パンのテーブル パンのテーブル

北欧のパンとお菓子 北欧のパンとお菓子

北欧生地や雑貨、建築・インテリアなど、私たちの心を惹きつける北欧デザイン。そして、最近では「フィーカ」というスウェーデン発祥の「お茶の時間」が話題となることも多くなっています。今回は、食を通して北欧を感じることができるベーカリーやお菓子の店、カフェをご紹介します。

ライ麦ハウスベーカリー

フィンランド人の店主ラッパライネン アキさんと優子さんご夫妻が2017年鎌倉にオープン。賑やかな若宮大路と小町通りに挟まれた閑静な路地にあり、店内奥のイートイン席からは古都・鎌倉らしい坪庭を眺められます。自家製ライ麦サワー種を使ったライ麦100%のハード系から、オートミール、大麦、じゃがいも、全粒粉を加えて作る食事パン、菓子パン、調理パン、サンドイッチなど、フィンランドで昔から受け継がれてきたパンを中心に約30種類がそろいます。

ライ麦ハウスベーカリー

住所
鎌倉市小町2-8-23
電話
0467-24-0229
営業時間
10:00~17:30ごろ
定休日
水曜 ※火曜不定休
鎌倉駅から徒歩5分の「ライ麦ハウスベーカリー」

ライ麦100%など、色の濃いパンが並びます

型焼きのプレーンとミューズリーは各390円(税抜)
店主のラッパライネン アキさん

店内は麦の芳ばしい香りに包まれ、右手の平台には溶岩窯で焼きあげた、パンの数々が並んでいます。左手にはガラス張りのパン工房があり、お客様はパンを選びながら、またイートイン席でくつろぎながら、アキさんのパンづくりの様子を眺めることができます。
アキさんと優子さんは、共にフィンランドのラハティ市にあるベーカリーで経験を積みました。その後来日し、アキさんは日本のベーカリーで働き、日本のパンづくりやお客様の好みを体得。その経験を生かして、フィンランド伝統のパンを軸に、日本のパンのよいところを取り入れているのが同店ならではです。日本語の達者なアキさんに、フィンランドのパンの特徴を教えていただきました。

「フィンランドで昔からつくられていたのは、寒冷な気候でよく育つライ麦を使ったパンです。その後、小麦の栽培が盛んになり、私が子どものころは小麦粉でつくるバゲットも人気でしたが、現在のフィンランドのベーカリーやスーパーで売られているのは、ほとんどがライ麦や大麦、ミューズリーなどを使った茶色いパンです」(アキさん)。

フィンランドで昔も今も最もポピュラーなライ麦100%のパン。同店では3つのタイプをそろえています。いずれもライ麦から起こした自家製サワー種を使ってじっくりと発酵させた生地を使い、焼成により噛み応えや味わいに変化をつけています。平べったく直焼きした「レイカレイパ」はクラストが厚めで3種類の中では最もハードなタイプ。少し高さのある直焼き「ミニリンプ」は、クラストはやや薄く、中くらいの固さ。型に入れて焼いた「型焼き」は、3つの中ではいちばんやわらかいタイプで、プレーンとミューズリー(ヒマワリの種・ごま・オートミール入り)の2種類があります。やわらかい、といっても日本のふわふわの食パンに比べれば、しっかりとしたかみごたえ。薄くスライスしてサーモンやチーズなど、脂肪分を多く含む食材と一緒に食べるのがおすすめだそう。

岩直焼き レイカレイパ 600円(税抜)
店内

サワー種でつくるライ麦100%のパン、というと酸味が強くて食べづらそうなイメージがありますが、どちらかというと酸味は抑えめ、ライ麦の香りが際立っています。
「酸味は上のほうに上がってクラスト部分に集まるので、クラストが厚めのタイプほど酸味を感じやすくなります。また、焼きあげたあとも熟成が進むため、時間がたつことでも酸味は少しずつ深まっていきます。日がたつにつれて味わいが変化していくこともライ麦パンの楽しみの1つです」(アキさん)。

小麦粉にじゃがいも、ライ麦を加えた「リエスカ」 300円(税抜)

ほかにも大麦を30%使った「大麦ブレッド」、じゃがいもを練り込んだ「リエスカ」、「オートミールの食パン」などバリエーション豊富で、どれも体によいとされる雑穀を使用したナチュラルな色合いです。
「鎌倉でパン屋だと、お客様は若い方がほとんどだろうと当初は思っていました。ところが、年配のお客様もたくさんいらっしゃいます。ライ麦や雑穀を使ったパンは、食後の血糖値上昇が穏やかな『低GI食品』ということでも選ばれるようです。思ったよりも食べやすく、食事に合わせても、サンドイッチにしてもおいしいので、リピートしていただいています」(優子さん)。

シナモンロールは「平手打ちした耳」

お米のお粥をフィリングにした「カレリアンピーラッカ」は、フィンランドの国民食ともいえるパンです。カリャラン地方(ロシアとの国境地帯)の伝統的なパイで、ちょうど餃子の皮くらいに薄く伸ばしたライ麦生地でライスポリッジ(米をバターと牛乳で炊いたミルク粥)を包んで焼きあげています。プレーンはシンプルなやさしい味わいで、ちょうど日本人にとっての塩むすびのような感覚。上にサーモンやチーズ、ベーコンなど具材をのせて焼くこともあるそうです。

フィンランドでは、料理にお米を使うことも多く、同店の「タコスミートパイ」はひき肉のフィリングに炊いたごはんを混ぜてあります。ゆでたまごとごはんを混ぜたフィリングは、「たまごはんパイ」に。ほどよい粘りともちもちした食感で、パンの具材にごはん、という意外な組み合わせが、日本人にとっても、なじみやすいおいしさとなっています。

リアンピーラッカ 210円(税抜)
小麦タコスミートパイ 213円(税抜)

北欧といえば「シナモンロール」。フィンランド語では、「コルバプースティ=平手打ちした耳」という不思議な名前で親しまれています。シナモンの渦巻が側面にくるのがフィンランド式で、なるほど、耳のように見えなくもありません。オートミールを加えた生地に粗びきのカルダモンを練り込み、平らに伸ばしてシナモンシュガーを振ってくるくる巻いて棒状に。それを輪切りにし、真ん中をギュッと押さえて成形完了。表面にアーモンドとパールシュガーを振りかけて、甘さは控えめ、シナモンの香りと清涼感のあるカルダモンをきかせたシナモンロールです。30cmサイズに大きく焼いたものは「カネリピッコ」。大きく焼くことで、よりしっとり、切り分けて好きなだけ食べることができます。

カルダモンとシナモンが香る生地。輪切りにし、真ん中を指で押さえてくぼませます。

北欧シナモンロール 204円(税抜)
大きく焼いたシナモンロール「カネリピッコ」 1本1389円(税抜)

フィンランドと日本のベーカリーの両方で修業を積んだアキさんは、食事パンはやはりライ麦や大麦などを使ったブロート系がいちばんだと考えています。「ふんわりやわらかな日本のパンは菓子パンに向いていますね。うちの店でも、菓子パンはやわらかくつくっています」(アキさん) 。フィンランドと日本のパン、それぞれのよいところを取り入れた人気の菓子パンが「ボイプンラあんぱん」です。オートミールを加えたバター入り菓子パン生地でこしあんを包んでいます。
「ヨウルリンプ」はフィンランド版黒糖ロールといった味わい。ライ麦50%の生地に、黒蜜とフェンネルを練り込んで、さわやかな甘さです。

パンの商品名はフィンランド語をそのままカタカナで表記したものもあり、私たちの耳にはあまりなじみがないですが、優子さん、アキさんともに気さくにお客様にお声かけして、どんなパン? おいしい食べ方は?など、フィンランドのパンにまつわるあれこれをお伝えしています。売り場と一体感のあるガラス張りの工房レイアウトにも、フィンランドのパンの魅力をお伝えしたい、というご夫妻の想いが込められています。

ボイプンラあんぱん 220円(税抜)
ヨウルリンプ 250円(税抜)

FIKAFABRIKEN

店名のFIKAFABRIKEN(フィーカファブリーケン)はスウェーデン語で、「FIKAの工場」。白とブルーの北欧カラーの店先には、シナモンロールや焼き菓子、クッキーなどが並びます。「お菓子を通して、スウェーデン流のお茶の時間<FIKA>の楽しさやくつろぎ感をお伝えしたい」というオーナーパティシエ関口愛さんの想いがこめられた店内には、カウンター席、その奥にゆったりとしたカフェ・スペースとキッチンが併設されています。

FIKAFABRIKEN(フィーカファブリーケン)

住所
東京都世田谷区豪徳寺1−22−3
電話
非公開
営業時間
12:00~19:00(カフェLO18:30)
定休日
火曜、水曜
※祝日は営業。SNSでご確認ください
豪徳寺駅から徒歩2分の「フィーカファブリーケン」

「フィーカ」は、ドリンクとお菓子を片手に過ごす大切な時間

シナモンロール 280円(税抜)
オーナーパティシエの関口愛さん

フィーカ(FIKA)とは、スウェーデンの人たちの生活に欠かせない「お茶の時間」です。学生時代にスウェーデンに留学した関口さん、初めて触れたフィーカの習慣に、「なんて心豊かで素敵な時間の過ごし方なのだろう!」と感銘し、そのことが同店を始めるきっかけにもつながりました。
「スウェーデンでは、午前と午後、少なくとも1日2回はフィーカするのが当たり前。コーヒーブレイクと同じような意味ですが、ただコーヒーを飲んで休憩するだけでなく、ちょっとした甘いものをつまみながら、家族、友人、職場の同僚、ご近所さんなど、誰かと一緒におしゃべりを楽しむことをとても大切にしています。フィーカは人と仲よくなるきっかけにもなるんです」(関口さん) 。

オフィスでは、自分の好きな時間にフィーカする場合もあれば、当番を決めて社内で一斉に、という会社もあるのだそう。

店内
ワークショップも随時開催されるカフェ&キッチンスペース
バナナケーキは食パンほどのたっぷりサイズ

「働き方に対する考え方が、日本とは大きく違い、1日に2回もフィーカすることに罪悪感などまったくないですし、休むことと働くことを同じくらい大事にしています。そうしたライフスタイルは目には見えませんから、お菓子を通して伝えていけたらいいな、と思っています。当店は、スウェーデンや北欧のお菓子を現地と同じレシピで紹介する、北欧菓子専門店ではありません。うちのお菓子を食べながら、カフェやおうちでゆったり楽しいお茶の時間を楽しんでいただいて、『いい時間を過ごせたな』と感じてもらえれば、それがフィーカなのだと考えています」(関口さん)。

ケーキは常時3~4種類、クッキーは7種類ほどを用意。また、シナモンロールのほか、今後はパンの種類も増やしていく予定だそう。

「本日のケーキ」は旬のルバーブを入れたパウンドケーキ
キャロットケーキ 400円(税抜)

定番のキャロットケーキは、粗くすりおろしたニンジンがたっぷり。生地の甘さは控えめにして、上にのせたアイシングクリームでちょうどいい甘さに仕上げています。バターは使わずに、オイルを使ってしっとり焼きあげた、ホームメイドな雰囲気です。

ミューズリーやオートミールを混ぜたクッキーも人気
ラズベリージャムクッキー 250円(税抜)

クッキーは、バターと小麦粉と砂糖のシンプルなものですが、どれも薄力粉ではなく準強力粉を使っているため、ややどっしりとした食べごたえのある感じに仕上がっています。アイテムごとにそれぞれ生地の配合を変えているそう。

クッキーは7種類ほどそろう
北欧デザインの缶でギフトにも

毛糸玉のような形のスウェーデン南部地方のシナモンロール

この夏の休暇を利用して、スウェーデンとパリに行って、カフェ巡りもしたという関口さん。
「スウェーデンのお菓子には、カルダモンやシナモンなどのスパイス、季節のベリー類をふんだんに使うなどの特徴があります。ただ、小さな国なので、外から入ってきた新しいものも積極的に取り入れて、みんなそれぞれ好みのお菓子を自由に楽しんでいます。ですが、そのときどきの流行に乗っかる、というよりは、季節のものを食べることを大事にしていて、そこは昔から変わらないようです」(関口さん)。

毛糸玉のように成形するシナモンロール
パールシュガーをかけてオーブンへ

また、スウェーデンには、2月に食べる「セムラ」(クリームパンのようなお菓子)などの季節ごとの伝統菓子や、「シナモンロールの日(10月4日)」、「ワッフルの日(3月25日)」といった記念日もあります。
「今では一年中食べられますが、シナモンロールの日には必ず食べる!という方も多く、お店では普段よりたくさんつくりますし、自宅でシナモンロールを焼く方も。日本の<土用の丑の日>みたいな感じですね」(関口さん)。
Kanelbulle(シナモンロール)は、生地にカルダモンをたっぷり使い、アイシングはかけずにパールシュガーでほどよい甘さに。ストックホルムなど北のほうは、表面に渦巻が見えるエスカルゴタイプ、南の方へ行くと、細長く切った生地をグルグルと巻いた、毛糸玉のような形が多いそう。それぞれ家庭ごとにわが家のシナモンロールがありますが、フィンランドのような形は、スウェーデンではあまり見かけないようです。

シナモンロールの隣に赤いダーラナホース

また、スウェーデンのインテリアでよく見かけるのが、カラフルな木彫りの馬の置物。ダーラナ地方の民芸品で、「幸せを運ぶ馬」と言われています。
「当店では、馬の型で焼いたクッキーにアイシングをかけたものを、お祝い用などのオーダーでおつくりしています。これなどは、北欧らしいお菓子、と言えるかもしれませんね。全体にアイシングをかけても甘くなりすぎないように、生地は砂糖を控えめにして、スパイスをきかせてバランスをとります。カルダモンやシナモンのほか、ジンジャー、アニス、ナツメグなどを使い、アレンジしています」(関口さん)。

「スウェーデンではフィーカの時間は<甘いもの>が定番で、サンドイッチを食べるのなら、それは『フィーカではなく遅めのランチ』と考えるようです。日本だと、しょっぱいものを食べたい、という方も多いと思うので、今後はパンの種類を増やし、サンドイッチなども取り入れていきたいです。たくさんの方に当店を訪れていただき、その方ならではのくつろぎ時間を過ごし、フィーカを感じてもらえたら、と思っています」(関口さん)。

アーモンドのキャラメリゼをのせた「トスカカーカ」。ワックスペーパーでキャンディのようなかわいらしいラッピング

poro珈琲 KAHVILA PORO

店名のporoはフィンランド語で「トナカイ」。「KAHVILA PORO(カハヴィラ ポロ)」でトナカイのカフェという意味になります。オーナーの笠原勝徳さんは元・外資系メーカーの会社員で、在職中に約3年間フィンランドに駐在。その時の経験を生かして、笠原さん曰く「フィンランドの片田舎にあるような」カフェを2010年にオープンしました。ゆったりとのどかな時間が流れる店内で、北欧風のサンドイッチやスープ、自家製デザートやドリンクを楽しめます。

poro珈琲(ポロコーヒー)
KAHVILA PORO(カハヴィラ ポロ)

住所
横浜市保土ヶ谷区天王町1-11-4 矢澤ビル1階
電話
045-442-4667
営業時間
11:00~20:00
※火曜のみ 12:00~20:00(L.O 19:30)
定休日
なし
天王町駅から徒歩5分の「poro珈琲」

フィンランドのパンでつくる北欧風サンドイッチ

北欧風オープンサンド 1120円(税込)
オーナーの笠原勝徳さん

天王町駅から歩いて数分、表通りから1本奥の静かな通りに入ると、青十字のフィンランド国旗にウッドデッキのテラスが目に留まります。ドアを開けると、店内にはフィンランドのラジオ放送が流れ、大型モニターに映し出されるのは美しいフィンランドの風景。そして、おなじみの北欧デザインの雑貨類や、笠原さんが駐在中に撮影したスナップがフィンランドの空気感を伝えてくれます。
「フィンランドに特化した飲食店は日本ではごくわずか。フィンランドに長期滞在した、という人も、さほど多くはありません。ならば自分がフィンランドをコンセプトにしたカフェをやろう!と思い立ちました」と笠原さん。

「フィンランドのお国柄は素朴で牧歌的。国民性は寡黙でまじめで我慢強く、日本人と共通する部分も多くて、親しみやすい国だと思います。ただ、食に関しては、現地の人たちが食べているものをそのままこっちに持ってきても、日本では、なかなか受け入れてはもらえません。私自身、向こうで初めてライ麦パンを食べたときは、かたくて酸っぱくて、食べ慣れるには時間がかかりました」(笠原さん)。

フィンランドが好きで同店を訪れるお客様もいますが、普通の街のカフェとしてご利用されるお客様が6割くらいだそう。
「ですから、メニューにはフィンランドらしさも必要ですが、どなたにも『来てよかった』と喜んでいただけるように、そのバランスを大切にしています」(笠原さん)。
フードメニューは、トマトクリームスープを雑穀ごはんにかけた「リーシケイット」や「小エビのバジルクリームスープうどん」など、フィンランドの料理を日本人になじみやすい形にアレンジしたものが人気です。また、鎌倉の「ライ麦ハウスベーカリー」から取り寄せた、フィンランドのパンを使ったサンドイッチもあります。
「本日のサンドイッチ」に使っているのは、同店専用につくってもらっている雑穀入りのバンズ。ほどよいやわらかさで食べやすく、雑穀の食感や芳ばしさを楽しめます。具材は「スパム(ポークランチョンミート)+目玉焼き」と「チキン+アボカド」の2種類を日替わりで。

本日のサンドイッチ 目玉焼き&スパム 720円(税込)
本日のサンドイッチ チキン&アボカド 720円(税込)

「北欧風オープンサンド」は、ライ麦100%の生地にミューズリーを練り込んだパンにアボカドディップを塗り、スモークサーモン、小エビをトッピングした2種類のサンドと、サーモンクリームスープなどがセットになっています。サンドイッチに使う自家製マヨソースは、向こうで食べたソースの味を、マヨネーズにヨーグルトやレモン汁を加えて再現。酸味をきかせることで、ライ麦100%のパンにとてもよく合います。

「北欧風オープンサンド」は前日までに予約が必要で、アボカドディップやスープは、できたてを提供。彩りも鮮やかで、ビジュアルも美しく丁寧に仕上げています。ちなみに、本国では朝食にサンドイッチを食べることが多く、パンにソーセージやチーズをのせただけの簡素なものが一般的だそう。
「向こうは共働きが多いので、朝食や夕食は調理に火を使わないコールドミールや買ってきたピザなどで簡単に済ませることが多いです。ランチはオフィス内のカフェテリアで食べたり、外に食べに出たり。料理に添える主食は、ライ麦や全粒粉のパン、ジャガイモなど。私が働いていたオフィスのカフェテリアには10種類くらいのパンが置いてあり、フィンランドの大きなパン『リンプ』などは、塊から自分で好きなだけカットして食べるスタイルでした」(笠原さん)。

店内

本国でも人気上昇中!シナモンロールとチーズケーキのコラボ

人気デザートメニューの「シナモンロールのチーズケーキ」は、フィンランドで近年ブレイクしているチーズケーキのアレンジレシピです。

「当初はごく普通のNYチーズケーキをつくっていましたが、やはり北欧らしさを出したくて、ボトムのクッキー生地にジンジャークッキーを混ぜて、スパイシーさをプラスしました。その後、フィンランドのレシピ雑誌を参考に、さらに北欧らしくリニューアルしたのが、このシナモンロール風です」(笠原さん) 。
ボトムはクラッカーとジンジャークッキーを砕いてシナモンとカルダモンをたっぷり混ぜ、カルダモン入りのチーズケーキの生地を流した後、表面にシナモンソースでマーブル模様を描いて焼きあげます。もとのレシピ通りの配合では甘すぎるので砂糖の量を控えめに、シナモンソースは、バターと砂糖、シナモンに湯を少量混ぜて乳化させることで、より滑らかにマーブル模様を出すことができたそう。口に入れると、まずシナモンとカルダモンの香りがふわっと広がり、まさにシナモンロールの味わい。さらに、チーズの濃厚さと爽やかな酸味にクリーミーさも加わって、シナモンロールとチーズケーキが見事に融合しています。

シナモンロールチーズケーキ 420円(税込)
シナモンソースを工夫して、1カットごとにきれいな渦巻模様を出しています 
フィンランドの料理雑誌で紹介されていた「korvapuustijuustokakku」(シナモンロールチーズケーキ)のレシピ

「フィンランド人は本当にカルダモンが大好き。お菓子類をはじめ、飲み物にもカルダモンをよく使います。クリスマスの定番カルダモンコーヒーは、当店では通常メニューに取り入れています。カルダモンだけだとクセが強いので、オレンジリキュールの甘い香りをプラス。また、Glögi(グロギ)は、グレープ&ベリーのジュースにシナモン、カルダモン、ジンジャーなどのスパイスを漬けこんだ、クリスマスシーズン限定のホットドリンクです」(笠原さん)。
どちらもスパイス強めなので、好みは分かれるところですが、フィンランドらしさを味わえるメニュー。フィンランドのパンを使ったサンドイッチにぴったりです。

SNSにはさまざまなシナモンロールチーズケーキがアップされています
テラス席はペット同伴もOK

Cafe Puisto

飯能市にある「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」内に2018年6月オープン。「人と地域がつながり、ゆっくりと北欧時間が流れる場所」をコンセプトに、小さなお子さんからお年寄りまで、どなたでもくつろげるカフェです。北欧の童話に出てくるような公園の雰囲気に合わせて、スモーブロー(オープンサンド)など北欧らしいメニューをそろえています。

Cafe Puisto(カフェプイスト)

住所
埼玉県飯能市阿須893-1
トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園内
電話
042-972-7711(公園管理事務所)
営業時間
10:00~16:30(LO.16:00)
※土曜、日曜、祝日の公園ライトアップ実施日はお食事LO.19:30、ドリンクLO.20:00に延長して営業
定休日
月曜 ※祝日は営業し、その翌日休み
そのほか公園の休園日に準ずる
元加治駅から徒歩20分のカフェプイスト

3種類のスモーブローが好評です

北欧風スモーブロー 900円(税込)

2019年春には、市内にムーミンのテーマパークも開園した埼玉県飯能市。それに先立つこと22年前に誕生したのが、北欧の童話の世界をモチーフにした「あけぼの子どもの森公園」でした。
ムーミンの物語の作者トーベ・ヤンソンさんと手紙でのやり取りを重ね、2017年に同氏の名前を冠した「トーベ・ヤンソンあけぼの子どもの森公園」に改称しています。自然の地形を生かした森の中に、北欧童話をイメージさせる建物が点在、「カフェプイスト」もそのうちの1つです。

株式会社ひより農園 代表取締役の本山憲誠さん

ブルーの外壁が印象的な建物は、公園内の他の建物を設計した建築家によるもの。地元特産の「西川材(スギ・ヒノキ)」を使った木造2階建てで、靴を脱いで店内に上がると、木の香りと、木の床のやさしい踏み心地、曲線を多用したあたたかみのあるデザインに癒されます。吹き抜けの1階にはテーブル席、2階にはカウンター席を配置。子どもが遊べるスペースも設けられていますが、建物全体がまるでおとぎ話の「おうち」のようです。
ここでカフェを運営するのは、市内の耕作放棄地を再生して無農薬・有機肥料で農業に取り組んでいる株式会社ひより農園です。代表取締役の本山憲誠さんにお話を伺いました。

かわいいムーミン柄の食器を使用

「店名の“プイスト”は、フィンランド語で『公園』。森の中の公園で木と人が集い、北欧の雰囲気に包まれながら誰もがそれぞれのくつろぎ時間を過ごせるように、との想いが込められています。カフェのメニューには、地元産を中心に季節の野菜や果物をふんだんに使い、オープンサンドやフルーツたっぷりのタルトなど、北欧テイストを感じていただけるラインアップでお客様をお迎えしています」

キッチンはコンパクト、カフェスタッフも公園の開園時間内しか施設内に入ることができないなどの制約があるなかで、北欧風スモーブロー(スライスしたライ麦パンなどの上にさまざまな食材をのせた北欧各国で親しまれているオープンサンド)は、定番の「照り焼きチキンと卵」「アボカド」に、季節ごとのメニューを加えて3種類をそろえています。サンドイッチに使っているのは、ライ麦入りのカンパーニュ。スライスした表面をカリッと焼いて芳ばしく、ほどよいやわらかさで、麦粒のプチっとした食感も楽しめます。

店内にはキッズスペースも
みずみずしい野菜をたっぷり使っています

人気の「アボカド」は、パンにクリームチーズと薄くママレードを塗り、スライスしたアボカドをたっぷり。その上に、スプラウトとオレンジピールをトッピングしています。シンプルな塩味の具材に、ママレードとオレンジピールでフルーツの甘さを添えているところも、北欧らしい1品です。

フルーツ満載のタルトも人気のメニュー

「家具や北欧柄の布地、雑貨などを通して、北欧デザインについては、皆さんによく知られていますが、食に関してはまだまだ未知の部分も多いようです。たとえば、昨シーズンの冬限定で、ビーツで鮮やかなピンク色にしたクリームチーズ+リンゴのサンドイッチをつくりました。見た目にもインパクトのあるメニューでしたが、<北欧らしさ>に寄せすぎると、実際に食べてみないことには、どんなおいしさなのかを想像しづらい、という難しさも。小さなお子様からお年寄りまで、皆様が気軽に利用される公共公園内のカフェなので、この雰囲気にぴったりで、しかも幅広い年齢層の方に受け入れていただきやすいことも大切にしています」(本山さん)。

デザートの人気メニューは「季節のフルーツタルト」。ベースになるプレーンのタルトは、新たに施設外に設けたデザートの工房で丁寧に焼きあげています。サクサクのタルトが隠れてしまうくらいに5~6種類のフルーツを満載した、食べごたえのある一皿です。

季節のフルーツタルト 850円(税込)
北欧の雰囲気の中で、くつろげます

本山さんのおすすめドリンクは、フレッシュな野菜などを使ったスムージー。スムージーは北欧でも大人気で、サンドイッチメニューとの愛称も抜群です。バナナと地元産の小松菜をたっぷり使ったグリーンスムージーは、鮮やかな緑色が森の景色にも映えます。
店の前にはテラス席が設けられ、スモーブローは、暑い季節以外にはテイクアウトでも提供しています。たくさんの木々に囲まれた自然の中で、童話の世界の主人公になった気分でピクニック・ランチを楽しむことができます。
また、土曜、日曜、祝日の日没後は公園内をライトアップし、21時まで開園。それに合わせてカフェも営業時間を延長しています。
「ライトアップ時、カフェ内から眺める夜の公園は一段と幻想的。ぜひお立ち寄りください」(本山さん)。

グリーンスムージー 650円(税込)
公園内には、キャラクターや遊具類は置かれず、森の中の散策・建物の探検を楽しめます

北欧の雰囲気と食を楽しめるベーカリー、お菓子店にカフェ。ぜひ足を運んで、お気に入りの北欧テイストを見つけてみてはいかがでしょう。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2019年10月)のものです

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