竹谷さんだから聞けるパン職人の理想と挑戦-対談 幅広い視野が生む新発想~パンも効率もお客様も大事にしたい~ ポン レヴェック 大山 伸さん

「竹谷さんだから聞けるパン職人の理想と挑戦」。今回お話をお伺いしたのは、愛知県蟹江町にある「ポン レヴェック」のオーナー・大山伸さんです。108円の「バゲット」やココット料理、パンを冷凍配送する「お任せセット」など、パン業界に新しい風を送り込み続ける彼の発想の源はどこにあるのでしょう。数々の名物誕生のきっかけを伺いながら、大山さんの幅広い視点とバイタリティ溢れるお考えに触れました。

前編 後編

師の導きなくしてはあり得なかったパン職人としての道









竹谷
 本日はお忙しいところ、お時間をいただきありがとうございます。
大山
 こちらこそ、ゆっくりとお話できて嬉しいです。
竹谷
 早速ですが、パン職人になった経緯をお聞かせ下さい。
大山
 私は若い頃、チーズケーキが大好きでケーキ職人になりたいと思っていました。21歳で就職した「名鉄グランドホテル」でも洋菓子をつくっていたんです。27歳になった頃「名鉄ニューグランドホテル」開業時にベーカリー部門へ配属されました。お世話になっていた師匠の頼みでベーカリー部門へ異動したので、実はパンに対して興味は無かったんです。しかし、今思えばこの時、師匠から誘われなければパン職人にはなっていないので、本当に感謝しています。
竹谷
 そうだったんですね。独立は「名鉄ニューグランドホテル」を退職してすぐにされたのでしょうか?
大山
 ベーカリー部門を5年間経験した後、1992年、32歳の時に独立し近鉄富吉駅前にベーカリーをオープンしました。8時間できっちり退社できる職場しか経験が無かったので、独立して初めてベーカリー経営の厳しさを知りましたね。
竹谷
 生活が一変したでしょうね。2010年にここ蟹江町学戸に移転されて、素敵なカフェスペースを併設されていますが、カフェは移転前から営業されていたのでしょうか?
大山
 移転前にもベーカリーにカフェを併設していましたし、ビストロも経営したことがあります。当時は、シェフが1名いたので、その方に料理を任せながら、色々と挑戦していました。彼と一緒に考え出したカフェの看板メニューである「ポーク・シチュー」は、私の人生の中で1番のヒット商品となりました。
竹谷
 ベーカリーカフェで、ココット料理を提供しようと思ったのはなぜだったのでしょうか?
大山
 フランス・アルザス地方のある逸話からヒントを得ました。主婦にとって洗濯が1日仕事だった時代のことです。当時の主婦たちは、日曜の夜から仕込んだ鍋を、「洗濯の日」とされていた月曜の朝、ベーカリーに預けてから洗濯に出かけたそうです。洗濯が終わり夕方帰ってくる頃には、仕事を終えたパン窯でじっくり火入れされたおいしいシチューが出来上がっているというわけです。主婦たちはその鍋を受け取り、パンを買って帰るのです。
竹谷
 とてもいいお話ですね。そんな素敵なお話からヒントを得たと知ってから味わうとより一層おいしく感じます。

ヒットの予感!ココット鍋との衝撃の出会い











竹谷
 料理にルクルーゼのココットを使ったのも当時としては新しい発想だったと思います。
大山
 提供を始めた当時、ルクルーゼのココットは、まだそれほど有名ではなかった時代でした。実物を手に取った瞬間に「きた!これは絶対にヒットする」と思いましたね。性能はもちろんですが、何よりもビジュアルの良さが決め手です。調理器具としてだけでなく、器としても数倍見映えが良くなるという利点があるんです。
竹谷
 実際にランチをいただきましたが、とてもおいしかったです。かわいらしいココット鍋が運ばれてくると、自然と胸が弾みますね。
大山
 ありがとうございます。提供を初めてすぐにメディアにも多く取り上げていただいたおかげで、多くの方がご来店下さいました。当初は24食限定で提供していたのですが、現在はココットの量を増やし、1日100食ほどはご用意できるようになりました。
竹谷
 大きな鍋で大量のシチューを仕込んでいるのでしょうか?
大山
 当店では1人前ずつつくっています。大鍋で大量に仕込んでしまうとどうしても具材の煮崩れを避けられませんし、煮崩れないようにつくると具材の柔らかさにムラができてしまいます。このように1人前ずつつくると聞くと、手間がかかりそうに聞こえますが、1人前の具材をココット鍋に入れて、オーブンに入れるだけなので、誰でもつくることができるんです。この「誰でもできる」というのが、カフェで提供する料理のテーマにもなっています。
竹谷
 確かに、おいしくて、なおかつ誰にでも調理できる料理をベーカリーカフェで提供できるのは強みですね。
大山
 定番のメニューに加えて毎月1品は「今月のココット料理」を提供しています。以前は、私がメニューを考えていたのですが、今は料理人経験のあるスタッフがメニューを考案しています。
竹谷
 食事とともに提供されるパンもバゲットだけでなく、レーズンパンなどソフトなパンもあるんですね。
大山
 あえてハード系のみに絞らないことにしました。やはりおかわりされるのは、レーズンパンなどソフトなパンが多いです。そんな中でも料理と一緒にパンを味わい「食事にはハード系のパンが合うんだ」と気がついてくれるお客様が一人でもいればと思っています。
前編 後編
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