パン屋さんで活躍する女性たち
パンとお店と“私”のストーリー

穀物のおいしさを実感できるハード系のパンを
griotte(グリオット)店主 石川 暢子さん

griotte(グリオット)店主 石川 暢子さん

駒沢大学駅から自由通りを自由が丘方面に6分ほど歩いていただくと、「griotte」があります。建物は通りから少し奥まっていますから、赤い看板を目印にしてくださいね。ガラス張りで明るい1階が売り場、地階にはイートインのスペースを設けてあります。すぐ近くには駒沢オリンピック公園があり、公園への行き帰りにお店に寄ってくださるお客様もたくさんいらっしゃいます。

私は、2012年11月にオーナーとしてこの店をオープンしました。以前は会社員として営業の仕事をしていました。30才を過ぎて、このまま定年まで会社勤めをする自分自身をイメージすることができず、自分のペースで続けていける自営業を志したのです。もともと食べることが好きでしたし、女性が1人でやるなら飲食かな、とリサーチも兼ねてフレンチレストランの厨房で2年ほど働きました。
ただ、レストランだと、ある程度の規模がないと採算をとるのが難しい。そこで持ち帰りのできるパンの店にしようと、物件探しに取り掛かりました。資金関係のコンサルタントの方から「大家さんが蕎麦屋かパン屋を希望している物件がある」と、ここを紹介してもらい、ロケーションも気に入って決めました。

パンづくりをお任せしている小島正義シェフは、フレンチの店で働いていた時の知り合いからの紹介でした。彼もフレンチの出身で、パンやお菓子に魅せられてブーランジェになった方。奇遇なことに、当時たまたま駒沢に住んでいて、この物件いいな、と思って見ていたのだそう。つくりたいパンや食に関しても話が盛り上がり、意気投合してうちの店で働いてもらうことになりました。
店名の「griotte」はフランス語でさくらんぼの一種。店舗の脇に桜の木があったので、桜にちなんだ店名にしたのです。  

パンへのこだわり

会社勤めをしていた一時期、毎日の昼ごはんにライ麦の入った少し酸味のあるカンパーニュにバターをつけて食べていました。ライ麦や全粒粉入りのカンパーニュは、食後の血糖値上昇が緩やかで、ビタミンやミネラルが豊富で胃への負担も少なく、そのせいなのか体調良好だった経験があります。お店でも栄養価の高いライ麦や全粒粉を使ったハード系をぜひおすすめしたくて、外から見える棚にハード系の食事パンをレイアウトしています。

食パンや、バゲット、セーグル、ノアレザンなどのハード系には甘酒から起こした自家製酵母を使っています。甘酒酵母は国産小麦粉で種を継いでおり、酸味を抑えてつくっているのでどなたでも食べやすいと思います。
また、食パン、バゲット、カンパーニュや全粒粉のフォカッチャの生地は砂糖を一切使わずにつくっています。実は小島シェフには「砂糖なしで食パンをつくってもおいしくないですよ!」と当初は反対されたのですが、試作を重ねた結果、砂糖を入れなくても十分に納得のいく、おいしいものができあがりました。小麦粉と甘酒酵母と塩と水でつくる「パン ド ミー」は、とくにお客様に好評です。余計な糖分はできるだけ加えずに、小麦本来の甘みをひき出し、「穀物を食べている」と実感できるようなパンを提案していきたいと思っています。

シンプルな食事パンを使ったサンドイッチはフレンチ出身のシェフならでは。調理した具材をたっぷりはさんで、食材の組み合わせの妙と食べごたえを楽しんでいただけます。
人気商品の、バターを味わう「クロワッサン」、透明感のあるアイシングが美しい「シナモン」、看板商品の「グリオット」など、どのアイテムもシェフがこだわりぬいてつくりあげています。

砂糖不使用、全粒粉の「パン  ド ミ ブラン」。 店名を冠した「グリオット」は濃厚チョコレートとサワーチェリーのマリアージュ。
店の外からもいちばん目立つ場所に食事パンを置いています。 バターの味わいを強く感じられる、シェフこだわりのクロワッサン。

女性ならではの苦労

レストランで働いた後、店を立ち上げる準備に取りかかるまでの間に、父の看病のため実家に戻ったりもしましたが、今は家庭との両立で悩むことはないですし、女性だから苦労していると感じたことはないです。

フレンチレストランで働いていたときは、個人の小さな店だとどうしても長時間労働になるため、女の人には体力的に厳しかったですね。それでも、おいしい料理と行き届いたサービスを提供する店は、裏方の仕事にも一切の妥協がなく、美しい! きれいな仕事ぶりを中に入って、身をもって経験できたことは、今の店づくりの糧にもなっています。掃除であれ、道具の手入れであれ、すべてのことに対してプライドを持って一つ一つ丁寧に取り組む、という姿勢を私も大切にしていきたいです。

どんなお店にしていきたいですか?

フレンチ出身、ブーランジェリーの名店で腕を磨いた小島シェフは、発酵バターや小麦粉などの素材にこだわり、おいしさを探求して、美しいパンをつくりあげます。例えば「かじると歯型がついて、鼻血が出るかと思うくらいに濃厚なブラウニーをつくって」と私が投げかけると、本当にチョコレートがみっしりと濃厚で、ガトーショコラのようにしっとりしたブラウニーをつくってくれました。シェフのフレンチのセンスを生かして、1皿の料理のような総菜パンやサンドイッチ、1皿のデセールのようなヴィエノワズリーを、店の特色としてもっともっと突きつめていけたらと思っています。

今は60種類くらいのアイテムがありますが、食事パンの種類を増やして、「このパンだからこそ、この具材!」というマリアージュを大切にしたサンドイッチを充実させていきたいです。そして、お客様の流れに合わせて、よりタイムリーに提供できるようにしていくことも課題です。

以前、イタリア人のお客様に「トスカーナの塩なしパン」をつくってほしいと頼まれました。このパンがないことには、自宅でのおもてなしメニューが完結しないから是非!とのことだったのです。つくってみたらおいしくて、うちでも商品化しました。仕込みに大変手間がかかるので土曜限定で出しています。こうしてお客様から教えていただくこともありますし、これからも食事としてパンを食べる文化を、皆さんにもっと気軽に楽しんでいただけるお手伝いできればと思っています。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!」

石川 暢子さん お気に入りのパン

全粒粉のフォカッチャ 250円(税込)全粒粉のフォカッチャ 250円(税込)
砂糖不使用で全粒粉を配合したフォカッチャです。生地に砂糖を使うと発酵が活発になり、ふんわりふくらみますが、つくりたかったのはレストランで出されるようなしっかり食べごたえのあるもの。たっぷりのオリーブオイルとゲランドの塩をふりかけ、大きく焼いたものを切り分けてあります。食事に合わせたり、サンドイッチにしたり、軽く焼いてはちみつをつけて食べてもおいしいです。

白あん レモン 130円(税込)白あん レモン 130円(税込)
砂糖・油脂不使用の「パン ド ミ」生地でつくったあんぱんです。甘さ控えめの白あんに白ワインに漬けこんだ国産レモンのピールを混ぜてあり、ほのかな苦みとレモンの香りが爽やか。引きのある生地とよく合います。同じ生地のあんぱんは、「こしあん」「コーヒー風味の粒あん」「木いちごのこしあん」のほか、夏には自家製梅ジャム入りも登場します。  

バゲットカンパーニュ 240円(税込)バゲットカンパーニュ 240円(税込)
ライ麦20%配合、甘酒から起こした自家製の酵母を使っているので、ほんの少しだけ甘酒の甘い香りがあります。私にとっては、パンといえばライ麦の入ったカンパーニュ!! 酸味はごくわずかで食べやすく、複雑で味わい深いバゲットです。自家製の「にんにくのコンフィ」や「フムス」(ひよこ豆のペースト)もありますから、バゲットにつけて食べるのもおすすめです。

店舗情報

店名/griotte(グリオット)
郵便番号/〒152-0021
所在地/東京都目黒区東が丘2-14-12 B1F~1F
最寄駅/東急田園都市線駒沢大学駅
アクセス/駒沢大学駅から徒歩6分
電話番号/03-6314-9286
営業時間/8:00~19:00
定休日/月曜(祝日の場合は営業、翌火曜休み)

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年3月)のものです

<オススメパン>グリオット 430円(税込) クロワッサン 230円(税込) プーレ カリー プロヴァンサル 560円(税込)

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