パン屋さんで活躍する女性たち パンとお店と“私”のストーリー

VOL.39 お客様の「美味しい」が原動力!小麦の風味を引き出すパンづくり Pantricot(パントリコ) 店主 服部 絢子さん

Pantricot(パントリコ) 店主 服部 絢子さん

東郷町の住宅街にある“水色のドア”が目印のパン屋が、パントリコです。2010年に名古屋市名東区の一社でオープンしましたが、店舗併用住宅にしたいと考えて土地を探し、2013年の秋頃に移転しました。こちらへ来て、もう4年が経ちます。前の店舗で気に入ってくださったお客様が足を運んでくださることもあり、嬉しい限りです。

「tricot」とは、フランス語で“編み物”という意味があり、ニットを編むように一つひとつ丁寧にパンをつくっていこうという想いを込めて店の名前を「Pantricot」に決めました。店名と同じように、お店に入ったときにも“あたたかさ”を感じてほしいと、木目調で女性らしい雰囲気のインテリアで統一しています。
木製のショーケースは、家具職人である友人にオーダーメイドでつくってもらったお気に入りのもの。毎日“色合い”のバランスを見ながら、一つひとつのパンがいきいきと美味しそうに見えるように並べています。ガラスのショーケースに並んだパンを選んでいただく対面式の販売方法なので、衛生的であると同時に自然とお客様との会話が生まれます。迷っているお客様にも気づけますし、今はアレルギーの方も多いので、そこも対応できます。
パンの話をすると、皆さん不思議と柔らかい表情になるんですよね。「焼きたてです」と声をかけると、嬉しそうに買っていってくれることもあります。

私がパンに興味を持つきっかけとなったのが、近所にあった小さな喫茶店でした。そこには、マスターがつくった5〜6種のパンがガラスの引き戸の中に並んでいて、その中でもチョコクロワッサンが大好きだったことを覚えています。幼い頃からパン屋の仕事に憧れつつ、本格的に目指し始めたのは大学卒業後。パン教室に通ったことでパンづくりの楽しさに触れ、そこから専門学校に通い、パン屋やベーカリーカフェなどに11年間勤めながらパンのつくり方や接客などを学びました。

パンへのこだわり

できるだけイーストを減らし、じっくり時間をかけて発酵させています。そうすることで、粉本来の旨味やバターの香りが前面に感じられ、噛めば噛むほど味わい深いパンに仕上がります。
私自身、食感がしっかりとあるパンが好きなので、バゲットなどはしっかりと焼き上げ、パリっと香ばしいクラストとは対照的にクラムはみずみずしく。それから私好みの「むぎゅっ」とした食感を出してくれるのが自家製の酵母です。
通年、オリジナルのレーズン酵母と小麦酵母を使用しており、パンに合わせて使い分けています。また、パンを通して季節を感じてもらいたいという想いもあるので、季節ごとに旬の果物で酵母をつくったりもしています。液種を使うことで、ちゃんと香りが残るんですよ。

その他にも、「コクを出したい」「優しい風味にしたい」など、パンの個性を引き出すために塩や砂糖も数種類用意しています。パンをつくるうえで心がけていることは「出来あがりを想像すること」でしょうか。シンプルなパンが多いからこそ、焼き目や食べた時の食感を頭に思い浮かべながら毎日丁寧につくっています。

友人がオーダーメイドでつくってくれたショーケースを、前の店舗から持ち込んで使っています。 朝から順番に焼き上げ、パンが豊富に並ぶのはお昼頃です。 べシャメルソースをひと塗りした具沢山のタルティーヌは、満足感があり男性にも人気。 約40〜50種類のパンを用意してお待ちしております。

女性ならではの苦労

独立前、パン屋やカフェで働きながら「いつか自分の店を持ちたいなぁ」とぼんやり考えていました。しかし、漠然とした「いつか」では、なかなか実現しません。そんななか、母が病でこの世を去りました。命の儚さを痛感するこの出来事が、私を奮い立たせる動機になったのです。それから独立を真剣に考え、お金を貯めて3年後に念願のパントリコをオープンさせました。

「ずっと続けられるように」と結婚を機に店舗併用住宅を考えはじめ、子どもができたのはちょうどこちらの店舗へ移転するときです。子どもを産んでから約3カ月半でお店を再開したときには、父や親戚が子守りをしてくれました。朝の仕込みは子どもを背負いながらやることも…。子育てとパン屋の両立で感じる難しさは、どちらも100%満足できないということです。10時から18時30分までお店を開けているので、その間は子どもを保育園に預けており、接している時間が少ないのが気になります。お店を閉めた後に保育園へお迎えに行き、夕飯をつくって…という慌ただしい毎日をなんとか過ごせているのは、周りのサポートがあってこそ。お店のスタッフはみんな家庭を持つ主婦で、子育ての相談などもできる良き理解者です。パントリコの雰囲気の柔らかさはスタッフの影響も大きいと思います。小さいお子さんをつれて買いにきてくれるママさんもたくさんいますが、子どもをあやすのもお手のものですよ。

どんなお店にしていきたいですか?

店を持つ前は、デパートのパン屋や、料理も提供するベーカリーカフェ、個人経営のパン屋、とさまざまな形でパンづくりに関わってきました。経営者の立場になった今思い出すのは、修業時代によく言われていた「五感で感じなさい」という言葉です。パンの焼ける匂いや店のドアが開く音など、細やかな変化を敏感に感じとりながら、何事も受け流さずに行動することが、小さなパン屋で働くにはとても大切なことなんだと、改めて実感しています。

パントリコにパンを求めて来てくれるお客様に、ただ「美味しい」と感じてほしい。見た目はシンプルでも、食べると食感が楽しくて味わいのあるパンをつくりたい。その目標は当初から変わっていません。だからこそ、お店の雰囲気を大切にして、“変わらない”ことが目標かな、と思っています。いつ来ても美味しいパンをつくり、「美味しい」と言ってもらうことで、またそれが原動力になる。そのサイクルをつづけていきたいです。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!」

服部 絢子さん お気に入りのパン

フォカッチャ 190円(税込) フォカッチャ 190円(税込)
国産小麦に吸水率100%で水分を閉じ込めたフォカッチャです。そのため水分たっぷりで、見た目とのギャップに驚くもちもちの食感!生地の中にオリーブオイルを練り込んで、表面にも塗っているので、食べたときに香りが広がります。パントリコのサンドイッチにも使用しています。

レーズンバターロール 120円(税込) レーズンバターロール 120円(税込)
定番のバターロール生地にラムレーズンを入れたもので、スタッフみんなのお気に入りです。自家製のレーズン酵母と国産小麦100%で仕上げているため、むちっとした食感に。ぎゅっと詰まった感じで小さいですが食べ応えがあります。焼く前にサッと振りかけたグラニュー糖がサクッとアクセントに。

マカダミアーノ 240円(税込) マカダミアーノ 240円(税込)
ブラックオリーブを潰して、オリーブオイルやニンニクなどを入れた自家製のブラックオリーブペーストをフランスパン生地に塗り、マカダミアナッツを7粒入れて巻き込んで、焼き上げています。食べるとゴロゴロとナッツが出てきて、オリーブが香る少し大人向けのパンです。

店舗情報

店名/Pantricot(パントリコ)
郵便番号/〒470-0152
所在地/愛知県愛知郡東郷町北山台1-3-4
最寄駅/名鉄豊田線「日進」駅
電話番号/0561-76-9795
営業時間/10:00~18:30
定休日/日曜・月曜・木曜

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年12月)のものです

<オススメパン> クロワッサン・ジャンボン 210円(税込) バゲット 270円(税込) 白いちじくとクランベリーのコンプレ 500円(税込)

パンとお店と“私”のストーリー トップに戻る