竹谷さんだから聞けるパン職人の理想と挑戦
日商100万円の繁盛店~「閉店まで商品を絶やさない」というこだわり~
Backstube Zopf 伊原 靖友さん

メールを駆使した教育と独立後のフォロー







竹谷
 従業員教育はどのような考えで行っていますか?
伊原
 私の店から独立するときに失敗しない店を経営できるよう教育していきたいと思っています。独立したスタッフへのフォローも欠かしません。商品についても「うちのお店のパンはこういうものだ」ということは教え込んでいますね。
竹谷
 お休みがバラバラでなかなか顔を合わせて話す機会はとれないと思いますが、どのような方法でスタッフへ意見を伝えているんですか?
伊原
 従業員メールマガジンを使っています。逐一報告を欠かしません。お店で起こったことは全て報告させています。教育というよりは情報共有という点で役立っていますね。
竹谷
 逆に言うと研修や会議はほとんどないんですね?
伊原
 はい。会議はリーダーたちが自主的に集まって開いているようですが、それは私のあずかり知らぬところです(笑)。
竹谷
 独立したスタッフへのアフターフォローはどのように行っているんですか?
伊原
 在職中から参加できる「開業塾」というグループを作っています。現在働いているスタッフのなかにも十数名参加者がいますが、参加は強制ではなく開業を目標にしている人が参加する集まりですね。独立後も卒業するわけではないので、開業塾メンバー用のメールマガジンで情報を発信したり、独立したメンバーから情報が発信されたりというシステムになっているんです。
竹谷
 開業塾というのは顔を合わせて話すというよりは、メールでのやりとりがメインなんですね。
伊原
 メールのなかで独立を目標にしているスタッフが先輩たちへ質問を投げかけることもありますし、開業したメンバーから私への相談などさまざまな内容のメールが飛び交いますね。私への相談の場合は、答えを与えるのではなく答えのヒントになるようなアドバイスを送るようにしています。
竹谷
 経営ノウハウの部分はどのように教えているんですか?
伊原
 これは教えられるものでもないのかなと思っています。私のお店経営を見て、スタッフたちがどのように感じるかに任せていますね。独立した子たちを見ていても、10人が全て違った経営スタイルをとっていますしね。

パン文化の発展のために





竹谷
 これからの夢はありますか?
伊原
 ここから10年かけて代替わりへ向けて準備をしていきたいです。お店を受け継ぐ人へのしっかりとした引き継ぎをしなくてはなりません。お客様に対しては、あまり新しいパンという部分にとらわれず、基本的なパンを提供し続けられたらいいなと思っています。やはり定番アイテムはよく売れるので。
竹谷
 これからのパン文化の発展に必要なものはどんなことだと思いますか?
伊原
 私はパンとご飯を分けて考えない方がいいと思っています。パンだから、ご飯だからという考え方だと日本人にとって馴染みのないパンは選択肢から外されてしまいます。
竹谷
 ここ数年でパン文化はかなり日本に根付きましたね。伊原さんが売りたいと思うパンはどんなパンですか?
伊原
 食事系のパンが売れたらいいなと思いますが、店舗では試食を実施していませんし、なかなか売り場だけでパンの食べ方まで提案するのが難しいです。そこで作ったのがカフェスペースです。カフェで試食をしていただくというスタイルですね。カフェで提供している料理は自宅でも作れる簡単なものばかりなので、食事系のパンの食べ方を学んでいただければいいなと思っています。
竹谷
 カフェスペースは落ち着いてとても良い雰囲気ですね。パン、焼き菓子、コンフィチュール、カフェとジャンルを増やすことで伊原さんの考えるパン食文化の姿が見えてくるように思います。

プロフィール

【伊原 靖友さんプロフィール】
1965年千葉県生まれ。高校卒業後すぐ平塚の「シェーンブルン」にて3年半修業。その後父の営む「ベーカリーマルミヤ」に就職。2000年に父から店を受け継ぐ形で「Backstube Zopf」をオープンした。2015年には第24回 優良経営食料品小売店等表彰にて、農林水産大臣賞を受賞。

対談場所

営業時間:パン店6:30~18:00 カフェ7:00~17:30(定休日:無休)

JR北小金駅南口からバスで約10分、バス停留所「表門(おもてもん)」で下車すると徒歩1分で「Backstube Zopf」に到着します。欧州の古いパン屋をイメージしたという木造の店内では、ズラリと並べられた約300種のパンがお出迎え。店長の伊原さんが目指すのは「便利でよろず屋なパン屋」。いつ来ても食べたいパンが買えるお店を目指し、閉店時間まで品切れになることはありません。また、2階には「Ruheplatz Zopf」というカフェも併設。アンティーク家具が並ぶ落ち着いた雰囲気の店内で、焼きたてのパンに合わせた、パンを楽しむための料理を提供しています。カフェは予約してからの来店がおすすめです。

前編 後編

対談を終えて

何度もお会いしお話しさせていただいたこともありますが、竹谷先生が実際にお店にいらっしゃると言うことで、大変緊張しお待ちしておりましたがお話が始まるととても気さくにお話ししていただき、楽しく対談をさせていただきました。
製パン理論に関してはいつも勉強させていただいており、そのような話題が多いのかなと思っておりましたが、ご自身がパン屋さんを開業されたこともありパンを作る~売る~人を育てる等多岐にわたるお話をむしろこちらが聞かせていただき大変勉強になりました。これからも同じ千葉のパン屋として色々ご指導頂ければと思っています。ありがとうございました。

竹谷さん 今回は人気度ランキング常に上位のツオップ・伊原さんにお話を伺いました。驚くのは今年で創業50年、先代から「マルミヤ」を引き継いだのが35歳の時、15年で今の日商100万円のお店を作り上げたことになります。当時の年商が1,000万円、ちょうどiMac(マッキントッシュ)が売り出され、自分でホームページを立ち上げ、宅配等を取り入れて短期間に3,000万円まで売り上げを伸ばし、それ以降、右肩上がりの売り上げを続けているとのこと。マスコミに取り上げられることも多く、販売面での話題が多いお店ですが、伊原さんの製パン理論の確かさ、深さに改めて感心させられました。商品が300アイテムということも有り新商品は年に2~3品、心がけていることは閉店まで棚を商品で一杯にしておくこと。それでも販売ロス率は2.5%というのも驚きです。従業員教育は自由参加の「開業塾」とメルマガを使う程度で、特別なことはしていないが独立した先輩が開店に失敗しないことが一番の教育と思っている、とのことでした。

※店舗情報及び商品価格は掲載時点(2016年1月)のものです

TOPに戻る