パンのテーブル

トッピングやサンドでバリエーションが広がるフォカッチャ

  • フォカッチェリア アルタムーラ
  • 石窯パン工房 PANJA(パンジャ)
  • ブーランジュリー ドド
  • ブーランジェリー セイジアサクラ

フォカッチェリア アルタムーラ

日本では数少ないフォカッチェリア(フォカッチャ専門店)。イタリアのパン屋さんで修業した、店主でフォカッチャ職人の山本誠さんが、フォカッチャをはじめとする南イタリア・プーリア地方のパンやピッツァ、焼き菓子を毎日焼きあげています。テイクアウトのほか店内でイートインもでき、水曜~土曜の夜はイタリア料理をワインとともに楽しめます。

フォカッチェリア アルタムーラ
住所:東京都新宿区山吹町5
電話番号:03-6265-3842
営業時間:月曜、火曜10:00~17:00、水曜~土曜10:00~21:00
定休日:日曜

イタリア南東部地方のフォカッチャを東京で再現

今から20年ほど前、料理の修業のために渡ったイタリアで、山本さんはフォカッチャに出会いました。どの街にもファストフード感覚でフォカッチャを売るフォカッチェリアがあり、丸い大きな型で、平たく伸ばした生地に具材をのせて焼き、量り売りするのが一般的。当時、日本ではまだ食べたことのなかったフォカッチャのおいしさと、おやつとして気軽に食べるスタイルがとても印象的だったそう。滞在予定を1年延長して「パンの街」として有名なアルタムーラでパン修業をし、帰国後はレストランで腕を振るった後、2013年に「フォカッチェリア アルタムーラ」を開業しました。



アルタムーラの街はイタリア南東部プーリア地方にあり、一帯は「イタリアの納屋」とも呼ばれ、デュラム小麦の名産地。同地では、フォカッチャをはじめ、さまざまなパンを粒の粗いデュラム粉でつくることが一番の特色です。
山本さんは、修業先のパン屋さん「レ・バゲッテ」でつくっていたパンを忠実に再現しています。フォカッチャはデュラム粉99%使用。明るい黄色味を帯びた生地は、噛むほどに甘みやうまみが濃く感じられます。
「デュラム粉に前日のパン生地を発酵種として使い、じゃがいもを練り込んで、6~7時間かけてじっくり発酵させてから焼成します。生地にじゃがいもを混ぜることで、もちもち感とオイルをかけて焼いたときのカリッとした食感が生まれます」(山本さん)。
とはいえ、イタリアと東京では水も気候も異なりますから、現地と同じおいしさをつくりあげるのには苦労したそう。また、唯一配合を変えているのは塩の量です。
「イタリアでは濃い味が好まれ、塩気がとても強いので、生地に加える塩、焼成前にふりかける塩の量ともに控えめにしています。また、デュラム粉を使うことで、やや固めの、しっかりとした噛み応えが生まれます。日本では、フワフワやもちもちの食感が好まれがち。ハード系のパンとも違う食感の、うちのフォカッチャならではのおいしさをお客様にわかっていただくのに、ちょっと時間がかかりました」(山本さん)。

お店のある神楽坂周辺には外国の方も多く住んでいて、母国で食べていた懐かしいパンを求めてイタリア人のお客様も多数来店されます。
大きな天板に生地を広げ、野菜をのせて焼いてから切り分けたフォカッチャは、シンプルな「ローズマリーとオニオン」、フレッシュのプチトマトをのせた「トマト」、「ツナ」、「じゃがいも」など。夏は「ズッキーニ」も登場します。また、トマトソースをのせたフォカッチャはパイ皿のような丸い型で焼いてホールで販売しています。最近では、生地にヒマワリの種、ゴマ、ライ麦、アマニ、大麦などを練り込んだ雑穀のフォカッチャもつくっています。こちらもホール売りで、人気のため、すぐ売り切れてしまうそう。

サンドイッチや土曜限定の伝統のパンもあります

メニューには、イタリアのパンを使ったサンドイッチも各種あります。「ドッピア」は、イタリア人のお客様のリクエストで生まれたフォカッチャのサンドイッチ。「ローズマリー&オニオン」に、モルタデッラ(イタリア・ボローニャ伝統のソーセージ)とモッツアレラチーズをはさんで焼いたもの。
「パニーニ」は、デュラム粉のチャバタを使ったサンドイッチ。白い小麦粉を使ってつくるブリオッシュやクロワッサンに具材をはさんだものは「サンドイッチ」と呼び分けています。ブリオッシュは大きな丸い型で焼くのがイタリア流です。
「イタリアの街の小さなパン屋では、今でも便利な機械はあまり使わず、前日分の生地を元種にして、生地の様子を見ながら職人の勘で発酵を加減してつくるのが普通です。私もそれと同じような昔ながらのやり方で、発酵中の生地は冷蔵庫に入れたり、室温に置いたり、オーブンの上に置いたりして、季節に合わせて温度と時間を調節しています。デュラム粉を使うと、小麦粉に比べて生地はふくらみにくく、平べったくてややかためのパンになります。じっくり時間をかけて、よく焼き込むことで生地のおいしさが出てきますから、フォカッチャは具材が焦げすぎない限界まで焼いて、かなり濃いめの焼き色になっています」(山本さん)。

日本では、イタリアといえばパスタやピッツアのメージがありますが、イタリア人はパンも大好きなのだそう。レストランでは前菜が出てくる前からおつまみがわりにフォカッチャを食べますし、家庭では食事のときの主食としてパンを食べます。
「日本人が毎日ごはんを炊くように、近所のパン屋に行ってその日のパンを買ってくるのが日常です。当店では、パンの街の伝統『アルタムーラのパン』も土曜日限定で焼いています。デュラム粉と水と酵母と塩だけでつくった生地を2つ折りにして焼いた食事パンです。現地では1つが1~2kgの大きさですが、一回り小さい500gのサイズに焼いています。発酵に時間をかけ、じっくりと焼き込んで引き出される麦の香りはとびきりです。こちらもぜひ味わってみてください」(山本さん)。

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石窯パン工房 PANJA (パンジャ)

小麦粉を数種類ブレンドし、低温長時間発酵でつくるこだわりの生地や、丁寧に仕込んだクオリティの高いフィリングでお客様の心をつかむベーカリー。中でもフォカッチャは、生地+フィリングのおいしさが実感できる、人気アイテムの1つです。2017年10月には、店舗奥に70席の「PANJA CAFE+(プラス)」がオープンしました。

石窯パン工房 PANJA (パンジャ)
住所:埼玉県入間市野田939-1
電話番号:04-2932-5808
営業時間:8:00~20:00(なくなり次第閉店)
定休日:木曜

フォカッチャは数ある惣菜パンの中でも花形の商品

お店に入ってトレイを手にすると、まず目に飛び込んでくる絶好の位置にフォカッチャが並んでいます。1個分ずつ丸く成形した生地に具材をのせて焼き込んだフォカッチャは、「れんこん大葉、明太子ソース」「ベーコンとスモークチーズ」「マルゲリータ」「ナスとトマトのアラビアータ」「タンドリーチキン」というラインアップ。「うちの店の特長がいちばんよく表れているアイテムだと思います」とお話しくださったのは、代表の大内啓さんです。


フォカッチャは、2011年の同店オープン当初は食パンの生地を使っていましたが、2年後からは改良して現在の生地に。自家製のレーズン酵母種を使い、全粒粉とじゃがいもマッシュを配合しているのが特長です。
「生のじゃがいもを蒸かして使いますから、手間はかかるけれど、おいしさがまったく違ってきます。ホクホクのじゃがいもをつぶしてお湯と一緒にペースト状にし、吸水の段階から粉と一緒に混ぜていきます。小麦粉に対してじゃがいもは30%、加水は90%以上。これで、焼きあげたときのしっとり、もちもちの食感が生まれるのです」(大内さん)。
1個当たりの生地量は80gで、見た目に比べてずっしりと重みがあり、お客様からは「食べごたえがあり、これ1個でもおなかが満足する」とよく言われるそう。
パンに使うフィリングは自家製にこだわり、たとえば、人気アイテムの1つである「牛ホホ肉の赤ワイン煮」は、バターが香るクロワッサン生地の中にトロトロに煮込んだ牛肉がゴロゴロ。プライスカードにも書かれているとおり「まるでフレンチ!」な味わいです。フォカッチャも同様で、フレッシュな野菜をふんだんに使った、一皿の料理のような具材を生地の上に。ジューシーに焼きあげたタンドリーチキンには、アボカドと自家製カレーソースを合わせてあります。マルゲリータのトマトソースは8時間煮込んで、トマトの甘みと酸味のバランスのよさ、まろやかさを追求しています。

「理想を言えば、具材なしのフォカッチャと惣菜をセットにして、『パンと料理』として提供したいところですが、買いやすい値段とどんなシーンでも気軽に食べてもらえることを優先して、焼き込みの惣菜パンにしています」(大内さん)。
ローズマリーやタイム、バジルなどのハーブも、フォカッチャにはよく合います。 「つくり手としては『香りをきかせたほうが断然おいしい』と感じるのですが、お客様には意外とハーブ控えめのほうが、食べやすいと好評なことも。フォカッチャはうちの主力商品ですから、辛さやハーブ感は穏やかにして、どなたにも食べやすいおいしさに仕上げています」(大内さん)。
「れんこんと大葉と明太子ソース」は、ほどよいピリ辛で、レンコンならではの歯触りを楽しめるように、大きな厚切りをのせて焼きあげています。人気商品のため、端境期などでレンコンが品薄のときも、赤字覚悟でほぼ切らさずに出しているそう。

ボリューミーなカツに負けないフォカッチャ生地


「定番のフォカッチャに加えて、季節の素材からインスピレーションをもらってつくることもあります。これから春先になると、いろいろな食材が出てくるので売り場もにぎやかになります」(大内さん)。
たとえば、たけのこ、ワラビ、ぜんまいなど春の和素材は、オリーブオイル、塩、ニンニク、唐辛子とローズマリーでシンプルに味つけして、仕上げにパルメザンチーズ、といった具合です。季節ものは、お客様もとても楽しみにしてくださるそう。

じゃがいもマッシュ入りのフォカッチャ生地は、サンドイッチのパンにも活用しています。リュスティックのように細長く焼いて、三元豚のとんかつ、エビカツのサンドイッチに。どちらのカツも分厚く、ボリューム満点につくっているので、ふんわりソフトなパンでは、パンが負けてしまいがち。かといってバゲットでは、ちょっと食べづらくなります。

「オーバーナイトでつくるフォカッチャは、もっちり、どっしりとした食感がよく出ます。ほどよい引きがあって歯切れもよいため、カツなどのボリューミーな具材をしっかり受け止めてくれます」(大内さん)。
また、具材を包んで焼きあげる惣菜パンにもフォカッチャ生地を使ったものがあります。細長い「もっちり枝豆チーズ」や、「チーズダッカルビ」など4種類。長時間発酵生地は、ガス抜きすると生地が戻るのに時間がかかり、成形するのが難しくなりますが、吸水率の高いマッシュ生地は、具材を包んだり、いろいろな形に成形する作業もしやすくなるのだそう。

毎年新しい課題に取り組んでいる同店、2017年はカフェをオープン、2018年は食パンをリニューアルして、手土産にもおすすめの生クリーム食パンが登場。ハードトーストは山型から角食に変え、加水を8%高めて、さらにしっとりもっちりの食感になりました。2019年はハード系を1年かけて練り直す予定だそう。「蕎麦でいう更科と藪そばのように、小麦の白い胚乳部分だけを使ったものと、外側の部分も多めに含んだもの、2種類のバゲットをつくってみたいと考えています」(大内さん)。こちらも出来上がりが楽しみです。

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ブーランジュリー ドド

古材を使った外装は、一見してパン屋さんとは気づきにくいですが、開店直後からお客様が多数訪れます。前日仕込み、長時間発酵でじっくりとおいしさを引きだし、昼頃までにほぼすべてのパンを焼きあげます。しっとりと食べやすい食感のハード系食事パンと並んで人気なのがフォカッチャ。プレーンのフォカッチャに旬の野菜をあしらった「日替わりフォカッチャ」は、野菜のおいしさとビジュアルにもこだわりがあります。

ブーランジュリー ドド
住所:千葉県千葉市稲毛区黒砂1-14-5
電話番号:050-1075-9654
営業時間:11:00~18:00(売り切れ次第終了)
定休日:日曜・月曜・第1火曜 ※8月に長期の休業あり

フォカッチャは、プレーンとオリーブと日替わり

同店のフォカッチャは、定番の「プレーン」、「オリーブ」と「日替わり」の3種類をそろえています。
「日替わりのフォカッチャは、当初はサンドイッチをやっていなかったので、サンドの代わりになるものとして。またソーセージやベーコンなど肉系の素材を使ったパンのほかに、野菜をメインにした商品も加えたくてつくりました。小さな店で、製造は私1人でやっていますから、アイテム数も限られ、新商品も次々には出せません。フォカッチャの具材を日替わりにすれば、変化がつき、季節感も表現できます」と店主の本行多恵子さん。


近くのオフィスで働く方々が、ランチタイムになると「今日のフォカッチャは何?」と楽しみに来てくださるそう。
ベースとなるフォカッチャは、ふんわりとして中はしっとり。強力粉に薄力粉をブレンドすることで、グルテンの力をある程度引き出し、ふんわりとふくらませて高さを出しつつ、サクッと歯切れのよい食感をつくっています。また、ミキシングの最初から、オリーブオイルも含めた材料をオールイン。オイルを入れることで、グルテンの強さを抑えることができ、サクみにつながるそう。

「全部一緒に混ぜるだけなので、フォカッチャの仕込みは簡単なようですが、一時期は不調で生地が全然膨らまなかったことが。吸水を多くしたらよいかと思ったのですが、結果は逆で、水を減らすことで、ねらった通りのふくらみ方になりました。ミキシング後の生地の状態に合わせて、パンチの強さなど微妙な調整も欠かせません」(本行さん)。

生地にはドライのローズマリーを0.5%練り込んでいます。生地の中に、ところどころ混じったローズマリーを噛むと、フワッと香りが広がります。 「ローズマリーの香りはオリーブオイルとの相性もよく、さわやかさが出ます。フレッシュのハーブを使うと、香りはより強くなりますが、発酵に影響が出るのでドライがベストだと思います。フォカッチャ3種類ともローズマリーの入った同じ生地を使っていますが、香りを楽しむならプレーンがおすすめです」(本行さん)。

日替わりフォカッチャは、季節の野菜とソースで何通りにも 


日替わりのフォカッチャは、焼きあげたプレーンに具材をのせて、チーズがとろける程度に焼いた後、バーナーでチーズに焦げ目をつけて完成です。焼き込みよりも手間はかかりますが、パンも具材もベストな食感と彩りに仕上がります。
同店の2軒先のカフェの店先では、週2回、近くの農家の方が採れたて野菜の販売に来ます。こうした地元野菜も含めて、季節の野菜とそれに合うソースの組み合わせで、いろいろなパターンを展開できます。「キャロットラペのマスタードマヨソース」「かぶのトマトソース」「サトイモの味噌マヨソース」「ロマネスコのハーブマヨソース」「ジャガイモのガラムマサラマヨソース」「キャベツのクミンマヨソース」「ほうれん草のベシャメルソース」などなど、魅力的なメニューが日々登場。

取材した日は、「さつまいものハーブマヨ」。乱切りしたさつまいもは塩とオリーブオイル、ローズマリーをまぶしてオーブン焼きに。ミックスハーブの「エルブドプロヴァンス」を混ぜたマヨソースと合わせて、フォカッチャの上にお惣菜風にこんもり盛りつけてあります。
春はたけのこ、夏はコーンなど、その季節を代表する野菜が登場し、菜の花、大根、かぶ、サトイモ、レンコン、長ねぎなど和風の料理に使う野菜もハーブとマヨネーズ、チーズと合わせてフォカッチャの具材に。

「和風料理に使う根菜なども、こうやってアレンジするとパンにも合いますよ、という家庭料理への提案でもあります」(本行さん)。
野菜のおいしさをストレートに味わってもらいたいので、それぞれ野菜に合わせた下ごしらえをして、野菜の味を確かめることも大切です。ほうれん草など青菜類は、ゆでてもアクが残っている場合は、さらにバターソテーしているそう。
「そして、パン生地と野菜のつなぎ役として活躍するのがマヨネーズです。ジェノベーゼソースなどは、マヨネーズを合わせることで、よりマイルドで食べやすい味わいになります。また、マヨネーズだけでは単調になりがちなので、素材に合わせて、味噌やハーブ、スパイスなどで香りを加えていきます」(本行さん)。
濃厚なベシャメルソース、さわやかなトマトソースもたびたび登場します。大根やかぶは、塩とオリーブオイルを振りかけてオーブンで焼くと、トマトソースと相性抜群なのだそう。
「オーバーナイトで生地づくりをしているので、当日のパン生地追加はできないですが、焼きあげたプレーンのフォカッチャを冷凍しておくと、売れ行きをみながら日替わりフォカッチャにして調整できます。うちのように、1人でやっている小さな店では、フォカッチャは強い味方になると思います」(本行さん)。

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ブーランジェリー セイジアサクラ

3種の自家製酵母(ブドウ、柚子、ホッブ)を使い分け、低温長時間発酵と独自の製法でうまみを引き出し、1つの生地から多彩なパンを展開しています。「ここに来ればいつも美味しいパンに出会える」というお客様の期待を裏切らない、感動をもたらすパンづくりを追求しています。

ブーランジェリー セイジアサクラ
住所:東京都港区高輪2-6-20 朝日高輪マンション104号
電話番号:03-3446-4619
営業時間:9:00~18:30
定休日:木曜

レ・ボー谷のオリーブオイルが香るフォカッチャ


同店のフォカッチャは、大きな型で四角くシンプルかつダイナミックに焼いた「レ・ボー谷のフォカッチャ」です。カット売りするほか、このフォカッチャを使ってサンドイッチやタルティーヌ風の惣菜パンを展開しています。店長の池田正史さんにお話を伺いました。
「焼きカレーパンの『チーズカレー』や『黄金色のバゲット』は、当店の看板商品として人気が高いですが、フォカッチャも生地のおいしさをストレートに味わっていただける、当店ならではのアイテムです。準強力粉をメインに強力粉2種類を配合し、自家製のぶどう酵母を使って酸味やうまみをバランスよく引き出した、味の濃いパンです。高加水でもっちりした食感のパンが最近の流行ですが、そこまでもっちりとはさせずに、パンらしい軽やかさも大切にしています」(池田さん)。
味わいの濃いフォカッチャを一段とおいしくする秘訣は、焼成前にたっぷりと振りかける、南仏・プロヴァンスのレ・ボー谷で作られたオリーブオイルです。
「香り高く、油っぽさがないため、そのまま飲めるくらいおいしいオイルで、創業時から使っています。それなりに高価ですし、生地に練り込んでしまうとせっかくの味と香りがぼやけてしまいます。焼く直前に使うことで、香りと味わいが味覚にストレートに訴えかけます」(池田さん)。


成型時には、生地の表面にまんべんなくピケ(生地のふくらみを均一にするために、生地全体に細かい穴を開けること)を深く入れていきます。このピケからオイルが生地にじわじわとしみこんでいき、焼成中にオリーブオイルの香りがパン全体に行き渡ります。

サンドイッチには、この「レ・ボー谷のフォカッチャ」をメインに使っています。具材はパンをよりおいしく引き立てるものをセレクトし、一番人気は「バジルチキンとセミドライトマトのサンド」です。

「チキンだけでは、味わいも彩りも単調になりがちですが、アクセントにオイル漬けのセミドライトマトをのせて、ジューシーさと甘み、酸味をプラスしています。ドライトマトにもピンからキリまでありますが、ポイントポイントでよいものを使うことで、全体のバランスがとてもよくなります。すべて最高級のものを使えば、価格がハネ上がってしまいます。パンをよりおいしく食べてもらえるように、何を選んでどう組み合わせるかで、1+1が3にも4にもなって付加価値が生まれます」(池田さん)。

目新しさよりも価値の高いロングセラーを


フォカッチャは、平日は3~4台、週末には8~9台を焼いています。フォカッチャを使った惣菜系は、サンドイッチのほか、具材をのせて焼いたものもあります。
「ゴルゴンゾーラとはちみつ」もその1つ。ピッツアなどでおなじみの黄金の組み合わせで、見た目からもゴルゴンゾーラチーズがたっぷり使われているのがわかります。チーズの塩気と、独特の香りと味わいに、はちみつのやさしい甘みとクルミの芳ばしさをプラス。これが酸味のあるパンによく合います。
「ゴルゴンゾーラのようにクセの強いものは、とくに質のよいものを選ぶことが大事です。そして、過剰なくらいに使うことで、食べたときの満足感がとても大きくなります」(池田さん)。
人によって好みが分かれそうな素材ですが、それまで苦手と思っていたゴルゴンゾーラのおいしさを、このパンを食べて新発見される方も多いのだとか。

「酸味がそれなりにあるフォカッチャ生地もそうなのですが、うちのパンは、好き嫌いが結構はっきりと分かれるようです。食の好みは人それぞれですから、10人中10人すべて満足させることは無理。当店は、7人が満足する無難なおいしさよりも、3人がおいしい!と120%満足してくれる商品づくりを目指しています」(池田さん)。

おいしいフォカッチャを使った、とても魅力的な惣菜パンの数々ですが、具材をはさむだけ、のせて焼くだけですから、調理にはさほどの手間はかけていないそう。実は、この点も同店の商品づくりの重要なポイントです。
「『お客様と、スタッフのために』をコンセプトに、スタッフの労働環境も大事にし、パン屋を志す若い人たちに夢を与えることがオーナーの願いであり、店として目指す方向です」(池田さん)。
スタッフを長時間労働から解放する独自の製法やしくみを機能させて、商品のバリエーションはむやみに広げずに、1つ1つのクオリティをしっかりとつくり込んでいく。素材を選び、組み合わせ、最終的にどのようなパンに仕上げればお客様に最高の感動を与えることができるのか。そこに時間をかけて、練りに練ったうえで、最終的には自分たちの舌を信じて「これは絶対いける!」と確信できたものだけが商品として売り場に並びます。
「私自身、他店からこの店に来た当初は、アイテム数は限られていて、季節ものもほとんどやっていない。これで大丈夫なのか?と驚いたくらい。定番だけをここまで売れるものに育て上げたことは、正直すごいこと。だからこそ、舌の肥えた常連のお客様から、『いつ来ても、どれも絶対においしい!』という信頼を得ることができているのだと思います」(池田さん)。

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お店ごとの個性や魅力が満載のフォカッチャ。ぜひ、お店を訪れてお気に入りを見つけたり、ご自宅でのお料理に合わせてみてはいかがでしょう?

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2019年02月)のものです

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