ニッポンのブーランジェ

パリで出逢ったパンの美味しさを届けたい
vol.09 ブーランジュリー ボネダンヌ 荻原 浩氏

東京・世田谷区、田園都市線の三軒茶屋駅から三宿方面に歩くこと13分、白いバルーンのような屋根が目印の可愛いパン屋さんがみえてくる。焼き菓子とパンの店「ブーランジュリー ボネダンヌ」である。パリで5年半修行した荻原浩シェフが、2013年に独立してオープンした。荻原シェフの妥協無しのパリへのこだわりが、ファンを少しずつ増やし、今や三宿の隠れた人気店となっている。

パリのパン屋がそのままやってきた

売り場面積4坪という店に一歩足を踏み入れると、まさにそこはパリ。幾何学模様のタイルの床、クラッシックなシャンデリア、アンティークなポスターや雑貨たち。それらがマッチしてノスタルジックな雰囲気を醸し出す。

バゲットトラディションやカンパーニュなどの食事パンや、クロワッサンやヴィエノワズリーが並ぶ正面の平台、そして入口横には焼き菓子コーナーがあるが、両方併せても約30アイテム程度という。パリには70や80ものアイテムをつくるパン屋さんはない。毎日のパンをしっかり焼いて、近隣の顧客の食を担う。それがパリのパン屋の役割だ。そんな毎日きてくれる地元のお客様のためにパンを提供したいと、3年前にオープンした。ここは荻原シェフが、かつてパリ時代に修業した14区のパン屋さんをそのまま再現しているという。まさにパリの息遣いが感じられる店となっている。

三軒茶屋や三宿にはパン屋が多い。しかしそんなことは全く考えずに出店したと荻原シェフ。妥協無しにパリそのままを再現したボネダンヌだからこそ、他店との棲み分けができているといえそうだ。 

人気はバゲットサンド

ボネダンヌの一番人気は、注文するとその場でつくってくれるバゲットサンドだ。平台の上の黒板には手づくりサンドイッチやタルティーヌのメニューが掲示されている。看板商品の「バゲットトラディション」290円(以下トラディション)は、フランス産の小麦100%を使用。その深い香りとバリバリしすぎないしっとりとした食感が、サンドイッチによく合う。

このトラディションを1/2本使ったバゲットサンドはシンプルそのもの。一番人気の「ジャンボン・フロマージュ」500円は、削ったバターをのせ、ハムとグリュイエールチーズを挟んだものだ。ハムはフランス語でジャンボンだが、フランスで食べていた味に近いハムをようやく見つけたと見せてくれた。これがトラディションとマッチして、最高の旨みを引き出している。勿論、ハムのみを挟んだ「ジャンボン」400円も人気商品だ。またバターと自家製の木いちごのジャムをたっぷり塗った「タルティーヌフランボワーズ」280円も絶品だ。

分厚い自家製のパテを挟んだ、「パテのサンド」550円はボリューム満点で、ガツンとした濃厚な味のパテが印象的だ。伺った時、ちょうど、フランス製の大きなオーブンでじっくりとパテを焼いていた。それは見ただけでワクワクする逸品だった。

その他、チョコレートとフランボワーズを乗せた「ショコラフランボワーズ」250円、「ブリオッシュシュクレ」130円もパリの味わいそのものだ。
店舗に並ぶ30種ほどのパンと焼き菓子は、一つひとつの完成度が高く、常連客を引き寄せている。

バゲットトラディションとパン屋のマドレーヌ

自慢のトラディションは、マガジンハウス2014年3月号の「アンドプレミアム」で、日本の美味しいバゲット10本の中に選ばれたほどだ。オープンして半年で選ばれたのだから、その実力の高さがわかる。
しっかり焼いたトラディションは、クラストは厚いが、噛むとしっとりとして、フランス産小麦の優しい香りと味わいがクセになる。

パンづくりでの一番のこだわりは「香り」というだけあって、パリで味わった香りを届けたいと、風味の強いフランス産小麦に石臼引き粉をブレンド。自家製酵母を使い、ひと晩じっくり熟成させる。荻原シェフ渾身の作品ともいえるこのトラディションが、この店の原点となっている。

元々パリにはパティシエの修業に行ったというぐらいだから、焼き菓子は得意分野だ。中でも「パン屋のマドレーヌ」160円は、そのバターの香りとほっくりした食感、ほどよい甘さが絶品で、一度食べたら病みつきになる。最近、焼きたてのマドレーヌを味わう機会は少ないが、ここでは毎日焼いている。

「シナモントースト」120円も絶品で、カヌレを思わせる濃厚な味わいと食感が、ここにしかない味をつくり上げている。

食べてもらいたいメニューとして「きなこパン」220円を挙げた。これはきなこペーストと甘納豆をトラディション生地で包み、焼き上げたものだが、子供たちに噛み応えのあるパンをしっかり食べて欲しいとの想いからだ。

パリで5年半修業

元々パティシエとしてスタートした荻原シェフ、パリで本物を体験したいと渡仏。1年半の間に3つの店で本場を体験し、帰国した。その後洋菓子店で働くも、30歳直前にワーキングホリデーを活用、再びパリに渡った。そしてチョコレート店で働きながらパンの美味しさに感動。パンづくりへの想いを強くした。

「修業先のショコラティエのオーナーが引退することになり、『この先どうする?』と訊かれたとき、すかさず『パンをやりたい』と答えました」。そこで弟子の店を紹介してもらうことになる。

そこはパリでも南のはずれ、14区の地下鉄アレジア駅近くの小さなパン屋さんだった。地元の人々の生活の糧としてのパンを毎日焼いていた。そのパンに感動した荻原シェフ。毎日のパンづくりに夢中になっていた。歳も近いオーナーと意気投合、2人で一緒に店をやろうと物件を探し、仮契約までいったが、家賃が高く断念。
帰国後、友人のパン屋の立ち上げに加わり、2年半働いた。しかし、自分の想いと違うもどかしさを感じ、独立を決意する。

そして2013年7月、ここ三宿に「ボネダンヌ」をオープンすることとなる。「この辺りがパン屋の激戦区だなんて全く考えなかった。駅から遠い静かな場所で、毎日の客しか来ないような店にしたかった」と語る。従って対面販売は当たり前。「自分でできる範囲でやりたかったので、小さい店でいいと」

パリの日常の味をそのまま再現

店名の「ボネダンヌ」とは、「ロバの耳の帽子」という意味だという。「店名を考えるとき、ロバの耳の帽子をかぶり廊下に立たされる子供の風景が浮かんだんです。日本でいうとバケツを持って立たされるような・・・。そんなノスタルジックな風景です」

荻原シェフがつくり出すパンは全てベーシックなものだ。奇をてらったものは一つもない。「長年パリの人々に愛されて残ってきたもの。パリの店のアイテムをそのまま再現しています」。人気のバゲットサンドはシンプルにバター+ハムやチーズなどの具材を挟んだだけだ。野菜やマヨネーズなどは使用していない。そのシンプルな味わいが、ずっと愛され続けている。

パリの日常、毎日の暮らしが息づくボネダンヌ。ここには荻原シェフのパリを愛する情熱が詰まっている。5年半のパリでの経験が息づいている。だからこそ、店の前に立つだけで、パリの空気が感じ取れるのだ。トラディション、クロワッサン、ブリオッシュシュクレ、その表情、香り、少し大きめのサイズもパリそのままだ。ここにはまさにパリの街角にあるパン屋が息づいている。

こだわりは香り

「パンづくりで一番こだわっていることとは?」の問いに、「香り」と即答。フランスで食べたバゲットの香りに魅了され、パン屋を目指した荻原氏。「フランス人は香りを大切にする国民。焼き上がりはもとより、香りの変化も楽しんで欲しい」。フランス産小麦を使うのも、パリ時代に食べたパンの記憶の中の香りに近いからと語る。

平台の右側を占めているのが、量り売りの食事パンだ。中でも存在感があるのが「シャルポンティエ」100g180円だ。しっかり焼き色がついた厚めのクラスト、大きな気泡、水分を湛えたしっとりとした食感は、一見ロデヴのようだ。全粒粉をブレンドし、ルヴァン種を使ったそれは、食べやすく、深い香りと味わいがクセになる。

その他、全粒粉のパン、ドイツを旅行したときに出会ったというライ麦をブレンドした食事パンも大きく焼いて、グラム売りで対応している。大きく焼けばこそ香りが閉じ込められると荻原シェフ。しっかり焼いて香りと美味しさを引き出しているのも、パリの店でやっていたそのままという。

真摯なパン職人

昼過ぎ、クロワッサンを追加焼成していたが、卵液の塗り方の丁寧さに驚く。水曜日のこの日はガトーショコラを仕込んでいたが、その仕事一つひとつが丁寧だ。それはヴィエノワズリーにも踏襲される。

「仕事が丁寧でキレイですね」というと、「そうですか? いつもこのようにやっていますよ」と淡々と答える。パティシエ出身ということもあろうが、その丁寧な仕事ぶりが、商品一つひとつにも、店づくりにも表れている。

将来の夢を尋ねると、「やるべきことをきちんとやって、今あるものをつくり続ける。これがパン屋の仕事」ときっぱり。大好きなパリの日常のパンを再現、町のパン屋さんとしてあり続けたいと語る。そこには近隣の人々の毎日の糧をつくり続ける真摯なパン職人としての姿があった。

荻原 浩

1975年長野県生まれ。菓子職人として8年働いたのち、渡仏。パリで1年半パティシエとして修業し帰国。30歳直前に再び渡仏、パンの美味しさに目覚め、4年間パン職人として修業する。帰国後、品川のブーランジュリー&ビストロ「パンオフゥ」の立ち上げに加わり、2013年7月、東京・世田谷区の三宿に「ボネダンヌ」をオープン。フランスそのままのパンと菓子を再現し続ける。

ブーランジュリー ボネダンヌ

郵便番号/154-0005
住所/世田谷区三宿1-28-1
最寄駅/田園都市線 三軒茶屋駅
アクセス/三軒茶屋駅から徒歩13分
電話/03-6805-5848
営業時間/8:00~19:00
定休日/月曜、火曜

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2016年6月)のものです

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