パンのテーブル

のせて魅せる!オープンサンド

  • smorrebrod kitchen nakanoshima
  • Boulangerie Miyanaga(ブーランジェリー ミヤナガ)
  • eS Boulangerie(エス ブーランジュリー)
  • ル ディマンシュ トアロード店

smorrebrod kitchen nakanoshima

北欧デンマークの郷土料理である「スモーブロー」というオープンサンドを専門に扱うカフェ。「食べることは生きること 生きることは暮らすこと」をモットーに、都市と地域の架け橋として生産者と生活者を繋ぐ料理開拓人として知られる堀田裕介さんがプロデュースしたお店です。パリの一流レストランで腕を磨いたフレンチシェフ葭谷真輝(よしやまさき)さんがメニューを考案し、堀田さんが全国で出会った生産者から集めた新鮮な食材を使った季節感あふれるスモーブローをいただけます。

smørrebrød kitchen nakanoshima
住所:大阪府大阪市北区中之島1-2-10 中之島図書館 2F
電話番号:06-6222-8719
営業時間:9:00~21:00(L.O20:30)
定休日:不定休(年末年始)

デンマークの国民食「スモーブロー」

「スモーブロー」はデンマークの国民食で、直訳で“バターを塗ったパン”という意味です。夕食の残りをパンにのせてランチにしたのが始まりなのだとか。「デンマークの家庭では、ハムやミートボール、エビ、野菜など好きな具材を黒パンにのせていただきます。ホームパーティでの定番メニューでもあり、日本での手巻き寿司のように、トッピングとなるさまざまな具材を用意し、各々が好きな具材をパンにのせていただくそうです」と店長の大倉伸宜さんが教えてくださいました。

同店で使われているのは、堀田さんがプロデュースしたパンとコーヒーのお店「foodscape!」のライ麦パンです。通常のライ麦パンより酸味が少ないクセのない味わいで、グラハム粉などが配合されているため食物繊維もたっぷり。パンには辛みのないマスタードバターが塗られ、伝統にならった味わいを楽しめます。

なかでも『獣医さんの夜食』と『流れ星』は、デンマーク伝統のスモーブロー。大倉さんいわく「どちらもユニークなメニュー名ですが、デンマークでは定番メニューなんですよ。『獣医さんの夜食』とは、獣医さんが夜のお産に向けて体力をつけるために考案された、一般的には肉系の具材がのったスモーブローのことをいいます。当店でも、牛肉のハムやレバーペーストなど精がつく具材がのっています。一方、『流れ星』とは、好きなものをたくさん食べられるように願いを込めたスモーブロー。具材が盛りだくさんにのっているのが特徴で、日本でいう海鮮丼のようなものでしょうか。当店でも海老やシャークフライ&ソテー、キャビア、ディル、トマト、ホワイトアスパラなど贅沢な具材が山盛りにのっています」とのこと。また、こちらで使われているサメは、堀田さんが業者と共同プロデュースしたこだわりの素材です。サメを軟水につけるというひと手間かけた加工をすることで、サメ独特の臭みを感じさせません。このように同店では、デンマークの伝統にならいながらも、一工夫こらしたオリジナルな味わいを楽しめるスモーブローが魅力です。

歴史ある建造物内にあるカフェでお洒落なひとときを



カフェがあるのは、重要文化財にも指定されている大阪府立中之島図書館です。明治37年(1904年)に開館した歴史ある建造物で、ネオ・バロック様式の外観が目を惹きます。店内は中央のキッチンを囲むようにテーブル席が配され、窓を街路樹などの緑が彩っています。ヘリンボーン模様に寄木張りされたフローリングやgrafデザインの椅子など、レトロでありながら洗練されたお洒落な空間です。オープンは2016年4月とまだ新しいのですが、ゆったりとして落ち着いた雰囲気が漂っています。

モーニングやランチ、ディナーのセットもあり、夜はお酒も楽しめます。「一般的にスモーブローは火を通さない食べ物なのですが、朝食には温かいものを食べたいだろうと、モーニングではベイクしたメニューをご用意しています」と大倉さん。ランチセットでは野菜・魚・肉の3種類のスモーブローから選べ、サラダ、スープ、ドリンク付きで1,400円(税別)~とお得に楽しめます。もちろんスモーブロー単品でも提供しており、テイクアウトも可能です。

「トッピングとなる具材はどれも選りすぐった、瑞々しい野菜や旬の魚など新鮮さを感じるものばかりです。淡路島FRESH GROUPのカラー人参、大山鶏の胸肉のハムなど、生産者の顔が見える素材を使っています」と大倉さん。生産者を知っているからこそ、食材を慈しむ気持ちで使っているそうです。ソースやドレッシングなども手づくりされており、それがシンプルな食べ物でありながら奥行きのある味わいを生み出しています。ドリンクも充実していて、コーヒーや紅茶などのほかに、スパークリングワインや自家製レモネード、自家製サングリアなど豊富。2017年はデンマークと国交50周年という記念となる年でもあるので、これを機にデンマーク伝統の味に親しんでみてはいかがでしょうか。

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Boulangerie Miyanaga(ブーランジェリー ミヤナガ)

阪急夙川駅の小さな北側改札口を出てすぐにあるブーランジェリー。ハード系や菓子パンなどバラエティ豊かで、もっとも種類が多くなる正午ごろは120種類ものパンが並びます。オープンキッチンから漂うパンの匂い、次々に運ばれてくる新しいパンに、どれを食べようかとワクワクした気持ちになります。そんな同店のオープンサンドは、ボリュームある具材が特徴。パン生地も具材によって異なるというこだわりようです。

Boulangerie Miyanaga(ブーランジェリー ミヤナガ)
住所:兵庫県西宮市相生町7-3 夙川第一ビル1F
電話番号:0798-73-5525
営業時間:9:00~20:00(売り切れ次第閉店)
定休日:火曜・水曜

味の濃い具材には、しっかりした味わいのパン生地を

オーナーの宮永啓介さんは、パン屋だけでなくケーキ屋やレストランなど11店舗で修業。その経験を生かして、ハード系からデニッシュ系まで多種多様なパンをつくり上げています。
「フレンチやイタリアンレストランでパンを焼いていた頃、料理の勉強もさせてもらいました。オープンサンドの具材で、どんな素材を合わせると美味しいかは、その頃学んだ経験が大きい。でも、自分のお店でないと自由に組み合わせることはできません。私にとって、この店は自分の構想のアピールの場なのです」と宮永さん。
同店は2010年5月にオープン。夙川というベーカリー激戦区を選んだ理由を尋ねると「まずパンを食べる文化がある場所であること。競合と比べられてもいい。ついでに寄ってもらえるようになれば、定着するお客さんもいるだろうから」という宮永さんの狙い通り、お客さんが絶えない人気店へと成長しています。

同店のオープンサンドの特徴は、具材に合わせてパン生地を変えていること。たとえば旬の野菜をのせたタイプのオープンサンドには素材の味わいが引き立つ天然酵母のパン生地を、しっかりした味わいの具材には奥深い味わいのカンパーニュ生地を、といったパンと具材とのマリアージュにこだわっています。「濃い味の具材には、しっかりした味わいのパンを合わせるなど、どちらの味わいも生きてくるように考えています」と宮永さん。
また、旬の野菜などが贅沢にのっているのも同店のオープンサンドらしさ。宮永さんいわく「オープンサンドのようなお惣菜パンは、ランチやディナーに食べても満足できるようなものにしたかった。最近はパンが小型化してきた傾向を感じるけれど、具材がたっぷりのっていないと物足りないでしょ」とのこと。メインディッシュにいただいても満足度の高い味わいです。

奇抜であっても、自分だけのつくり方でオリジナルの味に


同店でつくられるパン生地は、なんと28種類。「同じ生地だとおもしろくないですよね」とさらりと話す宮永さんですが、かなり大変な仕事です。しかもパン生地のつくり方も独創的で、あえて発酵させずに焼いたり、冷たいまま焼いたり、練り込みの油脂に有塩バターを使ったり、一般的にはタブー視されるような方法も取り入れています。28種類のパン生地それぞれの材料が違うだけでなく、つくり方も変えることで、同店ならではの味わいを追求しているのです。「自分だけの味わいにしたければ、自分だけのつくり方も追求していかなくては」と、宮永さんのこだわりは続きます。

「パンは焼きたてが一番。4~6個ぐらいをこまめに焼いています。19時でも焼きたてパンが食べられるんですよ」。データを細かくとることで、どのパンをどのタイミングで焼くかを計算し、ロス管理も徹底。そして新しいパンを創作するときは、必ずスタッフにも食べてもらい、できるだけ多くの人にとってのベストを探っていくのが宮永さん流です。

「オープンキッチンにしたのは、お客さまがどんな顔で買われるか見たかったから。お客さまがどんな想いでいるか想像しながらパンをつくることが大切。美味しいかどうかはお客さんが決めることで、売り上げが結果であり、評価だと思っています」と、宮永さんの経営者として意識の高さも伺えます。また、「パン屋は個人技じゃだめ。接客も大事。そのためにもスタッフ一人ひとりに経営者感覚をもってほしいと思っています」と、売り上げをスタッフと共有することで成長を促しているそうです。そんなお客さまと丁寧に向き合う同店から生まれる新しいパンに、今後も期待が高まります。

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eS Boulangerie(エス ブーランジュリー)

パティシエ小山進氏によるブーランジュリー。もともとパティスリーで販売していたパンコーナーを独立させ、2007年に開業。同じ敷地内にある小山さんのパティスリーやショコラ専門店などでも使われているこだわりの食材も用いられており、贅沢な味わいを楽しめるのも魅力です。もちろんオープンサンドにも、地元農家などから直送された新鮮食材を使用。小山さんならではの新しいアクセントが添えられた味わいに出会えるお店です。

eS Boulangerie(エス ブーランジュリー)
住所:兵庫県三田市ゆりのき台5-32-1 パティシエ エス コヤマ内 FRAME
電話番号:079-564-3192
営業時間:10:00~18:00
定休日:水曜

オープンサンドは小さなビストロ料理

オープンサンドをつくろうと考えたきっかけを尋ねると、「始まりはキッシュ」と話し始めた小山さん。もともとオープン当初から提供していたキッシュは、フランスでは料理のひとつ。小山さんにとって、オープンサンドはその延長線上にあるものだったのでしょう。

「料理人の感覚に近いのかも。オープンサンドは、小さなビストロ料理みたいでおもしろい。いろんな料理を食べ歩いて、なにか足りないなと感じて、酸味や甘み、苦味を足してつくることで自分のオリジナリティが出てくる。料理をするようにオープンサンドもつくっている」と語ってくれた小山さん。その言葉通り、同店のオープンサンドは味噌が隠し味になっていたり、惣菜系のオープンサンドなのにフルーツが使われたり、既成概念にとらわれない食材の自由な組み合わせが小山さんらしい味わいを生み出しています。

たとえば「和風ナンみそドッグ」には、ふわもちっとした生地の上にたっぷりわさび菜がのり、白味噌を混ぜた合わせ味噌の香ばしいソースにオレンジピールの風味がアクセントを添えています。中には、いんげんの胡麻和えが隠され、さまざまな素材をカマンベールチーズがまとめています。つくねを隠すほど葱で覆った「やっこ葱とつくねのタルティーヌ」は、ベシャメルソースとつくねに加えた八丁味噌が融和した新しい和洋折衷の味わいに仕上がっています。土台には北海道産の粉を使ったフランスパン生地を使うことで、薄くカットしても、もちっと感が出るそうです。また、組み合わせる食材に旬を感じてもらえるように心がけ、ただ食材をのせるだけでなく、求める味わいのために手間も惜しみません。ドライトマトもドライすぎず、噛んだらトマトの水分がややこぼれるぐらいの理想のセミドライにするため、お店で手づくりするというこだわりようです。そんな繊細な感性をつめこんだ同店のオープンサンドは、一品の中にも色彩豊かな味わいを堪能できるのが魅力です。

多様な専門店の力を結集して、独創的で贅沢な味わいに


小山さんがパティスリーを開業して半年後ぐらいに店内にパンコーナーを設け、クロワッサンなどのデニッシュ系パンを販売していたのが同店の始まりです。その後、「小山ロール」の爆発的な人気によって長蛇の列が出るようになり、近隣住民の方々に負担をかけてしまうようになったことが気になったそうです。そこで、もっと地元の方に喜ばれるようなことをしたいと考え、パン屋を独立させたのがきっかけです。ケーキのように毎日食べるものではなく、パンのように日常に溶け込んだものを提供することで、地元の方に還元したいと考えたからです。そんな由来をもつブーランジュリーも、すっかり人気店に成長しました。

「他のパン屋さんたちが知らない製菓材料を幅広く知っていることが、うち独自の味わいになっている。ほんのちょっと使う場合でも、パティスリーやショコラ専門店で使っている素材を気軽に分けてもらって使えるのも、うちの強みだよね」と話す小山さん。敷地内にはコンフィチュール専門店もあり、その豊富なコンフィチュールをパンづくりにも使えるというのも贅沢。

「小さなお店だしオーブンも一つしかないから、一度に100種類とかは提供できないけど、パンの種類は多くて次々と焼きたてパンを並べている。“このパン屋に来ると季節を感じる”とお客さまに思ってもらえるように旬を先取りしていくことも大事。お客さまがいつ来られても新作のパンが並んでいるような商品開発のサイクルも大切ですね」と、小山さんの顧客を喜ばせようとする情熱が、同店の人気の秘訣なのでしょう。

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ル ディマンシュ トアロード店

お洒落なレストランや雑貨屋などが建ち並ぶトアロード通りに佇むブーランジェリー。店名の“ディマンシュ”とは、フランス語で“日曜日”という意味で、「日曜日のようにゆっくりしていってほしい」という想いが込められています。野菜を多く使ったオープンサンドが多く、ランチづかいでも人気です。1階がパン屋、2階と3階はイートインができるカフェスペースとなっており、近辺で働く方々の憩いの場にもなっているようです。

ル ディマンシュ トアロード店
住所:兵庫県神戸市中央区北長狭通3-12-16
電話番号:078-331-8760
営業時間:10:00~20:00(カフェ L.O19:30)
定休日:元旦

ブティックに並ぶ宝石のように可愛いパンをディスプレイ

ブティックをコンセプトイメージとした店内は、鮮やかなピンクの壁面が目を惹く欧風モダンな空間です。そんな雰囲気に溶け込むようにパンの見た目も可愛いく、それぞれがお洒落な宝石のように、センスよく並べられています。

「女性客が多いので、女性に喜んでもらえるようにオープンサンドでは野菜を多く使っています」と店長の林田知恵さん。旬の食材を使ったり、ワンポイントにインパクトのある食材を用いたり、さりげなくアクセントのある味わいになるように考えられています。例えば定番のオープンサンド「きのこのクロックムッシュ」は、雑穀パンの上に4種類のきのことベーコンがベシャメルソースとともにのり、ハーブのタイムがアクセントになっています。

そのほか人気の「ボロネーゼのタルティーヌ」は、手づくりのデミソースがカンパーニュ生地にしみこみ、ベーコンやナス、トマトがのった食べごたえある一品です。男性客からの支持も高い「グリーンカレーパン」は、ナンをイメージした生地にしっかり辛めのカレーソースがのった大人向けの味わい。また、「揚げ茄子とミートソースのパン」は、茄子のカタチにフランスパンを成形し、パンの中心部を開くようにして器のようにした変り種のオープンサンド。素揚げした茄子に手づくりのミートソースを合わせ、パン粉をのせて焼いてあります。

オープンサンドといってもさまざまなパン生地が使われ、異なるソースが手づくりされており、一品一品にこだわりのつまった丁寧な味わいを楽しめるようになっています。オープンサンド向けには、水分量を多くすることで、しっとり仕上げているそうです。シェフいわく「オープンサンドは組み合わせによって無限に広がる楽しいアイテム」なのだとか。季節感も大事にされており、旬の野菜を使ったタルティーヌなども味わえ、飽きることがありません。

隠れ家的カフェ空間で、まったり日曜日な気分を


同店のパンはテイクアウトできるほか、1階でコーヒーなどを注文し、セルフサービスでイートインできるようになっています。2階と3階がカフェスペースで、外観から想像するより広く、ちょっとした隠れ家的空間になっています。また、各階にオーブントースターが置かれており、温めていただけるのが嬉しいところ。イートイン利用しやすいような小ぶりのデニッシュ系パンから、ランチにぴったりなオープンサンドまでバリエーションも豊富です。食パンやバゲットなどもありますが、ちょっと一休みに、ランチ利用にと、カフェでいただきやすいパンが中心に並んでいます。林田さんいわく「フランスとイタリアを融合したようなオリジナルのパンをつくっています」とのこと。カテゴリーにとらわれない日本人が親しみやすいパンをいただけます。

店内に厨房はないのですが、林田さんいわく「パン工房は、お店から車で5分ほどのところにあり、随時焼きたてパンが運ばれています」とのこと。カフェスタッフとシェフとの連携が抜群で、お客さまの反応から随時パンがアップデートされていくのも同店の魅力です。話題の材料などもタイムリーに使われており、同店を訪れると流行の食材に出会えることも多く、シェフたちのアンテナの高さが伺えます。そんな世の中の最先端をさりげなく柔軟に取り入れているところも、“ブティックのような”というコンセプトにつながっていくのかもしれません。今後も話題の食材などが、同店でどのようにパンと組み合わさっていくのか楽しみです。

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オープンサンドの具材の組み合わせは無限大。そのためオープンサンドという小さな世界に、シェフたちのこだわりがつまっています。そんなシェフたちのオリジナリティをぜひ味わってみてください。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年4月)のものです

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