パンのテーブル

夏こそおいしい!冷やしておいしいパン

  • ブーランジェリー ル・リアン
  • パン・ピジョン
  • ヴァン ドゥ リュド尾山台店

ブーランジェリー  ル・リアン

活気のある高円寺の商店街にあるベーカリー。地元で18年間愛されてきたベーカリーがオーナーチェンジし、2017年2月に「ブーランジェリー ル・リアン」と店名も新たにオープンしました。ソフトな食感のホテルブレッドやプルマン(山食)など昔から親しまれてきた食事パンをはじめ、酵母種を使い発酵にじっくり時間をかけてつくるベーグルやカンパーニュ、ライ麦パンなども曜日限定で加わります。

ブーランジェリー ル・リアン
住所:東京都杉並区高円寺南3-21-14
電話番号:03-3315-5567
営業時間:10:00~19:00
定休日:水曜

高円寺・夏の名物「アイスパン」を継承

オーナーシェフの溝口純一さんは、「シェ・リュイ」、「ダロワイヨ・ジャポン」での修業を経て自らの店を始める際に、業者さんからこの店舗物件を紹介されました。この場所で長年ベーカリーを営んできた店主さんが、事情で店をたたむことになったこと、たくさんの常連さんがいて、それぞれに長く食べ親しんできたパンがあったことを知り、7割の商品をほぼ元のままの形で引き継ぎ、再現することにしたそう。
「以前の店主さんがつくっていたのは、誰でも安心して、気軽に毎日食べていただける、買いやすい価格のおいしいパン。それは私が今までやってきたこと、これからやろうとしていたことと一致していました。店名は変えましたけれど、地域に根差したパン屋として、昔から店に来てくれていたお客様を大切にしたほうがいい、と思ったのです」(溝口さん)。



丸いブリオッシュにバニラアイスをはさんだ「アイスパン」も前店から受け継いだ、高円寺の夏の名物です。レジで注文後に、バニラアイスをはさんでもらう、夏にぴったりのおやつパン。 ブリオッシュは専用に焼いたもので、溝口さんは、ブリオッシュ生地にレモンピールを練り込んで、より爽やかなテイストにバージョンアップ。商品名を「ブリオッシュアイス」としました。
「冷たくして食べるパンはパサつきを感じやすいです。アイスとパンを一緒に食べたときのしっとり感がほどよくなるように、ブリオッシュ生地の水分量を多めに、卵と牛乳で90%程度にしています」(溝口さん)。

もう1つ、アイスとコラボしたパンが、「シューパイアイス」です。シュー生地をパイ生地で包んで焼きあげ、やはり注文後にアイスをはさんでお渡しします。「夏以外の季節は、カスタードのシュークリームをつくっていますが、夏季はシュー皮にもひと工夫を加え、カスタードクリームをバニラアイスに替えています」(溝口さん)。食べ進むうちにアイスが少し溶け始めても、パイ生地で外側のパリパリ感が保たれます。

「ブリオッシュアイス」は6月から、「シューパイアイス」は5月から販売しています。「夏向け商品のスタート時期を早める理由は、5月でもアイスが食べたくなるくらい暑い日がありますし、SNSなどで徐々に話題になって、夏本番にはしっかり認知されている、というメリットがあるんです」(溝口さん)。
※2017年は9月初旬で販売終了。

夏場は、さらにじっくりと発酵に時間をかけるチャンス


そのほか、夏向けアイテムとしては、チョリソにブラックペッパーをたっぷりまぶしてパン生地を巻き付ける「ロングチョリソ」などスパイシー系を考えているそう。新商品の甘夏ピールを混ぜ込んだ「甘夏フレーキー」は、デニッシュと菓子パンの中間のような、懐かしいおいしさです。

同店で安定した人気があるのが、じっくり発酵させてつくる塩パン、山食パン、プルマン(角食)などの食事パンです。「おじいちゃん、おばあちゃんも、誰にでもおいしく食べていただける、ふんわりやわらかで風味のよいものをつくっています」(溝口さん)。
塩パンは、生地にラードを使って、よりパリッとした焼きあがりが特長で、1日6回焼成し、焼きたてが棚に並びます。ホテルパンは、バターと卵、ブルマン(角食)は生クリームと四つ葉バターをふんだんに使い、どちらも早めに売り切れることも多いそう。

現在は製造を溝口さん1人で行っているため、曜日限定にしているパンもありますが、アイテム数は55種類くらい。「パン生地はじっくり寝かせることで、粉の持ち味をより引き出すことができます。夏場は客足も少し落ち着いてくるので、バゲットをオーバーナイト製法にするなど、長時間発酵のパンをつくることにも取り組んでいます。食パンは24~48時間発酵にいずれはしていきたいです」(溝口さん)。


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Pain Pigeon(パン・ピジョン)

鳩ヶ谷駅近くにあるパン・ピジョンは、「風見鶏」で修業した八村さんご夫婦が営む人気店。パン生地は10種ほどあり、120種類のバリエーションを展開しています。店の人気NO.1はクリームパン。夏季は梅雨明けごろを目安に、冷やしておいしい「夏のプレミアムクリームパン」に衣替えして販売されています。

Pain Pigeon(パン・ピジョン)
住所:埼玉県川口市里1245-1
電話番号:048-287-1050
営業時間:7:30~19:00
定休日:月曜・第2火曜

人気のクリームパンは夏バージョンに

多いときで1日500個出るという、同店のクリームパンは、菓子パン生地に自家製のカスタードクリームを包んで焼きあげ、カスタードとホイップドクリームを合わせたクリームを後詰めするというWクリームが特長です。常温で販売する商品ですが、夏場は保存性を考えて冷蔵するため、どうしても生地がパサつきがちに。そこで、焼き方を変更して、毎年梅雨明けごろから9月末ごろまで「夏のプレミアムクリームパン」として販売しています。
「通常のクリームパンと同じ菓子パン生地に、ビスケット生地を渦巻状にしぼり、低めの温度で8~10分間かけてじっくり焼いています。ビスケット生地をのせることで生地が暴れず、形が整い、焼き色は薄めですが、しっかり焼き込んでしっとりふわふわとした食感に。トロリと滑らかなクレーム・ディプロマット(カスタードクリームに生クリームを合わせたもの)を後詰めして、冷やしてもおいしく食べていただけます」(八村さん)。

同店では、今年の夏からクリームパンの売り方を変更したそう。メディアでもたびたび取り上げられて、クリームパンを目当てに来店するお客様が多いため、従来は店に入って真っ先に目につくテーブルにクリームパンを置いていました。すると、入り口付近が渋滞しがちに。また、クリームパンでトレイがいっぱいになり、そのほかのパンは素通りしてレジへ、というお客様も多かったのだそう。
「そこで、クリームパンはレジで会計のときにお渡しする方式に変えました」と八村さん。売り場テーブルに商品がないと、『あれ?もう売り切れ?』という勘違いはあるものの、そこは大きなPOPの掲示とスタッフの声かけでフォローし、売り場の流れは格段にスムーズになりました。

新商品は冷やしてもおいしいカフェオレ風


2017年春に新登場した「カフェオレクリームパン」は年間を通して販売するアイテムで、暑い季節には冷やしてもおいしくいただけます。菓子パン生地にコーヒー餡を包んで焼きあげ、保形性のよいホイップドクリームを後から注入。食べるときに餡とクリームが混ざり合って、カフェオレの味を楽しめます。
「作業性を高めるために、てっぺんからクリームを注入しているのですが、穴を隠すのに麦チョコを使用しています」とパティシエ出身の八村さん。実は「1つのパンに使う素材はなるべく統一感を持たせる」というのがこだわり。スタッフたちにも常々そう教えているため、「そこは麦チョコじゃなくてコーヒービーンズのチョコでしょ!?」と鋭いツッコミもあったそうですが「買いやすい価格に抑えることも大切な要素なんです」(八村さん)。

総菜パンで、夏に向けての新しいメニューは「アボカドフライとパストラミのフォカッチャ」。居酒屋で食べたアボカドの天ぷらをヒントにしたそう。カレーパンやコロッケパンなどにもこだわりがあり、フライ物は得意のジャンル。アボカドは卵白に小麦粉を溶いて塩を混ぜたバッター液をくぐらせてパン粉をつけ、カラッと揚げてあります。コショウがピリリと効いたパストラミ、たっぷりの野菜と、玉ねぎ入りのタルタルソースなど具材がモリモリのボリューミーなサンドです。

厨房にはパン窯のほかにコンベクション・オーブンを備え、タルトや焼きドーナッツ、シフォンケーキなど焼き菓子類も充実しています。毎日焼き上げるタルト生地は、水分を飛ばしてよりサクッとした焼き上がりに。「焼き菓子は口に入れた瞬間に崩れるようによく焼く」がモットーで、季節に合わせてどんなフィリングをのせようかとパティシエ魂がうずく、おすすめのアイテムだそう。この日は、オレンジをたっぷりのせた「オレンジタルト」、クリームチーズのアパレイユを焼き上げた「フロマージュ」が並んでいました。

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ヴァン ドゥ リュド尾山台店(VENT DE LUDO)

フランス・ブルターニュの出身で、MOF(フランス国家最優秀職人章)保有のリュドヴィック・リシャール氏が監修するベーカリー。そば粉、りんご、ゲランドの塩など、ブルターニュならではの素材を使った、素朴で地方色豊かなパンや焼き菓子が並びます。鮮やかなブルーの店舗外観はブルターニュの空と海をイメージ。店内にはイートインスペースが設けられ、そば粉のガレットや惣菜、シードル(りんごの発泡酒)などをいただくことができます。

ヴァン ドゥ リュド尾山台店(VENT DE LUDO)
住所:東京都世田谷区等々力2-19-15
電話番号:03-6809-7405
営業時間:10:00~20:00
定休日:不定休

冷蔵・冷凍して食べる、さわやかな夏のシュトレン



2016年の夏に新登場した同店の「サマーシュトレン」、2017年は7月半ばから9月初旬まで販売。夏のシュトレンを開発されたシェフブーランジェの渡曾毅史さんにお話を伺いました。
「暑い季節にはベーカリーの売り上げがどうしてもダウンします。そこで、冬の季節商品でお客様にも好評だったシュトレンを夏向きにアレンジすることを考えました。冷たくして、おいしく食べられるパンがありますよ、という食べ方の提案でもあるのです」

同店のサマーシュトレンは夏にぴったりのマンゴーを主役にレシピを組み立てていったそう。「ベースの生地は、自家製のルヴァン種とイーストを併用し、通常のシュトレンとさほど変えてはいないです。ドライマンゴーをどうしたらうまく生かせるかにポイントをおき、生地に自家製のキャラメルとパッションフルーツのクリームを練り込みました。レーズン、クルミ、クランベリーなどの素材をたっぷり混ぜ、シロップ漬けのオレンジをのせて焼成。輪切りのオレンジがアクセントになって見た目にも食欲が湧きますし、マンゴーやオレンジの果実感と酸味を効かせて、さわやかな夏向けのテイストに仕上げています」(渡曾さん)。

食べ方は、常温・冷蔵・冷凍のいずれでもOK。「おすすめは冷蔵庫で冷やして食べる方法です。適度に冷やすと生地がしまって薄くスライスしやすくなります」(渡曾さん)。また、冷凍するとサクサク・シャリッとした食感も楽しめます。アイスティーやシャンパーニュとの相性もよく、シードルと合わせれば、ブルターニュ風のおしゃれな夏のティータイムに。

「昨年は8月から発売し、メディアなどでも紹介されて、大きな反響がありました。夏休みやお盆などで人の交流も多いですし、常温で2週間ほど保存がきくので手土産としての需要もあります」と店長の廣石真之さん。
「サマーシュトレン」は、いちばん目立つ正面のテーブルにフェア商品と一緒に、また焼き菓子類を並べた棚に並べ、お客様の目に留まるようにしてあります。

「ソバの実」はブルターニュの名産品そば粉を使ったパンも人気です


自らの店舗は持たず、後進の指導に尽力するリュドヴィック氏。同店開業にあたり、渡曾さんたちスタッフは現地での研修を受け、パンづくりを学ぶとともに、ブルターニュのテロワールや豊かな食に触れてきました。その後もリュド氏は年1回のペースで来日し、滞在中はスタッフ一同でみっちりと新商品の試作を重ねます。
「リュドのパンづくりは、粉の扱い、生地との対話、1つひとつの工程をとても丁寧に行います。また、色彩感覚の大胆さに『こういうのもありなのか!』と驚かされることも多いです。パン生地の基本はリュドのレシピを忠実に再現し、「シンプルであり、個性的」というリュドのスタイルを十分に咀嚼したうえで、合わせる素材などは日本人の味覚に合うように、また、お客様の年齢層などに合わせてアレンジもしています」(渡曾さん)。

同店では期間限定新商品の発売やフェアなどで10日ごとに商品の入れ替えを行っています。
7月限定で登場したのは、「ブリオッシュフリュイ」の夏向けバージョンで、パイナップルとマンゴーのフィリング。口どけのよさが特長のブリオッシュに、ミルクカスタードとフルーツをたっぷりはさみ、どちらも冷やして食べてもおいしいアイテムになっています。

また、そば粉を使ったパンのフェアも、随時行われているそう。 「りんごのそば粉パン」は、いわばブルターニュの名産が1つになったパンで、同店の人気NO.1商品。そば粉を使ったバゲット生地に、シナモン風味で煮上げたリンゴの角切りがゴロゴロ入っています。グレーがかった褐色のパンは、見た目はかなりハードそうですが、食べてみると意外にもやわらかで、もっちりとした食感。そば粉独特の香りにシナモンが重なり、りんごの甘酸っぱさがよく合います。
「そば粉は香り、味わいにクセがあり、何を合わせるか難しいところもありますが、シナモンを効かせた煮りんごは、ガレットでもおなじみの相性のよさ。また、同じ生地でゴルゴンゾーラを練り込んだバゲットも、クセのある素材同士で、よく合います」(渡曾さん)
クロワッサン、バゲットにも、そば粉入りがあり、ブルターニュが育んだおいしさに出会えるベーカリーです。

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※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年8月)のものです

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