パン屋さんで活躍する女性たち パンとお店と“私”のストーリー

VOL.36 パンと楽しい会話で元気をチャージ!街の人に愛されるパン屋をめざして Boulangerie Painsienne(ブランジェリー・パンジェンヌ) 店主 武野 由佳さん

Boulangerie Painsienne(ブランジェリー・パンジェンヌ) 店主 武野 由佳さん

地下鉄東山線 藤が丘駅から5分ほど歩いたところに、ブランジェリー・パンジェンヌはあります。一見、パン屋に見えない外観なので通り過ぎてしまう人も多いのですが、オープンしてから今年で5年目を迎え、徐々にこの街に根付いてきました。

「パン屋さんに見えない外観にしたい!」という私の挑戦的なアイデアが実り、グリーンを基調としたシックなお店が完成したのは、前職時代のネットワークがあったからです。もともとは、広告写真の撮影現場などをサポートする洋服のスタイリストをしていました。約10年間勤め充分キャリアを積んだ頃、かねてからの好奇心の強さから、「新しいことを一から始めてみたい!自分のお店を持ちたい!」と思い立ち、ずっと好きだったパンの道を目指し始めたのです。修業先は、バゲットとクロワッサンを看板商品とする天白区植田の『ぱぴ・ぱん』。フランスでの修業経験のある師匠の元で一からパンづくりを学びました。

良い素材を選ぶ、添加物・保存料を使わない、生地の状態をしっかり確認する…。当たり前のことに手を抜かず丁寧にパンと向き合う姿勢はこの時、身につきました。また、当時の日本ではめずらしい対面式という『ぱぴ・ぱん』の販売スタイルに感銘を受け、パンジェンヌにも取り入れています。当店では、スタッフ全員が製造と販売の両方を行うのが特徴で、つくり手だからこそできるパンの説明と同時に、お客様の顔も覚えられます。接客中は仕込みの手が止まってしまうため効率は悪いのですが、自分のつくったパンを自分の手で売るという充実感には変えられません。スタッフはみんな将来自分のお店を持ちたいという意欲を持っているので、そういったやりがいを感じてくれれば、と思っています。美味しさを追求していくのはもちろんですが、"人"としての魅力も同時に磨いていき、"パン屋"ではなく"パンジェンヌ"に行きたいと思ってもらえるような、愛されるお店にしていきたいです。

パンへのこだわり

添加物・保存料を使わず、水や生地の温度管理や品質管理、発酵の様子をしっかり見るなど、基本を忠実に守って生地をつくっています。看板商品でもあるバゲットは、修業先のレシピをもとに、微差の調整を加えパンジェンヌの味に育てあげました。パンの上に乗せるフィリングも全て手づくりにこだわっていて、使用する野菜は無農薬を選び、マーガリンやショートニングは使用しません。良い素材を使っているからこそ決して安くはないのですが、最近ではお客様の健康に対する意識も高まっており、支持してくださる方も増えています。小さなお子様がいるお母さんが「離乳食で食べさせたい」と買っていってくれたこともあり、信頼していただけているのだなと嬉しく思いました。

サンドイッチやキッシュは、ランダムで中身が変わりますし、季節ごとに旬の食材を使ったものやイベントに合わせた商品も登場。新しいパンに出会えるトキメキを感じてほしいので、新作の開発にも力を入れています。同時に、食パンやクロワッサンなどの定番商品は、クオリティを保つためにこまめに味見をして確認しながら、いつ食べても同じ美味しさを提供できるように心がけています。

スタッフに注文する対面式の販売スタイル。「どんなパン?」「何が入ってるの?」と気軽に尋ねてください。 看板商品であるバゲットは、1日3~4回焼き上げます。
限定商品などは、お店のSNSにアップ。時々、その日しかお目見えしない商品も登場します。 日替わりで具材が変わるサンドイッチは、冷蔵庫の中に。ぜひ覗いてみてくださいね。

女性ならではの苦労

「女性は結婚を視野に入れて独立を諦める人が多く、教えても結局育たない。」そんな風潮が浸透している時代にパンの世界に飛び込んだため、最初は「お店を出したい」という本気度を認めてもらうところからのスタートでした。なかなか正社員として雇ってもらえるパン屋がなかったため、最初の3年間はアルバイト契約。それではお店に入れる時間も限られており、生活もしていけないので、パン屋のアルバイトを2件掛け持ちしてパンづくりに携われる時間を確保していました。そんな生活を続け、3年後にやっと『ぱぴ・ぱん』の師匠に認めていただき、本格的な修業を始めることができたのです。

女性一人でお店をやるというと、"食べていける程度でこじんまりと"や"営業時間が短い"などのイメージを抱く人もいると思いますが、それを華麗に裏切っていきたいという強い想いがありました。実際に自分のお店を開き、店頭に立ってみると、逆に女性でよかったと思うことの方が多いんです。お店への入りやすさや、気軽に話してコミュニケーションがとれるのは、女性の持つ柔らかな雰囲気のおかげなのかな?と思ったり。たくさんの人に可愛がってもらえますし、小さな子どもを持つお母さんは安心感を持ってくれます。やる気と忍耐力、そしてパンが好きだという気持ちがあれば、性別は関係ない。それを証明するためにも、女性オーナーのパン屋として代表的な存在になっていきたいと思っています。

どんなお店にしていきたいですか?

オープン当初の閉店時間は、19時。パンジェンヌのある藤が丘駅は地下鉄の終点で、「仕事終わりに寄ろうと思うと、ちょうど間に合わない」というお客様の意見をいただきました。それから、30分長くお店を開けることにしたのです。すると、帰宅時に立ち寄って夕食用のバゲットや明日の朝食用の食パンを買って帰ってくれる人が増えました。並んでいるパンが減ってくるとその都度焼き足しているので、いつ来ても売り切れはほぼありません。少しのロスを覚悟で遅い時間までオーブンを稼働し、お客様が来たときに何か一つでも焼きたてを出せたらと思っています。

お店をもっと有名にしたいという野望はありますが、店舗を増やすことは考えていません。駅へ向かう途中に店の前を通りかかって窓の外から手を振ってくれたり、「元気をもらいに来たよ」と遊びに来てくれる…。そんな風に、パンジェンヌがどんどんこの街に馴染んでいくことに喜びを感じています。だからこそ、常連の方たちに「私の街のパン屋さんだよ!」と自慢してもらえるようなパン屋を目指したい!それが今の目標です。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!」

武野 由佳さん お気に入りのパン

クルミレーズンクリームチーズ 270円(税込)クルミレーズンクリームチーズ 270円(税込)
私の好きなもの3つを組み合わせてつくったパンです。少し酸味のある自家製天然酵母のカンパーニュ生地に、これでもか!と言わんばかりにクルミとレーズン、北海道産のクリームチーズを詰め込んで、どこからかじりついても楽しめるものに仕上げました。素朴に見えますが中身がぎっしりしていて、お客様にもよく驚きの声をいただきます。

クロワッサンアーモンド 270円(税込)クロワッサンアーモンド 270円(税込)
クロワッサンをシロップ漬けしたあと、アーモンドクリームをたっぷり塗ってさらに焼き上げました。何度食べてもまた食べたくなる中毒性のある味で、「どこのパン屋にも負けていない!」と胸を張って言えるほどの自信作です。冷やすことでサクっと感が増し、口当たりも良くなります。クロワッサンの二番手とは言わせません!

キッシュ 400円(税込)キッシュ 400円(税込)
レストランに行ったら必ずキッシュを頼んでしまうほど無類のキッシュ好きの私が、いろんな場所でインスピレーションを受けたものを形にしています。旬の無農薬野菜を使って焼き上げ、味は日替わり。どんなキッシュに出会えるかはお店に来てのお楽しみです。このランダムなメニューを楽しみにしていてくださるお客様も。週末は2種類登場します。

店舗情報

店名/Boulangerie Painsienne
(ブランジェリー・パンジェンヌ)
郵便番号/〒465-0047
所在地/愛知県名古屋市名東区小池町7番地 koike BLD 1-E
最寄駅/地下鉄東山線「藤が丘」駅
アクセス/地下鉄東山線「藤が丘」駅より徒歩5分
電話番号/052-799-8409
営業時間/8:00~19:30
定休日/月曜・火曜

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年10月)のものです

<オススメパン>バゲット 290円(税込) クロワッサン 200円(税込) クリームパン 170円(税込)

パンとお店と“私”のストーリー トップに戻る