竹谷さんだから聞けるパン職人の理想と挑戦-vol.2自分の味覚と嗅覚を信じ、理想の新天地へパンのおいしさをカフェで伝えていくラ・フーガス 仁礼正男さん

前編 後編

常に変わらないパン作りの考えとおいしさへのこだわり

 自分がおいしいと納得できる、食べ飽きないパンをつくりたいと思っています。ライ麦パンは年配の方には健康食にもなるし、日本人が好む食感だと思うのでぜひ知ってもらいたいです。シリアルを使ったアイテムも食べやすさにこだわりました。自分でブレンドして、黒ごま・白ごま・アマニ・オーツ麦・ひまわり・いちじくを入れています。多種類入っていますが違和感なく食べられるようにしています。ロッゲンベックは100%ライ麦で、触れないほどやわらかい生地を仕込んでいます。以前は種も自分でおこしていましたが、今はイセアンヘーガーの種を使っています。おすすめしたいのはバゲット・カンパーニュです。水曜・日曜に焼くアイテムでシンプルですが味や食感が気に入っています。内麦粉で焼いた山形食パンのパン・オ・ジャポネもおすすめです。
 生地の種類を絞りましたので、サンドイッチやカフェメニュー以外、仕込みから焼成までパンの製造はひとりで行っています。すべてに目が届き、自分のペースですすめられるのは快適です。朝起きたらまずカスターを炊いて、冷凍クロワッサンを並べて、それから仕込んで‥、生活のリズムの中にパン作りがある感じです。お店と自宅を行き来できるのもやはりとてもいいです。望んでいたスタイルです。
 ベーカリーをやっていく上で最も重要なものは何かを考えた場があり、答えはそれぞれ違っていましたが、自分ではおいしさを見極める舌と鼻だと思っています。それがきちんとなければ方向性も決まらないと考えています。いまもこれからも自分が感じるおいしさにこだわっていきたいです。

挑戦したいことは盛り沢山、急がず長いスパンで

 移転してからカフェをはじめましたので、注文を受けて提供するむずかしさを実感しています。スープは一人前ずつ小分で準備しておくなど工夫はしているのですが、忙しいときには大変お待たせしてしまいます。研究の日々ですが、いまはパンだけではなくスープのメニューを考えるのも楽しい時間です。ランチのバリエーションを増やしたいと思っています。また、いまは福生や青梅からのお客様が多いので、近所あきる野のお客様を増やしたいです。それから、地産池消というか共存共栄というか、せっかくの土地柄ですので、地元の野菜をもっと使っていきたいです。農園の人と縁をつくり、旬の果実をわけてもらってジャムもつくりたいです。やってみたいことは沢山あります。でも世田谷にいた若い頃とは違い、長いスパンで考えるようになりました。急ぎすぎずひとつずつ積み重ねて行けたらと思っています。
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仁礼正男氏プロフィール 【仁礼正男氏プロフィール】

1962年東京生まれ。大学卒業後ベーカリーチェーンに就職。麹町ハナコウジで6年勤めたのち、世田谷梅ヶ丘で「ラ・フーガス」開業。
2007年12月に東京都あきる野に移転オープン。

対談場所:ラ・フーガス 東京都あきる野市草花3492-183 tel&fax 042-569-6369

ラ・フーガス

定休日/火曜日  営業時間/8:30~18:00
圏央道日の出ICから車で3分
福生駅西口よりバスで西草花バス停下車 秋川駅より福生駅行バスで西草花バス停下車

 自然豊かな場所に佇むアルザス風の建物は入る前から期待がこみ上がる。店に入ると丁寧につくられたパンだとひと目でわかる。ライブレッド、バゲット、パンドミー、フォカッチャ、サンドイッチ、デニッシュ、クロワッサンなどセンスよく並ぶ。アイテムは多くはないが気になるものばかり。仁礼さんが感じる心地よさがお店全体の雰囲気となり、訪れた人を楽しくさせる。ゆっくりと何度も行きたいお店だ。

ラ・フーガス
前編 後編

対談を終えて

仁礼氏  竹谷さんとは10年以上前、ベーカリーフォーラムに入って以来、いろいろアドバイスをいただいたり相談にのっていただいてました。また、あきる野移転の時もいろいろお世話になりましたが、今回のこの対談で、じっくり2時間以上も差し向かいでお話しさせていただいたのは初めてでした。
 私にはベーカリーフォーラム主宰の竹谷さん、パンの事で悩んだ時いろいろ技術的・理論的な事を教えてくれる先生としての竹谷さんだったのですが、今回退職され、新たに「つむぎ」をオープンさせ、同じリテイルベーカリーとして同じ視線で話ができた事を、とても嬉しく感じました。
 リテイルベーカリーとしては私の方が先輩なので、いろいろ相談にのりますよ、竹谷さん!

竹谷さん  あきる野のラ・フーガスを久しぶりに訪ね、周りの環境の変化、開発の早さに驚きました。ステンドグラスのドアを開けるとユッタリした空間と親しみのあるパン棚、サンドイッチケース、そして何時間でも座っていたくなる喫茶スペースがあります。
 その雰囲気の中で、修業時代のこと、梅が丘で超繁盛店を立ち上げたこと、自分の作りたいパンを焼くために45歳で決断し、今のあきる野へ移転したこと。1つ1つの商品を丁寧に仕上げ、最終的には自分の味覚を大切にして、食事としてのパン作り、パンとあうスープの開発に励んでいる姿はパン職人と言うよりも美味しいパンも作れる料理人のようにも感じました。
 あきる野の人たちが朝食の為にパンを求め、自分の大切な時間の為にブランチに集まる。仁礼さんはパン屋の理想郷に一歩一歩近づいています。

※店舗情報及び商品価格は掲載時点(2011年3月)のものです

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