パンのテーブル パンのテーブル

世界の食文化体験から日本へ。スパイスを使ったパンとお菓子

ここ数年、今まで知られていなかったスパイスに触れる機会が増えました。世界各国からヒントを得た、スパイスを使用したパンやお菓子が人気のお店をご紹介します。

粉と砂糖と香辛料
(こなとさとうとこうしんりょう)

スパイスと野菜やフルーツを組み合わせたマフィンやパウンドケーキのほか、スパイス入りのプリンやチーズケーキも作る「粉と砂糖と香辛料」。意外性のある焼き菓子は店舗での販売のほか、ネット通販も行っています。

粉と砂糖と香辛料(こなとさとうとこうしんりょう)

住所
東京都練馬区東大泉3-66-16 総建大泉ガーデン 1F
電話
03-5935-7797
営業時間
11:00~18:00
定休日
水曜
西武池袋線大泉学園駅から徒歩10分ほど

フルーツや野菜とスパイスの意外な組み合わせが魅力

「スターアニスのバナナケーキ」320円(税込)

入り口の扉を開けると、スパイスの香りがふわり。ナチュラルな雰囲気の店内には、お店で使っているスパイスの見本が並んでいます。

カウンターの上には、いくつもの焼き菓子。シナモンやナツメグが入っていてSNSなどでも人気が高まっている「キャロットケーキ」やチャイ用のミックススパイスを使ったマフィン「パイナップルとチャイ」のほか、「カルダモンとかぼちゃ・ホワイトチョコのマフィン」、「クローブ・ナツメグとクランベリー・クリームチーズのマフィン」、「スターアニスのバナナケーキ」などを組み合わせた素材とスパイスの意外性に興味をそそられる焼き菓子ばかり。このようなメニューはどのように生まれるのでしょうか? 店主の魚返健(おがえりつよし)さんにお話を伺いました。

店主の魚返健さん

「スパイスとの最初の出会いは、ワインにフルーツやシナモン、クローブなどを入れたお酒、サングリアです。スパイスやジャムなど瓶詰がずらりと並んでいる景色が好きだったのも理由のひとつです」(魚返さん)

魚返さんは飲食店でアルバイトの傍ら、調理の専門学校を卒業。イタリア料理店のキッチンを皮切りに、イタリアンバール、カフェなどで勤務。ティラミスやパンナコッタのようなデザート、カフェ飯、簡単なカクテルも手がけていました。

クローブ入り「無花果の赤ワイン煮ガトーショコラ」380円(税込)

その後、ワーキングホリデーでオーストラリアへ。日本料理店のほか、現地のカフェでも経験を積みます。オーストラリア滞在中には、さまざまなバックグラウンドの人が作るチャイを味わうなど、スパイスに触れる機会がたくさんありました。

帰国後はスパイスのおもしろさを広めたいと、オリジナルブレンドスパイスティーの通販を開始。しばらくのちに焼き菓子を中心としたお店「粉と砂糖と香辛料」をオープンしました。

種類豊富なスパイスのブレンドティーは700円(税込)から
「パイナップルとチャイ」380円 (税込)

スパイスを抽象化して見つけ出す味わいのコンビネーション

左から「クローブとソルダムクリームチーズ」「キャラウェイと牛蒡とチョコレート」「カルダモンとブルーベリー(小美濃園産)ポピーシード」各380円(税込)

魚返さんが作る焼き菓子にとって、スパイスは重要な要素です。しかし、主役ではないといいます。

「基本的にスパイスは相方ありきの脇役です。僕が作りたいのは、例えばスパイスと果物の組み合わせのおもしろさ。スパイスばかりが悪目立ちせず、両方が立つようなバランスになるように考えています。お菓子として味わっている中で、スパイスに気付いて『あ、いいな』と思ってもらいたい。スパイス好きな人には物足りないかもしれません」(魚返さん)

魚返さんは、スパイスと合わせる素材とのコンビネーションを考えるとき、スパイスを別の食品に例えたり、イメージを抽象化して考えるといいます。

スパイスケーキの代表格「キャロットケーキ」320円(税込)

「新しいお菓子を考えるとき、自分の中でスパイスを別の何かに例えることが多いです。例えばクローブの香りは甘くてレーズンの香りに似ていると感じています。だからレーズンと相性のいいものはクローブとも相性がいいのではないかと試してみます。スターアニスとバナナは完熟した厚みのある香りが共通だと感じたので合わせてみたところ、『見つけた!』と思えるほど好きな組み合わせになりました。時には色に例えることもあります。カルダモンは黄色っぽいイメージだと思っていて、同じ黄色のレモンと組み合わせてみよう、といった具合です」(魚返さん)

似ているものだけでなく、対局にあるものとも試してみることがあるとのこと。もちろん、試してみたら合わなかったということも時にはあるそうです。

スパイスとの組み合わせで難しいのは、香りがやさしい野菜やフルーツ。お店のある練馬区内で栽培されたブルーベリーもお菓子に取り入れていますが、ブルーベリーのやさしい甘みと酸味はそのままではスパイスに負けてしまうので、コンフィチュールのように加工して使っています。またスパイスは2~3種類ほどを合わせる程度にして、それぞれの香りや味を感じられるようにしているそうです。

焼き菓子が並ぶショーケースの上にはスパイスがずらり。
クッキーとビスコッティも揃う。各350円(税込)

「ほとんどの人は知らない間にスパイスを味わっています。カルダモンはチャイに入っていますが、チャイ好きな人も、カルダモンそのものはよく知りません。クローブも最近人気のクラフトコーラに使われていますが、コーラとして飲むのでクローブ単体で目にする機会はあまりありません。この店のお菓子を食べることで、実は味わったことがあるのに、よく知らないスパイスを改めて知って、少しお茶に加えてみるなど気軽に生活に取り入れてもらえたらうれしいです」(魚返さん)

いつもは通販で購入していた地方在住のお客様が「来てみたかった」と来店することもあるとのこと。お店のテーマ、"手に取ってくれた人のスパイスの世界を『少し広げる』 + スパイスを日々の生活の中に『少し足す』"が現実のものになっていっているようです。

BLUE POPPY Bakery
(ブルーポピーベーカリー)

世界的に有名なフランス料理店「ジョエル・ロブション」でパンの責任者だった山口哲也さんが開いたベーカリー。毎日30~40種類ほど並ぶパンや焼き菓子にはスパイスやハーブを使ったアイテムも含まれています。

BLUE POPPY Bakery(ブルー ポピー ベーカリー)

住所
東京都世田谷区玉川2-12-7
電話
03-5797-9560
営業時間
10:00~18:00 土曜、日曜、祝日9:00~17:00
定休日
月曜、火曜
東急田園都市線・大井町線二子玉川駅から徒歩4分ほど

フランス料理店時代に出会った文化とスパイスをパンに

「ハムとチーズのベアクロウ」410円(税込)

シェフの山口哲也さんは大学を卒業後「シェ・リュイ」を経て、東京・恵比寿にある現在の「ジョエル・ロブション」へ。2015年に拠点をニューヨークに移し「ロブション ニューヨーク」をはじめ複数のレストランのパン部門責任者を務め、同時に世界各国のレストランでトレーニングを担当しました。そして帰国から1年ほどして開いたお店が「BLUE POPPY Bakery」です。

シェフの山口哲也さん

「ずっとフランス料理こそが料理の最高峰で、多くの人に愛されていると思っていました。しかしニューヨークでは、さまざまなスタイルの料理がポピュラーだと知り、かなりショックを受けました。その経験が発想を自由にさせてくれたと思います」(山口さん)

人種の坩堝(るつぼ)と言われるニューヨーク。山口さんの職場だったフランス料理のキッチンにも多様なバックグラウンドを持つ人がいました。スパイスの扱いに慣れたシェフからスパイスの効果的な使い方を教えてもらったこともあるそう。

「一緒に働いていたパキスタン人のシェフに、どうやったらスパイスはより効果的に香りが出るのかを教わりました」(山口さん)

「アメリカには、日本にはないスパイスがいろいろあります。例えばクミンにしても、日本で見かけるのは1種類ですが、いろんなクミンがありました。エブリシングスパイスというミックススパイスも、向こうでは一般的なスーパーに売っていますが、日本では見かけませんね」(山口さん)

「ソーセージロール」 420円(税込)
自家製のエブリシングスパイス

エブリシングスパイスは、ベーグルのトッピングとして使われることが多いミックススパイスです。「BLUE POPPY Bakery」では、ケシの実、ゴマ、フライドオニオン、フライドガーリックを使って自家製ブレンドを作っています。熊の手に似た「ハムとチーズのベアクロウ」や「ソーセージロール」に使用されています。

「味のバランスや見た目も考えてミックスしています。ガーリックが効きすぎると女性に敬遠されますが、ゴマやケシの香りや食感、オニオンの食欲をそそる風味はなくてはならない。すべての要素が程よく感じられるように考えています」(山口さん)

スパイスは味の輪郭をはっきりさせてくれる効果的な食材

右が「モロッカンフォカッチャ」400円(税込)

「最初にスパイスを意識したのは東京のロブション時代です。倉庫にいろんなスパイスがあって、これはなんだろう、あれはなんだろうと。その中でデュカに出会って、自分でもブレンドするようになりました」(山口さん)

「BLUE POPPY Bakery」に複数あるスパイスを使ったパンの中で、ひときわ目を引くのは「モロッカンフォカッチャ」です。近年注目されている北アフリカのミックススパイス、デュカを使っています。山口さんにとっては、長く扱ってきたミックススパイスのひとつでもあります。

「モロッカンフォカッチャ」の他にもフォカッチャは「トマトフォカッチャ」や、生のローズマリーをのせて焼いた「ローズマリーフォカッチャ」があり、生地は共通です。強力粉を主体に準強力粉をブレンドして食感を調整。マッシュポテトを2%ほど加えることで中はしっとり、まわりはサクッとした食感が楽しめます。

「デュカはカレーによく使われるクミンが入っている分、日本人にも馴染みやすいと思います。クミンの他は、アーモンドとごま、コリアンダーを入れてブレンドしています。オリーブオイルとの相性がいいのでフォカッチャにするとおいしいです」(山口さん)

甘いパンにもスパイスが使われています。アメリカ人が好きなスパイス、シナモンはザクサクした食感の「オートミールクッキー」とポピーシードのプチプチ感が楽しい「ポピーシードバブカ」に。「チョコレートロール」にはトンカ豆を合わせています。

シナモンの入った「ポピーシードバブカ」750円(税込)
シナモン入りの「オートミールクッキー」310円(税込)

またスコーンのような形の「チェダービスケット」にはカイエンヌペッパーを入れています。

「最初はカイエンヌペッパーなしで試作していたのですが、少しぼやけた感じになってしまってパンチが欲しくなりました。それで少し辛さを足してみようとカイエンヌペッパーを入れたら味が締まりました」(山口さん)

「スパイスは輪郭をはっきりさせてくれる素材です。ただし頼りすぎはいけないので、何を優先するか考えて使っています」(山口さん)

スパイスが注目を浴び、興味を持つ人も増えてきました。しかし、まだ知識や味わった経験がない人もいます。

「店頭ではお客様とのコミュニケーションを重要視して販売しています。スパイスやハーブの説明もしているので、お客様にも興味を持っていただけることが増えてきたようです」(山口さん)

「チェダービスケット」350円(税込)
BAKERYと書かれた看板はニューヨークで購入したもの

Torpet(トルペット)

2021年10月に東京都小平市鷹の台にオープン。シナモンロールやカルダモンロールなど、北欧・スウェーデンのパンと焼き菓子、コーヒーなどを販売しています。通販でも購入可能です。

torpet(トルペット)

住所
東京都小平市たかの台38-5 105
電話
非公開
営業時間
9:00~18:00 土曜、日曜、祝日9:00~17:00
定休日
水曜
西武国分寺線鷹の台駅から徒歩3分ほど

スパイスとオーブンが身近なスウェーデンの味を日本でも

「シナモンロール」330円(税込)
店長のアダム フェルトさん

「torpet」とは、スウェーデン語でサマーハウスを意味します。お店があるのは、都会の喧騒からは離れた、緑が多く静かなところです。

オーナーはスウェーデンに留学経験がある小原愛(こはらあい)さん。世田谷・豪徳寺で北欧菓子の店「フィカファブリーゲン」を運営するうち、お菓子より日常的に食べられるパンを提供したいと、この場所にベーカリーを開きました。

パンを焼くのは店長を務めるスウェーデン出身のアダム フェルトさん。もともとパンを焼くのは趣味だったというアダムさんに、お店のパンとスパイスを使ってつくるスウェーデンのパン事情についてお話を伺いました。 

「スウェーデンでは、よくオーブンを使って料理をします。ほとんどの家、学生が住むアパートでさえも大きなオーブンがあって、パンを焼く人も多いです。僕のおばあちゃんもよくパンを焼いていますし、夏休みにスウェーデンに帰って友達の家を訪ねたら、2軒とも自宅で焼いたパンを出してくれました。材料も手に入りやすく、『torpet』でも使うスペルト小麦も普通のスーパーに売られています」(アダムさん)

「カルダモンロール」330円(税込)

アダムさんはスウェーデンの味を日本の人にも食べてもらいたいと、故郷の味を再現したパンを焼いています。そのため、ショーケースには日本の一般的なパン屋さんではあまりみかけない、黒パンやチーズやけしの実がたっぷりのったロールパンなども並びます。中でも、スウェーデンスタイルのシナモンロールとカルダモンロールは日本でもよく知られるようになりました。シナモンロールはアメリカンなスタイルより、甘さがあっさりしている分、シナモンを感じやすいようです。

カルダモンロールをよく見ると黒っぽい粒々がトッピングされていますが、これがカルダモンの種です。緑色のカルダモンのさやから、スパイスを潰す専用のグラインダーを使って中の種を取り出します。なかなか大変な作業なんだとか。

左がカルダモン、右がキャラウェイシード
カルダモンの種をさやから取り出すグラインダー
「黒パン」1本800円ハーフ400円(税込)

「黒パン」にもスパイスを使っています。中力粉で起こしている発酵種以外は、ライ麦粉が使われています。生地にさわやかな香りと甘味が特徴のキャラウェイシードが入っています。スウェーデンでは、キャラウェイシードの他にフェンネルとアニスをブレンドしたパンスパイスと呼ばれるミックススパイスを入れるお店も多いそう。

「パンスパイスは一般的なスーパーにも並ぶスパイスミックスです。シナモンロールやカルダモンロールだけではなく、家庭で作る他のパンにもスパイスを入れています」(アダムさん)

「黒パン」は、焼き上がりの色がとても濃くなっています。ライ麦の色に、オリゴ糖が加わるためで、焦げているわけではありません。スウェーデンの黒パンは、ビーツを使ったシロップが加えられていますが、そのシロップを日本で手に入れるのは難しいため、同じビーツから作られたオリゴ糖で代用しているとのこと。

チャイ用のスパイスブレンド
チャイのスパイスは贅沢に使っています

また、スウェーデンといえば、フィーカの文化が有名。みんなで会話をしながら、コーヒーやお茶、お菓子を楽しむ文化です。もちろん「torpet」でもコーヒーを扱っていますが、スパイスを味わえるチャイも用意しています。

チャイのブレンドはお店のオリジナル。ジンジャーが効いた少しピリッとした味わいが特徴で、ジンジャー、クローブ、カルダモン、ブラックペッパー、シナモンの5種類を砕いて作っています。シナモンロールとカルダモンロールに使うカルダモンはさやを除いていますが、チャイは、スパイスの香りをミルクに移すため、さやごと入れています。

パンはカウンター上のショーケースに並んでいます

「私は料理にもスパイスやハーブを使うことが多いです。スウェーデンでよく使うフェンネルなどのハーブ類はまだ日本では手に入りにくく、エルダーフラワーのシロップなどまだ日本人に馴染みがないものも今後は紹介したいと思っています。もちろん、他にもスパイスを使ったパンを試作しています。商品ケースの関係でたくさんのパンを一度に並べられませんが、日替わりや週末だけお店に並ぶパンが今後登場する予定です」(アダムさん)

BROWN ONION BAKERY
(ブラウンオニオンベーカリー)

カレー店を母体とするベーカリー。マンモス団地として知られる板橋区の高島平団地近くに2022年2月オープンしました。団地に住むお年寄りから近所の保育園に通う親子まで幅広くファンが増えています。

BROWN ONION BAKERY(ブラウンオニオンベーカリー)

住所
東京都板橋区高島平9-1-9
電話
03-6909-7377
営業時間
10:00~19:00
定休日
月曜、火曜
都営三田線西台駅から徒歩2分ほど

インドから仕入れる香り高いスパイスと野菜の組み合わせ

カレーを使ったパンは最上段に並んでいます

都営三田線西台駅から高島平駅方向に向かう高架下に新しいお店が続々誕生。その中のひとつとして2022年2月に誕生したのが「ブラウンオニオンベーカリー」です。同じ都営三田線の西高島平駅そばにあるカレーのお店「ブラウンオニオンカレーファクトリー」の姉妹店です。

スタッフのみなさん

オーナーはカレーを通してスパイスに長年親しんできた清川直一郎(きよかわなおいちろう)さん。店長兼シェフとして店舗運営をしているのは下机学(しもつくえまなぶ)さんです。

スパイス料理の代表でもあるカレーは、複数のスパイスを混ぜ合わせることで味わいに深みが生まれるのが魅力だとオーナーの清川さんは話します。

「インドカレーと出会ったのは10代だった1980年代のことです。当時、四谷にあったインド料理店で仲間といろんなカレーを頼んで、混ぜて食べるのが好きでした。2000年代になって出会ったのが複数のカレーを定食スタイルで食べる南インドのミールスです。3種類ほどのカレーを混ぜて食べます。混ぜることで深みのある味わいになるのですね」(清川さん)

スパイスはホールを潰して使用

清川さんは以前から西高島平駅そばにカレー店「オニオンブラウンファクトリー」を運営。なぜカレー屋さんを母体とするパン屋がオープンしたのでしょうか?

「世界の食糧事情をめぐるドキュメンタリー番組を見たことがきっかけです。小麦とスパイスは古くから貴重な資源として交易され、人々の生活を豊かにしてきた様子に感動しました。そこで小麦とスパイスを合わせた食文化を広めるならパンが良いのではと思い至りました」(清川さん)

シェフの小机さんはパン職人としてのキャリアで、本格的にスパイスに着目するのは初めてのこと。

「パリパリチーズキーマ」230円(税込)

「ホールのスパイスを自分でクラッシュすると、味が違うことに驚きました。ブラックペッパーでさえも、砕いたものは尖りがなく、柔らかいと感じるほどです。ただ、パン生地に闇雲にブラックペッパーを入れてもダメです。スパイスに慣れない方にも味や香りのよさを感じてもらえるパンを日々考えています」(小机さん)

姉妹店の食べやすいオリジナルキーマカレーを使った「パリパリチーズキーマ」が人気です。国産小麦を使った柔らかいパン生地でキーマカレーとプロセスチーズを包んでいます。さらにパリパリに焼いたチーズが表面を覆っていて、見た目も楽しいパンです。

「カレーのポイントはしっかり炒めた玉ねぎに、生姜、ニンニク、クミンやコリアンダー、ターメリックなどのスパイスを合わせることです。ドライのスパイスは全てインドでも使われているものを仕入れています。キーマカレーは牛と豚の合い挽き肉と、日本人の味覚に合うような隠し味を少し加えて工夫しています」(清川さん)

バブカならぬ「ボブカ」も人気商品のひとつ。「BROWN ONION BAKERY」の頭文字BOBをとって名付けています。シナモンとチョコレートの2種類があり、シナモンは香りのよさが自慢。

「シナモンの『ボブカ』は国産小麦と国産バター100%の生地にシナモンをしっかり効かせています。シナモンはパウダーの状態で仕入れていますが、スーパーなどで手に入るものとは香りがまったく違います」(小机さん)

シナモン「ボブカ」1本640円ハーフ320円(税込)
自慢のシナモンを聴かせた「アップルパイ」420円(税込)

サンドイッチには、ソースや具材でエスニックさをプラス

「チキンかつサンド」380円(税込)

サンドイッチ類にはフレッシュなコリアンダーや、ココナッツチャツネを使った商品が揃います。ハーブやチャツネなどを組み合わせることで、深みのある味に仕上げています。

「チキンカツサンド」はさっくり上がったチキンカツにフレッシュなコリアンダー、オリジナルマンゴーマスタードソースを効かせています。

「コリアンダーサンド」もエスニック好きには堪らないサンドイッチ。コリアンダーとベーコンをみじん切りにして混ぜたものをサクサクした食感のクロワッサンに挟んでいます。「スパイシーポークサンド」はプレーンなコッペパンにスパイスポーク、オリジナルで作っているココナッツチャツネ、インド風の漬物アチャールにコリアンダーとレタス、ハニーマスタードで複雑な味わいです。

「コリアンダーサンド」380円(税込)
「スパイシーポークサンド」」380円(税込)

「商品は常に見直しています。ご近所のお年寄りが食べやすい柔らかいパンの種類も増やしました。今後はスパイスを入れたお菓子も作って、高島平のお土産にしてもらいたいと思っています」(小机さん)

「パンやお菓子と組み合わせて、スパイスを使う食文化を知ってもらうのも店の目的のひとつです。例えば山椒は、子どものころは苦手でも大人になるとうなぎに必ず掛けるようになったりします。外国から来たスパイスやハーブも、同じように食べ慣れるとなくてはならない味になるのではないかと思っています」(清川さん)

エキゾチックな味と香りをパンや焼き菓子に生み出すスパイス。各店のこだわりが詰まったスパイスを取り入れたパンや焼き菓子を試して、お気に入りのスパイスを見つけてみてはいかがでしょうか?

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2022年9月)のものです

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