パンのテーブル パンのテーブル

コラボレーションが楽しい パンとの複合店

ベーカリーと「サラダ」「本屋」「カクテル」「輸入住宅」。パンとのコラボレーションが楽しい4つのお店をご紹介します。

Racines Bread & Salad

南池袋で人気のビストロ「ラシーヌ」のパン工房でつくるパンと、契約農家の野菜でつくる新鮮サラダのテイクアウト専門店。25~30種類のラインアップのあるドーナツも好評です。 閉店後はディナー限定のレストラン「4hours(フォーアワーズ)」として営業します。
※緊急事態宣言発令中は「4hours」は休業

Racines Bread & Salad (ラシーヌ ブレッド アンド サラダ)

住所
東京都豊島区南池袋2-12-12
電話
03-6903-1917
営業時間
10:00~19:00
定休日
なし
池袋駅から徒歩6分

みなさんの「食材庫」のようなお店です

左から「蒸し鶏&パクチーのベトナムサラダ」620円、「クロワッサン16」200円、「ブリオッシュドーナツ フジカワレモン」280円(各税込)
マネージャーの金沢由紀子さん

南池袋の東通りに面したお店に入ると、L字形のカウンターにパンやドーナツがずらりと並んでいます。右手奥に進むと、サラダやドレッシング、フレッシュ野菜、ジャムやデザート類などパンと相性のよいものが大きな冷蔵ケースに勢ぞろい。「さあ、今日はなにをいただこうか!」と、心躍るレイアウトです。同店マネージャーの金沢由紀子さんにお話を伺いました。
「当店のある南池袋には、ジャンルの異なる7つの系列飲食店があります。どの店でもお客様にお出しするメニューは『食材ありき』という考え方を貫いています。使う食材は野菜、果物、肉、魚すべて信頼のおける生産者さんから直接仕入れたもの。店のメニューを先に決めて、それに必要な食材を調達するのではありません。産地で旬を迎え、生産者さんが皆さんに今いちばん食べてほしい!という食材、そのおいしさを存分に生かすべく、メニューをつくっています」。

カウンターにはパンやドーナツ、焼き菓子が勢ぞろい
サラダのほか、野菜、ドレッシング、自家製ジャムなどずらりと並ぶ、まさに食材庫

コロナ禍の2020年9月にオープンしたこの店は、いわば「食材庫」の位置づけです。ビストロの工房で焼いたパン、エッグタルトやプリンなどの人気スイーツ、全国各地の生産者自慢の野菜を使ったサラダに、素材の野菜の数々も売り場に並んでいます。オリジナルの生ドレッシング、自家製のジャム類などに加えて、イタリアンレストランで人気の惣菜も冷凍庫でスタンバイ。「単にパンとサラダを売るだけでなく、系列の各店で使っている食材や自慢のアイテムをお客様に目で見て、手にとって、気軽に味わっていただける店です。また、食材を複数店舗で共有することで、ロスを減らすことにもつながっています」(金沢さん)。

お客様との会話を通して、食材を紹介したり、こんな食べ方もありますよ、と提案することを大切にして、最近では、野菜がお目当てのリピーターのお客様も増えてきたそう。「『ここのケールは他店とは違う!』と、スーパーで買えるものに比べればお値段は高めですが、価値をわかってくださる方が増えてきたのはとてもうれしいことです」(金沢さん)。

シーザーサラダ 620円(税込)
サラダに使われている新鮮野菜も購入できます
パンとサラダが一つになった「バインミー」650円。右は「ハムチーズサンド」 600円(各税込)

パンと相性抜群のサラダは5種類をラインアップ。定番のメニューはとくになく、季節ごとの食材に合わせてどんどん変わっていきます。「蒸し鶏とパクチーのベトナムサラダ」には、系列のベトナム料理店のふっくらやわらかな蒸し鶏、「シーザーサラダ」にはビストロのベーコンと自家製のクルトンが使われています。
サラダについてくるドレッシングは、ビストロで人気の「淡路新玉葱と有機大葉無添加生ドレッシング」のほか、同店オリジナルを加えて5種類が揃っています。各サラダのプライスカードにおすすめのドレッシングが提案されていますが、お客様はどれでもお好きなものを選ぶことができます。ドレッシングは、300ml~のボトル入りのほか、サラダ用と同じ小さいポーションを単品で購入することもでき、気になるものをお試しできるのもうれしいところです。

逆境から生まれた手づくりドーナツ

カウンターにずらりと並ぶドーナツ

同店のもう1つの人気アイテムがドーナツです。ラシーヌのベーカリーは、もともとはビストロの店舗内に併設されていました。地階にもかかわらず、ランチ時には長い行列ができる人気店でしたが、コロナ禍で客足は鈍りがちに。そこで、地上にテーブルを出してパンを販売したところ、「今まで、ビストロでパンが買えるのを知らなかった」というお客様もたくさんいて、とても喜ばれたそう。このことがヒントになり、自慢の焼きたてパンを販売する、どなたにも入りやすい路面店として、同店が誕生したのです。

さらに、2回目の緊急事態宣言が延長される中、ビストロの改装工事に伴い、パンを焼く窯が使えない期間が出てきました。「この店も休業を検討していましたが、『パンが焼けないならドーナツを揚げよう!』と。以前からお客様のご要望もあって、新しいことを始めるちょうどよいタイミングだったのです。いろいろなバリエーションを揃えたところ、ビジュアルも華やかで大好評に。
ドーナツ目当てに来店されるお客様が多くなりましたし、通りがかかりに立ち寄ってくださるお客様もいらっしゃいます」(金沢さん)。

左から時計回りに「ブルーベリーレアチーズ」420円、「マンゴーチョコ」340円、「フジカワレモン」280円、「チョコファッション プレーン」220円(各税込)
中央はグレーズ+ベーコンの「ブリオッシュドーナツ メープルベーコン」380円(税込)

ドーナツは、ブリオッシュ生地と、米粉入りでホロホロ食感が楽しめるオールドファッションの2タイプ。中に詰めるクリームは8種類、グレーズは10種類以上あり、トッピングも組み合わせてバリエーションは多彩に生まれます。25~30種類が開店時にはほぼ出そろい、1日1000個をつくって夕方には完売することもあるそう。

スイーツ系も充実しています
「小倉マリトッツォ」420円(税込)

冷蔵ケースには人気沸騰中の「マリトッツォ」や、「クロワッサンサンド」などデザート系のアイテムも充実。「マリトッツォ」は、ふんわりやさしい食感のブリオッシュのドーナツに生クリームたっぷりのインパクトあるビジュアル。クリームの甘さはほどよく、見た目ほどには重くありません。「プレーン」「小倉」の2種類をラインアップ。「クロワッサンサンド」は、16層でサクサク感が人気のクロワッサンにホイップクリームと瑞々しい旬のフルーツをたっぷりサンドしています。

お昼近くになると、カウンターには人気の食パンやバゲットなども焼きたてが次々と加わります。外でいただくランチにも、おうち時間の食卓にも、彩りを添えるアイテム満載のパンとサラダと食材のお店です。
「<パンとサラダ>は、その時どきのシーンに合わせて、素材やドレッシングなどで無限の組み合わせができます。コロナ禍でテイクアウトの需要が増える中、当店を皆様の食材庫として愛用していただけたら、と思います」(金沢さん)。

ひぐらしベーカリー

日暮里の住宅街の中にある「ひぐらしガーデン」は、「ひぐらしベーカリー」と「パン屋の本屋」からなる商業施設です。ベーカリーの1階と2階の店内と中庭に面したテラスにはカフェスペースが設けられています。

ひぐらしベーカリー

住所
荒川区西日暮里2-6-7
電話
03-6806-5551
営業時間
8:00~18:00(※当面の間17時閉店)
定休日
月曜(祝日の場合は営業。翌火曜休)
日暮里駅から徒歩5分

誰でも気軽に立ち寄れる街のパン屋と本屋さん

絵本「からすのパンやさん」とフェア限定のキャラクターパン
ベーカリー店長の伊藤淳史さん

シンボルツリーの立つ中庭をはさんでパン屋さんと本屋さんがある、なんとも開放的な空間。本を選んだり、パンを買ったり、カフェスペースでひと休みしたり、小さなお子様が中庭で遊んだり…と、2016年12月のオープン以来、街の人たちから愛されています。
ここは100年以上の歴史あるフェルト生地メーカー創業の地。4代目にあたる、オーナーの佐藤雅一さんにお話を伺いました。
「ひぐらしガーデンは、長年お世話になっている地元=日暮里の街の価値を高めたい!との想いから生まれた施設です。地域の方々の日常に寄り添い、どなたにも利用していただける心地よい場所として、<ベーカリーと本屋>をコラボしました」

ベーカリーと本屋は、中庭に沿ったウッドデッキでつながっています
光降り注ぐ明るい店内

ベーカリーでは毎月フェアを実施しています。季節にちなんだテーマのほか、時には本屋と協同してフェアを行うこともあります。2021年5月には、いろいろなパンが登場する絵本「からすのパンやさん」をテーマにしたフェアを開催。
「本屋を通して、出版元とのやり取りがスムーズに行えることも、パン屋と本屋が一緒になっているメリットです。このときは、フェア限定のパンとしてからすのお父さんのキャラクターパンを販売しました。お子さんはもちろん、ご自身が子どものときにこの絵本が大好きだった!という若いお母さん、お父さん、読んであげた祖父母世代にも大好評でした」(佐藤さん)。
キャラクターの再現力の高さに驚かされます。かなり手がかかるため、平日20個、土日は30個の限定で、昼頃には売り切れる人気ぶりだったそうです。
フェア以外でも、「えほんパン」や梅雨どきの「カエルパン」など、丁寧につくられたかわいらしいキャラクターたちが、売り場をさらに楽しくしています。

「パン屋の本屋」には、棚1台まるごとパンにまつわる本を集めたコーナーも
奥左は梅雨限定の「カエルパン」テイクアウト216円/イートイン220円、奥右はチーズフェアの「白桃レアチーズパン」テイクアウト367円/イートイン374円、「チーズカレーパン」テイクアウト259円/イートイン264円(各税込)

おしゃれ感を演出するだけにとどまらず、ベーカリーと本屋それぞれが独立した専門店として、緊張感を持ってよりよい商品やサービスを提供しています。品揃えや商品のつくり込みへのこだわりは、昔ながらの職人の街ならでは。それがお客様の満足感につながっているようです。
「最近では、パンと本の『ひぐらしガーデン』というブランドが知られてきたのか、出版社さんのほうから『ベーカリーと何かコラボできないか』とお声がけいただくことも増えてきました」(佐藤さん)。

小さなお子さんからお年寄りまで、家族の会話がはずむパン

「パンは、いろいろな種類から選ぶのも楽しく、焼きたての香り、食べておいしく、おなかは満たされ、家族の会話も弾みます。人を幸せにしてくれる力がある、尊い存在だと思っています。だからこそ、小さなお子さんからお年寄りまで、食べやすくて気軽に買える価格であることも大切にしています」と佐藤さん。
ベーカリーのラインアップはソフト系のパンを中心に、10種ほどの生地を使って約80種類、8時のオープン時には大半のアイテムが出そろいます。
トレイ置き場のすぐとなり、いちばん目立つ位置にはおすすめパンのコーナー。店内中央のテーブルはフェアのコーナーを配置。取材時は「チーズのパン」をテーマに、惣菜パンや菓子パンなど多彩なアイテムが並んでいました。

おすすめパンのコーナー
「チーズのパンフェア」。穴あきチーズをかたどったプライスカードが目を惹きます
「ひぐらし食パン」テイクアウト280円/イートイン286円(各税込)

店長の伊藤さんにおすすめのパンをお聞きすると、一番人気は「ひぐらし食パン」。北海道産小麦粉を50%使い、ひと手間かけた製法により、きめ細やかでしっとりもちもちの食感が特長の角食です。「『日暮里あんぱん』など、もちもち感を活かしたいアイテムにはひぐらし食パン生地を使用しています。ただし食パン用とは配合を少しだけ変えて、焼き上げたときにベストな状態になるようにするのもシェフのこだわりです」(伊藤さん)。
見るからにやさしげな佇まいの「あらかわクリームパン」は、じゃがいもを練り込んだ生地でしっとりやわらか。

「日暮里あんぱん(こしあん/つぶあん)」 テイクアウト216円/イートイン220円(各税込)
「あらかわクリームパン」テイクアウト151円/イートイン154円(各税込)

カレーパンは、玉ねぎの甘みを活かした「甘口」、じゃがいも、ナス、ズッキーニなど野菜がゴロゴロ入った「中辛」、中辛カレーにチェダーチーズをプラスした「チーズカレー」の3種類があり、バゲットを細かく砕いたパン粉を使い、ザクザクの食感を楽しめます。揚げたてのおいしさをぜひ味わっていただきたいと、カレーパンは約30分に1回と、こまめに揚げて売り場に並べています。
クロワッサンもシェフの自慢の1品。折り込み回数を少なくすることで、ボリューム感が生まれ、美しい層が表れます。ちょっとした手土産にもぴったりのパウンドケーキは、新しく加わったお店いちおしのアイテムです。

カレ ーパンは3種類

「決して高価ではないけれど、食べておいしくて幸せになれる、パンには人を惹きつける力があると思います。パンを買いに来たついでに本屋をのぞいたら、思いがけず新しい世界に出会うこともあるでしょう。街の本屋さんがどんどん消えていく中、子どもも大人も気軽に立ち寄って、本や雑誌を手にとることができる、そうした文化を大切に守っていきたいです。また、おかげさまで遠方から足を運んでくださるお客様も増えてきました。せっかくいらしたのに、お目当ての品が売り切れでがっかりされることがないように、ネットでお取り置きを承るサービスも検討中です。カフェでは毎月の限定ドリンクなどもご用意しています。パンと本とカフェで、寛ぎの時間を過ごしていただけたらと願っています」(佐藤さん)。

AGRO@FORESTRY Natural Bakery Cafe

フレッシュフルーツやスパイス、ハーブなど自然素材を使ったカクテルをノンアルコールでも楽しめるベーカリーカフェ&バー。「BAR RAGE AOYAMA」など、カクテルバーやカフェを展開する「Mixologist(ミクソロジスト)」が2020年12月にオープン。店内にパン工房を併設し、健康や栄養バランスに配慮したドリンクやフードを提供しています。

AGRO@FORESTRY Natural Bakery Cafe
(アグロ フォレストリー ナチュラル ベーカリー カフェ祐天寺)

住所
東京都目黒区祐天寺2-14-5 ユタカビル1F
電話
03-5579-9317
営業時間
7:00~21:00
定休日
火曜
祐天寺駅から徒歩1分

自然の素材を使い、自由な発想でつくるカクテル&焼きたてのパン

「エスプレッソとシュラブのカクテル」「カンパーニュのタルティーヌ」

通りに面した店先にはペットOKのテラス席があり、カジュアルな街のカフェという佇まい。入店すると、焼きたてパンが並んだカウンターの向こう側にはシェイカーを振るバーテンダー、さらに奥にはパン工房という不思議な景色に遭遇します。
代表の北添智之さんは、バーテンダーとして活躍し、カクテルの新しいトレンド「ミクソロジー」を日本に広めた第一人者です。北添さんにお話を伺いました。

「Mixologist」代表取締役の北添智之さん(左)とクリエイティブマネージャーの岩井聡さん

「ミクソロジーとは『混ぜる(Mix)』と『~論・科学(ology)』からの造語です。古典的なカクテルは、果物などを原料にしたリキュールやジュースを、ベースのお酒に混ぜて甘みやフレーバーを加えますが、今は、新鮮な生のフルーツなども格段に入手しやすくなっています。既製のリキュールではなく、新鮮な野菜、果物、ハーブやスパイスなど素材そのものから香りやテイストを引き出し、自由な発想でつくるのが『ミクソロジ―カクテル』です」(北添さん)。
その根底にあるのは「国産にこだわり、大地の恵みに丁寧なひと手間を加え、余分なものは加えずにできる限り自然な形で提供したい」という栄養士でもある北添さんの想いです。バーのおつまみに使うパンを自社の工房でつくるようになったのも同じ理由です。

「同じ発酵食品として、パンはどんなお酒にも合います。バー名店の名物おつまみには、例えば『ローストビーフサンド』や『レバーペースト』などがあり、バーのフードメニューにはパンの出番が多いのです。そこで、納得のいくパンを自前でつくってしまおうと、もともとは別の場所に自社パン工房を設けていました。ですが、コロナ禍で系列のバー数店を整理することになり、パン工房を祐天寺店に移転。ベーカリーとカフェ&バーが融合した、このスタイルになりました」(北添さん)。

パンには北海道産小麦と白神こだま酵母を使用。サンドイッチやフレンチトーストにも使っている人気の角食、ベーグル、チャバタ、菓子パン生地などが中心で、新しく窯を入れ替え、ハード系のラインアップも少しずつ増やしているところです。

カクテルバーとパンのコラボレーションを楽しめます
バーカウンターにパンのショーケースを配置

コーヒーフィルターで濾している液体は、「パッションフルーツのミルクパンチ」。テキーラとライウィスキーにパッションフルーツとココナツミルク、レモングラスのハーブティーを合わせ、フィルターに掛けると、香りをまとった透明なエキスが抽出されます。
「このように自然な素材を合わせて、さまざまなカクテルを自分たちでつくっています。自由な発想とはいえ、あくまでも素材の持ち味を崩さないよう、行き過ぎにならないつくり方を心がけています。この『パッションフルーツのミルクパンチ』でしたら、アイスを入れてオン・ザ・ロックでお飲みいただいてもいいですし、たとえばアクアファバ(ひよこ豆の煮汁で、泡立ちがよく、卵白メレンゲのかわりにも使われる)で、フワフワとしたテクスチャーを加えれば、やさしいのど越しが生まれます。また、ブリオッシュに含ませたサバランなども、ミクソロジ―のバーだからこそつくれるアイテムです」(岩井さん)。

焼きたてをおつまみにできるのも醍醐味
「パッションフルーツのミルクパンチ」は、自然な素材を使ったオリジナルのリキュール

北添さんおすすめのカクテルとパンのマリアージュは「エスプレッソとシュラブのカクテル」と「カンパーニュのタルティーヌ」です。
ライムとジュニパーベリーのシュラブ(ビネガーをベースにハーブ、スパイス、果実などでフレーバーをつけたノンアルコール炭酸飲料)は、さわやかな酸味と香りがエスプレッソと相性よく、口をすぼめた形のグラスに注いで香りを閉じ込めました。タルティーヌは、ターキーハムとベーコン、ブリチーズ、フレッシュな野菜をたっぷり添えてペコリーノチーズと赤ワインビネガーのドレッシングで。サワー種を使い、ほんのりと酸味の感じられるカンパーニュが盛りだくさんの具材をバランスよくまとめます。

「カンパーニュ」は量り売りで1g/1.2円(税込)
「エスプレッソとシュラブのカクテル」と「カンパーニュのタルティーヌ」

健康や栄養バランスも大切なテーマ

開店は毎朝7時。いわば朝型と夜型が1つになったスタイルですが、お客様にとっては、時間にとらわれず、アルコールありでもなしでもくつろげるクロスオーバーさが魅力です。とくにショーケースに並んだパンの存在は、例えば「初めての昼飲み」なんていうハードルも、さらりと自然に越えられそうな雰囲気を演出してくれます。
「働く側から見ても、バーテンダー、パン職人、パティシエ、栄養士など、さまざまな立場の人が1つの店にいます。専門外の分野の仕事もすぐ近くで見て、一緒にいろいろな仕事をこなすことになるので、1人1人の経験値が上がります。スタッフには将来独立することを推奨していますから、この経験はきっと生きてくるはずです」(北添さん)。

オープンから昼にかけて、次々とパンが焼きあがります
フレンチトーストにも使われる「北海道産小麦と白神こだま酵母の食パン」1斤 テイクアウト518円/イートイン528円(税込)

「私自身が栄養士でもあり、少しでも体によいと思われる素材を使って、カクテルやフードメニューを提案していきたいと思っています」と北添さん。発酵は、その核となる要素のひとつ。白みそ、甘酒、酒粕など日本古来の発酵食品を使って、料理にうまみやコクを加えることができます。たとえば当店のクロックムッシュは、ベシャメルソースに白みそをブレンド。
また、玉ねぎやにんじんなどの野菜に米麹菌を振りかけて16時間ほど発酵させた「発酵野菜」を仕込み、シチューやパスタソースなどに使っています。発酵した野菜は、酵素の働きで分解が進むため、消化吸収しやすくなり、さらに甘みやうま味を強く感じられるようになります。

白みそを使った「クロックムッシュ」
「フレンチトースト」テイクアウト756円/イートイン770円(各税込)

「体によい食事、というと、昨今は『糖質制限』がブームのようになっていますが、極度な制限は決してよいことではありません。何より大切なのはバランスです。当店では、『エネルギー産生栄養素バランス』(エネルギーを産出するタンパク質・脂質・炭水化物の比率)に配慮してメニューをつくっています。活動するためのエネルギーの元になるカロリーもしっかり摂って、その分、体を動かすことが健康につながるのだと思います」(北添さん)。
たとえば人気メニューの「フレンチトースト」は、4枚切り厚さの角食を使い、卵やミルク、バターでバランスよくエネルギーを補給できる、アスリートにもおすすめのフードです。

「コロナ禍での時短営業対策として、サンドイッチの自動販売機を置くことも考えています。駅から徒歩1分の立地で、隣にはスポーツジムがあり、仕事帰りやトレーニングの後などに、いつでもおいしいサンドイッチで、しっかり栄養補給していただけたらと思っています」(北添さん)。
アフターファイブのライフスタイルを演出するバーの視点から、また1つ、パンを巡る新しいサービスが生まれるのが楽しみです。

ベーカリー&カフェ KOGUMA 八王子店

輸入注文住宅の「コグマホーム」が運営するベーカリーカフェ。八王子店は、本社、モデルハウスと同じ敷地内に建つおしゃれな洋風の一軒家です。店内には、雑貨のコーナーやカフェスペースが併設されています。

ベーカリー&カフェ KOGUMA(コグマ)八王子店

住所
東京都八王子市梅坪町280-1
電話
042-696-5226
営業時間
8:30~19:00
定休日
水曜 ※火曜不定休および15時閉店の場合あり
八王子駅より西東京バスで約10分の「梅坪町」バス停からすぐ

毎日来てもらえるベーカリーで集客力UP

輸入住宅のモデルハウスとベーカリーがコラボ
店長の林美鈴さん

西東京バス「梅坪」のバス停を降りると、三角屋根と外壁のローズ色が印象的な北欧スタイルの邸宅が目に留まります。「コグマホーム」のモデルハウスです。「ベーカリー&カフェKOGUMA 八王子店」は、その奥にある洋風の一軒家。モデルハウスとの間の路地にテラス席が設けられています。
モデルハウスとベーカリー、この組み合わせが誕生したきっかけを「コグマホーム」代表取締役の渋谷和敏さんに伺いました。

「当社の本業は工務店で、北欧風、アメリカン・カントリー風、ヨーロッパ風など、多くの種類を扱っています。住宅のモデルルームは、いかに人を呼べるか、が重要です。いつかはマイホーム、と思っている潜在的なお客様に、『この地域で、こういう建物が建てられますよ』と知っていただくには、まず足を運んでもらわないといけない。そのための仕掛けがベーカリーだったのです」(渋谷さん)。

右手の建物がモデルハウス、左が本社、中央奥がベーカリーという配置
ベーカリー店内にさりげなく住まいづくりのヒントが

もともとご自身は特別パンが好き、というわけでもなかったそうですが、ヒントは「明日のパンはどうしよう?」というなにげない奥様の一言。
「住宅展示場にカフェなどはよくありますが、いくらお気に入りのカフェでも、足を運ぶのはせいぜい月に1~2回程度。それに対してパンは、毎日のように食べるもの。スーパーにもパンコーナーは必ずあります。ベーカリーなら輸入住宅のイメージにもマッチする。よく行くパン屋の敷地におしゃれな家が建っている。最初は横目で見るだけでも、何度か通ううちに『一度見学してみようか』とか『中はこんなだったよ!』と主婦層のクチコミ、SNSなどでも話題にしてもらえます」(渋谷さん)。

店内にディスプレイされている雑貨を購入することもできます

こうして、全国でも他に例のない、ハウスメーカー直営の本格的なベーカリーが平成25年にオープンしました。ベーカリー運営に関してのコンサルタントなどは一切入れずに、パンづくりの職人たちと意見を交換しながら店づくり、商品づくりをしてきたそう。ベーカリーを併設したことで本業の売り上げは明らかに伸びているとのこと。また、街道沿いのモデルハウスとベーカリーのコラボは、地域のランドマークにもなっているようです。

街の人の日常に寄り添うパン

人気のカレーパンほか惣菜パンは100円台から多彩に揃っています
マスコットキャラクターの「KOGUMAちゃん」は自家製カスタードのクリームパン。テイクアウト130円/イートイン132円(各税込)

住宅街の中にあるため、ラインアップはどなたにも食べやすい「いつものパン」がメインです。とはいえ、飽きずに通っていただくには、KOGUMAなら絶対これ!という商品をつくること、他店にはない新しいもので変化をつけることも大切にしているそう。
「職人たちには、新しいものを自由につくって自由に出していいよ!と、常々言っています。パン職人が持っているレシピや技術に、素人の私からのアイデアをプラスして、どんどん試作を重ねて、新しい進化系をつくっていきたいです」(渋谷さん)。
その一例を店長の林美鈴さんにお聞きすると「マリトッツォは『ケーキのような華やかさが欲しい』という渋谷社長からの強い要望でとり入れたアイテムです。自家製カスタードやヨーグルトクリーム、たっぷりの生クリームの表面にスライスしたフルーツをあしらっています。とても手間はかかるのですが、いちごの赤、オレンジ、キウイのグリーンが映えて、冷蔵ケースが華やぎます」

華やかなマリトッツォ「プレーン」 テイクアウト270円/イートイン275円(各税込)
まるでケーキのような「モンブランデニッシュ」テイクアウト281円/イートイン286円(各税込)

「シンプルな『バンドミ』は自信作ですし、最近はハード系を好まれるお客様も多く、バゲット生地を使ったアイテムも増やしています。『ゴルゴンゾーラはちみつフランス』は、くるみがアクセントの定番の組み合わせで、甘じょっぱさがバゲット生地によく合います」(林さん)。

「チーズ塩パン」(右)テイクアウト216円/イートイン220円と「ゴルゴンゾーラはちみつフランス」テイクアウト248円/イートイン253円(各税込)
新商品はデニッシュ生地を使った「チーズスティック」テイクアウト108円/イートイン110円(各税込)
美しく並んだフルーツのデニッシュ

パンのつくり手の意識は、いかにおいしくつくるかに集中しがちですが、それ以外にも、お店の雰囲気のよさ、接客、外からの見ため、お客様の動線、目線はどこに向かいやすいか、など住まいづくりからの視点を生かせることはたくさんあります。売り場のレイアウトは何をどこに置くのが効果的か、そして何より美しく見せることを大切に考えているそう。 イートインの店内にさりげなく家づくりのパンフレットなどを置いたり、店舗内装に輸入住宅らしさを演出できるのも直営ならでは。コロナ禍前は、住宅会社の「春のパン祭り」に大勢のお客様が訪れたそう。

「当社を訪れる建築関係の人には、『平日なのに、なんでこんなに人が来てるんですか?』と驚かれることがよくあります。食には人を引き寄せる力があります。なかでもパンは、気軽に買える金額で80種類もの中から選べる、それが大きな強みだと思うのです」(渋谷さん)。

パンに惹かれて訪ねてみたら、思わぬ世界が広がった!そんな経験ができそうなパンとコラボしたお店。パンにはまだまだたくさんの可能性が秘められています。。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2021年08月)のものです

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