パン屋さんで活躍する女性たち パンとお店と“私”のストーリー

VOL.41 いつ、誰が来ても、
絶対好きなパンに出合える!そんな温かなお店づくりを心がけています nanapain(ナナパン) 店主 江藤 ひとみさん

nanapain(ナナパン) 店主 江藤 ひとみさん

西鉄天神大牟田線「筑紫駅」から徒歩5分、分譲や道路整備が進む住宅地の中に、「nanapain(ナナパン)」はあります。夫と営むこのお店は、店舗併用住宅。今年(2018年)中学生になる娘の子育てをしながら、つくり守ってきたお店です。

子どもの頃から料理が好きで、短大の家政科に進学した私。本格的に料理の道に進もうと、調理師免許を取得するために福岡の大手ホテルへと就職しました。ここで、レストラン、パティスリー、そしてベーカリーと様々な経験を積んだことが、パンの道につながる最初のきっかけでした。パンへの興味が高まり、「家でパンを焼くときのレパートリーを増やそう」とパン教室にも通い始めることに。その後、地元・筑紫市のケーキ屋さんに転職した後は、同時にパン教室の講師も始め、少しずつパンの道へと近づいてきました。

ある日、福岡でパン店「ブーランジェリー セ・トレボン」が立ち上がるという話が。知り合いからスタッフを探していると聞き、私は二つ返事で「行きます!」と回答。ついに、本格的なパン職人としてスタートします。28歳の時でした。始発で出勤し最終で帰る、そんな大変な日々でしたが、毎日が学びの連続。家庭用に教えていた教室とプロの現場は全く違って、本当に鍛えられましたね。

以前勤めていたホテルの同僚だった夫と再会したのはそんなとき。夫は当時からベーカリーの職人として働いており、調理師を目指していた私がいつの間にかパン職人になっているのを見て、きっと驚いたと思います(笑)。結婚すると同時に、大手パンチェーン店に勤めていた夫は熊本へと転勤になり、私も退職してついていきました。

その後、2人のパン職人としてのノウハウを生かして、2008年に地元の筑紫野市で、夫婦で小さなパン屋さんをはじめました。当時は賃貸テナントで、2015年から今の店舗併用住宅に移転。小さくて温かい、誰が来ても楽しめるお店を目指しました。店名は娘の名前が由来。夫は仕込み・生地・朝の成形を、私は仕上げとサンドイッチ・焼き菓子を担当しています。

パンへのこだわり

やはり、子育て中のパパママなので、「安心して食べられるもの」が一番のこだわりです。なるべくシンプルな素材で、その分手間暇をかけて、楽をせずに一つ一つ焼き上げています。当店は住宅街にあるのでファミリー層のお客様が多く、赤ちゃんの離乳食用のパンを求めてくる方もいらっしゃるからです。ほかにも生地はもちろん具材やスイーツまで、できる限り手づくりにこだわっています。また、なるべく近くの土地で取れた安心できる素材を使っているのも、こだわりの一つですね。

パンの品ぞろえは常時50種類。土曜日はさらに種類を増やしています。お子様からお年寄りまで誰が来ても、何か好きなものが見つかるような品揃えを心がけています。大きな店舗と違って、つくり手がずっと私たち夫婦でかわらないので、ブレずに「安心」「美味しい」「楽しい」を提供できていると思います。

温かくて居心地のいい店内に。奥の厨房も広めに確保しています 気候がいいときは、テラス席でもイートインして頂けます 夫としっかり分業することで、互いに無理なく働けています 商品プレートも手描きで、手づくり感と温かみを込めて

女性ならではの苦労

パン職人としてのスタートだった「ブーランジェリー セ・トレボン」は、女性のパン職人が多く、上司が女性の場合もあったので、比較的働きやすい環境でした。それでもやはり、体力的な面では「女性は不利だな」と辛さを感じることは多かったですね。

女性として一番きつさを感じていたのは、お店をつくってからの数年間です。当時、娘は2歳で最も手がかかるとき。当時のテナントも自宅併設型ではあったのですが、保育園の送迎がありますし、朝や夜の仕込みは娘を見ながらしないといけない。もちろん、夫も家を支えるためにもっと忙しく働いていますから、夫婦で朝から夜まで子育てに仕事にと追われる日々でしたね。

それでも娘が小学生に上がると少し楽になり、中学生に上がる今ではお店の片付けなどを手伝ってくれるようにもなりました。その姿を見るのがとても嬉しいです。大変だったあの日々を乗り越えてこそ、この喜びがあるのだなあと実感しています。

また、パンづくりにおいても、女性が食べやすい形や味の提案を夫にしたり、接客の際にパンの保管方法や食べ方のアドバイスをしたりと、女性目線、主婦目線を生かせているのは大きな強みだと思います。

どんなお店にしていきたいですか?

このお店がある地域は今(2018年時点)まさに大規模分譲中で、住宅がどんどん増えていっています。しかも、お店の目の前に大きな道路が通り、幹線道路と通じる日も近いようです。そうなると、きっとお客様の流れが変わり、ふらっと立ち寄ってくださる方も増えるかもしれません。今はファミリー層のお客様が多いですが、さらにお客様の幅が広がる可能性もあります。

でも、どんなお客様が来られても、「絶対何か好きなパンが見つかるお店」であり続けたいというのが、今の目標です。お客様が求められるものをつくるのはもちろん、夫婦それぞれがこれまで培ってきた技術を生かせるような、いろんなパンに挑戦したいですね。今はまだ種類が少ないハード系だったり、飾り系のパンだったり。そうしてパンの世界を広げていくことで、お客様の幅もより一層広がっていくのではないかと思います。私はホテルのパティスリーや菓子店で働いた経験もあるので、スイーツ系や焼き菓子も様々な選択肢があると思います。

とはいえ、基本はブレずに、安心で美味しいものをつくる温かいお店であること、これだけはずっと心がけていきたいと思います。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!」

江藤 ひとみさん お気に入りのパン

ナナパン 300円(税抜) ナナパン 300円(税抜)
店名をつけた自慢のパン。食パン生地を直焼きで焼き上げたものです。当店の食パン生地は練乳と牛乳を入れていて、水分は少なめ。程よく甘い風味で、いつまでもしっとりパサつかない生地が魅力です。好きな厚さに切ってトーストするだけでもカリッとなって美味しいし、サンドイッチに使っても食べやすいです。キッチンでの使い勝手がよく、主婦目線でもお気に入りのパンです。

紅茶とリンゴ 大200円、小100円(税抜) 紅茶とリンゴ 大200円、小100円(税抜)
当店で一番人気のパンです。食パン生地に紅茶のフレーバーペーストと蜜リンゴを練り込んで直焼き。皮が薄くふんわり焼き上がるので、優しい食感が魅力です。そして、甘さ控えめの中にダージリンティーの風味が程よく香って、不思議とクセになる風味。つくり始めてすぐにファンが付いて、ずっと人気が続いている商品です。

シフォンケーキ プレーン 120円(税抜) シフォンケーキ プレーン 120円(税抜)
これまた定番人気の商品で、いつも多めに焼いています。筑紫野のブランド卵「原田の田舎卵」をたっぷり使っています。この卵がとても美味しく、さらに水不使用で牛乳のみで生地をつくっているので、濃厚でコク深い風味に仕上がっています。ちなみにこのシフォンケーキ、元々は卵白を消費するためにオマケでつくっていたのですが、人気が高まりレギュラーに定着した、出世パンです(笑)。ココア、カフェオレ、チョコ、バナナなど気まぐれでいろんな味もつくっています。

店舗情報

店名/nanapain(ナナパン)
郵便番号/〒818-0025
所在地/福岡県筑紫野市筑紫630-3
最寄駅/西鉄天神大牟田線「筑紫」駅
アクセス/西鉄天神大牟田線「筑紫」駅下車徒歩5分
電話番号/092-985-7126
営業時間/9:00〜18:00
定休日/日曜・月曜

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2018年4月)のものです

<オススメパン> フレンチトースト 130円(税抜) はりねずみ 150円(税抜) オレンジピール スコーン 130円(税抜)

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