをまるごとはさんだ「カタラナ」や塩タラのフライ「バカラオ」など13種類のボカディージョをラインアップ。「どれもオーダー後にトマトを塗るところから作り、生ハムやチーズは切りたてのおいしさと香りを楽しんでいただけるよう、その都度スライスしています」(薩木さん)。シンプルながらも、丁寧に仕上げる一皿の料理でもあるのです。

「オープンから1年4カ月で、リピーターのお客様も増えて、新しいメニューや1.5倍サイズも始めました。『ボカディージョ』の知名度はまだまだですが、スペイン料理をパンにはさんで気軽に食べるサンドイッチ。そのさきがけの店として、もっともっと広めていきたいですね」(薩木さん)。

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アルゼンチン/チョリパン
Mi Choripan (ミ チョリパン)

代々木上原・井ノ頭通りに面した一角で、テラスに張り出したカラフルなひさしが目に留まったら、そこが「ミ チョリパン」。2013年1月にオープンした、アルゼンチンのサンドイッチ「チョリパン」の専門店です。手作り感のあるテラス席と店内は、時間がゆったりと流れるような居心地のよさ。できたてチョリパンのデリバリーも行っています。

Mi Choripan(ミ チョリパン)
住所:東京都渋谷区上原2-4-8
電話番号:03-5790-9300
営業時間:11:00~22:00、日曜、祝日は11:00~20:00
定休日:火曜、第2、4月曜(祝日は営業)

日本初・ブエノスアイレスのチョリパン店直伝のおいしさ


「チョリパンは、パンに極太のチョリソーと野菜などをはさんだサンドイッチです。日本人にとってのラーメンや焼き鳥のように、アルゼンチンの庶民がこよなく愛するソウルフード。街角の屋台からモクモクと立ちのぼる煙と香ばしい香りに誘われて、気軽に立ち寄り、その場でかぶりつくイメージです」と店主の中尾さん。

中尾さんご夫妻が約1年半かけて世界中を訪ね歩いた旅で、舌と心を強くとらえた食べ物がアルゼンチンのチョリパンでした。帰国後、「日本ではまだほとんど知られていないチョリパンの店をやろう!」と決めて、ブエノスアイレスを再訪。軒並み食べ歩いた中で、ここぞ、という店に頼み込んで弟子入りし、チョリソーやソースの秘伝のレシピを基に中尾さんの「ミ チョリパン=私のチョリパン」ができあがりました。

店を始めるにあたり、現地の味をとくに日本人向けにアレンジすることはなかったそう。「ブエノスアイレスには、数多くのチョリパンの店があって、チョリソーも牛肉100%だったり、牛と豚だったり、中には豚肉だけでつくる店もあります。その中で、いちばん僕の舌にフィットした店のレシピですから、その意味では『日本人好み』の味かもしれないですね」(中尾さん)。

肉のうまみを閉じ込めた自家製チョリソー



チョリソーと聞くと、つい辛いソーセージを思い浮かべますが、これはメキシコの唐辛子入りソーセージが、たまたま日本では「チョリソー」として定着してしまったため。本来は、スペイン語でソーセージ全般を指す言葉です。チョリパンのチョリソーは、牛肉をふんだんに使った極太の腸詰で、辛さはありません。ボイルや燻製はしないで、生のまま熟成させてから焼くのが特長です。

同店では、ごく粗挽きの新鮮な牛肉&豚肉と塩、およそ6種類のスパイスだけを手で混ぜ合わせ、豚の腸に詰めます。吊るして風をあてて乾燥させ、冷蔵庫で2~3日熟成後、特注の焼き場の炭火で約1時間かけて焼き、じっくりうまみを閉じ込めています。

「パンは、新宿にあるパン屋、峰屋さんに相談して10種類くらいサンプルを作ってもらった中から、パサつかず、チョリソーに合うものを特注しています。注文を受けてから自家製チョリソーを半分にカットして強火で焼き、炭火で温めたパンにはさみます」(中尾さん)。

ジュージューと脂が溶け出るチョリソーに、ぴったり合うのがチミチュリというさっぱりと酢の効いたソースです。「トッピングやソースを何種類か用意していますが、チミチュリがいちばん大事。酢と油にハーブ&スパイスを混ぜ合わせたもので、アルゼンチンではどの店にも家庭にも独自のレシピがあるのですが、オレガノは必ず入ります」(中尾さん)。

現地では、チョリソー&チミチュリソースのみのシンプルな食べ方が多いそうですが、野菜や、酸味の効いたピクルス風のソースを一緒にはさんで食べるスタイルも。同店では「カスタムチョリパン」として、カウンターに用意されたレタス・トマト・炒め玉ねぎ・ネギマヨネーズ・サルサソース・にんにくとパセリのソースなどを、ベーシックなチョリパンにお好みでトッピングすることができます。

「ホットドッグをイメージしてしまうと、パンにはさんだだけで750円は高い!とも感じられてしまいますが、うちのチョリソーは時間をかけて手作りし、ボリュームも1本100g以上。熟成された肉の旨みと、超・粗挽きで肉そのものを食べている噛みごたえを楽しめます。チョリパンで『チョリソー=辛いソーセージ』のイメージも変えていきたいです」と中尾さん。

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遠い外国の、まだ一度も食べたことがない料理も、ぐっと身近に感じさせてくれるのがサンドイッチの魅力です。4店舗それぞれに特色のある食材とパンの組み合わせは、バインミーを超える新たなブームの予感も。そして、さまざまな食材やテイストをふっくらと受けとめる、シンプルな食事パンの懐の深さも再発見できました。
ぜひ、お気に入りの世界のサンドイッチを探しに出かけてみてください。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2015年6月)のものです

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