パン屋さんで活躍する女性たち パンとお店と“私”のストーリー

VOL.43 本場アメリカのハンバーガーを看板に、姫路の豊かな食材を生かしたパンをつくっています。 BAKERY 燈 LAMP(ベーカリーランプ) オーナーシェフ 川原 亜弥さん

BAKERY 燈 LAMP(ベーカリーランプ) オーナーシェフ 川原 亜弥さん

JR姫路駅より徒歩12分、国宝で世界文化遺産にもなった姫路城の近くに「ベーカリーランプ」はあります。店ではパンとともに対面式でハンバーガーを販売し、イートインスペースもあります。本場スタイルのハンバーガーが看板メニューで、アメリカ人にも好評です。おかげさまで地元の方だけでなく、海外からの多くの観光客の方も足を運んでくれます。

独立のきっかけとなったのは、主人の「ハンバーガー屋をやろうと思う」という一言でした。当時、海外で雑貨の仕入れをしていた主人が、アメリカで食べたハンバーガーのおいしさに衝撃を受け、「本物のハンバーガーを日本人にも食べてほしい」と考えたのです。私自身は高校生の頃、アメリカ留学を希望しながら実現できなかった過去があり、くすぶっていたアメリカへの憧れが原動力にもなりました。それからは二人でアメリカを訪れてハンバーガーを食べ歩き、理想のハンバーガーを構想。帰国後は実家で父の仕事を手伝い、ベーカリーでも働きながら独立の準備をしました。

私の実家は姫路市の隣、兵庫県の真ん中あたりにある神埼郡神河町です。とくに場所を限定していたわけではないのですが、地元にも近い姫路に空き店舗があると紹介してもらったのがご縁で、2010年4月に当店をオープンさせることができました。とはいえ、お店探しの時は多くの観光客がいたのに、オープンしてみると姫路城が「平成の大修理」に入ってしまい、通りに人影がないくらい閑散として、軌道にのせるのに苦労しました。

パンへのこだわり

美容専門学校を卒業したのですが、就職は好きな食の道に進路変更。レストランでさまざまな料理やデザートを学びました。そんな時、「まだパンはつくったことがないな」と、軽い気持ちでパン屋に転職したことが私の転機になりました。そこで「パンは調理もでき、デザートにもなる。今まで修得してきた技術をすべていかせるじゃないか!」と開眼。パンという身近で広がりあるものの魅力に、はまっていったのです。

パンづくりの基本にあるのは、「自分が食べたいパンをつくる」というもの。だから、安心安全な材料を使うのはもちろん、新しい材料も積極的に取り入れています。姫路は海も山も近く、若い農家の方も多いので、新鮮で珍しい食材も手に入りやすいのが魅力です。農家さんには「なんか変わった材料はない?」と尋ねたり、つくってほしい野菜を育ててもらったりしています。たとえばケフィア。ケフィアの種を牛乳に漬けておくとケフィア菌(乳酸菌)がつくられ、酸味の強いヨーグルトのようになります。それで発酵させたパンは風味豊かで奥深い味わい。シンプルな材料でも味の広がりが生まれるのがおもしろくて、最近は酵母を手づくりすることにもこっています。

店名の“ランプ”は、主人があたたかい雰囲気のお店にしたいと名づけ、それにパン屋とわかるように“ベーカリー”を私が付けました。 ハンバーガーのパティは主人が担当。主人のこだわりがつまった食べごたえのあるパティに合うバンズの開発は私がしました。 時間でメニューを変えていないため、売り切れでない限り、いつでも出来立てのハンバーガーやホットドッグなどを食べられます。 自然酵母のアメリカンスタイルのベーグルも当店のもうひとつの看板パン。レーズンやチョコ、抹茶など約20種類がスタンバイ。

女性ならではの苦労

体力には自信があったのですが、開店当初は主人の体調が悪かったため、力仕事もすべて私がしなければならず、体力的にきつかったですね。瓶のフタが開けられなくて気持ちがなえてしまうこともありました。でも、今ではたいがいのことが自分でできるので、女性ならではの苦労は感じていません。

機械が壊れても、私がまず原因をチェックして修理するか、業者に修理を依頼するか判断しています。今ではちょっと機械の調子が悪いぐらいなら自分で直せるほど。接客もしてきたので、あらゆるお客様の対応力も鍛えられましたね。

年数が経つにつれて「自分が好きでやっていることだから」と覚悟も決まり、どこまでが苦労かわからないぐらいです。しんどい時もありますが、お客様から「おいしい!」と声があがるたび救われます。以前はネットの書き込みに嫌な思いを悶々と抱えていた頃もありましたが、実際にお店で会うお客様の嬉しい感想や何度も足を運んでくれるお客様の存在のおかげで、だんだん気にならなくなりました。

どんなお店にしていきたいですか?

以前、アメリカのポートランドにスタッフと一緒に訪れた時、コーヒーの美味しさに感動したんです。そこで、美味しいコーヒーとパンをいただけるカフェがしたいと思いました。コーヒーはパンと似ていて、原料は同じでもローストの加減や淹れ方などで味が変わるのが面白いところ。当店でも、美味しいコーヒーとパンをいただけるお店として、お客様に満足してもらえるようになりたいですね。

また、今でも年に一度は海外に行くようにしていて、パンのある生活を持って帰っていきたいと考えています。パンはヨーロッパやアメリカだけでなく、アジアでも独自の発展をしていて、どこでもパンを食べられます。そんな海外におけるパンのある生活に刺激を受けながら、夕食の主食にパンを食べること、お弁当にサンドイッチを持っていくことなど、パンが生活の中に当たり前にあるような文化をつくっていければと思います。だからこそ、もっとパンの美味しい食べ方をイートインでも提案できればと考えています。とりいそぎは、ベーカリーならではの美味しいサンドイッチをつくろうと、現状に満足することなく、開発中です。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!」

川原 亜弥さん お気に入りのパン

チーズハンバーガー 750円(税別) チーズハンバーガー 750円(税別)
アメリカンサイズの大きめのハンバーガー。オーストラリア産牛肉100%を使ったパティは、粗挽きなので肉感を楽しめるジューシーな味わいです。ほかにレタス、トマト、タマネギ、レッドチェダーチーズなどをサンド。お肉の旨みをたっぷり味わっていただきたいと、ソースは最小限に、バンズはハード過ぎないバターロールのような配合でふんわり、パリッとした歯ごたえに仕上げました。アメリカ人の友人いわく、ブリオッシュのようなバンズなのだとか。また、各種ハンバーガーやホットドッグに+350円(税別)でお好きなドリンクと、ポテト・サラダ・スープから1点選べるお得なセットメニュー「コンボ」もご用意。いつでもご注文いただけます。

天然酵母のベーグル シナモン&レーズン 200円(税別) 天然酵母のベーグル シナモン&レーズン 200円(税別)
国産の強力粉を天然酵母で発酵させた風味豊かなベーグルです。卵や乳製品をいっさい使っていないので、アレルギーの方にも食べていただきやすいのではないでしょうか。当店にはプレーンなベーグルをはじめ、くるみやチーズ、チョコなど様々な種類のベーグルがありますが、このシナモン&レーズンという黄金コンビのベーグルがお気に入りです。私はシナモンが大好きなので、しっかりとシナモンを効かせており、シナモン好きの方も満足していただける味わいです。上にのせたザラメともちもちとしたベーグルの食感の違いもおもしろいと思います。朝はベーグルの種類が一番豊富なので、ぜひお好きなものを見つけていただければ嬉しいですね。

クリームパン 140円(税別) クリームパン 140円(税別)
ベーグルとともに当店のオープン当初からある、ファンの多いパンです。ふんわり甘い菓子パン生地で、とろっとした自家製カスタードクリームを包んでいます。さらに、普通のクリームパンだとおもしろくないと思い、焼く前にアーモンドクリームをオン。よりリッチな味わいになり、ケーキ代わりになるほど満足度の高い味わいに仕上がりました。リピートで買っていかれる方も多く、ちょっとクセになるおいしさです。トッピングしたアーモンドスライスは、やわらかいパンやクリームの食感にアクセントを添えています。材料費が高騰する中、がんばって価格は抑えているお得なパンだと思います。気が置けない友人宅へのお持たせなどにもおすすめです。

店舗情報

店名/BAKERY 燈 LAMP(ベーカリーランプ)
郵便番号/〒670-0012
所在地/兵庫県姫路市本町68番地 平和不動産ビル1階西
最寄駅/JR姫路駅
アクセス/JR姫路駅より徒歩12分
電話番号/079-284-9775
営業時間/10:00~19:00(日曜は18:00まで)
定休日/月曜・第2火曜

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2018年6月)のものです

<オススメパン> 揚げカレーパン 160円(税別) 栗と大納言 220円(税別) サツマイモとマシュマロのデニッシュ 230円(税別)

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