パンのテーブル

多様化する洋菓子専門店

  • La Cialda(ラ・チャルダ)
  • La Féte(ラ・フェット)
  • UN GRAIN(アン グラン)
  • PÂTISSERIE DE L'ABEILLE(パティスリー ドゥ ラベイユ)

La Cialda(ラ・チャルダ)

イタリアのトスカーナ地方で古くから親しまれている焼き菓子「Cialda(チャルダ)」の専門店。2017年10月にオープンした店内は、明るい窓辺にイートインスペース、壁際にはオーガニックを中心にしたイタリアの食材や、イタリア伝統の小さな焼き菓子などが置かれ、中央のショーケースをはさんでキッチンがあります。丁寧な手仕事で1枚1枚チャルダを焼きあげる様子を間近に眺めることができ、つくり手の顔が見える食のクラフトの場となっています。

La Cialda(ラ・チャルダ)
住所:東京都目黒区自由が丘1-25-9 自由が丘テラス1F
電話番号:03-5726-9622
営業時間:日曜~水曜、金曜、土曜11:00~19:00、
木曜17:00~21:00(夜チャルダ)
定休日:なし

シンプルな材料でつくる、どこか懐かしいおいしさ

チャルダはワッフルの原形とも言われ、小麦粉、卵、牛乳、バター、砂糖でつくる素朴なお菓子です。生地を2枚の鉄の型で挟み、直火で薄焼きのせんべい状に焼きあげます。トスカーナ地方では、チャルダは古くから婚礼に欠かせないお菓子。型の両面に結婚する2人のそれぞれの家紋を刻印することで、結びつきがより固くなる、という願いが込められたそう。後にトスカーナ大公国の君主となったメディチ家の結婚式でも参列者に振る舞われたとの記録もあります。オーナーの飯田尚志さんに、チャルダの魅力や専門店を始めたきっかけなどを伺いました。

「子どもからお年寄りまで誰でも安心して食べられる、シンプルな素材を使った飽きのこないおいしさに、まず惹かれました。調べてみると、日本でもイタリア料理店のイベントなどで紹介されたり、現地で型を手に入れてチャルダをつくってみた、という洋菓子研究家の方などもいらっしゃいましたが、常時つくって提供しているお店はありません。おいしいのに、いつでも買えないことはとても残念で、専門店として素敵なストーリーも含めて紹介していこう、と一念発起し、試行錯誤を重ねてこの店をオープンしました」(飯田さん)。



同店のチャルダは、オーガニックのきび砂糖を使ったやさしい甘みが特長の「プレーン」と、オリジナルのアレンジで、生地にパルメザンチーズを練り込んだ「チーズ」の2種類があります。厳選した材料を使って生地を毎日店内で仕込み、イタリアから仕入れた焼き型で1枚ずつ丁寧に焼きあげています。クレープ生地くらいのさらっとした生地を型に流して均一に広げ、型をこまめに返しながら焼き加減を見てムラのない焼きあがりにしていきます。

「実は、最も苦労したのが現地との湿度の違いです」と飯田さん。比較的乾燥した気候のイタリアとは違い、湿度の高い日本では、焼きあがったチャルダをそのまま冷ますだけでは、パリッとした食感になりません。そこで、焼きあげた後に、さらにひと手間を加えることで、サクサクと軽く、パリッとした食感にたどり着いたそう。
「実際につくってみて初めて、なぜ今までコンスタントに手がける店がなかったか腑に落ちました。仕上がりを均一にするためには、その日の天候などに合わせて、生地の緩め加減や火加減、焼き時間を微妙に変えていく必要があること、何よりコンロの前につききりで1枚ずつ焼いていくなど、シンプルですが、とても手間がかかって難しいお菓子だとわかったのです」(飯田さん)。


甘・辛どちらにも合い、いろいろなシーンに使える!





イタリアでは、2枚のチャルダの間にアーモンドと砂糖のペーストをサンドしたおやつ菓子がポピュラーだそう。店を始めるにあたって『おやつのチャルダだけでやっていけるの?』と、周囲の方々からさんざん心配されたという飯田さん。
そこで、同店では何も挟まないチャルダを基本にして、多彩なメニューを展開しています。
「スプレッドサンド」は、スプレッドを挟んで(ぬって)お召し上がりいただくようにしています。オリジナルのスプレッドはバリエーションを9種類ほど揃え、お客様にお好きなものを選んでいただき、2枚のチャルダでサンドにします。例えば「チーズ」のチャルダには、パルメザンやペコリーノ&マスカルポーネといったチーズ系のスプレッドがよく合います。ピスタチオやヘーゼルナッツ、ドライフルーツなどを使ったスプレッドもあり、小瓶入りはテイクアウトも可。
また、イタリアンジェラートをサンドした「アイスサンド」、チャルダを添えた「アフォガート」も通年で提供しています。

「プレーン」と「チーズ」のチャルダ半分ずつに3種類のディップを添えた「お味見3種セット」は、家にある食材と一緒にチャルダを食べてみよう!という提案を兼ねたメニューです。ディップは週替わりで、訪れたときは「マスカルポーネとマーマレード・はちみつとゴールデンベリー・サルサソース」。ちなみにはちみつは自由が丘産の「丘ばち」です。自由が丘の養蜂家さんが採蜜した希少なはちみつと、無農薬・ノーワックスの国産レモンを使って、レモネードも自家製しています。

「チャルダはシンプルなだけに、お菓子というよりもパンと同じような感覚で、朝食にも食べやすいですし、お昼には具材をはさんでパニーニ風にしたりと、日常のいろいろなシーンで食べていただけます」(飯田さん)。
「チーズ」はもちろん、ほんのり甘いプレーンのチャルダも、ビールやワイン、プロセッコ(イタリアのヴェネト州でつくられる白のスパークリングワイン)によく合い、おつまみにもなります。

木曜の夜限定で営業している「夜チャルダ」は、毎週異なる料理やおつまみのメニューを用意して、お酒にもよく合う食事としても楽しめるチャルダを気軽に体験してもらう企画です。
料理に添える、具材をはさむ、のせる、ディップするなど、アイデア次第でいろいろなメニューに使うことができるチャルダ。表面のかわいいモチーフが目を惹き、そこから食卓での話題も広がりそうです。

ページのトップへ戻る

LaFéte(ラ・フェット)

2017年11月、田園調布にオープンした世界各国の「お祝い菓子」の専門店。かつて自由が丘で人気を博していたフレンチビストロからデザート部門が独立して、テイクアウトの店としてスタート。現在はヨーロッパなど世界各国発祥の、祝福のシーンにぴったりの生菓子や焼き菓子を揃え、素敵なエピソードとともに提供しています。1つ1つの包装もかわいらしく、日持ちする焼き菓子はギフトや結婚式の引菓子としても好評です。

LaFéte(ラ・フェット)
住所:東京都大田区田園調布2-22-2 田園調布プラネット1F
電話番号:03-6459-7937
営業時間:11:00~19:00
定休日:月曜

世界各国のお祝い菓子をラ・フェット風にアレンジ


ヨーロッパ各地に古くから伝わる伝統の焼菓子には、キリスト教の祝祭や、王族や貴族の婚礼などで供されたことが起源と伝えられるものが数多くあります。
時代とともに、一般の人々の間にも広がっていき、さまざまなお祝いの席でも親しまれてきました。「お祝いのお菓子」を切り口に専門店を開いたきっかけを代表の吉井七緒美さんに伺いました。

「以前やっていたフレンチビストロは、お客様にいろいろなお祝いをする場としてご利用いただくことも多かったのですが、中でも、お祝いのデザートが登場すると、皆さんの表情がいちだんと明るく輝きます。また、食事の後のデザートもいろいろ楽しみたいけれど、おなかがいっぱいで……、といった声も。そこで、小さなお菓子を盛り合わせて、いろいろな種類を少しずつ味わっていただける『おしゃベりセット』を出してみたら大人気になりました。そんなことから、レストランのデザート部門を独立させる形で、新しいお店を企画したのです」(吉井さん)。
同店のお菓子でより多くのお客様に、お祝いのシーンをより華やかなものにしていただけるように、世界の「お祝いのお菓子」を集めたテイクアウトと通販形式の店にしたそう。



つい最近も、おいしくて珍しい、新しいお祝い菓子の発掘のため2週間でヨーロッパの5か国8都市を回ってきたという吉井さん。ただ、同店で提供するお菓子は、各地の伝統菓子のレシピをそのまま再現する、というわけではなく、本国の味、歴史や背景を理解した上で、日本の風土や好みに合わせたアレンジをして、「ラ・フェット」のフィルターを通した、おしゃれでおいしいお菓子になっています。
「現地のレシピそのままだと、甘すぎたり、重すぎたり、口当たりがパサついているように感じることが多いのですが、これは気候や湿度の違いだけでなく、食習慣や体質的なこと、例えば消化器官や唾液の量などの違いとも関係があるようです。当店でつくるお菓子は、甘さは全体的に控えめにしています。そして、お祝いごとにふさわしいデザインの洗練に力を入れています」(吉井さん)。

例えば、同店スペシャリテ、フランス語で「愛の泉」という意味の「ピュイダムール」という生菓子があります。
ルイ15世がポンパドゥール夫人のために菓子職人につくらせたという逸話がある「ピュイダムール」は、パイの器に、刻んだりんごのコンポートとサワークリームを混ぜたカスタードクリームをたっぷり詰めて、表面に砂糖を振りかけてキャラメリゼ。飴細工をのせて高さをだし、より華やかな印象にしているのは同店オリジナルのアイデアです。飴細工は別包装にしてあり、いただく直前にトッピングするひと手間も、お客様にとってワクワクする楽しみのひとつ!
金色に輝く繊細な飴細工は、そのパリパリした食感がアクセントになりますし、お祝いの気分を盛り上げてくれます。そして、パイはラ・フェットが得意とするところ。ふんわりエアリーに焼きあげてあり、バターの香りをより鮮やかに感じられます。

エピソードがお祝い菓子をもっと楽しくする





ピュイダムールと並ぶ、同店の人気商品「半生チョコクッキー」は、14世紀イタリアの宮廷で誕生した、と言われているクリーム「ザバイオーネ」を使った同店オリジナル商品です。ティラミスにも使われる「ザバイオーネ」クリームは、イタリアの宴席ではおなじみのスイーツ。卵黄とお酒を使った大人の味わいで、グラスなどに入れてそのまま供されたり、グラタンにすることも。さらっと滑らかな食感のクリームをチョコレートで球状にコーティングしてクッキーの上にトッピング。パリパリのチョコをかじると、中からクリームがあふれ出し、クッキーのサクサク感も加わって、食感のバリエーションを楽しめます。
「半生ホワイトチョコクッキー」は、季節ごとに旬のフルーツを取り入れた季節限定品。ザバイオーネのかわりに、春はイチゴのクリームを詰めて好評を集め、初夏にはさくらんぼ入りのクリームを詰めた新商品が登場しました。さくらんぼの花言葉は「小さな恋人」。見た目の可愛らしさからギフトにもおすすめです。

このほか、19世紀、イギリスのヴィクトリア女王の孫娘とドイツのバッテンバーグ王子の結婚を祝福して創作されたという「バッテンバーグケーキ」。本国ではイエローとピンクのスポンジが主流ですが、ピスタチオクリームで平和をイメージさせるグリーンのスポンジをつくり、ピンクのスポンジと合わせて、バタークリームとマジパンでコーティングしてあります。
「ポルボロン」は、アーモンドプードルを配合して粉雪のようにスッと口どける、スペイン・アンダルシア地方発祥のクッキーです。ヘーゼルナッツシナモンとアマンドショコラの2種類があります。
店内には、生菓子のほか、かわいらしく個包装された焼き菓子が並び、お好きなものを1個から選べます。また、人気のお祝い菓子5種類をミニサイズにして詰め合わせたギフトボックスはプレゼントにぴったり。ご自宅用としても少しずついろいろ味わってみたい、という希望をかなえてくれます。

どれにしようか迷ったとき、お菓子にまつわる、楽しいエピソードやストーリーが選ぶきっかけになることもあります。例えば、ポルボロンには「口に入れて、溶けきる前に『ポルボロン』と3回唱えると願いが叶う」という言い伝えがあるそう。
「一方で、民間伝承はちゃんとした文献などが残っていないことも多く、また、おもしろおかしい逸話だけが独り歩きして、信ぴょう性が疑われる情報がたくさんあるのも事実です。各国大使館や識者、その国や地域の出身者のネットワークなどもフル活用して、歴史的な背景を探り、固有の文化や伝統をリスペクトしつつ、素材やデザインなどを洗練させて、お祝いのシーンにぴったりのお菓子として紹介していきたいです。また、今はヨーロッパのお菓子がメインですが、これからは、日本を含めたアジア、そして世界中にある、いろいろなお祝い菓子もぜひ手がけていきたいと考えています」(吉井さん)。

ページのトップへ戻る

UN GRAIN(アン グラン)

洋菓子の「ヨックモック」が手がける、唯一の「ミニャルディーズ」専門店です。南青山・骨董通りから路地を1本入った隠れ家的なロケーションで、2015年11月にオープン。シックな店内のショーケースには、どれも5cm四方弱、一つまみサイズの生・半生ケーキ約20種、焼き菓子約20種の「ミニャルディーズ」が並び、4席のカウンターで味わうこともできます。

UN GRAIN(アン グラン)
住所:東京都港区南青山6-8-17
電話番号:03-5778-6161
営業時間:11:00~19:00
※イートイン利用は事前予約がおすすめ
定休日:水曜

小さくシックな手づくり菓子の楽しみ方を提案



「ミニャルディーズ」とは、フランス料理のコースのしめくくりに、コーヒーなどの飲み物に添えられる小さなお菓子のこと。同店では、焼き菓子を中心にした本来のミニャルディーズに加えて、生菓子、半生菓子も一つまみサイズに仕上げ、「食後に限らず、大切な人々と過ごすひとときに楽しむ、小さくてシックなお菓子」としてミニャルディーズを提案しています。
「少しずつ、いろいろな種類を食べたい、プレゼントにちょうどいいサイズのお菓子があったらいいな、との要望が多く、『小さいケーキ』というブランドコンセプトがまずあったのです」とお話しくださったのは、シェフ・パティシエの金井史章さん。

同時に「手づくりへの回帰」ということも大切なテーマとしています。ヨックモックの看板商品「シガール」も、創業当時はすべて手仕事でつくっていました。1つ1つの素材にこだわり、自店で丁寧に手づくりし、お菓子の魅力をしっかり伝えながらお客様に手渡しする場でありたい。敢えて駅近くの喧騒を離れた立地を選び、店内にカウンター4席のイートインスペースを設けたのも、そのためなのだそう。

小さいケーキと言っても、どこまで小さくするかは1つの課題でした。昔からある「プチフール」は、見た目はかわいらしいですが、そのサイズゆえにそう凝ったものはつくれません。
「一般的なサイズのケーキをそのまま縮小するのではなく、小さいからこそ実現できる美味しさを徹底的に追求しました」と金井さん。ショーケースに整然と並ぶケーキたちは、すべて4.8×4.8cmの台紙の上にバランスよく収まるサイズになっています。

「アン グランの世界観を1つのケーキの中でしっかり表現するためのミニマムのサイズです。ほんのわずか、ケーキのセンターがずれてもバランスが崩れてしまいますから、コンマ数ミリの計算を重ねてデザインを決め、ピンセットや針も使いながら仕上げていきます。セルクル型でパーツをつくる場合も、タルトなら焼き縮むことを考えて44mm、冷やし固めるムースなら40mmと、仕上がりのサイズから逆算してつくっていきます。そもそも、セルクル型にタルト生地を敷き込むにも、両手2本の指は入りませんから、片手で作業して、もう片方の手は型に添えるだけ、とか。一般のケーキづくりとは、だいぶ勝手の違う作業が多いのです」(金井さん)。



小粒なればこその、複雑かつこだわりぬいた構成





店名の「UN GRAIN」とはフランス語で「一粒の種」の意味。一粒の種から生まれる食材を大切に扱い、繊細な技術で一粒の宝石のようなお菓子に仕上げていきます。

「すべてがチョコレート」という意味の「トゥ タン ショコラ」は、ザクザク食感のショコラのクランブルの土台に、口どけのよいショコラ、アルマニャック酒を効かせたチョコレートのガナッシュ、ムース、ナッツのヌガティーヌなど、全部で9つの異なる味わいを組み合わせた複雑な構成になっています。
「重い、甘すぎると感じられやすいチョコレートのケーキですが、低糖度だけに寄せなくても、ミニャルディーズならではの軽さの出し方、主張の仕方があります。ドライなリカーで甘さやこってり感をマスキングし、ビターを通り越して無糖に近いノワールショコラでカカオ感をしっかりと主張、トップにのせたクネルには黒胡椒を隠し味に使ってあります」(金井さん)。

ケーキを構成しているほぼすべての要素が最初の1口目から口の中に入ってくることもミニャルディーズの醍醐味です。足し算で、すべてが1つになって完結する美味を1口で体感でき、飽きずに食べ終わることができるのです。

高知県産の希少な柑橘ベルガモットを使って「ペティヨン」をつくったことがきっかけで、高知県のプロモーションビデオ「グルメ編」に自ら登場もしている金井シェフ。同県産の季節の柑橘を使った爽やかなミニャルディーズが「タルト アグリューム」です。甘み、酸味、香り、苦みなど、柑橘のいいところをすべて楽しむためのタルトで、取材時は旬の文旦が主役。果汁入りのメレンゲをのせて焼きあげたタルトシトロンの上には、丁寧に1粒1粒にほぐした文旦の果肉があしらわれています。トップに振りかけてある黄色い点々は、果皮を薄く削って砂糖と合わせ、乾燥させてから細かく砕いたもの。口に入れるときに、フワッと鼻から柑橘の香りを感じていただけるようにしてあります。

「素材の持つ力を活かしきり、お菓子の形にしてその魅力を引き出すとともに、1つ1つの素材にはストーリーがあり、生産者の真摯な想いがあることも丁寧に伝えていきたいと思っています」(金井さん)。

そして、カウンター席というスタイルならではの試みとして、コース仕立てのデセールを味わっていただく「シェフズカウンター」も年に数回開催しています。
「すでにできあがったスイーツを提供するほかに、1皿ごとに驚きと感動をもたらす、刹那的なものを楽しんでいただく場もつくりたかったのです」(金井さん)。
目の前でシェフが仕上げる様子を眺めつつ、会話を楽しみながら、約1時間かけて珠玉のデセール数品を味わうことができます。※メンバー登録(無料)後に要予約

ページのトップへ戻る

PÂTISSERIE DE L'ABEILLE(パティスリー ドゥ ラベイユ)

はちみつ専門店ラベイユから誕生したパティスリー。店内すべてのスイーツは、ラベイユで取り扱うはちみつだけを使って甘さを表現しているのが特長です。世界10か国からの約20種類のはちみつを使い分け、良質な食材と合わせてつくる、伝統的なフランス菓子が揃っています。

パティスリー ドゥ ラベイユ
住所:東京都杉並区天沼3-6-25
電話番号:03-3392-8022
営業時間:10:00~19:00
定休日:なし

ラベイユで扱うはちみつを贅沢に使ったスイーツ





荻窪駅北口からレトロな雰囲気の教会通り商店街を歩くこと数分、はちみつ専門店ラベイユ荻窪本店のすぐ先に、2017年12月にオープンした同店があります。パリの街並みにあってもしっくりなじむよう、外観・内装ともにこだわってつくられたシックな佇まいです。母体のラベイユは、世界10カ国80種類以上のはちみつを取り扱う専門店で、はちみつを使ったスイーツなども期間限定で提供してきました。

「はちみつだけで甘さを表現したお菓子を世界にもっと広めていきたい。はちみつの可能性をさらに広く、深く追求していくことを目指して生まれたのが『パティスリー ドゥ ラベイユ』です」とお話しくださったのは、シェフの山本竜二さんです。

はちみつを使ったスイーツは珍しいものではありませんが、同店では、砂糖などはちみつ以外の甘味料は一切使わないことに徹底してこだわっています。ラベイユで販売しているはちみつのみを贅沢に使って、生菓子10~15種類、焼き菓子は約20種という、充実のラインアップとなっています。

生ケーキが並ぶ冷蔵ケース、人気商品の「ショーソン オ ポム」や「フィナンシェ」など本日の焼きたてが並ぶカウンター、各種焼き菓子など、店内を一見したところでは一般的なパティスリーとそう大きく変わるところはありません。
「砂糖をはちみつに置き換えて、ビジュアルも味わいも伝統的なフランス菓子をベースにして考えています。はちみつは、甘さだけでなく産地や採蜜する植物ごとに味わいや香りに個性がありますから、もとのお菓子のよさを生かしつつ、はちみつの個性も感じていただく、そのバランスをいちばん大切にしています」(山本さん)。

たとえば「フレジェ」。見た目はイチゴショートのようですが、軽いホイップクリームではなく濃厚なバタークリームにキルシュ(サクランボのブランデー)を効かせた正統派のフランス菓子です。クリームにはクセのないハンガリー産アカシアを、アーモンド・ビスキュイにはスペイン産ラベンダーを使ってあり、口に入れたときにふわっと広がる香りは、はちみつスイーツならではです。
その一方で、ケーキや焼き菓子に使う砂糖には、甘さ以外にもさまざまな役割があります。砂糖をはちみつに代えることで、生地がうまくふくらまなかったり、比重の違いでクリームが泡立ちにくい、焦げやすいなど、難しい部分もあったそう。試作を重ねることで、そうした課題を解決しつつ、何種類もあるはちみつの中からどれが合うかをいろいろ試して、レシピを完成させてきました。

はちみつがスイーツをもっとおいしくします






ラベイユ本店では、すべてのはちみつを試食して選ぶことができます。その足で、パティスリーに立ち寄ってくださるお客様も多いそう。ミネラル分を豊富に含んだはちみつでつくるスイーツは、健康志向の方にも喜ばれています。また、店内の商品のプライスカードには、使われているはちみつが表示されていますから、「私のお気に入りはちみつはこういうケーキにもなるのね!」という発見を楽しむこともできます。

看板商品の1つでもある「ショーソン オ ポム」は、はちみつで煮込んだふじりんごをパイ生地で包んだアップルパイ。
「当初は個性の強いスペイン産りんごのはちみつを使っていましたが、ハンガリー産アカシアに変えて、よりマイルドな味わいに。りんごの旨み、はちみつの味と香りが際立つよう、ほかに加えるのはレモンくらい。パイ生地には甘みをつけずにシンプルにバターが香り、パリパリの層がしっかり膨らむようにつくっています」(山本さん)。
「ショーソン オ ポム」や「フィユテ オ マロン」(マロンパイ)のなんともつややかな焼き色も、表面に塗ったはちみつのおかげです。

「ムース オ ミエル」は、ハンガリー産アカシアとフランス・プロヴァンス地方の野生ハーブの花々から採れたはちみつ「プロヴァンス」を使用した同店のオリジナルレシピ。口どけがよく、はちみつの個性をストレートに感じることができる、はちみつ好きにはおすすめのケーキです。
フィナンシェやマドレーヌは、ポコンとふくらんだおへそが特徴ですが、はちみつだとふくらみが足りなくなりがちに。「一番大切なのは、生地に混ぜるときの温度です。卵の温度、はちみつの温度、合わせるタイミングを試行錯誤して、最適な仕上がりにしています。その難しさは、逆につくり手にとっての楽しみな部分でもあります」(山本さん)。

そして、新商品の開発にあたっての難しさは、砂糖を使った市販の材料は一切使えないこと。フルーツのコンポートなどは、はちみつを使って自店で炊いていますし、新しい材料を使う場合は、原料に砂糖などを使っていないかを厳密にチェックします。
「チョコレートやココアパウダーも加糖してあるものがほとんどですが、今後はチョコレート系のアイテムを充実させていきたいです」(山本さん)。

ページのトップへ戻る

外国の一地方の伝統菓子、お祝いをテーマにしたお菓子、一口サイズのお菓子、はちみつだけで甘さを表現したお菓子と、それぞれに深いこだわりを極め、ほかにはない魅力となっています。個性的な洋菓子専門店にぜひ足を運んでみてはいかがでしょう。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2018年5月)のものです

パンのテーブルトップに戻る