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vol.24 鰹節の達人に聞く、
パンと「削り節」のマリアージュ

紹介してくれた人

有限会社池田物産
代表取締役社長 池田 正さん

削り節の製造や鰹節など、だし素材を扱う卸問屋の有限会社池田物産に1983年入社。数多くの日本蕎麦・和食店主様との現場の経験則から、だしを極める。2011年に小売店舗「かつをぶし池田屋」を開設。プロが使う極上の鰹節を家庭でも気軽に味わっていただけるように、妻の雅子さんとともに、レシピの提案など、鰹節やだしの魅力を広く伝えることにも取り組んでいる。鰹節の一大産地である鹿児島県枕崎市の「枕崎カツオマイスター」に認定され、だしソムリエ協会認定講師としても活躍中。

RECOMMENDED COMBINATION おすすめの組み合わせ

「合わせだし」効果で、
うま味は相乗的に深まります

生ハムのような食べる削り節+ナッツとドライフルーツ入りカンパーニュ

鰹節や昆布、干椎茸などの和のだしがもたらす「うま味」は、世界中の料理人から注目を集め、さまざまな料理にとり入れられています。
なかでも鰹節は、うま味成分の1つである「イノシン酸」をたっぷりと含んでいます。鰹節は、さばいたカツオを煮たあと、「焙乾(=燻し、乾燥させる工程)」を行ってつくります。加工する前のカツオには、イノシン酸はさほど多くは含まれていませんが、何日もかけて焙乾を行うことで、水分が抜け、うま味成分のイノシン酸が凝縮されていきます。また、近年、ダイエットや健康志向で高タンパク・低脂肪のサラダチキンなどがブームになっていますが、鰹節は必須アミノ酸を豊富に含む、高タンパク・低脂肪な食材です。必須アミノ酸は、肌や髪のハリやツヤをよくしたり、血糖値の上昇を緩やかにする働きや抗酸化作用、ストレスの軽減、集中力やモチベーションのアップなど、さまざまな働きが知られています。鰹節は、おいしいだけでなく、私たちの心と体を健やかにしてくれる、日本古来の「スーパーフード」ともいえるのです。
鰹節のおいしさを、丸ごとそのまま気軽に食べていただけるのが当店特製の「食べる削り節」です。
鰹節の一大産地である鹿児島県枕崎産の鰹生節を特製タレに漬け込み、焙乾を重ねてから、中厚削り節に仕上げました。化学調味料は一切使わず、ほんのり和風の醤油味と熟成によるうま味を楽しんでいただけます。しっとりとした食感と燻香はまるで生ハムのよう。そのままおやつやおつまみに、また、ごはんはもちろん、パスタやパンに添えてもおいしく召し上がっていただけます。

「食べる削り節」にパンを合わせるなら、クルミなどのナッツや甘酸っぱいドライフルーツ入りのカンパーニュがおすすめです。鰹節の主なうま味成分は、核酸系の「イノシン酸」。これに昆布に代表されるアミノ酸系のうま味成分(グルタミン酸など)を合わせると、うま味が相乗的に増します。異なるタイプのうま味成分を合わせることで、うま味が何倍にも強まる、いわゆる「合わせだし」の効果です。
ナッツやドライフルーツにもグルタミン酸が含まれています。これが、鰹節と合わせたときに、ちょうど昆布のような役割をして、うまみを一層強く感じさせてくれるのです。また、「食べる削り節」の塩味とドライフルーツの甘み、酸味のコントラストも味にメリハリを与えてくれます。同じくグルタミン酸が豊富なチーズをプラスすると、乳成分がパンと削り節をよりしっくりと結びつけ、さらに味わい深くなります。クリームチーズもウェット感が加わるので、おすすめです。「食べる削り節」とスライスしたパン、お好みのチーズをプレートにのせるだけで、日本酒にもワインにもぴったりのオードブルができあがります。

パンとチーズと「食べる削り節」で前菜やお酒のお伴に

STORE RECOMMENDATION 私のお店のおすすめ

「本枯れ花かつを」
0.02㎜の極薄削り節。
上品なうま味が凝縮しています

当店は、天然のだし素材を扱う卸問屋です。日本蕎麦店や和食店などプロ向けのだし素材を「ぜひ小売りしてほしい!」とのご要望に応えて、2011年に事務所の一画にショップをつくりました。現在はネット通販のほか、首都圏の取扱店などでも当店の商品を購入いただけますが、全種類を置いているのは、ここ和光市にある直営店のみ。鰹節、さば節、そうだ節のほか、煮干し、昆布、干椎茸などのだし素材、調味料など100種類近くを揃えています。スタッフ全員が「だしソムリエ」の資格を持ち、鰹節のこと、だしの取り方、だしを生かした料理レシピなどをご紹介しています。
「鰹節からだしをとるなんて、面倒くさいし、難しそう!!」と、敬遠される方も多いのですが、是非、一度試していただきたいのは、「本枯れ花かつを」です。上品なだしがさっと簡単にとれます。

年月をかけて熟成された本枯れ節を使用し、上品なうま味が魅力の「本枯れ花かつを」

鰹節には「荒節(あらぶし)」と「枯れ節」の2種類があります。約20日間の「焙乾」を経てできあがるのが荒節で、燻した香りに加え、魚らしい香りとコクが残っているのが特徴です。一方の「枯れ節」は、荒節の表面をきれいに削ってからカビづけをして乾燥・熟成したもの。天日干しとカビづけを数回繰り返してできあがるのが「本枯れ節」です。カビの働きでさらに水分が抜けて、うま味成分が増し、まろやかになります。脂肪分も分解されるため、雑味の少ないよりすっきりとした味わいの、澄んだ上品なだしをとることができるのです。
「本枯れ花かつを」の原材料は鹿児島県産の本枯れ節のみ。半年~2年間熟成させた本枯れ節を仕入れ、当店でさらに寝かせ、最適のタイミングを見極めて0.02~0.03mmの極薄に削っています。透けるように薄い削り節にうま味がギュッと凝縮されていますから、短時間で香りを逃さずに、おいしいだしがとれます。「おかか」としてそのまま食べていただいても、フワッとやさしい口あたり、香りと味わいをストレートに楽しんでいただけます。

透けるほどの薄削り、桜色をした、まさに「花かつを」
本枯れ節と昔ながらの鰹節削り器も

おいしいだしを効かせると、うま味成分が満腹中枢に働きかけて満足感を得られ、食べ過ぎの防止にもつながります。また、味つけを濃くしなくても十分においしく感じられ、塩分や油脂を減らすこともできます。
ただし、化学調味料の強いうま味や濃い味に舌が慣れている方には、鰹節だけのだしだと、最初は少し物足りなく感じるかもしれません。そんなときは、ポットに冷水と昆布を入れて、冷蔵庫で1晩置いた昆布だしと合わせだしにするのがおすすめです。合わせだしで野菜を煮込んだラタトゥイユや、クリームシチューなどはパン食にもぴったり。だしと野菜だけでも驚くくらいに深いうま味とコクが出ます。
天然素材のだしの味に慣れてきたら、さば節、煮干しなどだし素材を替えてみたり、厚削り、薄削りなど削り方で香りや味わいにどんな変化が生まれるか、試してみるのも楽しいものです。
だしの味わいやうま味は、食べておいしい、というだけにとどまらず、おなかの中から幸せな満足感で満たしてくれます。だしをとっているときから、香りに癒され、穏やかな気持ちになっていくんです。
「だし」は未来にも伝えていきたい日本ならではの食文化です。ぜひ毎日の食生活においしい鰹節やだし素材をとり入れてみてください。

削り方の違いで、関西風・江戸前の好みに合わせたおだしがとれる
普段使いの各種だし素材からギフトに最適なものまで揃う

店舗情報

店名
かつをぶし池田屋(いけだや)
住所
埼玉県和光市白子3-18-17
TEL
048-468-3271
営業時間
10:00~18:00
定休日
土曜、日曜、祝日
交通
西高島平駅から徒歩7分
URL
http://www.katsuobushi.co.jp

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2019年12月)のものです

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2019年12月)のものです

パンを楽しむ美食の足し算