食のプロおすすめ パンを楽しむ 美食の足し算 食のプロおすすめ パンを楽しむ 美食の足し算

vol.29 納豆の達人に聞く、
パンと納豆のマリアージュ

紹介してくれた人

「納豆工房せんだい屋」
マネージャー 長塚悟史さん

2008年、都内に直売店を出店するタイミングで入社。以来、より多くの方々に納豆の魅力を伝え、美味しく、楽しく食べていただくことに力を注いでいる。3代目社長の伊藤英文さんと同じく、自他ともに認める納豆オタク。伊藤社長とともにつくりあげた「ベイクドなっとうドーナツ」は、こだわりの納豆と並ぶ人気商品。

RECOMMENDED COMBINATION おすすめの組み合わせ

醗酵によって生まれる
うまみ、香りのハーモニーを楽しんで

「小粒納豆」+食パン

「せんだい屋」は、山梨県笛吹市に本社・工場のある納豆製造販売会社です。当社の工場は、南アルプスや八ヶ岳、秩父の山々にぐるりと囲まれた甲府盆地に位置し、すぐ近くには笛吹川が流れ、名湯・石和温泉があります。良質のおいしい水に恵まれ、お隣の長野県は大豆の一大産地と、納豆づくりには最適な土地柄です。
納豆のおいしさは、原料の大豆、水、そして醗酵で決まります。当店で販売している納豆にはすべて国産大豆を使用。大豆の品種によって、それぞれ味わいに特色のある納豆ができますし、同じ品種でも産地や時期によって出来具合も変わります。当店いちばんの売れ筋、「国産大粒納豆」「国産小粒納豆」は、全国の産地からの情報をもとに、そのときどきで納豆づくりに最適の、粒ぞろいの大豆を選んでつくっています。

納豆は、原料の大豆にたっぷりと水を吸わせた後、圧力釜でふっくらと蒸し上げ、そこに納豆菌を振りかけてパック詰めにして醗酵させます。納豆菌による醗酵が進むことで粘りや糸ひきが生まれますが、醗酵しすぎると大豆本来のうまみは少なくなり、色みも微妙に変化していきます。
納豆は、ひとたびパックに詰めてしまえば、足しも引きもできません。仕上がり具合は、まさにふたを開けてみるまでわからない。納豆菌は生き物ですから、わずかな温度差や空気の流れが醗酵具合に影響します。常に変わらないおいしさに仕上げるために、原料の大豆を見極め、気候の変化に合わせて、浸水や蒸し時間を微調整し、1つ1つのパックの中で納豆菌がいきいきと活躍できる環境を整えることが、職人の役目なのです。

小粒納豆と野菜とチーズのホットサンド

「納豆には白いごはんの一択」という方も多いのではないでしょうか?ごはん以外にもパスタや麺類とも合いますし、同じ醗酵食品同士、パンとも意外なくらい相性がよいです。
パンと合わせるなら、粘りが強い「小粒」がおすすめです。食パンにのせて納豆トーストにしてもよいですし、ホットサンドメーカーでプレスサンドにすると、具材がこぼれにくく、より食べやすくなります。納豆にたれを混ぜてレタス、トマト、スライスチーズと一緒に食パンでサンド。お好みでサルサソースなど、ちょっと辛みを足すのがポイントです。パンの表面にバターを塗って、予熱したホットサンドメーカーで両面をこんがり。バターの焦げる香りが納豆の香りともよく合います。

肉を納豆に置き換えてチリドッグに
オリーブオイルと塩、バジルを添えてパンのお伴に

パンと納豆のマリアージュでは、薬味は長ねぎよりもパセリやルッコラ、バジル、青じそなどがおすすめです。辛みのアクセントには、サルサソースのほかにもキムチやタバスコ、みじん切りの玉ねぎなども良く合います。パンのおかずに納豆オムレツもいいですし、納豆に塩とオリーブオイルを混ぜたものもパンとよく合います。パクチーや赤ワインなどは、なぜかあまり合わないように感じましたが、とくに決まったルールはありません。家にある食材や調味料をいろいろ試してみて、ご自身の好みにぴったりのものを見つけてみてください。

STORE RECOMMENDATION 私のお店のおすすめ

納豆入りだけど、納豆くさくない。
納豆嫌いの方にも大好評の「ベイクドなっとうドーナツ」

納豆は、植物性たんぱく質をはじめ、食物繊維やさまざまな栄養素を豊富に含んだ食品です。また、醗酵の過程で納豆菌が生み出す酵素は、腸内環境を整えて、免疫力を高めることもわかっています。
「納豆が苦手」という方にも、ぜひ試していただきたいのが「なっとうドーナツ」です。小麦粉、卵、バター、砂糖のドーナツ生地に納豆ペーストを練り込み、油で揚げずに焼きあげています。
当初、店舗で試作したのは、普通に揚げるタイプのドーナツでしたが、どうしても形が崩れてしまい、うまくいきませんでした。ちょうどベイクドタイプのドーナツが登場し始めたころで、油で揚げずに焼いてみたところ大成功。納豆の匂いは、知らずに食べたらほとんどわからないレベルに抑え、納豆入りならではのしっとりとしてクリーミーな食感が持ち味です。
現在は山梨の工場でドーナツ専門のスタッフが1つ1つ手づくりで焼きあげています。プレーンのほか、バナナ、やさい、くるみなどラインアップは12種類ほど。夏は夏レモン、秋から冬はさつまいも、春は苺のドーナツと、季節ごとのフレーバーもあります。

「ベイクドなっとうドーナツ」1個145円(税込)~。左からきなこ、チョコ、やさい
しっとり、やさしい食感が魅力

店内にはイートインのカウンター席を設け、開店から15時まで納豆定食などをご用意しています。いちばんの人気は「納豆食べ放題定食」。当店で販売している納豆のうち、8種類をお好きなだけ召しあがっていただけます。
冷蔵ケースには昔ながらのわらや経木に包んだ納豆、山梨県産の青大豆や希少な品種「あけぼの大豆」を使ったものなど、さまざまな納豆が揃っています。豆の種類によって、産地によって、包材によって、それぞれ特色のあるおいしさを、ぜひ食べ比べてみてください。大豆やおから、納豆でつくったおつまみ菓子などもあり、納豆ギフトも喜ばれるかと思います。
また、山梨県内ではおなじみの納豆自動販売機を店先に設置してあり、24時間いつでも納豆各種や「なっとうドーナツ」をご購入いただけます。

パッケージにわらや経木を使った、こだわりの納豆もあります

「納豆は身体にいい」という部分がたびたびクローズアップされますが、ほかの食材をバランスよく組み合わせて、飽きずに食べ続けることで、身体にもいい影響が出てくるのだと思います。コロナ禍でおうち時間が長く、何かと制限がある今だからこそ、たまのイベントとして当店の「納豆食べ放題」にチャレンジしてみたり、納豆と身近にある食材で、新しいマリアージュの探求を気軽に楽しんでみてはいかがでしょうか。

大粒で甘みの強い、希少な大豆を使った「山梨県産あけぼの大豆の納豆」
イートインでは8種類の納豆を食べ比べできる「納豆食べ放題定食」が人気です

店舗情報

店名
納豆工房せんだい屋 下北沢店
住所
東京都世田谷区北沢3-25-1
TEL
03-5431-3935
営業時間
11:00~16:00
定休日
なし
URL
http://www.sendainatto.jp/

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2021年7月)のものです

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2021年7月)のものです

パンを楽しむ美食の足し算