パンのテーブル パンのテーブル

メインテーマは「チョコレート」「バター」「トリュフ」 こだわりの素材が魅力のベーカリー

こだわりの素材を使ったパンやお菓子には、ぜひ食べてみたくなる魅力があります。今回は、 「チョコレート」「バター」「トリュフ」という1つの素材を軸として、お店づくり、商品づくりをしている3つのベーカリーを取材しました。これらの素材のおいしさを再発見できる、各店自慢のパンやお菓子をご紹介します。

GODIVA Bakery ゴディパン 本店

2023年8月、有楽町駅前にオープンした、チョコレートのゴディバが世界で初めて手掛けるベーカリー。菓子パンや惣菜パンを育んできた日本独自のパンづくりに、ゴディバならではのショコラティエのエッセンスを加えて、懐かしさと新しい驚きのある新感覚のパンを約20種類揃えています。

GODIVA Bakery ゴディパン 本店

住所
東京都千代田区有楽町2-10-1 東京交通会館ビル1階
電話
03-6665-7916
営業時間
11:00~20:00
定休日
東京交通会館に準ずる
有楽町駅から徒歩1分

ゴディバがつくる、チョコレート、カカオを主役にしたパン

昔懐かしい形のチョココロネやクリームパンも、一口食べると新しい驚きがあります
店長の龍石ちひろさん

コンセプトは「町のパン屋さん meets ゴディバ」。エントランスからチョコレートの甘い香りに迎えられ、店内に並んでいるパンは、コロネ、カレーパン、クリームパンをはじめとした街のパン屋さんでおなじみの定番アイテムです。店長の龍石ちひろさんに、お話を伺いました。

「当店のパンは、ビジュアルこそ昔ながらのオーソドックスな印象がありますが、チョコレート、カカオを主役にして、その素材の幅広さを生かすパン、というのがいちばんの特長です」(龍石さん)。

お店の一番人気は「コロネ(チョコレート)」。見た目こそ、おなじみのコロネですが、つやっと色よく焼き上げたられたブリオッシュ生地の中に詰められているのは、カスタードクリームにゴディバのチョコレートと生クリームを合わせた、チョコレートが香る滑らかなクリーム。クリーム表面にはほろ苦いカカオニブがたっぷりまぶされています。そして、一口かじれば中にはパキッとした食感のチョコレートバーが忍ばせてあり、まさにチョコレート尽くしの王道的なアイテムです。

「ゴディパンでは、パン生地も主役のチョコレートを生かすレシピを開発しています。たとえばコロネに使うブリオッシュ生地なら、バターの豊かな香りがチョコレートの香りや味わいをより引き立てます。同じコロネでも『ストロベリー』は、いちごテイストのホワイトチョコレートカスタードと相性がよい、ダークチョコレート入りのブリオッシュ生地。『抹茶コロネ』の生地には豆乳を使って、よりやさしい味わいにするなど、チョコレートに合わせて生地の味わい、食感をつくり上げています」(龍石さん)。

コロネ(ショコラ)453円(税込) 
「コロネ(ストロベリー)」453 円(税込)

約20種類あるパンのどの商品にもチョコレートやカカオ由来の素材が使われています。チョコレートの香りや味わい、舌触りを最大限生かせるように、アイテムごとにカカオ配合割合の異なるチョコレートを使い、カカオパウダーやカカオニブ、ココア、カカオの果肉を絞ったジュースなど、さまざまな素材を生かしているのもゴディバならではです。

「カカオフルーツのクリームパン」378円(税込)

「カカオフルーツのクリームパン」は、カカオフルーツのジュースを練り込んだカスタードクリームで、普段私たちが口にする機会の少ないカカオフルーツのテイストを楽しめます。

「カカオのジュースは、ゴディバで力を入れている素材の1つです。カカオの実はトロピカルフルーツで、チョコレートの原料となるカカオ豆(カカオの実の種子)は白い果肉に包まれています。通常は、果肉はカカオ豆と一緒に発酵させるのですが、フレッシュな果肉はカカオパルプと呼ばれ、みずみずしくてトロピカルフルーツらしい芳香があります。このカカオパルプを絞ったものが、カカオフルーツのジュースです。チョコレートとは全く別のテイストをぜひ皆さんに楽しんでいただきたいです」(龍石さん)。

惣菜パンもあんパンもチョコレートでよりおいしく

豆乳入りの専用生地にココアを振りかけて焼き上げた、カレーパンらしからぬビジュアルの「ショコラティエのカレーパン」にも驚きがあります。
フィリングのカレーには、50%のチョコレートを加えてコクを深めています。このカレーフィリングをあと詰めする際に、70%チョコレートチップも一緒にパンの中に。スパイシーなカレーにゴロっとしたビターチョコレートが口の中でゆっくりと溶け、香りと食感がアクセントを添えます。

ショコラティエのカレーパン 453円(税込)
「タルティーヌ(サーモンサラダ)」702円(税込)

ベルギーのオープンサンドをアレンジした「タルティーヌ」は、薄く焼いたチョコレートパイをベースにして、ナッツが香るプレートにチョコレートカスタードクリームを絞ったスイーツ系のほか、惣菜系も「サーモン」と「チキン」の2種類をラインアップ。ダークチョコレートを練り込んだパイ生地は、チョコレートの主張は控えめにして、スイーツ系・惣菜系どちらの具材にも合います。
「あん・ドゥ・ショコラ」は、カカオ分55%のダークチョコレートと滑らかなこしあんのマリアージュを楽しめるあんパンです。

チョコレートはとても繊細で、たとえばテンパリングする際の温度管理が、香りや質感、舌触りのよさに大きく影響してきます。 すべての商品にいろいろな形でチョコレートやカカオを取り入れ、チョコレートの魅力を最大限に引き出していくことは、パン職人にとっても初めての体験で、驚きや学びがあるそう。

「当店のすべての商品は、ゴディバのチョコレートやスイーツを統括しているエグゼクティブシェフ・ショコラティエ / パティシエのヤニック氏が監修して、新しさとおいしさ、クオリティをつくり上げています。とても身近なパンで、今までにない新しいチョコレート体験を楽しんでいただき、"チョコレートブランドのゴディバが日本のパンをつくるとこうなるのか!"と皆様に驚いていただける商品を提案していきたいです」(龍石さん)。

コロネ、タルティーヌやケーキ類は、冷蔵ケースで販売
「あん・ドゥ・ショコラ」378円(税込)

ÉCHIRÉ L’ Atelier du Beurre(エシレ・ラトリエ デュ ブール)

フランス産A.O.P.認定発酵バター「エシレ」のおいしさを極限まで引きだし、オリジナルの味わいを創り上げる新しいコンセプトのお店。“ラトリエ デュ ブール”とは“バターのアトリエ”という意味。バターやパンの焼き上がる香りに包まれながら、ここにしかないオリジナル商品に出会うことができるお店です。

ÉCHIRÉ L’ Atelier du Beurre(エシレ・ラトリエ デュ ブール)

住所
東京都港区虎ノ門5-9-1 麻布台ヒルズ ガーデンプラザB 1F
電話
非公開
営業時間
11:00~19:00
定休日
麻布台ヒルズに準ずる
神谷町駅に直結

フランス産 発酵バター“エシレ”を主役にしたパンやお菓子

ブリオッシュ生地をクロワッサンで包んだ「ブリクロ・エシレ」などオリジナリティにあふれたヴィエノワズリが揃う
バターの香りに包まれて、ゆったりとお買い物を楽しめる空間

2023年12月、麻布台ヒルズにオープンした同店は、“エシレ バター”を使ったヴィエノワズリ10種類、焼菓子5種類、アントルメ(生菓子)2種類をラインアップしています。お店のコンセプトや商品の魅力について、担当者にお話を伺いました。

「エシレ バターの専門店を8店舗展開していますが、ヴィエノワズリをメインとしているのが当店の特長です。すべてのアイテムにフランス中西部・エシレ村で生産されるA.O.P.※認定の発酵バター“エシレ”を使い、ヴィエノワズリは生地づくりから焼成、仕上げまでの全工程を店内の工房で行なって、焼きたてを提供しています」

※A.O.P.は、ヨーロッパの原産地保護呼称。産品が該当する地域で正当に生産されたものであることを証明する。

発酵バターとはクリームを乳酸発酵させてからつくるバターで、ヨーグルトのような軽い酸味があり香り高いのが特長です。お店に入ると、バターの香りが広がり、目の前のオーブンでヴィエノワズリが焼き上がっていく様子、繊細な仕上げの様子なども間近に眺めることができます。こうした“ライブ感”と発酵バターの芳醇な香りに包まれながら商品を選ぶ、“最高のエシレ体験”ができる空間づくりを大切にされています。

どのアイテムも “バターが主役のパンやお菓子”という発想の商品づくりがポリシー。バターをはじめ、素材の味が生きるよう、しっかり焼き込むことがエシレのヴィエノワズリやお菓子のこだわりです。店舗ごとにオリジナルの商品があることもエシレの魅力ですが、特にこちらの店舗では、ほとんどがここでしか手に入らない限定アイテムとなっています。

なかでも、「ブリクロ・エシレ」は同店の代名詞ともいえるアイテムです。バターたっぷりのブリオッシュをクロワッサン生地で包んで焼き上げています。ブリオッシュ生地には焦がしバターを加えることで、卵に負けないしっかりしたバターの香りを表現。クロワッサンのサクッとした食感とブリオッシュのシュワっと溶ける口溶けを楽しめます。

「ブリクロ・エシレ」2,160円(税込)※おひとり様1点まで
焦がしバターが香るブリオッシュ生地
手前は「グラン クグロフ」3,240円、小サイズの「クグロフ」864円(各税込)※おひとり様各1点まで

「クロックムッシュ」にも贅沢に「ブリクロ・エシレ」を使用。ブリオッシュ生地の甘みと、バターをふんだんに使ったベシャメルソース、ハム、グリュイエールチーズの塩味とのバランス、バターとチーズのコラボが濃厚なおいしさを醸し出します。

ブリオッシュ生地にレーズンを入れたシンプルなレシピでバターのおいしさが際立つ「クグロフ」。陶器のクグロフ型で焼き上げたあとバターをたっぷり染み込ませ、粉糖をかけて仕上げています。

バリエーション多彩なヴィエノワズリ、焼菓子やアントルメも魅力

左から「クロワッサン ドゥーブル」648円 「クロワッサン」540円 ※おひとり様合わせて3点まで「グラン クロワッサン」2,160円(各税込)※おひとり様1点まで

クロワッサンの展開にも驚きがあります。
「クロワッサン」は、素材そのものの味わいをしっかりと感じられるように、小麦粉とバターのバランスを追求したシンプルなレシピです。
「クロワッサン ドゥーブル」は、折り込むバターの量を「クロワッサン」の倍量にし、一度バターを折り込んだ生地にもう一度バターを折り込むため、ドゥーブル(=ダブル)というネーミングに。単にバターの量を増やすのではなく、ダブルで折り込むという手間をかけることで食べたときのジュワッとしたバター感をより強く感じることができます。

約30cmサイズの大きなクロワッサン「グラン クロワッサン」は、売り場でのインパクトも大。大きく焼くことで、端と真ん中で食感の違いがより感じられ、バターの感じ方や味わいの変化も楽しむことができます。大きなサイズを美しく焼き上げるために、成形する際のより繊細で丁寧な手作業が求められるのだそう。

「クロワッサン エピ」864円(税込)※おひとり様1点まで

クロワッサン生地を使ったエピも同店ならではのアレンジです。クロワッサン生地のサクサクっとした食感に、じゅわっと染み出すバター感、ベーコン、コンテチーズが加わった濃厚な味わいを楽しめます。

ヴィエノワズリの焼き立てのサクサク食感とバターの香りをご自宅でも再現できるよう、お客様にはリベイクの説明書きをお渡ししています。トースターで温めた後、さらに1分ほどそのまま余熱で温めるのが、同店おすすめのリベイク方法です。

バターが香る焼菓子やアントルメはクラシックな佇まい。「サントノレ」は、伝統的なレシピではパイ生地とシューにシブーストクリームを合わせますが、バタークリームでアレンジ。バタークリームは3種類使用しており、それぞれの味わい、口あたりの違いを楽しめます。焼菓子詰合せは3種類をラインアップ。エシレのブルーのロゴをあしらったおしゃれな缶入りで、ギフトとしても人気です。
「ここにしかない商品ばかりですので、ワクワクするようなパンやお菓子の買い物を楽しんで、“エシレ”の新しい魅力を発見していただけたらと思います。もともとのエシレファンの方にもこのお店だけの味わいをぜひお試しいただきたいです」。

「サントノレ」6,480 円(税込)※おひとり様1点まで
「サブレ キャトル」10,800 円(税込)※おひとり様1点まで

TruffleBAKERY 本店(トリュフベーカリー)

ヨーロッパ専門食材のWEB通販を運営する『DRESSTABLE』が手がけたベーカリーです。看板商品の「白トリュフの塩パン」をはじめ、30~40種類のパンが揃います。トリュフのほかにもこだわりの専門食材を取り入れたメニュー開発に力を入れています。

TruffleBAKERY 本店(トリュフベーカリー)

住所
東京都江東区門前仲町1-15-2
電話
03-5875-8435
営業時間
火曜~金曜9:00~19:00、土曜、日曜、祝日8:00~18:00
定休日
月曜
門前仲町駅から徒歩3分

毎日食べるパンだから美味しい素材と少しの豊かさを

「白トリュフの塩パン」248円(税込)
食事パン、惣菜パン、菓子パンなど30~40種類以上が揃う

日常の食であるパンに、トリュフなど専門食材を取り入れている同店のコンセプトについて、株式会社DRESSTABLE広報の茂木玖美さんにお話を伺いました。

「ヨーロッパで伝統的につくられ、日本では主にレストランなどで使われている食材をパンに取り入れることで、多くの方々に『ほんの少しの贅沢をもっと気軽に』楽しんでいただきたい。そんな想いから、専門食材を扱う私たちがパン職人と手を組んで、今までになかったベーカリーを立ち上げました。
トリュフだけにこだわっているわけではないですが、私たちのコンセプトを伝えるのに、世界三大珍味であるトリュフは、とても分かりやすい素材です。パンに合わせやすいという特長もあります」(茂木さん)。

「白トリュフの塩パン」は、イタリアから取り寄せる香り高いトリュフを使ってつくる自家製のトリュフバターを使用しています。パン生地にはカナダ産の一等粉、油脂は100%フレッシュバターを使用し、焼成後の仕上げにトリュフオイル、アルバ産フリーズドライの白トリュフとフランス産のエキストラファインソルトをトッピング。パリッと焼き上げたパン表面の白トリュフと、中に包み込んだトリュフバターが香る、引きと弾力のあるパンです。

イタリアのサヴィーニョには卵を練り込んだ手打ちパスタに、オイル・胡椒・塩・チーズでシンプルに味付けしトリュフをたっぷり削って食べる料理もあり、卵は、ヨーロッパでトリュフと最も相性のよい食材とされています。「黒トリュフのエッグサンド」は、日本人にはおなじみの「たまごサンド」にトリュフをプラス。フィリングの卵サラダに黒トリュフを混ぜています。パンは角食パンをベースにした、このサンドイッチ専用のものを使っています。

「白トリュフの塩パン」などが並ぶショーケース
「黒トリュフのエッグサンド」697 円(税込)
「海藻バターの塩パン」298円(税込)

専門食材を生かした塩パンもあります。
「発酵バターに海藻を練り込んだ海藻バターはパンとの相性抜群で、海藻バターといえばフランス・ブルターニュが有名です。ブルターニュ産の海藻のすばらしさをぜひ日本の皆様にもパンという形でお伝えしたい!と考えました」(茂木さん)。

ヨーロッパの専門食材を扱う強みを生かし、香りや旨味がバターとよく合うブルターニュ産の海藻『ダルス』を直輸入。ダルスを使った自家製バターをつくり、「海藻バターの塩パン」をつくり上げました。
「水で戻したブルターニュ産の海藻(ダルス)に少しだけ昆布を加え、口溶けのよいバターに練り込み、さらにブルターニュ産天然塩「フルールドセル」をブレンド。パン生地は、ライ麦粉を配合して口溶けの良い、海藻の風味を閉じ込めてより香りを楽しんでいただけるものにしています」(茂木さん)。

老舗和菓子店などとのコラボから新しく生まれたアイテムも

「ぎんざ空也「空いろ」監修version2.0 餡バターサンド」626円(税込)

「トリュフのような高級食材だけに限らず、ごく身近な食材でも、本物のおいしさをパンという形で楽しめる商品を積極的に提案していきたいです。その一例として、シチリア島ブロンテ産のピスタチオを使った『ピスタチオフランス』を販売しました」(茂木さん)。

また、パンに合わせる素材の探求から、スイーツの名店とのコラボも手掛けています。あんバターサンドもその1つ。ぎんざ空也「空いろ」のあんこを使用して、期間限定で販売された「麦こがしのあんバターサンド」が好評だったことを受け、「ぎんざ空也「空いろ」監修version2.0 餡バターサンド」として定番化しました。
「あんこは、ぎんざ空也の山口代表に監修いただき、TruffleBAKERY専用のものをつくりました。大粒のあずきを使い、粒あんでもなくこしあんでもない絶妙な餡の固さと甘さが特長です。これに合わせてパンはソフト系からハード系に変更しています」(茂木さん)。

トリュフバターとの相性も抜群な角食パンやバゲットなど食事パンも揃う

バレンタインシーズンには、「Made in ピエール・エルメ」とのコラボ商品が登場。2024年は、「フランボワーズとライチとバラ」を合わせた「ローズの塩パン」です。定番の「白トリュフの塩パン」とセットで、バレンタインに加え、ホワイトデーのシーズンにもチョコレートの塩パンセットが販売されました。

「当店は、都内のほか大阪、軽井沢、北海道にも店舗があり、トリュフバターによく合うバゲットや角食パンをはじめ、菓子パン、惣菜パンなども幅広く揃えています。また、首都圏のターミナル駅構内では小型店舗miniを展開しています。日常の一コマでTruffleBAKERYに立ち寄って、パン&食材でちょっとした幸せを感じていただけたら幸いです」(茂木さん)。

誰もが知っている高級ブランドのチョコレート、昔ながらの製法でつくられているA.O.P認定バターに、レストラン仕様のトリュフなどの専門食材。これらの素材が香り、おいしさを最大限に生かしたパンやお菓子は、日常がパッと華やぐ特別感を楽しめます。ぜひ、お店を訪れてみてはいかがでしょうか。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2024年3月)のものです

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