パンのテーブル パンのテーブル

何度も訪れたくなる「限定」「フェア」「コラボ」

季節や曜日、日替わりの限定パンや、コラボで生まれる商品やフェアなど、定番のラインアップと趣向を変えたお楽しみがあり、何度も訪れたくなるベーカリーをご紹介します。

ベーカリーハイジ

北海道産小麦粉を使ったパン60~70種類揃えた人気ベーカリー。毎週月曜日は「コッペパン専門DAY」として、約50種類のコッペパンを販売しています。お店に隣接する「ハイジカフェ」(現在はテイクアウトのみの営業)には「ピックアップロッカー」が設置され、予約サイトで予約·決済したハイジのパンを受け取ることができます。

ベーカリーハイジ

住所
千葉県白井市冨士137-88
電話
047-442-7702
営業時間
月曜 コッペパン専門DAY 9:30〜17:00(売り切れ次第終了)
火曜〜金曜 9:30〜19:00、土曜日曜祝日8:30〜19:00
定休日
なし
鎌ヶ谷大仏駅から徒歩15分

週1回、インパクト抜群のコッペパンが勢ぞろい

「コッペパン専門DAY」の店内
オーナーの宮下真彦さん

毎週月曜日に開催の「コッペパン専門DAY」は、7年間続いている好評の取り組みです。オーナーシェフの宮下真彦さんにお話を伺いました。

「コロナ禍以前には、店のスタッフを連れて全国のベーカリー巡りをしていました。あるとき訪れた横浜の『ル·ミトロン』さんでは週1回、コッペパン専門店のような品揃えをする『コッペパンの日』を開催していました。これはぜひうちでもやってみたい、と思いました。もともとコッペパンには思い入れがあり、おいしいコッペパンをつくることは、ハイジのパンづくりの原点ともいえます。コッペパンでいろいろなサンドをつくったら、具材のバリエーションを考えるのも楽しいし、お客様にも喜んでいただける。普段の営業日にこれだけの数を揃えるのは難しいですが、コッペパンだけの日にしてしまえばいいのだ、と」(宮下さん)。

サンドの具材などでバリエーションは多くても、仕込む生地はコッペパン生地1種類のみ。前日の夕方に仕込んでオーバーナイト発酵、当日の朝分割して焼き上げています。普段の日のコッペは北海道産小麦粉をメインに使っていますが、専門DAYのコッペには熊本産を使用。よりサクッと歯切れよく仕上がり、具材をたっぷりはさむサンドにはぴったりなのだそう。さらにスペルト小麦の全粒粉もブレンドして風味と香りを加えています。コッペパン生地にはアレルギーの原因になりやすい乳製品や卵は使わずに豆乳を使用。しっとりとやさしい味わいで誰にでも食べやすく、パンの老化を防ぐことにもつながっているといいます。

「エビマヨコッペ」500円(税込)などコッペパン専門DAYは、限定のコッペパンが約50種類そろいます
コッペパニーニはこまめに焼き上げて売り場に

当初は注文を受けてから具材をはさむオーダー制にしたのですが、売上がなかなか伸びず、また、クイックにつくれるものにメニューも限られてしまうので、具材をはさんでラッピングした状態で並べる今のスタイルに変えたとのこと。
「目指したのは『衝撃を与えるコッペパン』です。ボリューム感はもちろんのこと、本格的な料理を具材にすることにこだわりました。旬の食材は積極的に取り入れて、地元の農家さんから直接仕入れた季節の野菜はより豪快に使っています」(宮下さん)。

「アボカドチキンサンド」390円(左)、「BLTA」440円(各税込)
「まるでいちごショートケーキ」390円(税込)

開店時にはほぼ出そろい、店中に色とりどりなコッペパンのサンドが並ぶ光景は壮観です。惣菜系と甘い系が半々くらい。一皿の料理をはさんだようなボリューミーな惣菜コッペサンド、まるでケーキのようなフルーツ&クリームのコッペ、生地にレーズンやベリー類を練りこんだシンプルなコッペ、チョコチップ入りの生地にたっぷりの生チョコクリームをはさんだ、チョコ好きのための「チョコッペ」など、どれにしようか迷ってしまうバリエーションを展開しています。人気の「BLTA(ベーコン・レタス・トマト・アボカド)」は、トマト、アボカドとともにシャキシャキの新鮮レタスが何層にも重なって、野菜たっぷりのサンドです。
また、中国料理のプロでもあるスタッフがいるため、「青椒肉絲」や「エビマヨ」などの中国料理系の具材も充実。エビの殻をむくところから自店で調理、フリッターにしたエビは大きくてプリプリの食感で、ソースも本格的です。
「たくさんの種類から選べて、いつもと違う贅沢なコッペもあり、何よりお客様に喜んでいただいています。また、普段より客単価が上がり、昼時を中心にして営業時間は短縮できる、など店側にもメリットがあるのです」(宮下さん)

ハイジらしさに磨きをかけていきたい

ハイジの定番人気アイテムベーグル生地を使った「クレセント」240円(税込)

ここでしか出会えないもの、本格的なものをつくりたい、というのが宮下さんやスタッフたちの想いです。
「トレンドも大事なので、パン業界以外でも何が流行っているのかリサーチはしますが、いちばん大切にしたいのはハイジらしさ、ハイジならではのパンに磨きをかけること。ハイジらしさとは、なんといってもやさしい味、さらに口どけには特にこだわっています」(宮下さん)。

ボリューム満点の具材をしっかりと受け止めて、そのおいしさを引き立てつつ、パンそのものの味わいも楽しめるコッペパンには、まさにハイジらしさが存分に表現されています。

また、ベーグルやフランスパンなどかたいパンは、ゆっくりと粉の中まで浸水させて、仕込みから焼き上げるまでに3日間かけています。そうすることで、口どけのよさが生まれます。そして小麦の香り、甘さを存分に引き出し、しっかりとした重量感、もちっと弾力のあるパンであることがハイジの目指すパンです。

「例えば、今流行りのマリトッツォは、ハイジらしさとは少しベクトルが異なると思うので、ブリオッシュではなく、豆乳で仕込んだバンズにさっぱりとした豆乳クリームをはさんでやさしい味わいの『マメトッツォ』にしています」(宮下さん)。
また、自店の石臼で挽いたスペルト全粒粉でつくるクレセントや食パン、フォカッチャなどは毎週日曜限定で登場。通販でもセット販売しています。

「こうしたパンへのこだわりやお店の魅力を伝えるために、上手に発信していくことにも力を入れています」と宮下さん。
SNSを活用して、コッペパン専門DAYや季節のおすすめ商品についての情報はもちろん、ときには早朝の仕込み風景をライブ発信することもあります。
パンづくりのリアルな様子を視聴でき、パン職人を目指す人には現場の雰囲気を感じてもらえるので、リクルートにもつながります。

月曜の「コッペパン専門DAY」は、当初はコッペパンだけの販売でしたが、お客様の要望に応えて、食パンやバゲットなどの食事パン、「カレーパン」や「クレセント」など人気アイテムも揃えています。週1回だけの特別感と、ハイジらしさを堪能できる魅力的な月曜日を展開しています。

Boulangerie Shima (ブーランジュリ シマ)

2007年のオープン以来、「しまぱん」の愛称で親しまれているベーカリーです。オーナーシェフの島健太さんが1人で製造を担当。14種類ほどの生地を仕込み、食パンやハード系、菓子パン、惣菜パンのほか、クッキーなどの焼き菓子も充実。毎週土曜·日曜にはその週末だけの限定パンが登場します。

Boulangerie Shima (ブーランジュリ シマ)

住所
東京都世田谷区三軒茶屋2-45-7-103
電話
03-3422-4040
営業時間
9:00~19:00
定休日
月曜、火曜
西太子堂駅から徒歩5分

その週末(土·日)だけのパンが数量限定で登場

揚げピッツアのフィリングはまるでビストロ料理
オーナーシェフの島健太さん

同店では、毎週土曜日と日曜日に限定パンが登場します。毎月最初の土日はスペシャルなカレーパン、以降の週末には惣菜系、菓子パン、焼き菓子などの中から何が出るかは毎月のお楽しみです。1カ月分の限定パンの予定は、店頭にて配布のリーフレットでお知らせするほか、数日前からSNSでアナウンスします。

取材時の土日限定パンは「揚げピッツァ 牛肉の赤ワイン煮」熱々の揚げたてで提供されます。
ぷっくりと膨らんだ揚げピッツァ生地に包まれた具材は、今回初登場の「牛肉の赤ワイン煮」です。野菜やハーブと一緒に赤ワインで4~5時間煮込んだやわらかな牛肉がゴロゴロ、赤ワインに肉と野菜のうまみが溶け込んだスープもたっぷりと閉じ込められています。

「揚げピッツァは『中が熱々のトロトロ』がポイント。具材を生地できっちりと包み、中までしっかり熱を通し、破裂させずにからりと仕上がるように調整、揚げる直前に具材を包んでいます。こんなにたくさんのスープが入っていることに驚かれるお客様も多いです」と島さん。

ちなみに当月このあとの土日限定は、「焼きそばパン」「黒ごまチーズ」「うっとりアップルパイ」と続きます。焼きそばパンの週は、カレー味かソース味か塩味かを事前にSNSにてアンケートを実施、投票結果によって決めるそう。メニュー決定にお客様が参加するというのも、SNSを積極的に活用している同店ならではのお楽しみです。
土日限定パンは10:30ごろから販売開始、25~40個くらいの数量限定で、売り切れ次第終了となります。
生クリームとカスタードを黄金比で合わせた「ザクザクシュークリーム」や「揚げたてクリームパン」など、たびたび登場する人気アイテムのほか、新作も随時登場します。

注文後にピッツァ生地を伸ばして具材を包み揚げます
「揚げピッツァ 牛肉の赤ワイン煮」 680円(税込)

いつものカレーパンも揚げたてを提供

定番の「チキンスパイスカレーパン」と「チーズ揚げパン」も揚げたてを提供

ファンが選ぶカレーパンのコンテスト(日本カレーパン協会主催「カレ―パングランプリ®」)で最高金賞を受賞して以来、カレーパンを目当てに遠方から来店されるお客様も多い同店。カレー研究家の水野仁輔さんと出会ったことがきっかけとなり、本物のカレーパンをつくろうと、スパイスの研究から始めたという島さん。厨房のラックには各種スパイスがずらりと並び、カレーパンのバリエーションごとにスパイスの配合から変えているそう。
そして、もう一つのこだわりが「揚げたて」の提供です。常に焼き立ての温かいパンを提供することはできませんが、「揚げたて」ならそれが可能になります。

「といっても、お待たせするのは長くても3~4分が限界です。ドーナツ生地を使えば早く火が通りますが、カレーパンというからにはパン生地のおいしさにもこだわりたい。生地を研究し、包み方や揚げ方を試行錯誤してでき上ったのが定番の『チキンスパイスカレーパン』です。短時間でふわりと火が通り、カレーを引き立て、パン生地そのもののおいしさもしっかりと主張するカレーパンです」(島さん)。

カレーパンの研究は今も続き、定番のチキンスパイスカレーパンも常に進化しています。当初は丸い形だったのが、今はラグビーボール型に。久しぶりに食べた、というお客様から、「前と変わったね、一段とおいしくなったね」と言われることもしばしばだそう。お子さんにも食べやすく、後味までさわやかなカレーの香りが際立ちます。

チーズフォンデュキーマカレーパン

そして月初めの土日には、毎回趣向の異なるさまざまなスペシャルカレーパンが登場します。
なかでも、「チーズフォンデュキーマカレーパン」は、土日限定アイテムながらメディアで紹介されることも多く、限定とは知らずに来店されるお客様が絶えないそう。

「定番商品の『チキンスパイスカレーパン』と、とろけるチーズが魅力の『チーズ揚げパン』、どちらも2~3分お待ちいただければ揚げたてを提供しています。限定のカレーパンはお出しできなくても、定番の揚げたてを召し上がっていただくと、大半のお客様が満足してくださいます」(島さん)。

ハード系では定番のバゲットやリュスティックに加えて、日曜限定で自家製酵母を使ったパンが加わります。取材時は金柑から起こした酵母を使用して、「プレーン」「クルミ」「カレンズとクルミ」をラインアップ。
また、「シェフの気まぐれ」として1日だけの限定商品がランダムに登場することもあります。取材した日は、ソフトロールパン生地で練乳入り生カスタードクリームを包んだクリームパンが「本日限定のパン」として、さりげなく売り場に並んでいました。見た目はシンプルながら、小麦の味わいにカスタードのやさしい甘さがマッチしています。
最近では「餅入りチーズ揚げパン」「ゴルゴンゾーラ&くるみハニー」「ホイップあんぱん」なども1日限定で登場しました。

「新しいアイデアが浮かんだらつくってみて、こうやってみたらもっとおいしいんじゃないかと試して、ひたすらつくってデータをとっての繰り返し。さらにスタッフに必ず試食してもらい、お客様目線での厳しいチェックを経て、無事にOKが出たものを商品として出しています。いつ来ても何かしら新しいものがあると、お客様も来店する楽しみがありますし、つくっている自分もすごく楽しい!次はどんなパンが登場するか、ぜひSNSなどをチェックしてご来店いただけたらと思います」(島さん)。

「ソフトロール生カスタード練乳入り」は本日限定
自家製酵母を使ったハード系のパンは日曜限定

onkä(オンカ)

「パンとエスプレッソと」出身の下山亜紀子さんが腕を振るうベーカリー。2018年に独立·移転した現店舗は、1階に対面式の売り場、2階にカフェスペースを設けています。近隣の飲食店とコラボしたサンドや、石巻のサバ缶を使った限定サンドイッチが好評です。

onkä(オンカ)

住所
東京都世田谷区経堂5-29-20
電話
03-6322-1127
営業時間
10:30~17:00(イートイン 11:00~16:30)
定休日
月曜、火曜
経堂駅から徒歩5分

近隣飲食店のテイクアウト惣菜を具材にしたコラボサンド

「日替わりのコラボサンド」各650円(税込)
オーナーシェフの下山亜紀子さん

コロナ禍の緊急事態宣言下で、飲食店の営業が厳しい状況にある中、2021年5月から同店が取り組んだのが「日替わりコラボサンド」です。近隣の飲食店からテイクアウトのお惣菜を仕入れ、それを具材にした限定サンドイッチです。
例えば、同店のお隣、焼き鳥の人気店「中山商店」とのコラボは「ハムカツサンド」や「とり天サンド」、農大通りタイ料理の「ソンタナ」とは「えび春巻きパクチーサンド」、創作料理バルの「マホラ食堂」とは「いわしのコンフィと生姜のポテサラサンド」など、さまざまなコラボ商品が誕生しました。

「日ごろからお付き合いのある店、個人的に食べに行っておいしいな、と思った店とコラボして、定番のテイクアウトメニューを夕方ピックアップ、翌日リベイクしてパンにはさむスタイルです」と下山さん。

コラボを始めたきっかっけは、夏場はサンドイッチの売り上げが落ちるため、空いた冷蔵ショーケースの有効活用として惣菜を売ろうと思ったこと。とはいえ、パン製造の傍ら自店でつくるのでは、さほど凝ったものはできないし、なかなか手も回りません。そこで、野菜のおばんざいランチなどが人気の、松陰神社前の隠れ家カフェ「えんとつ」の惣菜を置いてみたら、パンと一緒に買っていくお客様が多かったのだそう。

「そこからひらめいたのが、料理のプロがつくったお惣菜をサンドの具材に使うこと。最初は毎日やるつもりはなかったのですが、近隣のいくつかのお店とお話をして、多いときで10店舗くらいのコラボ先ができました。これだったら、日替わりで毎日できるんじゃないかと」(下山さん)。

サンドに使う惣菜は、オンカ用に特別に作ってもらうのではお互いの負担になると考え、各店でテイクアウト用に販売しているのと同じものを使っています。
「コラボ店の方から『パンの具材にするのにこれで大丈夫なの?』と心配されたこともありましたが、パンがシンプルなので、白いごはんと同じで、ほぼどんなおかずとも合いますし、料理の味が引き立ちます」(下山さん)。

「塩こうじ鶏トマトサンド」 650円(税込)

サンドに使うパンは国産小麦粉と塩と水と酵母だけでつくるソフトフランス風のシンプルなバゲット。もちもちした食感で、具材をたっぷりはさんでも食べやすい歯切れのよさがあります。
また、サンドにしたときの彩りは大事なので、料理の味を邪魔しない程度に野菜やハーブをちょい足しして、パッと見て「あっ、おいしそう!」と思っていただけるように仕上げています。

取材した日のコラボサンドは、麹や自家製味噌など発酵食品を使ったランチや、スパイスを効かせた焼き菓子も好評のカフェ「パドブレ」とコラボした「塩こうじ鶏トマトサンド」です。ふっくらと柔らかな鶏肉の塩麹トマト煮と、彩りにルッコラを添えています。

また、人気ラーメン店の自家製チャーシューは、サンドの具材にもぴったりです。オーブンで焼いたマイタケを添えて、味付けにはニンニク、ショウガ、玉ねぎの香味野菜が効いたチャーシューの煮込みだれを活用しています。

「うちの店にはフライヤーがないのですが、コラボ店の揚げ物をサンドの具材に使って、いつもと違うバリエーションを展開できることもメリットです。日替わりなので、何が登場するかお客様も楽しみにしてくださると思いますし、コラボ店の売り上げにもちょっと貢献、お互いの店のPRにもつながっているかと思います」(下山さん)。
販売した日の夕方には、SNSにて本日のサンドに使ったデリとお店を「おさらい」として紹介しています。サンドを食べた方も、今回は買いに来られなかった方も、コラボ店にもぜひ出かけてみたくなるような素敵な投稿です。

「麺屋ぬかじさんの自家製チャーシューの野菜のサンド」650円(税込)
インスタグラムの投稿にて、本日のコラボサンドを紹介

石巻のサバサンドの販売期間を拡充

「マッシュルームとしょうが鯖サンド」650円(税込)

少しずつ飲食店にも活気が戻ってきたこともあり、現在コラボサンドは毎日ではなく、頻度を少なくしていますが、取り組み自体は今後も続けていくそう。また、これまで同店では毎月11日に、東日本大震災を忘れないようにとの想いも込めて、石巻の「木の屋」のサバ缶を使ったサンドをつくってきました。
「月1回では、なかなか買いに来られないお客様もいると思うので、11日をはさんだ数日間続けてサバサンドを販売することにしました。木の屋のサバ缶は水煮、醤油味、味噌味などがあり、いろいろなバリエーションに展開できます。次はどんなサバ缶サンドにしようかと、アイデアが広がります」(下山さん)。

「そして、これからは通販にももっと力を入れていきたいと思っています」と下山さん。
これまでは送料をかけてパンを購入することに抵抗を感じる方も多かったようですが、コロナ禍での外出制限もあり、通販でパンを買うことが日常のひとつになってきています。
「真空パックの機器を導入すれば、コラボサンドの具材とパンを通販にのせることもできます。送料を払っても買いたいと思っていただけるような商品づくりが大事。東京·世田谷エリアにある、個性豊かな飲食店とのコラボサンドは、その力になる魅力を秘めているとも思うのです」(下山さん)。

定番のパンの中には、旬の食材を使ってほぼ1カ月ごとに内容が変わる「ハニートースト」「クロックムッシュ」など季節限定アイテムがいくつかあります。

「リンゴのハニートースト」300円(税込)
1階は相談しながらパンを購入できる対面式の売り場

また、パンではありませんが、夏のかき氷も好評です。以前働いていたスタッフの1人がかき氷マニアで、お店でぜひやってみたい!と提案してくれたのだそう。
「ベーカリーの夏はどうしても客足が鈍りがち。試しにやってみると午後のパン製造が一段落した時間帯なら、さほど負担にもなりません。手づくりシロップでつくるかき氷は、オンカの夏の風物詩のひとつになっています」(下山さん)。

オンカのシンボルマークは、ジグソーパズルのピースの形。近隣のお店とも一緒になって、街にぴったりはまるピースとしての個性を発揮しているベーカリーです。

Bakerys Kitchen ohana 有明店ガーデン店

埼玉県本庄市に本店のあるベーカリー。スペイン製の石窯を備えた直営店のほか、FCを含め都内、千葉県、栃木県、茨城県内に複数の店舗を展開。直営店の1つである有明ガーデン店は、都内百貨店向け商品なども手掛ける製造拠点でもあります。

Bakerys Kitchen ohana 有明店ガーデン店(ベーカリーズキッチンオハナ)

住所
東京都江東区有明2-1-8 有明ガーデン 1F
電話
03-5962-4762
営業時間
10:00~19:30
定休日
なし
有明テニスの森駅から徒歩3分

季節のフェアやコラボ企画で楽しさを提供

北海道フェアの限定パン
オーナーの久保田浩司さん(左)と専務取締役の磯部隆さん

有明店は大型複合施設内にあり、近くには「有明テニスの森」やミュージカルシアターなどがあるロケーション。イートイン客席40席を備えた、ゆったりとした空間づかいの店内で1日に120~140種類のパンがつくられています。

オーナーの久保田浩司さんは、広告業界出身。パンづくりを統括する磯部隆さんは、数々の大手ベーカリーでパン職人として活躍後、ベーカリーのコンサルティング会社にて人気商品のプロデュースに携わってこられました。このお二人がタッグを組んで、定番のパンはよりおいしく、また季節ごとのフェアやキャラクターとのコラボ、農産物の産地とのコラボなどから新しい商品をつくり、お客様に何度もリピートしてもらえる店づくりをしています。

Ohana各店では、新年の福袋から始まり、バレンタインからホワイトデーにかけて、またハロウィーン、クリスマスと毎年おなじみの季節イベントにちなんだフェアのほか、さまざまなテーマでフェアを行っています。

「今は、感染症の状況を見ながらの実施となっていますが、年間を通して、1つのフェアの終了とほぼ同時期に、次のフェアを始めています。お客様がいついらしても、定番の品ぞろえにプラスαでフェアの新商品などを楽しんでいただけるように企画しています」とオーナーの久保田さん。
ハロウィーン、クリスマスなどの季節イベントにちなんだフェアでは、フェア限定のパンが登場するほか、店内のディスプレイにも力を入れています。各店舗のSNSにアップしたディスプレイの投稿にお客様が<いいね>をするとポイントアップのサービス、など来店を促す取り組みも行っています。

2021年夏の「沖縄フェア」では、沖縄の食肉加工メーカーとコラボした「タコスピザ」「ランチョンミート&ゴーヤのクロスティーニ」「黒糖クラプフェン」など10種類の新商品が登場しました。

沖縄フェアの「黒糖クラプフェン」194円(税込)/ 沖縄フェアのPOP
北海道フェアの「ちくわパン」345円(税込)

秋の「北海道フェア」は、9種類の新商品をラインアップ。十勝産のスイートコーン、甘みの強いジャガイモ「インカのめざめ」、富良野メロン、十勝豚肉や乳製品などが使われて、食材の宝庫・北海道のイメージが食欲をそそります。特製のちくわにツナを入れて、パン生地で巻き込んで焼き上げた「ちくわパン」は北海道のご当地パンです。

また、オーナーの前職での経験と人脈を活かし、ライセンス契約によるキャラクターの活用にも力を入れています。「ミッフィーのクリームパン」は有明店オープン当初からの人気商品に。2021年春には「はらぺこあおむし」、2022年はアニメ「スポンジボブ」とのコラボを実施。
「季節のフェアやかわいいキャラクターをきっかけに当店のパンを知ってもらい、 “安心、安全な材料を使ってプロの職人が丁寧につくっている、おいしくて楽しいベーカリー”という当店の世界観を感じていただけたら、と考えています」(久保田さん)。

「フェアのテーマに関しては、本店で私たちが一から考えることもありますが、食材の産地やメーカーさんから『この食材を使って』とか、FCを含め、各店舗のほうから、『こんなパンをつくりたい、売りたい』といった要望が上がり、フェアのテーマへとつながることもあります」(磯部さん)。
茨城のレンコン、熊谷の緑茶などの食材から「春」というテーマを引き出すこともあれば、シネコン併設のショッピングセンター近くにある店舗からは「映画」というテーマが生まれます。
「テイクアウトができて誰でも気軽に買って楽しめる、パンへの注目度は高まっています。ベーカリー周辺にある、さまざまなつながりから、フェアのヒントを見つけることができると思います。『ローカルな食材を使ったパンで、地元を盛り上げてほしい』などのニーズがあれば、そこから新商品をつくり、フェアを組み立てていくことができます」(磯部さん)。

フェアを起点に商品のバリエーションが広がっていきます

デニッシュ生地を使い、雪山をイメージしたクリスマスフェア限定の「ohanaマウンテン」

同店では、お客様が自分の好みに合ったパンと出会えるよう、バリエーションを揃えることも重視しています。コンセプトは「ベーカリー界のセレクトショップ」。
トラディショナルなフレンチスタイルだけにこだわるのではなく、ハード系食事パンもあれば、昔ながらのコッペパンやあんパン、カリフォルニア発の新しいトレンドも取り入れるなど、世界のいろいろな国や地域で親しまれているパンを揃えた「振れ幅の広さ」がohanaらしさでもあります。

フェアに向けては毎回10~20種類の新商品のレシピをつくり、各店舗が規模や客層に合わせてその中から選べるようにしているそう。

「フェアの商品開発にそこまで時間をとれないので、定番アイテムの生地を使ったり、普段からベースとなるレシピを8割がた仕上げておき、あとの2割はそのときどきのテーマに合わせて成形や具材などを考えて完成させていきます」(磯部さん)。

例えば北海道フェアに登場した「ピゼッタ」は、定番のジャガイモ入りフォカッチャ生地に具材をのせて焼き上げる小型のピザ風のパン。食材を変えてさまざまなバリエーションを展開しやすく、いつものフォカッチャがフェアのときだけ「ピゼッタ」に、という楽しみも生まれます。

こうしたフェアの商品開発は、定番商品のバリエーションの広がりにもつながっていきます。例えばカレーパンは、常時5種類をそろえる同店でも不動の人気アイテムです。
「中でもおすすめは『十勝豊西牛カレーパン』。北海道フェアに向けて、道内でさまざまな食材を探していたときに出会ったのが豊西牛です。急速冷凍された新鮮な牛肉を取り寄せて、本庄の本店で野菜と一緒に5~6時間かけて煮込んでフィリングをつくっています」(磯部さん)。
このほかにも和風だしと讃岐うどん入り、パン粉の代わりに天かすをまぶして揚げた「讃岐うどんカレー」、生地にほうれん草を練りこみ、フィリングにもほうれん草とチーズ、キーマカレーを包んだ「ほうれん草キーマカレーパン」、甘みの強い長ネギがゴロゴロ入った「深谷ねぎのカレーパン」など。ほかではあまり見かけない特長ある品ぞろえで、「カレーパン専門店ニューデリー」というブランドを銘打って特別感を演出しています。
「『深谷ねぎのカレーパン』は、地元特産の深谷ねぎを使って!との店舗からの提案で生まれた商品です。さらに今年は『深谷市』とコラボして、深谷の野菜を使ったパンをつくり、野菜とパンを販売するマルシェのようなイベントも計画しています」(久保田さん)。

「讃岐カレーうどんパン」313円(税込)
「十勝豊西牛カレーパン」313円(税込)

2022年冬は、週替わりでカレーパン1種類をお得な価格で販売する「カレーパンフェア」を開催しました。年間を通して開催するさまざまなフェアを通して新しい商品が生まれ、また別なフェアでの「推し」として、たくさんのお客様に食べていただきファンが増えていく、そうしたサイクルが人気商品を育てていくようです。

「限定」「コラボ」「フェア」といったフレーズには、何度も訪れたくなるワクワクする響きがあります。ご紹介した各店舗の特別なパンをぜひ味わってみてはいかがでしょうか。

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2022年02月)のものです

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