パンのテーブル パンのテーブル

素材にこだわるお菓子の専門店

独自のアイテムにこだわったお菓子の専門店が増えています。一点集中の素材に対する熱い想いが、多くのファンを魅了する、つくり手と素材の物語をご紹介します。

あんこの勝ち 大丸心斎橋店

「あんこ」と言えば和菓子。そんな固定概念を払拭したいと、お馴染みの洋菓子とコラボさせて新しいあんこの楽しみ方を提案しています。何にでも合うあんこのポテンシャルには驚かされます。

あんこの勝ち 大丸心斎橋店

住所
大阪府大阪市中央区心斎橋筋1丁目7-1 大丸心斎橋店地下1階 
電話
0120-25-6188
営業時間
10:00~20:00(大丸心斎橋店の営業時間に準ずる)
定休日
1月1日(その他、大丸心斎橋店に準ずる)
大阪メトロ御堂筋「心斎橋駅」すぐの大丸心斎橋店地下1階にある売場

選べるあんこを使った洋菓子が斬新

たっぷり詰め込まれたあんことクリーム。あんこは3種から選べる
あんこが大好きという森 大社長

昨今のSNSブームで騒がれるのは洋菓子ばかり。「なぜあんこはフューチャーされないのか?」とあんこが大好きな社長が立ち上がりました。新ブランドを立上げ、「あんこはきっとハイブリッドスイーツになれるはず!あんこが勝つと証明したい」と意気込む森 大社長はこうも語ります。
「第4のチョコや、カカオ○○%などのチョコレートが話題を呼んでいます。けれどあんこは前のめりに出てこないんですよ。○○産のあずきとは言いますが、糖度を伝えたりはしない。控えめすぎるんです」
ターゲットは和菓子に親しみの少ない20~30代と40代に設定。まずは手に取りやすいシュークリームからスタートしました。

あんこを前面に押し出すために、あんこ・カスタードクリーム・生クリームの分量は、均等ではなく50%くらいはあんこにしたいと開発に着手。「何これ!」とSNS映えすることを目指しましたが、最初の社員の反応は「こんなの食べますか?」と冷ややかでした。

「ANしゅーくりーむ」つぶあん486円、こしあん540円、 皮むきあん594円(すべて税込)

苦労の末誕生したお店の看板スイーツ「ANしゅーくりーむ」は、北海道産小豆のあんこ・カスタードクリーム・生クリームの3層をシュー生地ではさんだ重量級のシュークリームです。あんこの味が引き立つようにシュー生地に塩味をきかせて、最後ののどごしで「この味わいのベースはあんこだったのか」と思えるようにしています。

「あんこの勝ち」の一番の楽しみはあんこの種類を選べること(ANしゅーくりーむとANぷりんのみ)。糖度60°のつぶあん、糖度52°のこしあん、糖度45°の皮むきあんの3種類があります。 あんこは好きだけど甘さ控えめにしたい日や、ガッツリ甘いものを食べたい日など、気分で糖度をチョイスできます。あんこの風味をしっかり楽しみたい方は、皮をむいてつくっている「皮むきあん」がおすすめです。

「ANぷりん」もカラメルソースの代わりに、プリンと同じくらいの量のあんこが入り、どちらが主役か分からないほど。あんこに合うようにプリンの味にも一工夫しています。
大丸心斎橋店限定の「ANろーるけーき」は、大阪をイメージしたトラの縞模様をこしあんで再現。しっとりしたスポンジ生地に、タイガー柄になるよう斜めにこしあんを絞り出して焼き、中にはホイップクリームとこしあんを絞り出しています。※1日20個限定。

「ANぷりん」つぶあん486円、こしあん540円、皮むきあん594円(すべて税込)
「ANろーるけーき」432円(税込)

厳選したあんこの魅力を広めたい

あんこは北海道産小豆を使用して専門のメーカーに依頼しています。北海道の中でも季節にあった産地を選定したり、メーカーによってつくり方も違うので、こしあんだけでもいろんな種類があります。シュークリームやプリンに使用しているのは設定した糖度にあわせてつくったあんこ。専門メーカーならではの技術が込められています。「皮むきあん」は雑味がないので、あずき本来の味がよくわかります。
「あんこが入っていると安心する、懐かしい味がするというお客さまも多く、あんこの味には絶対の自信をもっています。大丸心斎橋店を訪れるのは30代前後、自宅で食べるために買うお客さまが大多数。一度食べて美味しかったので、手土産にしたいとリピーターになる方も多いです」(森社長)。
シュークリームとプリン以外にも魅力的な商品が並んでいます。パイ生地のタルトにつぶあんとカスタードクリームを入れ、プリン味のケーキをのせた「ANたると」。コロンとした形のシンプルな見た目で、素朴なおいしさを追究しています。
こしあんの入ったしっとり食感の「ANくっきー」は、クッキー生地の中にあんこが入っているので食べやすく、ついつい手が止まらなくなるおいしさです。

「ANたると」454円(税込)
「ANくっきー」4個540円〜(税込)
「ANちーずけーき」2,160円、「ANちょこけーき」2,160円(すべて税込)

中心にあんこを詰めた、ずっしり濃厚な「ちーずけーき」は、なめらかな食感が魅力。チーズとあんこの組み合わせに驚かれるかもしれませんが、あんこが洋菓子に合うことを証明してくれている逸品です。
「ちょこけーき」は、コク深いチョコレートと風味豊かなあんこが絶妙にマッチ。生地に牛乳を足してなめらかにするなど、ただ混ぜるだけでない職人の技が生きています。
「これからもいろいろなメニューを開発していきたいですね。今までやってみてダメだったものはありません。あんこにはパワーがあるので合わせてみるとなんでもいけるんですよ」(森社長)。

あんこ大好きな社長ですが、残念なことにあんこの需要は減っているそうです。あんこの出番をもっと増やして、糖度やその日の気分、シチュエーションに合わせて選べるようにしていきたいと願っているとのこと。若い人にあんこの魅力を伝えていきたいと夢を語ってくれました。

和かろん。専門店「和果(わか)」

店名の和果とマカロンを合わせて名付けられた「和かろん。」は、マカロンのようにころんとしたフォルムのどら焼きのこと。定番以外にも季節を取り入れたフレーバーなど、和×洋×果の豊富なバリエーションが魅力です。

和かろん。専門店「和果(わか)」

住所
大阪市西区北堀江1-11-6
電話
06-6533-5050
営業時間
11:00~18:00
定休日
木曜日
大阪メトロ四ツ橋線 四ツ橋駅から徒歩1分

ただかわいいだけでない、味も本格的な和スイーツ

和菓子とも洋菓子ともつかない、ころんとかわいく美味しい和かろん。
ひとつずつ職人の手仕上げにこだわっている

ここにしかない小さくて分厚いどら焼きの専門店が大阪・北堀江にあります。会社自体の設立は7年前。心斎橋や難波で経営していたドリンクスタンドを、コロナ禍の影響で事業譲渡し、次の事業を探していたとき、不動産屋さんの紹介で見つけたのがこの堀江の店舗でした。「南向きで前の道も広いし、大家さんもいい人だなと。直感でここがいいと決めましたが、何を売るかは未定でした」と話すのは代表取締役の岡村廣子さん。
韓国のトゥンカロンのかわいさをインスタで見て、海外展開も視野に入れ「日本風だけど日本にはないものをつくろう」と考えたそう。アイデアの軸は、くだものを使ったもの、気軽に食べられるけどお持たせにもいいものをつくることでした。

このコンセプトにしたがって、アイデアから形をつくりだしていく作業はたいへんなものでした。何度も失敗して、形が出来るようになっても妥協せず、時間をかけて品質を追求していきました。

そうしてできたのが、中身はしっかりしているけど、皮は薄い今のスタイル。白玉粉を加えて、ふっくら、ふんわり、もちもち食感のレシピで、お馴染みのどら焼きより白っぽく焼き上げた皮。その優しい皮がムースやあんこをしっかりと包んでいます。
定番の中身はあんバター、抹茶あんこ、ほうじ茶あんこに加え、いちじくチーズクリーム、ブルーベリーチーズクリーム、生ショコラの6種類。その他に季節感のあるフレーバーを使用したものなど、バリエーションも豊富です。

「あんバター」432円(税込)
「抹茶あんこ」450円(税込)

あんこは明治20年創業の老舗和菓子店のものを使用しています。
「いろいろなあんこを試しても納得できずにいたところ、知り合いから老舗の和菓子店があんこを卸していることを紹介してもらいました」と岡村さん。北海道十勝小豆の指定品種のみを使用し、純度の高いザラメ糖ですっきりとした甘さが和かろん。にベストマッチしています。
そのあんこと北海道産純正バターを使用した「あんバター」は、シンプルなだけにそれぞれの素材の美味しさが際立ちます。
「抹茶あんこ」はしっかりした味の抹茶パウターを使用しているので、味の角が立たないようにホワイトチョコレートを少し加えてやわらかい味にしています。

「ほうじ茶あんこ」450円(税込)

ムースの食感がふるふるの「ほうじ茶あんこ」は、濃いめのほうじ茶と甘すぎないあんこが 大人の味に仕上げています。
チーズクリームを使った定番は、女性に人気の「いちじくチーズクリーム」。まろやかな北海道産のクリームチーズと生クリームをブレンドしています。セミドライのイチジクのぷちぷち食感がアクセントになっています。
「ブルーベリーチーズクリーム」は、甘酸っぱいブルーベリーを使用。きれいな色とさわやかな味わいが写真映えすると評判です。
「生ショコラ」は、チョコレートムースの中に手づくりの生チョコレートが隠れた中身に、アーモンドをまぶして食感を出しています。

何にも属さない新感覚のお菓子

どら焼きの皮の直径は6cmほど。箱に入ってきれいに見えるよう縦・横・高さを揃えたフォルムにもこだわりました。最初は紙に包んでいたそうですが、置き方によっては型崩れしてしまい、持ち帰ったり、配送したときにきれいに見えなくて困っていたそう。試行錯誤する中でセルクルや丸いフィルムを特注でつくってもらうようになり、きれいな状態でお客さまに召し上がっていただけるようになりました。
「よく『和菓子か、洋菓子か』と聞かれるんです。『もはやどら焼きとは言えないのでは?』とも。私たちも何にも属さないものに進化している、新感覚のお菓子になったと思っています」(岡村さん)。
和かろん。は、どの商品も甘さ控えめで、緑茶や紅茶・コーヒーだけでなく、ワインなどのお酒とも一緒に楽しめます。特にチーズクリームとチョコレート味はとてもお酒にも合うのだとか。見た目以上に食べ応えがあるので、よく冷やして半分に切って味わいながら食べるのがおすすめです。

「いちじくチーズクリーム」450円(税込)
「ブルーベリーチーズクリーム」450円(税込)

新商品の開発はスタッフ全員で意見を出し合い、みんなが納得するまでつくっては修正を繰り返します。
「新メニューについては24時間365日考えています。和×洋×果の組み合わせは無限。その季節に食べたいものをベースに、アイデアを膨らませてちょっとひねるのがコツですね。」(岡村さん)。
1~2ヵ月ごとにシーズンものを出している「和かろん。」。母の日やハロウィンなどの行事に合わせたり、デパートなどの催事にあわせて限定ものをつくるそう。今冬の新作は「冬りんご」です。
お客さまからのリクエストにも応えています。夏の時期でしたが、お子さんの希望でラムネ味とチョコバナナ味をつくり、「アイス和かろん。」として冷凍のまま食べるよう発売しました。以来、夏にはアイス和かろん。を販売するようになりました。

「生ショコラ」460円(税込)
今シーズンの新作「冬りんご」450円(税込)

前年と同じアイテムを販売することもありますが、必ず改良していると言います。「1年前はいいと思っていても変わることがあります。ただ和かろん。の皮は普遍、皮ありきの商品だと思っています。もっとたくさんの人に知ってもらって、幸せな気持ちを広げていきたいと考えています」(岡村さん)。
手探りでスタートした和かろん。ですが、均一化による大量生産はせず、いまも手仕上げにこだわり一つ一つ丁寧につくっています。形は真似できても味がちがう、もう1回食べたくなるものを目指しているそう。

「あの場所が気に入ったことからスタートしましたが、いろんな人に恵まれてここまで来たと感謝しています。ドリンクスタンド時代からのパティシエや、プロデュースに協力してくれた方々との共同作業で、イメージしていた「和かろん。」を具体的に商品化できました。その後も形、味、包材など、常に改良を加えて進化させています。その一端として、解凍してもオリジナルの味をそのまま味わえる冷凍製品を完成させ、通販や催事を通して多くのお客様に味わっていただいています。これからもいい関係を続けていきたいと思います」(岡村さん)。

レモンケーキ専門店「raison d’etre(レゾンデートル)」四ツ橋店

2022年7月、レモンケーキの専門店が大阪・四ツ橋に初出店。兵庫・姫路のカフェ&バー「ブエナビスタ」で人気だったレモンケーキが買えるお店は、パリの街角にあるような可愛くてどこか懐かしい雰囲気です。

レモンケーキ専門店「raison d’etre(レゾンデートル)」四ツ橋店

住所
大阪府大阪市西区新町1-25-8
電話
非公開
営業時間
11:00~ ※売り切れ次第終了
定休日
不定休(Instagramでお知らせ)
Instagram:@raison_2022_yotsubashi
大阪メトロ四ツ橋線「四ツ橋駅」から徒歩3分

レモンにこだわったケーキづくり

さわやかな香りが際立つ、レモン型とカヌレ型のレモンケーキ
姫路店の看板猫だったひじきちゃんのイラストが出迎える店先

レモンケーキ専門店「raison d’etre(レゾン デートル)」四ツ橋店は、兵庫県・姫路市にある姫路本店の姉妹店。2020年コロナ禍の影響で閉店したカフェ&バー「ブエナビスタ」のオーナーの阪口仁美さんは、店舗プロデュースやメニュー開発も行う飲食のプロ。このレモンケーキのレシピも、すべてブランドオーナーの阪口さんの手によるものです。
「ブエナビスタでスイーツバーをやってたんです。そこで出していたレモンケーキを、いつかこれだけを販売する店をつくりたいと思ってました。すぐ近くに3坪ほどの店舗が見つかり、テイクアウトのみの「レゾンデートル」を始めたんです」(阪口さん)。

阪口さんは雑貨のバイヤーをしていたこともあり、ヨーロッパにはよく行っていたそう。「パリの街角にはピカピカの店は馴染まないんです。だからアンティークの扉を飾ったり、通りに馴染むような店をつくっています。ケーキが美味しいのは当たり前、何か付加価値をつけることがこれからは必要だと思います」(阪口さん)。

さわやかな黄色と愛らしいカタチのレモンケーキは、レモン型とカヌレ型の2種類。どちらもしっとりとした口あたりの生地に、シャリっとした砂糖衣がアクセントです。
ワックスも防カビ剤も使わず、大切に育てられた国産レモンを丸ごとしぼり、北海道産の小麦粉とバター、兵庫県産の卵など厳選した安心安全な材料を、空気を入れないようやさしく混ぜて低温でゆっくり焼き上げています。焼き立てや常温ではフワフワですが、冷やすとモチモチ食感に変化するので、冷やして食べるのがおすすめです。
「レゾンデートル」では、瀬戸内産のレモンを旬の時期にまとめて絞って、コンフィチュールにして大量に確保しています。レモンは皮も種もヘタも丸ごと絞っているので、黒い粒も入っていますが、それらが入ることで大人の苦みも生まれます。
阪口さんによると「レモンケーキは羊羹」なのだそう。焼き上がりはフワフワしているけどレモンの風味は出ていない。これを冷やすとレモンがクリーンに感じられ、リッチな味わいになり、コーヒーやワインによくあうのです。
看板商品の「レモンケーキ」は、口に入れると広がるレモンのさわやかな風味と、しっとりもっちりとした食感がおいしさの決め手。よく冷やして薄くカットすれば、ワインなどと一緒に楽しめます。砂糖衣のシャリッとした食感と、レモンの長い余韻が後を引く逸品です。
grande(大)はお茶菓子にちょうど良いサイズ、petit (小)は一口で食べられ、やめられなくなるおいしさです。

「レモンケーキgrande(大)」420円(税込)
「レモンケーキpetit(小)」200円(税込) 
「四ツ橋 レモンチーズタルト」 420円(税込)

冷やしてもレモンの風味が際立つ「レモンチーズタルト」は四ツ橋店のみの限定商品。通常の倍のレモンが入っていて、さっぱりした爽やかな味わいと濃厚なコクを楽しめます。

「姫路本店のレモンパイのクリームにフレッシュチーズを追加しているので、夏にピッタリなさわやかさと濃厚な味わいの両方を楽しめます。長く愛されるには酸味が必要なんだと思うんです。私はずっと料理を専門にしてきたので、お菓子の味づくりについては素人。でも素人ならではの発想が役立つこともあると思います」(阪口さん)。

レモンにあわせるフレーバーは無限大

レモンケーキ(カヌレ型)は、petit(小)200円(税込)、grande(大)420円(税込)。レモンケーキと同じ生地を使用し、カヌレ型でしっかりと焼きあげ、香ばしさを引きたてました。味のバリエーションも多彩です。
grande(大)は、レモン・ココア・ストロベリー・アールグレイの4種類。petit(小)は、grande(大)の4種類に加えて、パッションフルーツ・ピーチの6種類が楽しめます。どのフレーバーもレモンとのかけ算が絶妙です。
カヌレ型の「レモン」はレモンバターのシンプルな生地とさわやかな酸味が特徴。同じレモンケーキの生地でも、カヌレ型にすることでしっかり焼き上がり、香ばしさと食感がプラスされています。
ブラックカカオのほろ苦さの後に、しっかり追いかけてくるレモンの酸味がいきた「カカオレモン」。真っ黒い色に驚くかもしれませんが、柑橘とチョコは本来あうもの。優しい甘みとコクで仕上げた生地に、レモンのアイシングが相性抜群です。
「ストロベリーレモン」はベリージュレの甘味と華やかな酸味のベースにレモンの風味が感じられ、生地に紅茶の茶葉を練り込んだ「アールグレイレモン」は豊かなアールグレイの風味にドライベリーをのせて、レモンティーのような味わいが楽しめます。
「パッションフルーツレモン」(小のみ)は、ハッとするような南国の甘味と若い層の認知度の高いパッションフルーツの強い酸味が広がる味わいで人気です。
「ピーチレモン」(小のみ)は、桃の豊かな香りとレモンのさわやかな酸味。春の時期にあうフレーバーとして、春をイメージしてつくられました。

カヌレ型(小)6種類とレモンケーキ(小)のセット「プチ丸ボックス」1,650円(税込)
自分へのご褒美にも気軽な手土産にもぴったり
外国にいるような気分にさせてくれる店内

「定番はあえてつくらなくてよいのではと考えています。何年後かにはまったく違う味ばかりになっていてもよいので、どんどん進化していきたいですね。特にカヌレのフレーバーは無限大、九州のお芋とかいろいろ挑戦したいと思っています。長く愛される唯一無二の存在を目指しています」(阪口さん)。
すでに苦楽園、たつの市、北野ホテルなどにフランチャイズ展開し、大阪では四ツ橋で初出店となりました。
四ツ橋店オーナーの香川さんは「焼き立てでなく冷やしたほうが美味しい焼き菓子なんて、お菓子の概念を変えたところがすごいと思います。阪口さんのレモンケーキを食べて感動し、大阪でもぜひ出店したいとお願いしました。

他にはないおいしさで、ずっと愛されるこだわりのレモンケーキをお届けします」と話してくれました。昭和の人には馴染みがあるけど、どちらかというと脇役的存在だったレモンケーキを主役級のものにしたいと考えているそうです。

北野ラボ

全国の農家を訪ね歩き、唯一無二の素材を持ち帰って丁寧に仕上げたコンフィチュールの数々。それらをタルトや焼き菓子にふんだんに使い、酸味や渋みも持つ、日本古来のフルーツの味をお届けしています。

北野ラボ

住所
京都市上京区御前通一条上る馬喰町914番地
電話
075-496-8777
営業時間
12:00~18:00(カフェのラストオーダーは17:30)
定休日
月・火曜日(25日・祝日の場合は営業)
京福電鉄(嵐電)「北野白梅町駅」から徒歩5分、または市バス50番系統「北野天満宮前」から徒歩1分

昔ながらのフルーツの魅力を再発見

花のカタチの彩り豊かな Fondan Tart(フォンダンタルト)
北野ラボ・オーナーパティシエ 吉水直樹さん

20年以上のお菓子づくりの経験から、昔ながらの素材がいかに大切かと思い知らされることが多かったというオーナーパティシエの吉水直樹さん。
「今のフルーツは甘くて大きくてきれいだけど、コンフィチュールにすると甘いだけでぼやけた味になるんです。品種改良されていないものは、いわゆるアクと呼ばれるフルーツ本来の風味を持っています。その中には多くのミネラルや有用成分も含まれていて、きちんと加工すれば美味しく食べられると考えています」
ケーキに飾るのは難しくても、コンフィチュールにすれば美味しいフルーツが廃棄されていることを知り、フルーツをメインにした洋菓子をつくること、「日本古来のフルーツの復活」が北野ラボの目標になりました。

北野ラボで販売されているコンフィチュールは、種類によって35g380円~、100g970円。ひとつずつ手づくりで丁寧に仕上げているので、単体ではどうしても価格帯が上がってしまい、40~50代のリピーターのお客さまが中心。若い人にも買って貰いたいとコンフィチュールをお菓子に使うことを考えたそうです。
北海道から奄美大島まで全国の農家を実際に訪れ、原種に近くビタミン豊富で抗酸化作用の強いものや、農薬をあまり使わなくても病害虫に強いフルーツを厳選しています。これまでに北海道のハスカップ、青森のジェネバりんご、沖縄のパイナップル、宮古島の島バナナやパッション、京都・城陽のいちじくなどに出会いました。

「Fondan Tart(フォンダンタルト)」は、すぐ近くの北野天満宮にちなんで梅の花をイメージしたタルト生地に、こだわり農家さん直送の素材を使ったコンフィチュールを贅沢に詰めています。まるで本物の果実を食べているような味わいが口の中に広がります。

「タルトの中は当初アーモンドの生地だけでしたが、アーモンドとコンフィチュールが互いに主張しすぎてしまったので、ご近所の有名豆腐店「とようけ茶屋」さんのおからを加えることであっさりと軽い味わいに仕上げています」(吉水さん)。

フォンダンタルト「Geneva Apple(ジェネバりんご)」620円(税込)
フォンダンタルト「Matcha(抹茶)」580円(税込)

フォンダンタルトの「Geneva Apple(ジェネバりんご)」は、青森の風丸農園さんの甘酸っぱいりんごのコンフィチュールがたっぷり。上に飾られたジェネバりんごのコンポートは、力強いリンゴの香りと酸味、シャッキとした食感が魅力。今までのリンゴのイメージを超える衝撃と美味しさです。
「Matcha(抹茶)」は宇治茶の産地・京都府和束産の高級抹茶を100%使用した抹茶ミルクコンフィチュール入り。その濃厚な香りとミルクのコク、シュトロイゼルのサクサク感が広がり、最後には大人なほろ苦さがやってきます。

フォンダンタルト「Clementine(クレモンティーヌ)」620円(税込)

「Clementine(クレモンティーヌ)」は瀬戸内の小粒みかんを皮まで丸ごと使い、濃厚でありながら爽やかな香りのコンフィチュールとベトナム産のチョコレート入り。小粒みかんは20年以上前から無農薬で育てられているものや、原種を守り続けている岡山の農家さんから届いた希少なものです。

レシピのないコンフィチュールづくり

Confittaoise(コンフィッタワーズ)は、新食感・新感覚のタルト×ダックワーズ×コンフィチュールのお菓子。サクッとしたタルト生地に、とようけ茶屋さんのおからを加えたアーモンド生地を詰め、北野ラボのコンフィチュールをたっぷりと入れ、さらにダックワーズ生地を絞ってふんわりと焼き上げています。
アーモンドとバターのコクが広がる香り高いフィナンシェを、北野ラボ自慢のコンフィチュールでコーティングしたのが「ドレスフィナンシェ」。完全無着色の素材の色が織りなすコンフィチュールのドレスをまとった今までにない味わいです。
「同じフルーツでも天候や土壌の環境、農家さんのこだわりなどによって、味や香りは全く違うので、いつも同じレシピではつくれません。1回に3~10kgつくりますが、毎回味が違います。たとえば柑橘系のものでは皮・薄皮・果肉とそれぞれに下処理をして、なるべくフレッシュな果肉を残すため短時間で加熱し、添加物は使わず米粉でとろみをつけています」(吉水さん)。
砂糖は主にグラニュー糖を使い、そのフルーツに最適な糖度を設定。濃い味のものは単独で、薄い味のものは数種類組み合わせるなど、家庭ではできないものをつくりたいと考えているそう。
「新しい出会いがあるとメニュー開発を始めます。完成までの試作は5~6回。いつも何かしらの試作をしている感じですね。自分の舌で美味しいかどうかを確かめながらつくっています。季節のフルーツとの新しい出会いや、新しい掛け合わせなど、コンフィチュールづくりはいつもわくわくする仕事です。コンフィチュールを主役にしたケーキをつくっているところは少ないですしね」(吉水さん)。

「Confittaoise(コンフィッタワーズ)」1カット 400円(税込)
「Dress Financier(ドレスフィナンシェ)」1個 300円(税込)
季節の彩り豊かなコンフィチュールが並ぶ店内

フルーツ本来の魅力が詰まったコンフィチュールの美味しさを、新しいカタチで伝えたいと何度も試作を重ねた末に、生まれたタルトや焼き菓子たち。今までに体験したことのない香りや風味が広がります。

※農家から直接仕入れたフルーツを使用しているため、天候不順などで別の産地のものになる場合や、商品そのものが一時なくなる場合がありますが、その時々の出会いが楽しめます。
※姉妹店の「コンフィチュールを楽しむ」タルトと焼き菓子専門店Confitta colorer(コンフィッタ・クロレ)は、北野ラボ本店に一時移転中です。

洋菓子とあんこ、可愛らしく進化したどら焼き、カフェ&バーで人気だったレモンケーキ、日本古来の素材でつくったコンフィチュール入りの焼き菓子。素材の魅力に惚れ込んだつくり手の熱意が、思いがけない発見をもたらしてくれるはずです。ぜひ訪れてみてはいかがでしょうか。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2022年12月)のものです

パンのテーブルTOPへ戻る