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食感・ビジュアル・素材づかいが魅力!新感覚のベーグル

小麦のおいしさがぎゅっと詰まったベーグル。今回は、どなたにも食べやすい独自の食感をつくり上げ、ビジュアルに、素材づかいにこだわった新感覚のベーグルが自慢のお店を紹介します。

Yohei Miyaguchi(ヨウヘイ ミヤグチ)

京都・上賀茂の人気ベーグル店が2024年3月、東京・自由が丘に移転オープン。「ラグジュアリーベーグル」と謳われる、贅沢素材を使用したベーグルもあり、店舗のほか通販を通じて全国に多くのファンがいます。

Yohei Miyaguchi(ヨウヘイ ミヤグチ)

住所
東京都目黒区自由が丘1-28-8 自由が丘デパート1階
電話
03-6826-9928
営業時間
10:00~19:00
定休日
水曜
自由が丘駅から徒歩1分

京都発・こだわり素材の新食感ベーグル

「抹茶枯山水」520円(税込)

シェフの宮口ようへいさん

ベーグルのラインアップは20種類ほど。冷蔵ケースや売り場に並んだベーグルのなかでもひときわ目を引くのがベーグルサンドの「抹茶枯山水」です。枯山水の庭を彷彿とさせる美しいビジュアル。シェフの宮口ようへいさんにベーグルのこだわりをお聞きしました。

「シンプルで素朴なイメージのベーグルですが、目でも楽しめるラグジュアリー感もあってよいのでは、と『抹茶枯山水』をつくりました。とはいえ、最も大切にしているのは見栄えよりも食感と味のバランスです」(宮口さん)。

「抹茶枯山水」をはじめ、同店ベーグルのおいしさのベースになっているのがプレーン生地です。

「ふんわりとやわらかいのに、しっかりとひきがあり、ベーグルならではのもっちりとした歯ごたえが特長です。小麦粉は強力粉『スーパーキング』を100%使い、成形した生地をケトリングしてから焼成、というベーグルの基本は押さえつつも、独自の製法でNYべ―グルとは全く違う食感をつくりあげています。小麦粉のグルテン形成を損ねないよう、生地そのものに素材を練り込むアイテムは今のところ『白胡麻』のみとしています」(宮口さん)。

学生時代は美術デザインを学んだという宮口さん、「抹茶枯山水」は、美しいデザインを目指すとともに、上質な素材にもこだわったそう。美しく絞り出した鮮やかな緑のクリームは、京都・和束産のシングルオリジン抹茶「おくみどり」をフランス産発酵バターと合わせたバタークリームです。

「香り豊かな『おくみどり』は、苦みよりも甘みが際立つところにほれ込みました。着色料は一切使わずにこの色を出すために、たっぷり惜しみなく使っています」(宮口さん)。
濃厚で滑らかな舌触りのバタークリームはベーグルにとてもよく合い、白玉とくるみ、栗の甘露煮をトッピング。庭園の石にみたてた白玉が支え役になって、サンドにしてもバタークリームの美しい造形を崩すことなくキープします。

「プレーンベーグル」260円(税込)
「白胡麻」280円(税込)

健康志向にも応えるベーグルの魅力

フィリングぎっしりの「さつまいも×いちじく」360 円(税込)

強力粉の中でもよりタンパク質含有率が高い強力粉を使い、生地に油脂は使わずに、少しの砂糖と酵母、塩、水でつくるベーグルは、体型や体調管理に気をつかわれている方にも好評です。

「自由が丘周辺にお住いの方は、おいしいものへの感度とともに、健康志向も高いと感じています。当店では、ベーグルに合わせるフィリング素材も自然なものを使っています。たとえばクランベリーやアプリコット、イチジクなども、ドライフルーツを白ワインで煮詰めてつくる自家製で、フルーツそのものの甘さを楽しんでいただけます。そして、べ―グルならではの食感で、咀嚼がしっかりととれることも、満足感と健康につながるベーグルの魅力だと思っています。

高タンパクで自然な素材を使ったベーグルは、朝食やランチにもぴったりです。また、素材づかいも見た目もラグジュアリーなサンドや、甘さをしっかり楽しめるスイーツ系のベーグルは、日頃ボディメイクやダイエットに励まれている方にも、チートデイのご褒美としてぜひ召し上がっていただきたいです」(宮口さん)。

オーツ麦をたっぷりまぶした「クランベリー」340円(右)、「クランベリー×フロマージュ」 430円(税込)
フィリング素材の組み合わせでおいしさの厚みが増す

惣菜系の「タマネギ×コーン×ベーコン×ナッツ×フランス産発酵バター」は、バターで炒めて甘みを出したたまねぎとベーコンの塩味、さらにコーンやローストアーモンドを合わせることで、味わいにも食感にも組み合わせの妙が生まれます。
「どの店にもある、ありきたりなおいしさにとどまらず、ここでしか出会えないものを楽しんでいただけるようにレシピを考えています」(宮口さん)

「チョコ×ヘーゼルナッツ」は、パティスリーで出会ったプチガトーをヒントにしたそう。ヘーゼルナッツとコーヒーの組み合わせに、これだ!と感じて商品化。ヘーゼルナッツはすりつぶしたペーストとナッツ、すりつぶしたコーヒー豆にチョコレートを合わせた、香りを楽しめるベーグルです。

巻き込み系のベーグル。左から「玉ねぎ×コーン×ベーコン」「ヘーゼルナッツ×コーヒー×ショコラ」「クランベリー×フロマージュ」
お店近くの工房にてつくりたてのベーグルが並ぶ

「巻き込み系を中心に甘い系、惣菜系をバランスよく揃え、フィリングをたっぷり巻き込んで食べたときの満足感、わざわざこの店に来てよかった、と感じていただけるベーグルをこれからもつくっていきたいです。お客様のニーズに合わせた商品展開をしていきたいと考えています」(宮口さん)。

LA VIGNE AKIKO(ラヴィーニュアキコ)
サンシャインシティ店

西早稲田にあるベーカリーLA VIGNE AKIKO (ラヴィーニュアキコ)が2024年4月にオープンしたベーグルとスイーツのお店。本店と同様に、ヴィーガンの方にもそうでない方にも、おいしく食べていただけるアイテムを数多く揃えています。ソフトな食感が特長のベーグルも、そのほとんどがヴィーガン対応の商品です。

LA VIGNE AKIKO(ラヴィーニュアキコ)サンシャインシティ店

住所
東京都豊島区東池袋3-1-2サンシャインシティ専門店街アルパB1
電話
03-5843-3335
営業時間
10:00~20:00
定休日
なし
池袋駅から徒歩8分

ソフトでやさしい新食感のプレミアムなベーグル

生地のおいしさにこだわったプレミアムベーグル。
手前右から時計まわりに「抹茶ツイン」「くるみ」「トマトチーズ」「極生」
オーナーシェフの池田三香子さん

店名の由来でもあるブドウの木がディスプレイされた店内には、さまざまな素材を練り込んだベーグルが並んでいます。オーナーシェフの池田三香子さんに同店のベーグルについてお話を伺いました。

「いわゆるNYベーグルのように、ぎゅっと詰まってしっかりとした噛みごたえがあるものは、好き嫌いが分かれたり、食べるシーンも限られたりしがちです。誰にでも食べやすくて、気軽にいつでもどこでも、ベーグルだけでも満足できるような独自のベーグルをつくろうと、試作を重ねてでき上がったのが当店の『プレミアムベーグル』のシリーズです」(池田さん)。

いろいろな種類を手軽に楽しんでいただけるように、さまざまな素材を練り込んだ生地を常時10種類以上仕込んでいます。アイテムごとに自家製のサクランボ酵母とイーストを使い分け、2日間の低温長時間発酵を基本としています。

「発酵にしっかり時間をかけることで、生地に練り込んだ素材の風味、色味が生地となじんで一体感が生まれます。例えばクルミならほんのりと紫がかったピンク色の生地になります。
時間がたっても生地のもっちり・しっとり感がキープされるのも長時間発酵ならではのメリットで、翌日でもリベイクなしで十分おいしく召し上がっていただけます。発酵中の生地を置くスペースを確保するのが大変ですが、おいしさには代えられません」(池田さん)。

プレミアムベーグルの「プレーン(ライト)」300円(税込)
「クルミ」 380円(税込)
「デーツ」400円(税込)

プレミアムベーグルのラインアップは、「プレーン(ライト)」のほか「全粒粉とライ麦」、抹茶を練り込んだ生地とプレーンを合わせた「抹茶ツイン」、仕込みの水は一切使わずトマトジュース100%で仕込んだ「トマト」、ラヴィ―ニュが得意とする素材のクルミをたっぷり練り込んだ「クルミ」など。

「プレーン(ライト)」の生地にフィリングを巻き込んだ、「クランベリー&クリームチーズ」「こしあん&クリームチーズ」も人気です。デーツのシロップを入れた生地にデーツとイチジクをたっぷり巻き込んだ「デーツ」、2種類の大粒レーズンを巻き込んだ「ぶどう」、ショコラ生地にコーヒーあんを巻き込んだ「コーヒーショコラ」など多彩です。

ベーグルは、パッケージに密閉した状態で売り場に並んでいます。
「包まずに並べたほうが焼き立て感はありますが、持ち運んで職場やお出かけ先でもサッと召し上がっていただけるように。また、このまま冷凍庫に入れて保存でき、朝、バッグに入れていけばランチタイムには食べごろに解凍されてそのまま召し上がっていただけます。お客様の日常的な食事のシーンに寄り添って、おいしく手軽に、を重視して商品づくりやパッケージを考えました」(池田さん)。

生地は常時10種以上。日によってラインアップは少しずつ変わる
クリームチーズを巻き込んだアイテムも人気

リッチな素材をふんだんに使った生食パンをベーグルに

「極生」 350円(税込)

新しく登場したプレミアムベーグルが「極生」です。

「本店に、リッチな材料をこれでもかってくらい使った生食パンがあります。これをどこでも手軽に食べられるように、ベーグルの形に落とし込みました。発酵バターやジャージー生クリームをふんだんに使い、絶対おいしくなる組み合わせです。生地がとてもやわらかいので、温度管理など発酵を見極めるのが難しいですが、今までのベーグルとは違う新しいジャンルを先駆けてやっている、という自負はあります」(池田さん)。

食事に制限のある方にもそうでない方と同じように、誰もが楽しめるユニバーサルなおいしさが同店のコンセプト。ラインアップの多くにはバターやミルクなど乳製品、白砂糖を使わないヴィーガン商品であることの目印として緑のシールが貼ってあります。

「極生」は、その例外ともいえるアイテムですが、ヴィーガン対応バージョンとして「ヴィーガン生食ベーグル」もあります。豆乳や植物性の油脂を使い、「極生」と同様にソフトで歯切れがよく、リッチな味わいを楽しめます。

「小麦粉と酵母、塩、水だけでつくるNYベーグルのような硬い食感ならヴィーガン商品をつくりやすいですが、植物性の素材だけでソフトな食感を出すには苦労しました。今後は甘酒のベーグルなども登場する予定です。甘酒を使った生地は長時間発酵すると生地がだれやすく、一度にたくさんをつくれない、という難しさはありますが、暑さで体が疲れてくる季節にはぴったりの、甘酒ドリンクと甘酒ベーグルなどを提案していきたいと思っています」(池田さん)。

「ヴィーガン生食ベーグル」350円(税込)
緑色のシールがヴィーガンの目印

SUBHOUSE (サブハウス)

週末をメインに週2~3日営業するベーグルと焼菓子の店。プレーンや巻き込み系のベーグルが約20種、サンドは約10種揃い、店内でイートインもできます。

SUBHOUSE(サブハウス)

住所
東京都杉並区高円寺北3-33-12-1
電話
非公開
営業時間
11:00~17:00
定休日
不定休 ※営業日時はInstagramで確認を
高円寺駅から徒歩5分

アイデア豊富、独創的なベーグルにリピーター多数

コロンと丸いフォルムにトッピングも楽しい。左から「プレーン」「カフェオレ」「スパイシーキャロキャロ」
店主の原美沙都さん

オープン時には、売り場に多彩なベーグルが並びます。生地の種類が豊富で、チョコレート、コーヒーの茶色系、よもぎ、抹茶のグリーン、イチゴや桜のピンクのほか、黒ゴマの黒、ときには竹炭を練り込んだ真っ黒の生地が登場することも。 店主の原美沙都さんにお話を伺いました。

「当店のベーグルは、国産小麦粉、自家製甘酒、ハチミツを使ったふわふわモチモチの食感が特長です。小型のミキサー5台をフル稼働して練り込む素材ごとに生地づくりをしています。イーストを使用して、基本的な配合は同じですが、練り込む素材によって水分量や発酵の温度、湿度などを微調整してふわふわモチモチの食感を引き出しています」(原さん)。

素材を巻き込むことでバリエーションが広がるのもベーグルの魅力です。同店のベーグルは、アイテムごとにそれぞれ異なる表情を見せる工夫をしています。自家製のずんだ餡を包んだベーグルには、枝豆とミルククリームでスマイルを描き、思わずトレイに載せたくなるビジュアルです。

「メインのターゲットは女子大生から若いママさんくらいの世代の女性たち。おいしさだけでなくビジュアルも大事で、彼女たちに共感してもらえるような商品づくりを心がけています。ケトリングのあとにトッピングするので、手間はかかりますが、これをやるのとやらないのでは、売り場に並んだときのキュートさが全然違います」(原さん)。

ほんのり甘いプレーン生地のほか、黒糖生地、抹茶生地、いちご生地などさまざまな生地を使ったラインアップ
「ずんだミルクちゃん」 480円(税込)

惣菜系の「明太子もっちチーズ」は、スライスチーズを巻いたトッポギ(韓国のもち)、明太マヨペーストを巻き込み、低温で焼いてから表面に放射状の切り込みを入れて中をチラ見せ。「豚角煮」は、プレーン生地の中にもタレをからめた自家製豚角煮をゴロゴロと包んでいます。生地そのものにほんのり甘みがあるので、中華まんのイメージでフィリング具材を合わせたそう。

「明太子もっちチーズ」480円(税込)
「豚角煮」450円(税込)

焼き菓子も活用して欲張りなフィリング、トッピング

フィリングやトッピング素材の組み合わせ方にもこだわりがあります。
「お菓子系でも甘いだけ、惣菜系でもしょっぱいだけにならないように意識しています。和風・洋風も同じで、どっちの要素もあるようにと、フィリングやトッピングがついつい欲張りになっています。これとこれを合わせるか?!と皆さんを驚かせたいですし、固定観念に縛られないことで、ほかにはないものをつくりたいと、いろいろなアイデアを試しています」(原さん)。

特に力が入るのが季節限定商品だそう。取材時は桜の季節にちなんだアイテムが登場。「さくらケーキのサンド」は、桜の葉と桜エキスを練り込んだ生地に桜あん、スポンジケーキ、マスカルポーネと生クリームを合わせたミルククリームをのせていきます。いちばん上の緑色のフィリングは、ホワイトチョコをベースに桜の葉の塩漬けを合わせた桜のテリーヌ。和と洋のお菓子の要素が融合して、甘じょっぱさのバランスもよく、いろいろな味を楽しめます。

桜の季節限定「さくらケーキのサンド」1カット680円(税込)
冷蔵ケースには10種類以上のサンドが並ぶ

ベーグルのフィリングやトッピングにさまざまな焼菓子を取り入れるのも原さんならではのアイデアです。「カフェオレ」や「コーヒーティラミスサンド」のフィリングには自家製ブラウニー。その他にも、パイ生地の上にベーグル生地をのせて焼き上げたり、メロンパンのようにクッキー生地をのせて焼き上げたり、クッキーをトッピングとして使ったりして、ベーグルにアクセントを添えています。

「スパイシーキャロキャロ」は、生地にニンジンとスパイスを練り込み、クルミとクリームチーズのフロスティングを巻き込んで、フロスティングとシナモンクッキーなどをトッピングした、人気の焼菓子「キャロットケーキ」のベーグルバージョンです。

「コーヒーティラミスサンド」600円(税込)
「カフェオレ」はコーヒー生地にブラウニーとホワイトチョコ

新しいベーグルのアイデアは、若いスタッフたちの「こんなベーグルが食べたい!」という提案からも生まれています。スタッフの多くは、もともとは客として原さんのつくるベーグルのおいしさとセンスにほれ込んで、店で一緒に働くようになったのだとか。

「厨房にこもりがちな私は、お客様と同年代の彼女たちからいろいろな情報を仕入れて商品づくりに生かしています。お店に来るたびに新しい驚きがあるように、新作をどんどん出して、定番のベーグルにも少しずつ変化を加えています。気軽に立ち寄って、当店のベーグルを楽しんでいただけたらと思っています」(原さん)。

それぞれに独自の食感をつくり上げている今回の3店。サンドのフィリングによる造形美、フィリングやトッピング素材の絶妙な組み合わせ、素材を練り込んだ生地のバリエーションなど、ベーグルの世界が一段と広がっています。お気に入りを見つけてみてはいかがでしょうか。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2024年4月)のものです

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