パンのテーブル

高まるパン専門店

  • つるやパン まるい食パン専門店
  • 箕面デニッシュ サトウカエデ
  • プレミアムクロワッサン専門店「三」
  • クリームパン専門店 キンイロ 三条店

つるやパン まるい食パン専門店

1951年、滋賀県木之本で創業したつるやパン。たくあん漬けとマヨネーズをコッペパンに挟んだ『サラダパン』が全国的にも有名ですが、もうひとつのロングセラーが、60年以上つくり続けている『サンドウィッチ』。まるい食パンにマヨネーズと魚肉ハムだけを挟んだ、シンプルで昔懐かしい味わいです。長浜市の北国街道沿いにあるまるい食パン専門店は、今はもうないパン屋さんの跡地にあります。その志を受け継いで、長浜の人々に親しまれる店になれるよう、毎日まるい食パンを焼いています。週末は15時ごろに売り切れてしまうほどの人気店です。

つるやパン まるい食パン専門店
住所:滋賀県長浜市朝日町15-31
電話番号:0749-62-5926
営業時間:8:00~17:00
定休日:水曜

食事にもおやつにもなる、まるい食パン


まるい食パンは、つるやパン本店のある木之本の工場で、60年近くつくられてきたロングセラー。地元で大人気の『サンドウィッチ』に使用している円筒形の食パンです。
「特に焼き立てが美味しいんです。そのまま食べたり、トーストしたり、いろんな具材をサンドしたりと可能性も無限大。いろいろ試しているうちに、『サラダパン』のような大ヒット商品が生まれるかもしれません。まるい食パンで、皆さんの予想を裏切りたいんです」と店長の西村さん。まるい食パン専門店では、あえてサラダパンを販売していません。
木之本の本店で長年愛されてきた『サンドウィッチ』ですが、お客さまの中には「食パンだけで売ってほしい」という声もあったそうです。西村さんは、そのままでも美味しく食べられるよう、5~6年前からまるい食パンの改良を開始しました。
「小さいお子さんからお年寄りまで、安心して美味しく食べて欲しいですね。『サンドウィッチ』が好きな方にも、食べたことがない方にも好きになってもらいたい。地元の人に親しんでもらえるよう、380円とお求めやすく設定しています」と話す西村さんは、つるやパンの3代目。県外で修業をして2013年に滋賀に帰ってきました。つるやパンの個性が出せる新たなブランドとして、まるい食パンを広めていきたいと考えているそうです。

新しい店を任された西村さんの頭からは、いつも商品開発のことが離れません。開発のテーマは「遊び心と安心感」。夏向きにさっぱりとしたレモンクリームのサンドや、中華風のラー油と蒸し鶏にザーサイを添えたもの、猟師さんとのコラボで誕生した鹿肉のカレーなど、次々とアイデアが湧いてきます。
少し甘めで塩分控えめのミルク風味だから、何にでも合わせられるのがまるい食パンの魅力。食べた人から「あっ、パンが美味しいからやね」と言われると、最高のしあわせを感じるそうです。つるやパンの商品は、やわらかさとほのかな甘さ、そしてユニークなアイデアが魅力。独自の製法を守った手づくりにこだわっています。
「私たちには、まるい食パンをずっとつくってきたという自信があります。60年も愛されてきた懐かしさのある味わい。また食べたくなる給食のパンのような味を目指しています」と西村さん。

まるい食パンには無限の可能性があります


まるい食パン専門店の一日は、8時の「朝ベイク」から始まります。まるい食パンの上にさまざまな具材をのせたオープンサンドで、購入後に焼き直しもできます。たまごトースト190円(税込)、明太子210円(税込)などの朝食にぴったりなものから、スタッフによって手描きの顔が違うフレンチトースト、抹茶あずき180円(税込)などのスイーツ系もラインナップしています。
11時からは「昼サンド」。注文を受けてから、焼き立てのパンにその場でサンドしてくれます。手づくりのタマゴサラダを挟んだタマゴ180円(税込)、一番人気の焼きサバ270円(税込)など。サラダ180円(税込)の中身は最初にサラダパンに挟んでいたなつかしい味のコールスローを復活させました。つくりたてなので、野菜のシャキシャキ感が味わえます。焼サバは、大葉にガリ・タルタルソースを、焼いた鯖にのせたもの。北陸のご当地グルメ「焼き鯖ずし」にちなんでいます。
ビールに合う枝豆・ベーコン・チーズを混ぜ込んだまるい食パン『つまみ』は、男性にも気軽に食べてもらえるよう考案しました。
「まるい食パンは四角い食パンの約半分、20~23分で焼き上がります。そのため水分が飛びすぎず、中はしっとり。気泡が均一で、耳が薄いというメリットもあります。うちでは仕込みに使う小麦粉を先に発酵・熟成させてから、本仕込みする中種製法でやっているので、日にちが経ってもやわらかくしっとりしているんです」(西村さん)

今から60年前、どんなことからまるい食パンを焼くようになったのか?はっきりしたことは分らないそうですが、西村さんの祖母の記憶では「ハム屋さんがまるい食パンの型を持ってきたのではないか」とのこと。当時、魚肉ハムを仕入れていた業者から、まるいハムの形にあうパンを焼くことを提案されたのだろうということでした。現在も『サンドウィッチ』の具は、魚肉ハムとマヨネーズだけ。魚肉ハムは特別につくってもらっているそうです。
「この場所は、内藤製パンさんの跡地。偶然にも、私の高校時代の通学路でした」長浜は本店のある木之本から、物流の面でギリギリの距離。しかし黒壁スクエアなどの観光地にも近く、人が多いのが魅力だったといいます。開店してみると地元の方から「あの長いパンをつくらないのか?」と聞かれたそうです。そこで当時のお客さまに話を聞いて、内藤製パンのながいながいパンを再現しました。

「ながいながいパンの開発で、パンって面白いな、パンは人の記憶に残るものなんだと感じました。子どもが最低限のお小遣いをにぎって買いに来たり、学生さんが部活帰りにイートイン・スペースで食べたり。そんな地元に愛されるパン屋になっていきたいと思います」と話す西村さん。会社のブランドロゴにも「おもいでパン」という、キャッチフレーズが付いています。


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箕面デニッシュ サトウカエデ

旅先で出会ったメープルデニッシュパン。焼きたてを頬張ったときの感動が忘れられず、あの味を多くの人に届けたいと、大阪でパン屋さんをオープン。「サトウカエデ」の名は、メープルシロップの原木から。お店も紅葉(カエデ種イロハモミジ)の名所として有名な箕面の地に構え、日本中に焼きたての美味しさをお届けしたいと『箕面デニッシュ』と名付けました。バターの香りが漂うイートイン・スペースで、ゆったりと焼きたてのデニッシュやカフェメニューが楽しめます。

箕面デニッシュ サトウカエデ
住所:大阪府箕面市箕面6-4-17 箕面駅前第一駐車場・駐輪場1F
電話番号:072-734-6517
営業時間:10:00~19:00 イートイン LO18:30
定休日:なし ※年末年始、その他メンテナンス店休あり

偶然の出会いが生んだ、箕面デニッシュ


サトウカエデのデニッシュ食パンのルーツは、小嶋会長が沖縄で出会った「マキシパン」にあります。マキシパンは沖縄県名護市で70年もの歴史を持つパン工場。給食のパンなども製造する会社で直営店舗はなく、無人の直売所で販売しています。偶然、道の駅で見つけたメープルデニッシュパンの美味しさに「なんだこれは!」と衝撃を受けた小嶋会長は、直接工場を訪ねました。聞けば、このデニッシュは会社の商品ではなく、社長が趣味の集まりで配るために焼いていたもの。小嶋さんは頼み込んで、定期的に大阪まで送ってもらっていました。しかし、沖縄から送ってもらうと2日もかかってしまう。小嶋さんはメープルデニッシュパンを自分でつくるしかないと決意。マキシパンの社長を口説いて昨年5月にアドバイザリー契約を結び、スタッフ3人が沖縄でデニッシュ食パンづくりを学んできました。

シェフの岡田さんは、昨年11月のサトウカエデのオープンに合わせて入社。「商品開発からのスタートということで不安もありましたが、逆に面白いかなとも。デニッシュは甘い、カロリーが高いイメージですが、新しい発想で勝負できるんじゃないかと考えました」(岡田さん)

デニッシュ用のシート生地使わず、添加物を使わない安心安全な最高品質のデニッシュにこだわっているサトウカエデ。
「デニッシュ食パンは真剣につくろうとすると、ふつうのパンより難しいんです。具材が重さで下がったり、パンの側面が内側にへこむ腰折れになったりして、形が保ち難いんです。水分をしっかり含ませるため、生地をいったん冷やしてバターを折り込み、また冷やして1日置くので時間もかかります。油脂が多いので、どんな味になるかを想像しながらの作業です」と岡田さん。
「箕面デニッシュ」の材料は、国産小麦とバター100%。砂糖はミネラル分を含んだ、やわらかい味が特徴の沖縄の「本和香糖」を使っています。徹底した食材と無添加へのこだわり故に、製造には時間も手間もかかります。その日の気温や湿度に合わせて、職人が微調整しながら焼いています。ひと口めは柔らかく、ふた口めは甘さを感じる。2~3日たっても美味しいのが箕面デニッシュなのです。

オリジナリティのあるデニッシュを箕面から発信


サトウカエデは、メープルシロップが採取できる原木名です。出店が決まった箕面市は、イロハモミジが市の木で、それにちなんで『箕面デニッシュ』というネーミングが生まれました。チーズケーキやバウムクーヘンのようにギフトや手みやげに使ってもらうことも目指しています。

箕面デニッシュの主なラインナップは「箕面デニッシュ」1.5斤880円(税別)、「全粒粉ゆめちから」、一日30本限定の「箕面プレミアム」1.5斤980円(税別)、「箕面メープル」、「レッドショコラ」、「抹茶ラテ」、「くるみあん」、4種類のチーズが入った「クワトロチーズ」など。他にも季節限定商品や、新ラインナップなどが揃い、いつ訪れてもうれしい発見があります。
「こんなに何種類もつくるつもりはなかったんですが、今はどれも外せないですね。秋の実りデニッシュ(10月末まで)などの季節限定メニューもつくっています。まだ世に出回っていないものをオリジナルでつくっていきたいと思います」とシェフの岡田さん。


店舗を訪れるもうひとつの楽しみが、焼きたてのデニッシュや、カフェメニューをゆったりと楽しめるイートイン・スペースです。店内のインテリアはグレーと白の落ち着いた雰囲気。オリジナルのブレンドコーヒー380円(税別)。ほかにスイーツ感覚で楽しめる全粒粉フレンチトースト880円(税別)や、ランチとしても食べごたえ十分の全粒粉オープンサンドセット880円(税別)(ドリンクセットは別途200円(税別))なども。最高の味を堪能していただくため、スライスの厚さは3センチにこだわっています。

「箕面からひろがって、全国的な百貨店ブランドをつくりたい」と夢を語る小嶋会長。梅田や千里中央の商業施設などで臨時販売すると、いずれも完売。梅田の百貨店のパンフェアで一日450本も売り上げたことから、多くの百貨店からもオファーが殺到。大丸梅田店で常設販売を開始しました。「箕面デニッシュ、知ってるよ」という声が、全国に広まる日もそう遠くはないでしょう。

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プレミアムクロワッサン専門店「三」

クロワッサンは、三日月という意味のフランス語。その「三日月」と、朝昼晩「三食」いつでも食べてもらいたいという思いから「三」と名付けられました。菱形のロゴはクロワッサンの形と、生地とバターが織りなす層を表す12本のラインからできています。
お店は、常に焼きあがりのタイミングで提供するためと、衛生的な環境で製造していることを見ていただくために工房一体型になっています。装飾を省いたシックな空間の中で、整然と並んだクロワッサンが、主役顔で輝いています。

プレミアムクロワッサン専門店「三」
住所:大阪府大阪市北区南扇町7-17 MF梅田ビル1F
電話番号:06-6467-4480
営業時間:11:00~19:00 売切れ次第終了
定休日:なし(年末年始を除く)

いちばん好きなパンがクロワッサンでした




オーナーは大のクロワッサン好き。全国のパン屋さんを訪ね歩いて、いろいろなクロワッサンを食べてきました。そして「本当に自分が好きなクロワッサンが食べたい」という思いから、クロワッサンやいろいろなパンを趣味で焼き始めます。「好きこそものの上手なれ」といいますが、まわりの人たちからも「美味しい」と言ってもらえるほどの腕前になりました。
このお店を始めるきっかけを与えたオーナーのお母さまも、いつも喜んで食べてくれていた一人。そのお母さまがハード系のパンを好むようになり、クロワッサンをあまり食べなくなってしまいました。聞いてみると「バターがちょっと重く感じる」とのこと。この一言が転機となり、クロワッサンの専門店を始めることを考えたとのこと。

「きっと母と同じ思いの人がいるはず!」と考えたオーナーは、毎日食べたくなるような、毎日でも食べ飽きない、まったく新しいクロワッサンを開発しようと一念発起。理想のクロワッサンを目指して毎日試作と研究を続け、思い通りのクロワッサンが完成。さっそくお母さまに食べてもらうと、笑顔で「これなら毎日食べたいわ」と言ってくれたそうです。苦労が報われた瞬間でした。

オーナーにとってクロワッサンの魅力とは「店によって食感もそれぞれだし、使う材料によっても製造方法によっても明確に味がちがうところ」だそう。こちらのクロワッサンは、価格が300円以上と少しお高め。けれど「価格も個性」だと考えているそうです。今は消費者のニーズも多様化し、かつ高次元化しているため、多少高くても良いものであれば必要とされる。クロワッサン好きな人には「他では食べたことのない味わい」を、クロワッサンをあまり食べない人にも「印象に残るようなもの」をつくっていきたいと考えています。
「今から20年ほど前に日本に上陸した、世界規模のアメリカのカフェチェーンがありますよね。喫茶店文化だった日本に、あの店のスタイルが浸透するには、それなりの時間がかかりました。でもその間に、日本に新しいカフェ文化を定着させたともいえます。私もそんな新しい文化をつくっていきたいんです」(オーナー)
今も休みの日はクロワッサンの食べ歩きを続けているそう。
「趣味が仕事みたいな感じですが、これが私のライフワーク。好きなものを仕事にできるのはしあわせです」と語ってくれました。

ザクッとした食感と、ふわっと広がるバターの香り



プレミアムクロワッサン専門店「三」のメニューは3種類のみ。「プレミアムクロワッサン」330円(税込)と「プレミアムクロワッサン ショコラ」360円(税込)、「プレミアムクロワッサン ラスク」300円(税込)です。プレミアムクロワッサンはバターの香りと食感を存分に楽しめる逸品。プレミアムクロワッサン ショコラは厳選したチョコが配合され、プレミアムクロワッサンよりも少ししっとりした食感です。
手みやげなどに便利な4個専用BOXはプレミアムクロワッサンが1,320円(税込)、プレミアムクロワッサン ショコラが1,440円(税込)。もろく繊細なクロワッサンの型崩れを防ぐための専用BOXは、4個購入毎に入れてもらえます。
2種類のみの厳選メニューについて、オーナーはこう語ってくれました。「メニューが2つしかないのは、これらのフレーバー以外の美味しいクロワッサンに出会ったことがないから。長く愛されるために、この定番を大事にしていきたいんです。もし納得のいくフレーバーを考案できたら、いつか皆さんにお届けできるかもしれませんので、楽しみにしていてください」

「三」のプレミアムクロワッサンは、厳選された原材料からつくられています。フランス産高級発酵バターを100%使用、小麦粉などとの配合率にこだわり、最も美味しくなるバランスを実現しています。3×4=12層による「ザクッ」とした食感も食べ飽きない秘密。「折り数についてもいろいろ試しましたが、層が多くなるとザクッとした食感が出にくくなるため、12層がベストでした。バターも重くなりすぎず、ちょうど良かったですしね。層と層の間に絶妙に空気を含むプレミアムクロワッサンならではの食感はこうして生まれました」(オーナー)

クロワッサンは店内の工房にて、氷温熟成製法でつくられています。凍る直前の氷温を保った専用冷蔵室で各作業を行い、氷温熟成で生地を安定させます。そうすることで焼き上げたときの食感と旨味が増幅するのだそうです。手間を惜しまない製法を採用することで、他では真似できないオリジナルなクロワッサンをつくり出しているのです。
「プレミアムクロワッサンの開発では、何ごともバランスが大事だと痛感しました。全部の材料を最高級のものにしても美味しくならなかったり、なかなかつくりたい味が出せなくて苦労しました。一日中クロワッサンを焼く匂いがただよっていて、家族にもずいぶん迷惑をかけてしまいました」とオーナー。
手間を惜しまず、ていねいに焼き上げられた究極のクロワッサン。「クロワッサンも含めてパンは日常食。いつも食卓にパンがある豊かな日常を、多くの人に楽しんでもらいたいですね」と話してくれました。


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クリームパン専門店 キンイロ 三条店

クリームパン専門店キンイロは、はちみつ専門店「ミールミィ三条本店」の一角に、2018年4月にオープン。はちみつの老舗の三代目が「はちみつをもっと楽しんでもらいたい!」という熱い思いでつくりました。自慢のクリームパンに詰めるクリームは、はちみつの含有量が約15%という贅沢さ。お店は三条通と富小路通が交差する角にあり、店内で食べたり、散策しながら食べ歩きをするお客さまも。店の前ではSNS投稿用の写真を撮影する観光客も多いそうです。

クリームパン専門店キンイロ三条店
住所:京都市中京区三条通富小路西入中之町21(富小路通り沿い)
電話番号:075-221-7739
営業時間:11:00~19:00
定休日:なし(年末年始を除く)

はちみつたっぷりのクリームパン


はちみつの老舗の若きリーダーは、はちみつの魅力をもっと広く伝える方法はないかと考えていました。思いついたのは「オリジナルのパンをつくること」。最初に候補になったのは、はちみつと一緒に食べることの多い食パン。しかし食パンでは家に持ち帰って食べるため、お客さまの反応を見ることができません。それなら「すぐに食べられる菓子パンのほうがいいのでは」ということになり、はちみつの濃厚な甘みとコクが伝わりやすい、クリームパンをつくることに。とはいえ、はちみつの販売に頑張ってきた従業員たちは、大いに戸惑いました。市川さんは「対面販売のパン屋なら、お客さまの顔がよく見えるはずだから」と説得したそうです。

全員まったくの素人でしたが、調理師経験もあり、「ミールミィ」のカフェメニューを担当していた女性スタッフを中心に、パンづくりの先生を招いて勉強しました。
「目標の数をつくらないといけないのに、失敗が多くて揃えられなくて。毎日、深夜まで作業してみんなヘトヘトでした」と市川さん。特に「kuro・iro」の金箔が上手く貼れずに苦労したそうです。
「スタッフには『金箔を貼るのは無理です!』と随分言われましたが、どうしてもと無理をお願いしました。クリームパンとして美味しいのは当たり前。その上で楽しい、自慢したくなる、というプラスアルファを付け加えたかったんです」(市川さん)



苦労の甲斐あって完成したクリームパンは、基本となる「kin・iro」と、真っ黒な生地に四角い金箔を貼った「kuro・iro」の2種。この定番と季節ものも合わせて、常時5~6アイテムが揃っています。スペイン産のレモンはちみつを使った「lemon・iro 檸檬色」250円(税別)、「kuro・iro」の金箔に「令和」と書いた改元記念限定品、黒蜜のように濃厚なそばのはちみつを使った「soba・mitsu そば蜜」250円(税別)、露地煎茶を生地にもクリームにも使った「kyo・sincha 京新茶」250円(税別)など、新メニューも随時開発しています。

「新作を考えるときは、どのはちみつがその素材に一番合うかを考えながらつくっています」と楽しそうな市川さん。市川さんは、1930年に創業した金市商店の三代目。金市商店はもともと和菓子問屋でしたが、戦争中に砂糖の代わりにはちみつを使うようになったのがきっかけで、はちみつ専門店として京都の和菓子づくりを支えてきました。

「世界中ではちみつを知らない人はいないでしょう。野に咲く花とミツバチのおかげで、美味しく食べさせてもらっているはちみつの魅力を、もっともっと広めたい!その方法として行き着いたのがクリームパンだったのです」(市川さん)

はちみつと素材のコラボを楽しんでいます




「当初、パンづくりの先生にもらったレシピでは、はちみつの味があまりしなかったんです。社内では、はちみつの味が濃ければ濃いほど美味しいという評価だったので、しっかりとはちみつの味がするよう、パンとしてのバランスを越えた量を入れています」(市川さん)
専門店がつくるからには、はちみつの個性を最大限に活かすのはもちろん、その他の材料にもこだわっています。金箔は京都市の堀金箔粉さん、牛乳は京丹後市の平林乳業さん、抹茶は宇治茶の主産地・京都府南山城村のものと、地元京都産の材料を使用しています。
キンイロの定番「kin・iro 金色」は、カナダ産のブルーベリーはちみつ入りのカスタードクリームがたっぷり。独自の製法で、甘さを控えつつリッチに焼き上げたパン生地はしっとりなめらか。「kuro・iro 黒色」は、深みのある味わいの極上のクリームパン。贅沢にも2種類のクリームが入っています。
「kina・ko きな粉」は、クセのないハンガリー産アカシア蜂蜜と、きな粉を練りこんだカスタードクリーム入り。パン生地は甘さ控えめの軽くリッチな食感。
「kyo・maccha 京抹茶」は、爽やかでほろ苦い抹茶と、ハンガリー産アカシア蜂蜜入りのクリーム。ふわっと軽いパン生地の上は、抹茶のチョコでコーティングしています。「fuwa・choco ふわチョコ」は、チョコレートにメキシコ産オレンジ蜂蜜を加えたぜいたくな逸品です。

実ははちみつは、賞味期限がとても長くてロスの出ない食品。だから当初は失敗したパンを捨てるのにとても抵抗があったそうです。商品をあらかじめつくって冷凍しているのは、安定的に供給するためだけでなく、ロスを出さないためでもあります。
「当店のクリームパンは、一般的なものより価格は高めですが、私たちが目指しているのはパンとスイーツの中間。パンとしては高いけど、ケーキよりは安く買える。お持たせ用の箱や袋を用意しているので、手みやげにも最適です」と市川さん。そして訪問先で「あ、このパン知ってるわ!」という会話が広がるとうれしいと話してくれました。
当初は素人集団でしたが、いろいろ出来るようになってきたので、食パンに挑戦しようと考えているそう。やはり、食パンははちみつの最高のパートナー。はちみつ屋ならではのオリジナルな食パンをつくりたいと、市川さんは語ってくれました。

「意外な展開ですが、パン屋さんがうちのはちみつを仕入れてくれるようになりました。クリームパンをつくっているはちみつ屋ということで、興味を持って買ってくれるんです。店頭に並べておくとよく売れるそうですよ。金市商店では、はちみつの風味や産地が指定できるので、ストーリーをお話しすると、皆さん興味を持ってくれますね」

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街のあちこちで見かけるようになったパンの専門店。たったひとつのアイテムに絞り込んだからこそ生まれた、「特別なパン」の味を試してみませんか。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2019年10月)のものです

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