パンのテーブル

シェフこだわりのシュトーレン

  • ペストリー&ベーカリー GGCo.(ジージーコー)
  • BOULANGERIE L’ecrin(ブーランジェリー レカン)
  • ブーランジェリー キシモト

ペストリー&ベーカリー GGCo.(ジージーコー)

東京マリオットホテル1階の「ラウンジ&ダイニング G」内に併設されたショップ。Gourmet(グルメ) & Gift(ギフト)をテーマに、毎朝ホテルで焼き上げるパンやパティシエが丁寧につくりあげるケーキが並びます。近隣オフィスワーカーのランチ需要に応えた、気軽に買いやすい価格や、NYテイストのカジュアルな雰囲気も魅力です。

ペストリー&ベーカリー GGCo.(ジージーコー)
住所:東京都品川区北品川4-7-36 東京マリオットホテル1F
電話番号:03-5488-3929
営業時間:10:00~20:00
定休日:無休
※クリスマスブレッド販売期間:2017年11月4日(土)~12月25日(月)

クランベリーのマジパンを忍ばせた「オリジナルシュトーレン」

2013年の開業から4シーズン目を迎えたGGCo.のシュトーレン。2017年は、毎年定番の「オリジナル シュトーレン」と、新たに「ダーク シュトーレン」をラインアップに加え、それぞれ大・小を11月4日から販売しました。丸いフォルムをしたシュトーレンについて、ベーカリーシェフの岡本晋さんにお話を伺いました。

「当ホテルは、ロケーション的にも大人のお客様が圧倒的に多いので、洋酒をふんだんに使った大人のテイストが特長です。さらにオリジナルには3種類のスパイス、ダークにはビターなカカオを使い、甘さの中にスパイシーさ、カカオの苦みが際立つよう複雑で味わい深く仕上げています」と岡本さん。
ベースとなる生地は、小麦粉『リスドオル』をメインに使用し、イースト使用の中種法で風味よく、発酵菓子らしい、ほどよいひきが出るように仕込んでいます。バターは40%、卵は入れず、生地自体の甘さは抑えめにしてあるそう。

GGCo.はマリオットブランド発祥のアメリカをテーマにしており、食材にも積極的にアメリカのものを取り入れています。「オリジナル シュトーレン」は、フルーツの漬け込みにアメリカのバーボン・ウイスキー「メーカーズマーク」を使用。「原料に冬小麦を使ったバーボンで、その香りは『バニラ、オレンジのよう』と表現されます。小麦粉やフルーツとの相性のよさで選びました」(岡本さん)。
生地に混ぜ込む具材は、レーズン、イチジク、クランベリー、レモンピール、オレンジピールと、ナッツはアーモンド、ピーカン、クルミ。前シーズンよりナッツとフルーツを増量してベーカーズパーセントで120%に。芳ばしさとフルーティさのバランスを重視して、ナッツとフルーツは6:4の比率にしています。そして、クランベリーのペーストを混ぜ込んだ、紅色が鮮やかなマジパンペースト。

「クランベリーは洋酒に漬けると沈んだ色合いになってしまいますが、マジパンに混ぜることで、マリオットホテルのシンボルカラーである『マリオットレッド』に近い色を表現することができました」(岡本さん)。
<大> は、棒状に伸ばしたマジパンを生地で包み、渦巻状に巻いて成型。 <小> は平らに伸ばしたマジパンを生地でサンドし、いずれも丸い型で焼きあげます。型にふたはせず、窯伸びさせて軽やかに仕上げています。
スライスしたときに表れる、クランベリーの赤が印象的です。

ビターな大人のショコラ味

「ダーク シュトーレン」は、オリジナルより生地の砂糖量をさらに減らして、よりビターなテイストに仕上げ、カカオ68%のココアパウダーを使った生地には、ヴァローナ社のカカオニブ、アーモンドスライス、くるみを練り込んであります。マロンペーストを練り込んだマジパンを、オリジナルと同じ方法で生地と合わせ、ラム酒とブランデーに漬け込んだ栗渋皮煮と黒イチジクは、それぞれ1/4、1/2の大きめカットで生地の中に。
焼成後の仕上げは、溶かしバターに漬けてからバニラシュガーをまぶし、さらに表面にココアパウダーをまぶしつけます。

「ダークは、大きめの具材をあふれるほどにリッチに盛り込んで、洋酒とカカオをふんだんに香らせています。求めたのはしっとりした食感。生地感よりもフルーツ、ナッツを味わってもらうために、生地は具材をつなぎ、中に香りを抱き込んで、カットしたときにふわっと香りを解き放つ役目、というイメージです。これまでの概念を塗り替えるシュトーレンができたと自負しています」(岡本さん)。

仕上げのコーティングにもGGCo.らしさがあり、オリジナル、ダークともにバニラシュガーを使用。グラニュー糖と粉糖の中にマダガスカル産バニラビーンズのさやを入れておき、香りをうつしたシュガーで、大人テイストのシュトーレンに甘やかな香りが加わり、おいしさにさらに奥行きが生まれます。

「シュトーレンを扱うベーカリーが増え、認知度が上がって年々販売数が増えています。2017年は前年より20%ほど多めに仕込んでいますが、予想以上に伸びています。『昨年おいしかったので』とリピーターのお客様も多く、今年はバリエーションを増やして「選ぶ楽しさ」や食べ比べる楽しさを狙いました。
シュトーレンを一過性のブームに終わらせず、ベーカリーの冬の季節の華として盛り上げていきたいですし、各店自慢のシュトーレンを集めたイベントなども開催されたら、是非参加していきたいです」(岡本さん) 。

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BOULANGERIE L’ecrin(ブーランジェリー レカン)

銀座の老舗フレンチ「レカン」が手がけるブーランジェリー。レストランで供されるパンのおいしさには定評があり、2014年にテイクアウトができるショップをオープンしました。2017年からブーランジェリー・シェフを引き継いだ菊地勇二さんは、食事系のパンに加えて、デニッシュやペストリー類の充実にも力を入れています。

BOULANGERIE L’ecrin(ブーランジェリー レカン)
住所:東京都中央区銀座5-11-1 ミレニアム銀座B1
電話番号:03-5565-0780
営業時間:10:30~21:00
定休日:月曜(祝日の場合は営業、翌日休業)
※クリスマスブレッド販売期間:2017年11月21日(火)~12月31日(日)売切れ次第終了

オレンジ・リキュールが香る「シュトーレン・グランマルニエ」

同店では、毎年趣向を変えたシュトーレンをつくってきました。2017年は2種類のオレンジリキュールとエスプレッソリキュールを使った「シュトーレン・グランマルニエ」です。シェフの菊地勇二さんにお話を伺いました。
「ベースの生地は、これまでのレシピを基本にしつつ、粉の配合を少し変えました。バゲットなどに使っているレカン専用のブレンド小麦粉を新たに取り入れ、国産小麦の薄力粉とブレンド。それによって焼き上がりはふっくら、内層にほどよい気泡が生まれて、よりベーカリーらしい仕上がりになり、仕上げのバターもしっかりと浸透します。また、ヘーゼルナッツプードルを練り込んだマジパンに合わせて、これまでの澄ましバターを焦がしバター(ブールノワゼット)に代えました」(菊地さん)。


「シュトーレンづくりでは、何よりも香りが大切」と菊地さん。ポイントになるのはフルーツを漬けこむ洋酒で、10月早々からどんなシュトーレンにするかを考え始め、洋酒のドーバーさんにも相談しながら、ラポストールのオレンジリキュール「グランマルニエ」に決めたそう。
「グランマルニエの中でもベーシックな『コルドン・ルージュ』だけだと、最初にふわっとオレンジが香り、その後に苦みが来ますが、今ひとつ物足りない。オレンジの苦みをエスプレッソリキュールの苦みが追いかけ、最後に『グランマルニエ・エクストラクト』で濃縮されたオレンジの香りが抜けていく、という組み立てにしました」(菊地さん)。
心地よい音楽のように、香りの起伏を楽しめるシュトーレン、クリスマスまでのアドヴェントに本来ちょっとずつ食べるものですが、つい次の一切れに手を出したくなる味わいを目指したそう。
フルーツは、オレンジピールとドライの国産みかん、桃、デーツを使い、ナッツはクルミ、アーモンドスライス、ピスタチオ。オレンジと相性のいいカカオニヴを隠し味的に効かせてあります。

「毎年違うシュトーレンを考えるのはプレッシャーでもありますが、仕上がりの味を想像して、それに向けて組み立てていくことは楽しみでもありますし、今回はオレンジをテーマに狙い通りのおいしさに仕上がりました」(菊地さん)。
シュトーレン製造は年末に向けて忙しくなる時期にあたりますから、準備段階から計画的に取り組んでいくことが大切。菊地さん含め、4人の職人さんがパン製造の傍ら、1回に30本ずつ、週3のペースで約10回をスケジュールに組み込んで約300本をつくりました。「業者さんなど、その道のプロの方に相談すると新しい視点が開け、お互いが持っている知識を合わせるといいもの、面白いものが生まれます。いろいろなチャレンジをして新しいものをつくることは喜びが大きいです。忙しくて大変!と思うよりも、楽しもう!それは、下の子たちにもいちばんに伝えていきたいことです」(菊地さん)。

11月終わりごろからシュトーレン売り上げがピークに

同店のシュトーレン販売開始は11月21日から。事前にLINEや店内のPOPでアナウンスしていたこともあり、スタートダッシュがとくに好調で、12月半ばまでに200本以上を売り上げたそう。「シュトーレンはどんなふうに楽しむものか浸透してきたようで、クリスマスケーキを買うよりシュトーレンなら長く楽しめる、というお客様ですとか、いろいろなお店のシュトーレンを食べ比べる、という方も増えているようです。前年からのリピートで、今年のレカンのシュトーレンを楽しみにしてくださるお客様も多く、うれしいことです」(菊地さん)。

対面式のショーケースに並ぶ、美しいフォルムのパンの数々にも目をひかれます。もとはパティシエの経歴を持ち、その後ドミニク・サブロンにてパンの修業に没頭したという菊地さん。2014年のオープン前からレカンの工房に入り、とくに折り込み生地に関しては誰にも負けない自信があります。
「当店のクロワッサン生地はルヴァン種を使っています。発酵しやすい生地ですから、温度管理に細かく気をつかい、時間をかけて丁寧につくっています。フランス産の小麦粉が醸し出す香りと甘み、発酵バターの香り、サクサクとしつつも内層はよりパンらしく、レカンのルヴァン種ならではの食感や味わいを楽しんでいただけます」(菊地さん)。
スペシャリテはクロワッサン生地を使った「エスカルゴ・ピスタチオ」。生地にカスタードクリームとピスタチオペーストを塗り、渦巻状にして焼きあげます。ピスタチオとバターの香りが混じりあい、生地とクリームの層が美しい螺旋を描きます。
秋冬限定の「マロンカシス」は、マロンペースト&マロンクリームにホールのカシスを散りばめたエスカルゴ。カシスジャム入りフォンダンで繊細に仕上げてあります。
同じ折り込み系でもパンオレ生地に発酵バターを折り込んだのが「デニ・ド・ミ(デニッシュパンドミ)」。クロワッサン生地より折り数を1つ多く入れて、より繊細な層をつくっています。秋冬限定「デニ・ド・ミ・マロン」は、1年を通していちばん人気のあるアイテムで、秋の訪れとともに「今年はまだ?」と聞かれることが多いそう。
「人気のハード系に加えて、少しずつ菓子系のアイテムを増やし、 <菊地らしさ> も出していきたいですね。メロンパンやクリームパンなど日本独特のパンをちょっとフレンチ寄りにつくってみる、などにもチャレンジしていきたいです」(菊地さん)。

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ブーランジェリー キシモト

埼玉の「デイジイ」、横浜の「ボンヴィボン」で修業を積んだ岸本章シェフが2013年4月にオープン。師匠たちから学んだパンづくり、店づくりの技と知恵を踏襲しつつ独自のアイデアを発揮して、食べやすく親しみのあるパンをつくっています。ほっこり温かみのある店内に、人気No.1のカレーパンを始め、100種類ほどが揃います。

ブーランジェリー キシモト
住所:埼玉県所沢市緑町1-17-9
電話番号:04-2907-7178
営業時間:8:00~19:00
定休日:火曜
クリスマスブレッド販売期間:2017年11月18日(土)
~売切れ次第終了(2017年は12月22日で完売)

クリスマスを彩る赤い色のシュトーレン

毎シーズン、2種類のシュトーレンをつくっている同店。2017年は前年に引き続いて、「白」と「赤」のシュトーレンです。クリスマスカラーの赤と緑のカードをあしらったラッピングで、包みをほどくときのワクワク感も高まる2色のシュトーレン。まずは気になる「赤いシュトーレン」について、オーナーシェフの岸本章さんにお話を伺いました。

「定番の『白』に加えて、これまでに抹茶+栗やチョコレート生地+栗とナッツなどをつくってきましたが、抹茶やチョコレート生地のシュトーレンをつくる店がだんだんと増えてきて……。他とかぶるのがイヤ!というのが僕のこだわりなので、今まで見たことがない色は何かないか?と考え、クリスマスカラーでもある『赤いシュトーレン』をつくりました」(岸本さん)。


表面の鮮やかな赤い色は、粉糖にドライフランボワーズのパウダーを混ぜたもの。カットすると、中の生地もほんのり赤い色をしています。フランボワーズパウダーだけでは色づきが弱いので、生地にはイチゴ濃縮果汁の「グルマンディーズフレーズ」も加え、アールグレイのパウダーで紅茶の香りもプラス。「シュトーレンは、食べる前からのインパクトも大切です。包みを開けると、赤い色とフランボワーズの香りに心ときめき、ひと口食べると、まず最初に爽やかな甘酸っぱさが来て、さらに紅茶がほわっと香る、そんなイメージです」(岸本さん)。

混ぜ込むフルーツはカルヴァドスに漬けたドライアップル、クランベリー、ブルーベリー。焼きあげ直後にさっとキルシュを塗って香らせて、焦がしバター、粉糖で仕上げます。
焦がしバターを使っているのもこだわりの1つ。「シュトーレンは、あまりしっかり焼き込んでしまうと硬く目が詰まってしまいます。とくに年齢層の高い方には食べづらいと思うので、中に水分を残してしっとり、瑞々しい感じに焼きあげています。そのため、保存性を考えて冷蔵で販売していますが、水分をとばした焦がしバターは、香りのよさだけでなく、保存性を高める効果もあるんです」(岸本さん)。

シュトーレンは、お客様が購入後、時間をかけて食べることを考えて、店内でも冷蔵ケースで販売しています。そのため、ちょっと目立ちにくさはありますが、店先の黒板や店内POPで誘導。近くにクッキーやガレット・ブルトンヌなどの焼き菓子類とクリスマス用のプチギフトボックスを並べて、クリスマスを迎える楽しい雰囲気のコーナーをつくっています。

シュトーレン用漬け込みフルーツはほかにも応用できます

「白」「赤」ともにベースの生地は、ボン・ヴィボン児玉シェフ直伝のレシピだそう。「これはもう、間違いなくおいしい。小麦粉は強力粉、卵と生クリーム、砂糖のほかに蜂蜜を入れています。マジパンは、具材として巻き込む『マンデルシュトレン』ではなく、生地全体に練り込む『クリストシュトレン』のタイプ。バターは生地量の50%使い、かなりリッチな配合です」(岸本さん)。
酵母は生イーストを8%。発酵力が強いので、中種をつくって28℃で1時間、その後ミキシングしてすぐ分割、5分おいて成形、また5分おいてすぐ窯入れです。窯伸びしますから、ミキシング後は極力発酵させないことが鉄則で、中種をちょうど菓子づくりのベーキングパウダーの感覚で使うそう。「発酵菓子と言いつつ、あまり発酵させないのがシュトーレンです。おもしろいのは、お菓子屋さんがつくるシュトーレンは比較的よく発酵させてあり、パンっぽい仕上がりに。パン屋がつくるのは発酵をおさえて焼き菓子のような仕上がりになっていることが多い気がします」(岸本さん)。

定番の「白」にはブランデーに漬けたレーズン、ドライイチヂク、アンズ、オレンジピールと、ローストしたクルミとアーモンド。焼きあがりにはラム酒を香らせてあります。
フルーツの漬け込みは夏になる前に、前年からの持ち越しに継ぎ足しをしています。時間をかけて、じっくり漬け込むことで中まで洋酒を含んでふっくら、やわらかに。毎年多めにつけておき、余れば洋梨のドライと赤ワインを足して、アルザスの地方菓子ベラベッカに。「ベラベッカはたっぷりのドライフルーツを少量のブリオッシュ生地でつないだ発酵菓子。洋酒漬けのフルーツは、ほかにもケークオフリュイにしてもいいですし、カンパーニュに練り込むなど、いろいろ応用ができます」(岸本さん)。

2017年のシュトーレンは、赤白合わせて約300個を3回に分けて製造し、「赤」は12月半ばで完売。都内のパン・フェスでは1日で30本を売りあげたそう。「都心に比べると、この辺りでは <クリスマスのアドベントにシュトーレンを食べる> という文化は、まだまだ根づいているとはいえません。地道に続けて、ようやく『今年はいつから?』とお客様が声をかけてくださったり、地元の百貨店さんから置かせてほしいとお誘いをいただきました。今回は日程があわずに実現しませんでしたが、来シーズンは委託販売などもぜひやっていきたいです」(岸本さん)。

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シュトーレンという同じアイテムの中にも、それぞれのベーカリーの個性が存分に発揮されていました。少し気が早いですが、今回ご紹介したシェフたちのこだわりも参考に、2018年のクリスマスには「お気に入りのシュトーレンを探すベーカリー巡り」など、楽しんでみてはいかがでしょう? 

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年12月)のものです

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