竹谷さんだから聞けるパン職人の理想と挑戦-対談
日商100万円の繁盛店~「閉店まで商品を絶やさない」というこだわり~
Backstube Zopf 伊原 靖友さん

「竹谷さんだから聞けるパン職人の理想と挑戦」。今回は千葉県松戸市の「Backstube Zopf」の伊原さんにお話を伺いました。15年前に父親である初代オーナーから店を受け継ぎ「日本一のパン屋」と評される人気店になるまでの道のりはどんなものだったのでしょうか。竹谷さんとの対談のなかで語られた、伊原さんが考えるパン屋のあり方とこれからの展望にその答えが隠されていました。

前編 後編

生粋のパン職人が歩んだ道







竹谷
 本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。
伊原
 こちらこそありがとうございます。
竹谷
 お父さんが営まれていた「ベーカリー マルミヤ」をリニューアルして「Backstube Zopf」をオープンされたとお伺いしました。
伊原
 葛飾区青砥に「マルミヤ」というお店があり、父はそこでパン職人として働いていました。そのお店の暖簾分けという形で最初は青砥に1965年「ベーカリー マルミヤ」をオープンしたんです。その後現在の場所に移転しました。
竹谷
 それから二代目である伊原さんが「Backstube Zopf」としてお店を受け継いだんですね?
伊原
 2000年に「Backstube Zopf」をオープンしました。父には相談もせずにいきなり店の改装工事を始めてしまい、父の機嫌を損ねてしまったようです。今では笑い話ですが。
竹谷
 駅からも遠く、決して便利とは言えない出店場所ですが、なぜこちらにオープンしようと思ったんですか?
伊原
 父がオープンした時のことなので想像になりますが、青砥にあった「ベーカリー マルミヤ」の場所も団地のそばの商店街だったので、同じような立地を選んだのではないかと思います。
竹谷
 お父さんのお店での修業以外で勤めたお店はありますか?
伊原
 今は閉店してしまいましたが、平塚の秋山信直氏のお店「シェーンブルン」で3年半修業しました。その頃はテレビや雑誌にも紹介される人気店でしたね。
竹谷
 伊原さんは製パン理論がしっかりとしている方なので、どこで修業をされたのかと気になっていたんです。秋山信直氏の元で修業されたと聞き、納得しました。
伊原
 「シェーンブルン」は色々なパンを扱っているお店だったので、自分のパン屋としての土台となっているのはここでの経験です。
竹谷
 「シェーンブルン」での経験のなかで記憶に残っていることはありますか?
伊原
 休みはほぼゼロでしたね。朝4時から20時までお店にいて、パン作りには真剣に取り組みました。ただ、昼休みには海に行ったりもしましたね。

毎日作り続けること、そして完売させないこと





竹谷
 オープン1年目の売上も好調だったようですが、その理由はなんだったのでしょうか?
伊原
 運としか言いようがないのですが、強いて理由を挙げるならばお店がオープンした2000年という年は「iMac」が発売され、インターネットを利用してのお金をかけない宣伝が可能になった年でもありました。私も自分で作ったお店のホームページをアップしましたし、そういった影響も少なからずあったと思います。
竹谷
 宅配サービスを始めたのはいつ頃ですか?
伊原
 オープン後1年ほど経った頃でしょうか。
竹谷
 始められた頃に注文したことがありましたが、とても丁寧に梱包されていて、これは赤字なんじゃないかと心配しました。あの宅配サービスで「Backstube Zopf」の名が世の中に知れ渡ったように感じています。
伊原
 実は宅配は赤字ですね。基本的に商品をアラカルトで選べるので受注から発送までの手間がかかります。ただ、遠くにいるお客様にもパンを届けたいので、サービスとして続けています。とにかく丁寧に梱包して、一番良い状態で商品を送ることを心がけています。
竹谷
 お客様に対して「これだけはこだわっている」という点はどんなところですか?
伊原
 毎日作るということですね。お店にとって一番いけないことは「完売」だと思っています。あのお店に行けばあの商品が「ある」と思ってもらえることが大切なんです。閉店間際でも商品が揃っている状況を作るために、18時まで窯が動いていますね。
竹谷
 お店のWEBサイトを拝見しましたが、アイテム数が300種類。常時300というのは1日の間で300種類が店頭に並ぶということですか?
伊原
 はい。1日で300種類を店頭に並べます。基本的には一度店に出した商品は廃番にしません。そのため4~5個しか作らない商品や、2本しか焼かない商品もあります。ただアイテム数は年間で1~2アイテム増えるだけです。
竹谷
 それはどのように増やしていったんですか?
伊原
 私は自分がおいしいと思ったパンを作って販売しています。「こういうパンが食べたいな」と思うとすぐ作るので、自然とアイテム数は増えていきますね。はっきりと覚えていませんが、どこかで食べたパンから影響を受けていることも少なからずあると思います。
竹谷
 一度作ったら提供を辞めないというのはすごい心がけですね。なかなか真似できません。
伊原
 生地数も42種類あります。全て別仕込みでこの数を作っています。別仕込みの方がスタッフは覚えやすいというのもあります。
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