パン屋さんで活躍する女性たち
パンとお店と“私”のストーリー

女性ならではの心遣いと愛情を注ぎ毎日食べてもらえるパンを

Boulangerie La Feuille Le Mois(ブランジュリー ラ・フイユ ル・モア)店主 南野 綾さん

「ブランジュリー ラ・フイユ ル・モア」は、パリの可愛いパン屋さんをイメージして、パンの香りが漂うオープンキッチンになった木目調の優しい雰囲気のお店につくりました。この立地に決めたのは、店舗サイズなどの条件のほかに、近所に親しみやすい公園があったことも気に入ったからです。当店がある天満橋というところは、ビジネスビルと住宅マンションが混在した場所です。お客様がパンを求める目的は幅広いので、それらのニーズにバランスよくこたえられるよう、食事パンや惣菜パン、菓子パンなど種類豊富にそろえています。テーマは、パリジェンヌのように毎日食べたくなるパン。パンから旬を感じていただければと、季節限定パンも随時創作しています。

もともと私はパンとは縁のない業界の会社員をしていたのですが、あるとき、おいしいパン屋さんを紹介してもらったのをきっかけに、パンの世界に引き込まれていきました。そして、だんだん食べるだけではもの足りなくなり、「自分でもっとおいしいパンをつくりたい」と意識が変わっていきました。とはいえ、パン屋になる方法はわかりません。そこで思い切って会社を辞め、10年ほど働いていたのでその退職金で専門学校に行くことに。それから卒業後、肥後橋にあるパン屋で8年ほど修業しました。

大阪市内にある肥後橋というところは、お洒落なカフェやレストランが多く建ち並ぶ場所です。自分が独立するなんて考えてもいなかったのですが、レストランで働く若いシェフなど、肥後橋周辺で働く仲間がどんどん独立していく様子を見ていると、ちょっと刺激を受けていたのかもしれません。そんなときに、師匠でもあるオーナーから「自分のお店を出したいと思わないか?」と背中を押されたことで、独立を決意しました。

パンへのこだわり

自家製天然酵母を使ったバゲットなど、時間がかかっても丁寧に、自分らしい味わいを出せるように心がけています。そのため、パンに使う具材やクリームなどもすべて手づくりしています。そして、できるだけ多くの人に美味しいと思っていただきたいので、試作パンは自分の味覚だけで判断するのではなく、スタッフたちにも味見をしてもらい、その意見も参考にしながら最終的につくりあげています。

また、一般的に女性はあまり一度に多く食べられないものです。でも、私はいろんなパンをちょっとずつ食べたいタイプ。そこで、パンのサイズは少し小さめにつくっています。そうすることで100円以下のパンも多数置けるので、お金をかけずにいろんなパンを楽しんでいただけると思います。

それに当店はリピーターさんが多いので、飽きがこないように新作パンや季節限定パンもちょこちょこ置くようにしています。当店は私だけでなくスタッフもみんな女性なので、新作パンをつくる上で、いいヒントをもらえる環境です。季節の“旬”はもちろん、時代の“旬”となる素材や食への考え方など、女性のアンテナにひっかかるような話題は仕事中にも自然に会話に上がります。そんな時代の旬をとりいれたパンも、いいタイミングで登場させていければと考えています。

自家製天然酵母で作ったバゲットは、当店ならではの奥深い風味を味わっていただけます。 納得のいくパンに仕上げるために、オーブンの温度なども自分なりに試行錯誤して決めています。
その日の気分でいろんな味を楽しんでいただけるように、100円以下の小ぶりのパンをバラエティ豊かにご用意。 オープンキッチンになっているのでお客様の気配を感じられ、パンの状態も確認しながらつくっています。

女性ならではの苦労

独立する上で、女性ということで一番気になっていたのは体力的な面でした。男性のように一人で重たいものを持てないので大丈夫か心配でしたが、日々、筋肉はつくもので、慣れれば一人でも持てるようになるものです(笑)。それでも一人で持てないものがあれば、女性ばかりとはいえスタッフもいるので、二人で運べば解決します。だから女性だから苦労したという感覚はありません。

むしろ、スタッフも女性ばかりということで、仕事面でも精神面でも助けてもらっていることの方が多いように感じます。スタッフが女性ばかりになったのは意図的ではなく、自然にそうなっただけなのですが、パンの仕上げなど細かく指示しなくても自分に近い感覚で丁寧に仕上げてくれたり、お店が清潔に保たれたり、感性が近い分、ストレスが少ないですね。気分が落ち込むとパンの味にも影響が出るように感じるのですが、女性に囲まれていると服装やメイク、会話など、華やかな雰囲気に包まれるので、自然に気分を上げていけます。

また、業者さんとの取引などについては、師匠でもある、修行先のオーナーがサポートしてくださったので、一人で困ることもありませんでした。一人だけではお店を続けられなかったと思いますが、周囲の方々に助けてもらって頑張ってこられたのだと思います。

どんなお店にしていきたいですか?

お店の設計段階から親子で買いに行きやすいパン屋にしたいと思っていました。ベビーカーのままでもお店に入りやすいように、売り場を広げすぎず、中央にスペースをもたせています。そして「地元の方や常連さんに愛されてなんぼ」と思っているので、お客様ともできるだけ会話をして、つながりをもてればとスタッフともども心がけています。そんななにげない会話が毎日の楽しみでもあり、励みになっていますね。まだまだ“私のお店”という確固たる自信を持てていないのですが、お客様やスタッフと共に、私らしいと自信が持てるお店に育てて行けたらと考えています。

来年で5周年を迎えるので、なにかお客様に喜ばれるような企画を実施することが当面の目標です。将来的な目標としては、あと5~6年でお店を任せられるようなスタッフを育てていくことです。ただ私自身も、ずっとパンをつくっていきたいと思っています。もっと歳をとれば同じ規模のお店を運営するのは難しいかもしれませんが、一人で切り盛りできるような小さなお店でいいので、ずっとパンに関わっていく人生を歩めればうれしいですね。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!

南野 綾さん お気に入りのパン

クロワッサン 145円(税込)クロワッサン 145円(税込)
生地だけでなく、折り込みバターにも発酵バターを使った、贅沢でバターの風味豊かなクロワッサン。長時間サクッとした食感を保てるように、しっかり目に焼き上げています。オーブンの温度にこだわり、焼きむらがでないようにも気をつけています。師匠直伝の正統派クロワッサンのつくり方ですが、ひとつひとつ丁寧につくり、焼き上げることで、安定した味わいに仕上がります。当店の顔ともいえるパンで、まず味わってほしいです。

パン・オ・セレアル 130円(税込)パン・オ・セレアル 130円(税込)
国産小麦を使い、ほかに国産雑穀をもち麦・もちあわ・黒米・赤米・大豆の5種類配合しています。パン生地自体はもっちりした食感で、その中に雑穀のさまざまな粒の食感を噛むほどに楽しめるパンです。鼻に抜ける穀物の香りや滋味深い味わいを堪能しながら、食物繊維やビタミン、ミネラルも自然にたっぷりとれるのもうれしいところ。バターをのせて焼いているので、なにも塗らなくても美味しくいただけます。サンドイッチのパンとして使っても、具材とのマリアージュが面白いパンでもあります。サイズは当店のパンとしては少し大きめです。

明太オリーブ 165円(税込)レモンのクリームパン 130円(税込)
手づくりのカスタードクリームに、絞りたてのレモン果汁やレモンの皮を混ぜ込むことで、レモンの爽やかな風味が生きたレモンクリームに仕上げました。パン生地は、当店の「もちもちパン」と同じ生地を使っています。パン表面のカリッとした食感、中のもちもちとした食感、パンにたっぷり包んだ舌触りもなめらかな自家製レモンクリームが口の中で溶け合い、ぺろりと食べられてしまいます。手のひらサイズのパンなので、ちょっと甘いものがほしいなぁというときにもぴったり。価格も手ごろなので、お友達の家に遊びにいくときなんかの、ちょっとしたお持たせにもおすすめです。

店舗情報

店名/Boulangerie La Feuille Le Mois(ブランジュリー ラ・フイユ ル・モア)
郵便番号/〒540-0034
所在地/大阪府大阪市中央区島町2丁目2-3 サンハイム天満橋103
最寄駅/大阪市営地下鉄・京阪「天満橋」駅
アクセス/大阪市営地下鉄・京阪「天満橋」駅より徒歩約5分
電話番号/06-6948-6136
営業時間/7:30~19:30
定休日/日曜日・第3月曜日

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2015年10月)のものです

<オススメパン>クイニ・アマン 210円(税込)
フランス・ブルターニュ地方の伝統菓子。そのブルターニュの伝統的製法でつくったゲランドの塩を、バターたっぷりのクロワッサン生地に混ぜ込みました。バニラシュガーで甘い風味もプラスしています。 オイルサーディンのガレット 290円(税込)
サクサクのパイにオイルサーディンやトマト、オリーブなどをトッピングし、イタリアの塩やピンクペッパーで味を引き締めました。野菜もとれてランチや夜食にもおすすめ。ワインのあてにもいいですよ。 りんごとさつまいも 190円(税込)
はちみつで煮たりんごとさつまいもをフランスパン生地に混ぜ込みました。優しい甘みがパン全体に沁み渡るように広がっています。しっかり焼いているので、パンらしい香ばしさも楽しめます。

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