パン屋さんで活躍する女性たち
パンとお店と“私”のストーリー

「こんなの初めて!!」という驚きのあるおいしさをつくっていきたいです

Pain Pigeon(パン・ピジョン) シェフパティシエ 八村 奈都子さん

鳩ヶ谷駅近くにあるパン・ピジョンは、小さなお子さんからお年寄りの方まで、皆さんに喜んで食べていただけるようなラインアップをそろえています。シェフであり、店長を務める夫がパン生地をつくり、元パティシエの私がフィリングや仕上げ、スイーツを担当しています。

私は、高校卒業後、調理師専門学校に進学しました。ただ、調理師科には女子学生が数えるほどしかいないため両親がとても心配してしまい……(笑)、菓子科に。製菓の勉強はとても楽しく、人生で初めて真剣に勉強した、という気がします。

当時、港区にあるフレンチレストランの「クレッセント」にいらした柳正司氏の著作に感銘を受け、レストラン・デザートを志してフレンチの店に就職しました。この店で、接客のポイントを覚え、見たこともなかった食材に出会い、食への興味もグンと広がったのですが、「私は、もっと日常の世界で忙しく働きたい!!」という思いが強くなりました。

そして、「パン屋なら商売になる」と飛び込んだのが浦和にあるベーカリーの「風見鶏」。そのときに夫と知り合い、23才のときに結婚。その後、私はケーキ店、チーズ専門店などを経て2003年に夫婦でパン・ピジョンをオープンしました。

パンへのこだわり

パン生地は10種ほどあり、120種類くらいのバリエーションを展開しています。店長も私も職人なので、パンのことで意見が合わないと、よくケンカします。でも、お互いを尊重して、相手に対して自分のやり方を押し付けるようなことは決してしません。パン生地に関しては、店長がこだわってつくっているものは本当においしいですから、その生地に合わせて、いちばんおいしくなるように私がフィリングや仕上げを工夫しています。

ただ、クリームパンのカスタードだけは、それぞれにこだわりがあり、両者譲らず。そこで、店長のカスタードをパン生地で包み、焼き上げてから、ホイップした生クリームと合わせた私オリジナルのカスタードクリームを詰めるようにしたのです。最初は1日12個しか売れませんでしたが、評判が評判を呼び、うちの看板商品に育ちました。

フィリングたっぷり、ずっしり重みのあるカレーパン、麺をパン生地ですっぽり包んだ焼きそばパン、端から端までチョコレートの入ったクロワッサンなど、ベーカリーでおなじみのアイテムも、「こんなの初めて!!」という驚きのあるおいしさに仕上げています。

焼き上がったクリームパンに、八村さん特製カスタードクリームを詰めていきます。 薄くてサクサクの生地の中にはトロリとしたカレールーがたっぷり。この食感を出すためにカレーパン専用の生地をつくっています。
プライスカードには手作りのコロッケに寄せる八村さんの想いも。 フォカッチャ生地を使ったタンドリーチキンのサンド。レンコンの歯触りがアクセントに。

女性ならではの苦労

修業時代は、「女だから」というだけではないと思いますが、職場でいじめられて心折れたこともありますし、女性は売り場の仕事ばかりで、なかなか製造をやらせてもらえないという経験も。「男の人には絶対負けないのに!」という自信があるのに同じ土俵に上がらせてもらえないことが悔しくて、シェフに訴えたりもしました。いろいろなことを教えてもらい、仕事を任されるようになるには、どうふるまったらいいのかを常に考え、先輩たちから好かれるように頑張りました。

実はうちの厨房には、2つの窯があります。決して広くはないですし、私たちは窯1つでやっていくつもりでいたのですが、店を立ち上げるときにサポートしてくださった風見鶏のシェフが「あなたたちは絶対ケンカになるから、窯はそれぞれ自分のを持ちなさい」と。毎日のルーティンは2つの窯に振り分けてスタッフみんなでつくっていますが、オーダーを受けてつくるホールケーキや、土日スペシャルのシュークリーム、ハンバーガーやキッシュなどは自分の窯を使って私がつくっています。毎朝5時には店に入って本当に忙しいですが、今、こうして自分のつくりたいものをつくることができるのは、人にも環境にも恵まれているおかげだとしみじみ思います。

どんなお店にしていきたいですか?

看板商品のクリームパンは焼き上がりが10時と14時で、時間前から店の前に並んで待ってくださるお客様が大勢いらっしゃいます。おかげさまで、つくればつくっただけ売れる状態ですから、常にベストな品質を保つことをこれからも徹底していきたいです。どのパンも、おいしいのは当たり前のことで、何かいつもと違うな、と少しでも気になったときはすぐに反応することが大事。そのためには、窯から出したとき、売り場に出すとき、売り場に並んでいる間もレジを打つときも、何度も繰り返しパンの姿をよく見るようにしています。

そして、人を育てていくことも私たちの課題です。店長がスタッフたちにいつも言っているのは、「パン生地を上手につくる子なら世の中にたくさんいる。将来自分の店を持つなら、販売のやり方や人を指導するときの話し方、人とどう関わっていったらいいのかを、ここできちんと見て学んでいきなさい」。私自身、いろいろな人との出会いが全部つながって、今ある自分をつくっているのだと思います。今は私1人でやっているケーキやシュークリームなども、これから若い人たちに伝えていきたいです。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!

八村 奈都子さん お気に入りのパン

カスクルート(ドライトマトとクリームチーズ)432円(税込)カスクルート(ドライトマトとクリームチーズ)
432円(税込)
バゲットの切り口にオリーブオイルをバターのかわりにたっぷりふりかけて、オイル漬けドライトマトとクリームチーズをサンド。たっぷりかけた粗挽きのブラックペッパーが香ります。ルヴァン生地のバゲットにとてもよく合う組み合わせです。

ショコラクロワッサン 205円(税込)ショコラクロワッサン 205円(税込)
ひと口めからショコラがガツンとくるように、アーモンドチョコレートをはみ出すほどにはさんであります。ショコラクロワッサンの概念を覆す1品。チョコレートの香り、濃厚さと店長こだわりのクロワッサン生地とのハーモニーは絶妙です。

モンブラン 280円(税込)モンブラン 280円(税込)
秋から冬にかけてのお楽しみ、マロングラッセをふんだんにのせました。1つのパンにあまりいろいろな味を混ぜるのは好みではないので、デニッシュ生地に巻き込むクリームもマロンクリームにしてあります。

店舗情報

店名/Pain Pigeon(パン・ピジョン)
郵便番号/〒334-0005
所在地/埼玉県川口市里1245-1
最寄駅/埼玉高速鉄道鳩ヶ谷駅
アクセス/鳩ヶ谷駅より徒歩3分
電話番号/048-287-1050
営業時間/7:30~19:00
定休日/月曜・第2火曜

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2016年3月)のものです

<オススメパン>クリームパン 1個 172円(税込) コロッケパン 1個205円(税込) カレーパン 1個172円(税込)

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