パンのテーブル

ふんわり、やわらかな食感 シフォンケーキ

  • La Famille(ラ・ファミーユ)
  • 東京えんとつ Cafe
  • MERCER bis Ebisu(マーサー ビス エビス)
  • CHIFFON KINUYA(シフォン キヌヤ)

La Famille 
(ラ・ファミーユ)

化学的に合成された添加物は使わないようにしてシフォンケーキをつくっている専門店&カフェ。オーナーの小沢のり子さんは、たくさんの方にシフォンケーキのおいしさと魅力を伝えるとともに、つくる楽しさも知ってもらいたいと、シフォンケーキづくりの講習を行うほか、著書「専門店のシフォンケーキ」等の中でレシピやコツを公開しています。

La Famille(ラ・ファミーユ)
住所:東京都豊島区西池袋3-4-6 今村ビル 1F
電話番号:03-5958-0431
営業時間:10:30~18:30 売切れ次第終了
定休日:不定休

お菓子の国フランスでも高評価だったシフォンケーキ

ラ・ファミーユは、シフォンケーキ専門店がごくわずかしかなかった 1998年にオープン。当初はお菓子教室と並行して洋菓子各種を販売するお店でしたが、徐々にシフォンケーキをメインに。そのきっかけとなったのは、オープン前に小沢さんがヨーロッパへ1年間の洋菓子修業に出かけたときのことです。「ヨーロッパのお菓子を吸収する一方で、日本の洋菓子だって負けていないよね、という思いもあって、フランス滞在中に日本の洋菓子を食べてもらう試食会を企画したのです。真っ先に思いついたのがいちごのショートケーキ。でも、<スポンジ生地に生クリームの組み合わせはあり得ない!>とフランス人の友人に即、却下されました。そこでひらめいたのが、フランスにはないシフォンケーキ。柔らかい生地の中に、今の店に並んでいるような、果物や野菜を入れたものなどをつくって食べてもらったところ、<軽くていい!>と、とても好評だったのです」(小沢さん)。

ちなみに、現在ではフランスの製菓学校で「日本のお菓子」として取り上げられ、パリには日本人によるシフォンケーキの店もあるくらい、シフォンケーキはフランスの人々の間にも浸透しているようです。



同店のシフォンケーキは、合成添加物は使っていませんが、ふんわりとふくらみ、手で型から外せるくらいしなやかな弾力があります。「余計なものは使わないほうが、よりおいしくできあがります。そのためには、使う素材を吟味すること。そして、お菓子を愛する心を忘れないことだと思います」と、小沢さんがシフォン生地づくりの主なポイントを紹介してくれました。

①壊れにくい強い泡のメレンゲをつくる
卵白に何も入れずに泡立て、固くなってきたら砂糖を数回に分けて入れ、きめの細かい小さな泡に揃った壊れにくいメレンゲをつくる。膨張剤を入れないため、メレンゲに取り込まれた空気が重要になります。

②卵黄生地を練り混ぜる
卵黄、水分、植物油、小麦粉を一緒にして練り混ぜる。ここで水分と油分が混ざるのを卵黄の乳化力が助けてくれます。水を加えて練ることで、小麦粉がグルテンの骨格をつくります。そこに植物油が加わると、押しても戻る、しなやかな強い骨格になることがシフォンケーキの特徴です。

③卵黄生地とメレンゲはよく混ぜる
卵黄生地でメレンゲを包み込むようにして混ぜていきます。このとき、しっかり混ぜないと味がよく出ません。そのために、壊れにくい強い泡のメレンゲをつくることが大切なのです。

 様々な素材を混ぜてバリエーションも豊富に


基本のシフォン生地に、フルーツや野菜、ココアやシナモンなど、さまざまな素材を混ぜたシフォンケーキも好評です。定番10種に、旬の素材を使った季節限定も加わります。フレッシュクリームでデコレーションしたものと、シンプルに焼いただけのものがあり、一番人気はルビー色のラズベリーをまんべんなく散らした「フランボワーズ」。「シフォンみたいな軽い生地に重たい果実を混ぜて、どうして沈まないのですか?」と聞かれることも多いそうですが、「基本的にはケーキに混ぜるときのコツと変わりありません」(小沢さん)。

「生地の中にいろいろな素材を混ぜてバリエーションをつくっていますが、なかなか思うようにはいきません。混ぜ込むものが持っている性質で化学反応が起きてしまうからです。添加物に頼れば簡単に解決できるのですが、入れないでつくることにこだわって、挑戦する楽しさも味わっています。コーヒーは意外に簡単にできましたが、野菜のシフォンは難しかったです。完成させるのに長い年月がかかりました」(小沢さん)。

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東京えんとつ Cafe

「東京えんとつ」は、シフォンケーキの中にクリームを詰めたカップスイーツ。直営ショップのほか、期間限定で百貨店の催事、駅構内などでも販売され、行列のできる人気スイーツです。東京メトロ大手町駅直結のビル地下2階にある「東京えんとつ cafe」にはイートインスペースも併設されています。

東京えんとつ cafe
住所:東京都千代田区大手町1-5-5 大手町タワー地下2階
電話番号:03-6273-4286
営業時間:月曜~土曜 9:00~21:00/日曜、祝日 10:00~20:00
定休日:12月31日、1月1日、施設休館日に準ずる

こだわりの素材を使ったカップ型シフォンケーキ

「東京えんとつ」は、ふんわりきめ細かなシフォン生地の中に生クリームとカスタードクリームを詰めた新感覚のカップ型シフォンケーキです。かわいらしいネーミングは、カップに入ったスイーツの形から。「日々のおやつとして安心して食べていただけるよう、国産の素材にこだわり、保存料や着色料、添加物などを一切使わずにつくっています。東京スカイツリーの近くにセントラルキッチンを設け、できたてを各店に配送、当日売り切りにしています」(店長の森江唯人さん)。


美しくデコレーションされたカップスイーツがブームにもなっていますが、「東京えんとつ」は、ふわふわやわらかなシフォン生地がいちばんの醍醐味です。シフォン生地には、国産小麦粉2種類をブレンドし、和三盆、米油など日本の伝統的な食材を使っているそう。「添加物は一切使わず、卵だけでふっくらさせるのが職人の技です。メレンゲの泡立ちをキープするためには砂糖もある程度の量が必要ですが、和三盆を使うことで上品でやさしい甘さに。また、米油は、植物性油脂の中でも国産の原料だけでつくられるもの。ビタミン、ミネラルを含み、加熱安定性が高く、酸化しにくいなどの特長があり、『体によい油』とも言えます」(森江さん)。

シフォン生地の中には、新鮮卵を使った自家製カスタードと鳥取大山の生クリームのダブルクリーム。生地には砂糖をしっかり使っているので、クリームは甘さ控えめ。その分ミルクや卵の香りがひきたちます。ちなみに、2つのクリームは、丸いカップで焼き上げたシフォン生地にシュークリームと同じやり方で詰めているのだそう。「一気に勢いよく詰めてしまうと生地が裂けてしまいます。様子を見ながら少しずつ、生地の真ん中でそっと風船をふくらませていくようにクリームを詰めていくんです」(森江さん)。

こだわり素材のおいしさがいちばんしっかり感じられる、と森江さんのおすすめはシンプルな「プレーン」。さらにクリームをプレーンの約2倍詰めたのが「プレミアム・プレーン」です。

同じ生地から焼成の違いで多彩なパンが生まれます



ショップでは定番のアイテムに加えて、季節ごとに限定商品が登場します。訪れたときはクリスマスに向けてデコレーションされた「クリスマススペシャルベリー」が並んでいました。また、2015年9月からは10日ごとに新商品をリリースするという試みも。工房のパティシエが商品開発を担当し、これまでに、アップルシナモン、ブルーベリー、プラリネキャラメルバナナなどが登場したそうです。

「直接商品開発には携わっていませんが、お客様の反応をストレートに受け取れるのが僕たち販売です。新しい商品の魅力やおいしさをお客様にわかりやすくお伝えすることが大切ですし、お客様の反応をつくり手にフィードバックすることも大事。「丹沢和栗」は人気が高く、当初の販売期間を延長しています。次に登場するアイテムの情報をお客様にお知らせすることで、リピートにもつながっていきます」(森江さん)。

イートインでは、クリームなしのシフォン生地を温めて、北海道ホイップバターと純はちみつを添えた「ブレックファーストシフォン」(9:00~11:00限定)や、温めたシフォンケーキにソフトクリームをのせて「ひやあつ」を楽しめるアイテムも登場。「温かいシフォン」という新しい楽しみ方を提案しています。

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MERCER bis Ebisu(マーサー ビス エビス)

表参道・恵比寿などで店舗展開している「MERCER CAFE」で、深夜にいただくにもピッタリなデザートとしてブレイクした「キャラメルシフォンケーキ」。同店のセントラルキッチンに併設された「MERCER bis Ebisu」は、人気のシフォンケーキとドリップコーヒーを気軽にイートイン&テイクアウトできるカフェスタンドです。

MERCER bis Ebisu(マーサー ビス エビス)
住所:東京都渋谷区恵比寿1-26-17 阿部ビル 1階
電話番号:03-3441-5551
営業時間:12:00~19:00
定休日:無休

欧風料理をもとにしたおつまみパン


「MERCER bis Ebisu」のシフォンケーキは、卵は白身だけを使 った白く、きめ細やかな生地が特長です。「うちのシフォンケーキは、アメリカ生まれの『エンゼルフードケーキ』がもとになっています」と語ってくれたのは、パティシエでマーサーカフェ全店のメニュー開発に携わっている羅亜希さん。「カフェを最初に立ち上げるときに、<深夜でも食べていただけるデザート、アメリカン・テイストでよその店にはないものをつくろう>ということで、エンゼルフードケーキを選びました。バターやオイルは一切使わず、粉と卵白と砂糖だけでつくるシンプルなお菓子なのですが、メレンゲの立て方や、粉の配合を1g単位で変えるなど何度も試作を重ね、米粉を使った現在のレシピが完成しました」(羅さん)。


同店のシフォン生地は、見た目は白いシフォンケーキですが、食感は普通のシフォンケーキとは全くの別物。フワッとやわらかく軽やか、しかも水分を多く含んでいるためもちっとしてしっとり口溶けていきます。「ベーキングパウダー、水、油脂を一切使わず、メレンゲの力だけで生地を膨らませていますから、メレンゲの泡立て方がいちばん難しいです。ミキシングの速度や時間、砂糖を入れるタイミングや卵の温度も重要ですが、最後は手を入れて、手に感じる重みで仕上がりを判断します。メレンゲに粉を混ぜるときも、手だけを使って泡の状態を確かめながら混ぜていきます(パティシエの旭美穂さん)。スタッフは3カ月間みっちり研修して、メレンゲの見極めを体で覚えていくのだそう。

店内でいただくシフォンケーキは、ボリュームもアメリカンサイズ



焼き上がった生地は、とても繊細で沈みやすいため、型に入れたまま逆さにして半日から1日おいて安定させます。それから表面に生クリームを塗り、オーダーが入るとカットして、さらにゆるめにホイップした生クリーム、キャラメルソースとローストアーモンドをトッピング。ちなみに、店内でいただく1ピースは20cm型の1/6と、かなりのボリューム。さらにたっぷりとかける生クリームの量にも圧倒されます。

「メレンゲの泡立ちを安定させるためにも生地の砂糖を控えること はでき ませんから、生クリームの甘さをごく控えめにし、キャラメルは焦がしを強くしてほろ苦さを出しています。皆さん、このボリュームを見て驚かれるのですが、甘いものが苦手な方でも意外と1つペロリと食べられてしまうんです」(羅さん)。

キャラメルのほかにbisのイートインだけでいただけるフレーバーはホワイトチョコベースの抹茶ソースをトッピングした抹茶ホワイトチョコレート、ストロベリーチーズ、ティラミス、NYチーズの 4種類。キャラメルはもちろん、ほかのソース類もNYチーズにたっぷりトッピングするオレオもキッチンで手作りしています。

「おかげさまで、デパートのイベントや通販など、いろいろなところから声をかけていただくのですが、このキャラメルシフォンケーキは作り置きができないのが難点。水分が多いため冷凍もできません。今のところ恵比寿と鎌倉でつくっていますが、わざわざ出かけてでも食べたい!と思っていただけるものでありたいです」(羅さん)。

キャラメルシフォンケーキのみテイクアウト可能で、イートインより小ぶりなサイズのピースと、ホールはMとLがあります。「クリスマスシーズンにはデコレーションしたキャラメルシフォンも。ケーキ屋さんのショートケーキのように、もっと気軽にシフォンケーキをホールでテイクアウトして、ご家族やお友だちと一緒に食べていただけたら、と思っています」(羅さん)。

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CHIFFON KINUYA(シフォン キヌヤ)

オーナーの菰田理絵さんが国産の材料を吟味し、膨張剤などの添加物を一切使わずにつくるシフォンケーキの専門店。小さいながらも居心地のいいカフェスペースでは、フルーツや生クリームを添えた焼きたてシフォンケーキをイートインでき、全国への配送も行っています。

シフォンケーキ工房 CHIFFON KINUYA(シフォン キヌヤ)
住所:東京都板橋区大山西町49-3 1F
電話番号:03-3959-6511
営業時間:お昼頃~19:00(売り切れ次第閉店・午前中は予約制)
定休日:火曜・水曜(祝日は営業)

手でちぎるとシュワッと音がするしっとりシフォン


キヌヤでは2台の小型オーブンをフル稼働させて朝からシフォンケーキを焼き、店内は甘い香りに満たされます。13時過ぎにはカウンターの上に本日のラインアップ7~8種類が勢ぞろいし、当日売り切りに。
菰田さんは、10代のころから飲食業で独立しようと決め、20才のときにフードコーディネーターの資格をとったそう。「初めて焼いたシフォンケーキがとてもうまくできて、ほとんど勢いで半年後に茨城県つくば市で宅配シフォンケーキ専門店を始めました」(菰田さん)。09年に東京・板橋に店舗を構え、14年にカフェスペースのある今の店舗に移転しました。


同店のシフォンケーキは、店名の通り、絹のようにつややかでしっとりウェットな食感。手でちぎったときに「シュワッ」とかすかな音がすることが特長です。「シフォンケーキは『パサついている』『クリームをつけないと物足りない』と思っていらっしゃる方も多くて、そのイメージを打ち破りたい、もっとおいしく!追究していくうちに、きめ細やかでふんわり・水分量が多くしっとり・ちぎるとシュワッと音がする、この食感にたどり着きました」(菰田さん)。

保存料・着色料など添加物は一切使わず、材料にはとことんこだわって、いろいろなところから取り寄せて選んだそう。小麦粉は北海道産の一品種だけを使い、茨城の養鶏場から産みたての卵を直接仕入れ、砂糖は北海道産の甜菜糖。牛乳・バターなどの乳製品は使わずに、より優しい味わいとモチモチ感を出すために、豆乳を使用しています。

「ずっと同じ生産者の、同じブランドを使い続けることで、卵なら割った瞬間に『あっ、これは若い鶏が産んだ卵だ』とわかるようになりました。鶏も生き物ですから、季節によって水分量が微妙に違ってきますし、若い鶏と歳とった鶏では、黄身の濃さも違う。割ったときの手ごたえで、分量や泡立て方、オーブンなどを微調整して、いつも同じ仕上がりになるようにしています。シフォンケーキはそのくらい繊細なケーキなのです。そして、国産材料にこだわるのは、もちろんつくり手が見える安心感もありますが、焼き上がりの味や食感で選んだ結果が全部国産のものだったのです」(菰田さん)。

生地をつくるときの「温度」も重要なポイントです



独特の食感をつくる秘訣は企業秘密だそうですが、卵黄と砂糖を混ぜ、植物油、豆乳、小麦粉を混ぜた後にメレンゲと合わせるのがキヌヤの手順。「1つ1つの作業がどれも大切なのですが、艶やかで消えない泡をつくるには、温度が大事です。卵黄と卵白に分けた後、卵白だけはしっかり冷やすのがポイント。その後、卵黄生地とメレンゲを混ぜるときには温度差があっても問題ありません」(菰田さん)。

「よりおいしく」を求めて、今も新しい気づきがある、と言う菰田さん。「これだ!というレシピは計算して出すというより、突然にやってきます。ここをこう変えてみたらどうなるだろう、と想像して、材料をそれこそ 0.1g単位で変えながら何度も試していると、パッと扉が開けるようにおいしく焼けるレシピにたどりつきます。例えば、水分を柑橘系の果汁に代えると、メレンゲの泡のきめが粗くなってボソボソになってしまうのですが、これも『温度』で解決することができました」。

同店のシフォンケーキは甘さ控えめで、「絹シフォン(プレーン)」の卵の風味や香りはもちろん、抹茶やコーヒー、バナナなど、合わせる素材の味わいや香りも存分に引き出されています。「砂糖は甘み以外にもメレンゲの泡を強く保つ役目がありますが、その作用と味覚としての甘さのベストバランスでおつくりしています」(菰田さん)。

定番7種のほか、季節限定のシフォンケーキもあり、お邪魔したときは安納芋の焼き芋とプレーン生地をマーブルにした「安納芋」が並んでいました。シフォンケーキを低温でじっくり乾燥させながら焼いたラスクやスコーンなど焼き菓子も好評です。

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10年ほど前から専門店の数が増えてきたシフォンケーキ。粉と卵と砂糖をメインにしたシンプルなお菓子ですが、「ふんわり、やわらかな食感」に4店舗それぞれの個性が表われているのも興味深いところ。こだわりの製法で各店それぞれにケーキの表情や味・食感も個性的。お気に入りを見つけに、出かけてみてはいかがでしょう。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2016年3月)のものです

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