パンのテーブル

挑戦する老舗和菓子店

  • にほんばしえいたろう アトレ恵比寿店
  • 空いろ エキュート品川店
  • 和菓子 結
  • anovan 表参道店

にほんばしえいたろう アトレ恵比寿店

文政元年(1818)創業の「榮太樓總本鋪」が立ち上げたニューブランド。「あめや えいたろう」に続く新ブランドで、アトレ恵比寿店に出店しています。ポップでカジュアルなお店には、小ぶりの袋に詰められた「榮太樓總本鋪」の商品がズラリ。なかでも人気は「美味どら」と「ふわどら」です。

にほんばしえいたろう アトレ恵比寿店
住所:東京都渋谷区恵比寿南1-5-5 アトレ恵比寿3階
電話番号:03-5475-8353
営業時間:10:00~21:30
定休日:無休

できたての美味しさを知って欲しい

榮太樓總本鋪の和菓子をもっと身近に感じて欲しいという想いから立ち上げられた「にほんばしえいたろう」。定番アイテムも揃えつつ、今の時代に合わせたパッケージデザインにすることで、色々な世代に受け入れられやすいように工夫が凝らされています。

「にほんばしえいたろう」の看板商品は「美味どら」と「ふわどら」と名付けられたどら焼きです。江戸時代から続く老舗で培った技術を活かし、つくられるどら焼きは絶品。「できたての生菓子のおいしさを気軽に楽しんで欲しい」という想いが込められたどら焼きは、アトレ恵比寿店限定販売とあって、この味を求めて連日多くの人が訪れています。

「美味どら」(つぶし餡ともち入りの2種)は、北海道産小麦を使用してつくられるしっとり生地が特徴。シンプルだからこそ風味と食感を大切につくられています。

「ふわどら」は、ふわふわのパンケーキのような生地を使用しています。「ぜひ、2種類の食べ比べを楽しんで欲しいですね。食べやすさも魅力です」と店長・戸川さん。どちらも榮太樓自慢の餡を使用しており、優しい甘みが楽しめます。数種類ずつ味を食べ比べられる小さめのサイズも嬉しいポイント。日本の四季を感じて欲しいという想いも込め、期間限定で販売されるシーズナル商品も数種類揃います。季節の移ろいとともに、味の変化も楽しめます。

小さな食べきりサイズの包装に技あり!

どら焼きの他にも、店内には「榮太樓總本鋪」の代名詞でもある「梅ぼ志飴」や「黒糖かりんとう」などの商品も揃います。注目したいのは、その販売方法。本店とは違い全ての商品が小さな袋で販売されています。一袋200円というリーズナブルな価格で購入できるうえ、約40種全て中身が展示されており、どのようなお菓子なのかを確かめながら購入できます。
なかでもイチ押しは「金じるし」と名付けられた金の袋に入った和菓子5種。こちらは、1袋350円と価格帯を変え、素材にこだわったプレミアムな一品。初代榮太郎が生み出した甘納豆の元祖「甘名納糖」の進化形である「甘名っ子」や、稀少な長野県産黒胡麻100%使用の「ぷるるんゼリィ 黒胡麻」など、食べてみたくなる品が揃います。

「開発中は、200円から350円へと価格帯が変化するため、果たして売れるのかという心配もありましたが好みの品をセレクトできるBOXのアクセントとして購入していただけることが多い商品になりました。」と戸川さん。お客様のショッピング風景を見ていると、贈り物での利用と兼ねて、自分用にも購入するという方を多く見かけました。手の届きやすい価格が「ちょっと試してみたい」というお客様のニーズにマッチしているようです。

このように「にほんばしえいたろう」では、パッケージや商品サイズで「手に取りやすさ」を演出し、老舗の技術で築いてきた確かな味をもっと身近に感じられるよう工夫されていました。現代に寄り添う「日本のおやつ」として、これからも多くの人に愛され続けていくでしょう。

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空いろ エキュート品川店

創業133年の老舗「ぎんざ 空也」の五代目・山口彦之さんが手がけるブランド「空いろ」。エキュート品川店の他にも、エキナカ商業施設を中心に4店舗出店しています。「あんこを世界へ」という想いからスタートし、「ぎんざ 空也」の持つ餡へのこだわりを抽出した遊び心あふれる品を揃えています。

空いろ エキュート品川店
住所:東京都港区高輪3-26-27 JR東日本 品川駅構内
電話番号:03-3443-7440
営業時間:月~土8:00~22:00、日・祝~20:30
定休日:無休

和菓子への危機感と出会いをきっかけに

2011年に立ち上げられた「空いろ」。お話を伺ったのはブランドを手がけた空也 五代目である山口彦之さんです。彼が「空いろ」を立ち上げた背景には、大きく3つのきっかけがあるといいます。

1つ目は、あるイベントで行われたアンケート結果。「羊羹を食べたことがありますか?という問いに『はい』と答えた人の割合が40%という数字だったんです。この数字を聞いた時、和菓子の未来に危機感のようなものを覚えましたね」と山口さん。

2つ目は、「空也」の餡をつくる現場に入り、勉強のため2007年から2年間、和菓子の専門学校に通ったこと。自分たちのつくっている和菓子のことしか知らなかった山口さんですが、専門学校で学ぶことで「一般的な和菓子づくりと、「空也」の違いが見えた」と言います。和菓子屋を継ぐという同じ目標を持った同級生との出会いもその後の情報交流を生んでくれたそうです。

3つ目は、「いずれは世界の人にも、餡をおいしいと感じて欲しい」という想いです。これら3つのきっかけから老舗和菓子店「空也」から、全く新しいカタチの「空いろ」とうブランドが立ち上がっていったのです。

固定概念の殻を破り新たな世界へ

まず特徴的なのが従来の和菓子とは全く異なる斬新なパッケージ。手に取った時、思わず「あれ、これ和菓子だったの?」と思ってしまいそうなほど、ポップでキュートなデザインです。「手にとってもらえなければ意味がないと思っています。パッケージに惹かれて買っていただけたお客様にもおいしいと思っていただければ嬉しいですね」と山口さんは語ります。

「空いろが誕生する少し前、2010年頃はまだ、和菓子はつくり手もお客様も「和菓子」というものへの固定観念が強く、なかなかその殻を破れませんでした。こういった新しいブランドを立ち上げることでその殻を破り、受け入れやすい和菓子をつくっていきたいと思ったのです」と山口さん。

また「あんこは豆のジャム」という言葉も「空いろ」を語るには欠かせないワードでしょう。同店で使用される餡は、北海道十勝産の小豆をほどよく残している「つぶあん」と、素材を皮から丸ごと濾してつくられる「〇(まる)あん」などを揃えています。看板商品のどら焼き「たいよう」や、つぶあんをサンドしたクッキー「つき」、餡を瓶に詰めてジャムのように楽しめる「ほし」などネーミングもユニークです。

「専門学校での講師の仕事を始めて、和菓子と洋菓子という括り自体が既にナンセンスになりつつあると感じています。菓子づくりを学びにくる学生は、ほとんどが海外の人です。それほど日本の菓子づくりの技術やアプローチは世界に認められているのです。」と山口さん。このように世界に認められている「日本の菓子」。和菓子と洋菓子の壁を取り払い、より広い視野をもって世界に認めてもらえるようになっていけたらいいと、熱い想いを語っていただけました。

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和菓子 結

寛永11年(1634)創業の名古屋で有名な御菓子所「両口屋是清」が「時代を超えて、国境を超えて、新たな出会いにより生み出される新しい和菓子」、「人と人とを結びつける和菓子」というコンセプトのもと、手のひらサイズの和菓子を提案する新ブランドです。

和菓子 結
住所:東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-55
NEWoMAN2F エキナカ
電話番号:03-3353-5521
営業時間:8:00~22:00 土・日・祝 8:00~21:30
定休日:不定休

懐かしいのに新しいチョコ×餡の出会い

2016年4月に誕生した「和菓子 結」。今回は、広報の近藤美香さんにお話を伺いました。
名古屋で380年以上もの歴史をもつ和菓子店「両口屋是清」ですが、エキナカ商業施設に出店するのは初めてのこと。「エキナカへの出店は未知の世界であるため、社内でも最後まで議論され続けました。しかし新しいことにチャレンジしてみようと出店を決定しました。」
新宿という若い世代が多くトレンドの移り変わりが激しい場所にあえて出店することで、時代の流れに乗りたいという考えもあったと言います。その狙いとチャレンジ精神が活き、「和菓子 結」は多くのメディアに取り上げられ人気ショップのひとつとなっています。

そんな同店の看板商品は「ふゆうじょん」。たっぷりの餡が入った焼き菓子をチョコレートでコーティングしたお菓子です。 実は、この「餡×チョコレート」という発想はすでに両口屋是清の中では、10年以上前から生み出されており、販売するタイミングを考えていたそうです。「和菓子 結」の立ち上げ時、そこからヒントを得て、チョコレートの種類を増やしたり、トッピングを施したりとさらに進化させたのが「ふゆうじょん」です。
「餡とチョコレートは合うということは分かっていたものの、なかなか大々的に商品化はできていませんでした。今回の『ふゆうじょん』の誕生はそういった長年の積み重ねが生んだと言えますね。」と近藤さん。

なんとチョコレートコーティングの作業は職人がひとつひとつ手作業で行っているというから驚きます。焼き菓子と餡との絶妙なハーモニーを生み出すには、0.5mmという決められた厚みでかけられていくチョコが重要なのです。

会話が弾む!ワクワクする和菓子とは

若い女性のいろんな味を少しずつ食べたいという希望を取り入れ、フレーバーも「ビターちょこ」、「ミルクちょこ」、「抹茶ちょこ」、「いちごちょこ」、「ホワイトちょこ」、「きなこチョコ」の6種類を用意。「開発時は、さまざまな種類のチョコレートを試しました。社内でアンケートをとり、ランキング上位に入ったものがこの6種類です」と近藤さん。

「ふゆうじょん」だけでなく「和菓子 結」の商品は全て、贈った人との会話を生み出してくれるエッセンスがちりばめられています。例えば、「あまのはら」は、日本の象徴である富士山の四季を一棹で表現。切り分ける場所によって異なる富士山が顔を出します。「実はこれ、中身餡なんだよ」や「この棹菓子、切るととっても面白いんだ」といった、ちょっと語りたくなる面白さが含まれているのです。

他にも、たっぷりの小豆粒餡をもっちりとした皮で挟んだどら焼き「つぶらか」や、季節によって異なる品が並ぶ「なまささら」など、「ひと口サイズの日本の美」というコンセプトを大切に、こだわりの品々を提供しています。
そんな和菓子だからか、お菓子を選ぶお客様の顔も自然と笑顔があふれていました。贈る人の喜ぶ顔を想像したり、「あ、これかわいいな、あの人に贈ろう」など商品から相手を想像したり……たったひとつ、小さな和菓子でありながらも、そのお菓子が人に与える影響は無限に広がっていくのでしょう。

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anovan 表参道店

2015年4月にオープンした、日本初の生ブッセ専門店「anovan 表参道店」。亀屋万年堂のブッセ「ナボナ」を進化させた新感覚のスイーツで、口に入れた瞬間にほどけるような優しい生地の食感が楽しめます。

anovan 表参道店
住所:東京都渋谷区神宮前4-26-22 原宿Hビル1階
電話番号:03-6434-7411
営業時間:11:00~20:00 ※売り切れ次第閉店
定休日:無休

日本初の生ブッセ専門店誕生のきっかけ

創業80年の老舗和菓子店「亀屋万年堂」が手がける新ブランド「anovan」。世間ではブッセと呼ばれているスイーツを「ナボナ」と名付けて販売している「亀屋万年堂」。この美味しさをもっと多くの人に知って欲しいと立ち上げたのが同ブランドです。

「ナボナというお菓子は発売から50年以上が経っており、どうしても購買層は50代から上の世代が多く、若い世代にはなかなかおいしさが伝わっていないという印象でした。そこで新しいブランドを立ち上げることで、若い世代にもこのおいしさを知って欲しいと考えたのです」とプロモーション担当の有山さん。

オープン前は、30代~40代のお客様をメインターゲットとしていたものの、表参道という土地柄も手伝いさらに若い世代10~20代のお客様にも「anovan」は受け入れられる存在となっています。また原宿・表参道を訪れる海外の人にも「anovan」は人気。お土産に持って帰りたいと言われることが多くなったため日持ちのする「表参道ショコラブッセ」という商品も開発したといいます。

「実はanovanという店名は、逆さから読むとナボナと読めるんです。ここにはひっくり返るくらいおいしいナボナをつくりたいという、想いがこもっています。ちょっとダジャレではあるんですが(笑)。それだけナボナという商品のおいしさには自信を持っています。」と有山さんは語ります。

こだわりから生み出される優しい食感

「ナボナ」をベースにして誕生した生ブッセは、その素材や製法にもこだわりがあります。特にこだわったのは口どけの良さ。メレンゲをたて、小麦粉などを混ぜていき、生地が出来上がったらすぐに焼成。材料を混ぜるタイミングや、湿度、室温、そして細かな製法の工程に至るまで、すべて徹底的に管理し、職人の確かな技術のもとでつくり出されているからこそ、この口どけのよさが生まれるのです。

生地だけではなく、フレーバーをつくり出すクリームにもおいしさの秘訣は隠されています。人気の「フロマージュ」や「プレーン」に使用されるカスタードクリームは、新鮮な牛乳と卵黄を独自の比率で配合し、炊きあげたオリジナルのカスタードを使用。生クリームは乳脂肪分48%の最高級純正生クリームを使うことで、フレッシュでありながらもコクがあり、シャープな口溶けを楽しめます。

期間限定のフレーバーの登場も楽しみのひとつ。店舗販売スタッフの意見なども取り入れつつ、新しい味を常に提供し続けています。季節ごとに違った生ブッセに出会えるのも通いたくなるポイントでしょう。

「ナボナという昔から日本で親しまれてきたお菓子から、生ブッセという新しいお菓子が誕生しました。開発時から、少しでもおいしく召し上がっていただけるよう試行錯誤を繰り返し、現在の形になっています。プロモーション担当である私が申し上げるのも恐縮ですが、自社製品でありながら、ついつい食べたくなるほどクセになるおいしさなんですよ」と有山さん。現場スタッフの意見も取り入れながら商品開発を行っている「亀屋万年堂」。社員ひとりひとりが、商品への愛情を忘れず、その商品を愛し抜いていることがじんわりと感じられる温かな空間で味わう生ブッセの味わいは格別です。

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「老舗」が手がけたセカンドブランドには、職人さんはもちろん、ブランド立ち上げに携わった全ての人の想いがいっぱい詰まっています。ポップなパッケージに心を躍らせ、口に運べば、こだわり抜いたおいしさが口いっぱいに広がります。今日はニュータイプの和菓子をおやつにしてみてはいかがでしょう?

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年5月)のものです

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