パン屋さんで活躍する女性たち
パンとお店と“私”のストーリー

食べる場面を想像しながら、精一杯おいしくつくっています

boulangerie dodo(ドド) 店主 本行 多恵子さん

「ブーランジュリー ドド」は、閑静な住宅街にしっくり溶け込んだ小さなパン屋です。高校時代からの友人に手伝ってもらい、製造から販売まで普段は2人で、忙しいときは私の両親も手を貸してくれます。ハード系を中心に、食パン、フォカッチャ、あんぱんやクリームパン、ブリオッシュ生地の菓子パンなど、昼までに20種類ほどのパンを焼き上げ、午後からは翌日の生地7~8種の仕込みに取りかかる、という日々です。

私は、ホテル専門学校を卒業後、リゾートホテルで4年間、その後、北海道の牧場勤務を経て、ユーハイムに転職しました。パン職人として修業している5年間は、自分で店を持ちたいとは思ってもいなかったのですが、ユーハイムを退職し、先々のことを考えるうちに「自分で作ったパンを自分で売る」という選択肢が浮かび上がりました。1年間のフランス留学でボルドー、コルマール、モンペリエにて本場のパン作りを学び、帰国後は、パンの試作をしながらあちこちのイベントなどに出店。ゆっくり少しずつ準備を進めていきました。店の内装などは、なるべくコストをかけないように、できるところは自分で手がけ、2011年2月にオープン。今年でまる4年がたちました。

パンへのこだわり

長時間発酵で生地を作っているため、失敗したらその日はもう作り直しができませんし、粉を混ぜてからが長い分、パンに対しての愛着もわきます。米粉のパンペイザンは朝に中種をつくり、夕方1時間ほどかけて水をどんどん足しながら本ごねし、翌朝までじっくり寝かせます。バゲットは、あえて軽めに仕上げるために1回に小麦粉1.5kgずつ、生地に極力ダメージを与えないように、やさしく手でこねることにこだわっています。

旬の野菜を使った日替わりのフォカッチャは人気の惣菜パンで、今日は「ほうれん草とベシャメルソース」、明日は菜の花を使う予定です。生地を先に焼き、具材をのせてさらに軽く焼いてからバーナーでチーズに焦げ目をつけています。パンも具材もベストな食感と彩りにするためのひと手間です。

「食べる場面を想像しながら心を込めて」というのがdodoのパン作りのベースです。商品棚のすぐ奥が作業場で、作業しながらでもお客様の声が聞こえますし、パンをつくる様子がお客様の目に入るため、自然にコミュニケーションが生まれていくと思うのです。

焼き上がった日替わりフォカッチャは、バーナーで仕上げ、表面においしそうな焦げ色をつけていきます。 ライ麦のカンパーニュ生地とドライフルーツは相性がよく、約260度の高温でしっかり濃いめの焼き色に。
お客様で近所にお住まいの絵本作家さんから取材の申し込みがあり、パン職人の仕事が絵本「もっと・しごとば」で紹介されました。 旬の野菜をたっぷりのせた日替わりフォカッチャは1個216円(税込)。野菜の彩りも鮮やかで、チーズが香ります。

女性ならではの苦労

パン屋に勤めていたころは、仕事が長時間で体力的にもきつかったです。休日は体を休めるだけで終わってしまい、自分の時間がほとんど持てないことがストレスでした。店を始めてからは、パンの種類も量も自分の手に負える範囲にして、仕事のリズムをつくっていくことができました。

「自分で決められる=決めなきゃいけない」のは、1人で店をやっていく大変さでもあります。米粉のパンペイザンは、ユーハイム時代の師匠である志賀勝栄さんのレシピを基にしています。試作を何度重ねてもうまくいかず、どうにも煮詰まってしまった私は志賀さんに泣きついたのですが、「粉も違うし、土地も違うからね」と。ノウハウではない、職人としてパンに向き合う姿勢をただされた気がしました。「自分の店で出すパンは、自分でやるしかない!!」と奮起して、自信を持っておすすめできるパンに仕上げることができたのです。

どんなお店にしていきたいですか?

新商品を次々に出すよりも、長く愛されるベーシックな食事パンを中心にして、「お客様にお渡しするところまでを目の届く範囲で」、ということをこれからも続けていくつもりです。バゲットは、こねずに長時間の発酵で熟成させた味の濃いタイプも作りたいですし、いずれは、その場でサンドイッチや軽食を楽しんでいただけるカフェもやってみたいです。

私は「食の市」や「クラフト市」などのイベントに、遊びに行くのも出店するのも大好き。そこで知り合った人たちと、また新しい試みが生まれます。「いぐさ」にとてもこだわりのある畳屋さんとコラボレーションしたのが、いぐさ入りの「たたみパン」。毎週火曜日限定で焼いています。また、この近所にはまだまだ畑も多く残っています。dodoのパンと採れたて野菜のコラボで、「お客様も一緒につくって食べるサンドイッチパーティー」など、楽しいイベントで人と人とのつながりを広げていけたら、と思っています。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!

 本行 多恵子さん お気に入りのpan

米粉のパンペイザン 1個540円(税込)米粉のパンペイザン
1個540円(税込) 1/2個 270円(税込)
志賀勝栄シェフが講習会で紹介したレシピが基になっています。私はその講習会のお手伝いをして、「農夫のパン」という名の素朴なパンがすっかり気に入ってしまいました。シェフからご了解をいただき、試行錯誤を繰り返して作り上げた、とても思い入れのあるパンです。水分が多く、クラストはパリッとお煎餅のよう、クラムはしっとりもちもちです。

ノアエレザン 1個594円(税込)ノアエレザン
1個594円(税込) 1/2個 297円(税込)
オートミールを混ぜた生地にクルミとレーズン。高温でしっかり焼き色をつけて、かなりハードな見た目ですが、オートミールの保湿力でしっとり。比較的やわらかで食べやすくなっています。食物繊維たっぷり、栄養価も高い、お気に入りパンです。

スリーズ 1個486円(税込)スリーズ
1個486円(税込) 1/2個 243円(税込)
ライ麦40%のカンパーニュ生地に、サワーチェリーをたっぷり入れました。チェリーの甘酸っぱさがライ麦の素朴な風味によく合っています。クリームチーズや蜂蜜と一緒に食べるのもおすすめです。

店舗情報

店名/boulangerie dodo (ブーランジュリー ドド)
郵便番号/〒263-0042
所在地/千葉県千葉市稲毛区黒砂1-14-5
最寄駅/京成千葉線みどり台駅
アクセス/みどり台駅より徒歩5分
電話番号/050-1075-9654
営業時間/11:00~18:00(売り切れ次第終了)
定休日/毎月1日・日曜・月曜
※8月に長期の休業あり

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2015年4月)のものです

<オススメパン>食パン 1個 540円(税込)1/2個 270円(税込)
深めの焼き色、窯の中でのびのび膨らんだ山型の食パンです。そのまま食べると中はふんわり、トーストするとサクサクの食感が楽しめます。
バゲット 1本 302円(税込) 1/2本 151円(税込)2本 605円(税込)
料理と一緒に食べたりサンドイッチにしたり、いろいろな食材と合わせやすいよう、皮は薄めに、クラムはやわらかめ&軽めに焼き上げています。少量ずつ、手ごねで丁寧に仕込んでいます。
クリームパン 1個162円(税込)
カスタードクリームはもちろん自家製。バニラビーンズと卵の香りが豊かで、優しい甘さです。保存料など余分なものは加えていないため、気温の高い時季はお休みにしています。

パンとお店と“私”のストーリー トップに戻る