竹谷さんだから聞けるパン職人の理想と挑戦-vol.5 誰が食べてもおいしいパンを 夫婦二人で築き上げていく理想のベーカリー ブーランジェリー スドウ 須藤 秀男さん 枝里子さん

前編 後編

ブログで伝えるおすすめアイテム

ブログでもたびたび取り上げられたガレット・デ・ロワ。見た目も味も抜群!キリクリームチーズコンテスト優勝時のトロフィーと、ガレット・デ・ロワコンクール優勝時の楯

 日記のように日々の出来事をブログに書いて発信しています。オープン前から好きでやっていたのですが、最近は情報発信のツールとしても重要だと実感しています。「新商品ができました」とか、「○○個限定でこんな商品を作ってみました」とか。ブログでそう書くと、次の日には店の前に行列ができている。あまり動かなかった商品も、ブログで紹介することで注目度が高くなる。今は注目して欲しい商品を意識的に掲載することもあります。もちろんブログで紹介してお客様に来てもらう以上、いつも以上に気合を入れて、丁寧に、おいしいものをお出ししようと思っています。今の時代は、いい物を作っているだけじゃ売れない。どれだけおいしくても、自分から発信していかないと売れないんだと思います。楽しんで読んでくれる人がいるから続けているというのももちろんですが、情報発信のツールとしてブログは欠かせないものになっています。

パンと焼き菓子と生菓子の並ぶ未来へ

 焼き菓子は、買いやすさを意識しています。最初は別の棚に並べていたのですが、目に付く平台に並べるようになってから10倍くらい売れるようになりました。気軽に買ってもらえるようパッケージも簡単なものにし、買いやすい価格にしています。ジャムも自分たちで炊いています。正直、利益はほとんど出ません。ジャムは利益を出すものではなくパンやお菓子を楽しく食べてもらうためのツールだと考えています。ジャムでパンを食べる楽しさを知って、もっとうちのパンや焼き菓子を好きになってもらえればいいですね。

焼き菓子も種類豊富。さくっとした食感と、口溶けの良さが魅力

 他のシェフとの交流も大切にしています。本当に刺激になりますね。最近は、特に洋菓子店のシェフやレストランのシェフと交流することが多いのですが、会話や、お店を見る中から、本当にたくさんの学びがある。自分の店にこれを並べたらどうなるだろう、そんな風に考えているだけで楽しくなります。そういった刺激が、新たな商品作りにつながっているのだと思います。
近いうちに、デコレーションケーキとロールケーキをやりたいですね。あとは、サンドイッチにも挑戦したい。やりたいことがたくさんあるんです。たくさんあるのに、時間と人手が足りないから我慢している状態。だからといって、焦っていろいろなことをしようとは思いません。夫婦でおいしさを管理できるペースでやっていくつもりです。

大人気の「須藤プリン」は滑らかな舌触り。黄色よりオレンジに近い鮮やかな色が印象的 「パンに合わせやすいように」と、シンプルな素材で作られた自家製ジャム。彩りも美しい

自分たちがおいしいと思えるものだけを届け続けたい

お互い信頼しあうベストパートナーの須藤夫妻。理想とする店作りに向けて、共に歩み続ける

 アイディアがでてこなくなるのでは、という不安はあまりありません。この世界に飛び込んでから、トップの立場で働かせてもらうことが多く、誰かに教えてもらうことが少なかった。自分で考えて商品を生み出していくクセがついているからかもしれませんね。
 多店舗展開にも興味がないんです。実際に作って、食べて、自分たちがおいしいと思ったものだけをお客様に食べてもらう。そのためには、やはり自分たちの目の届く範囲での店舗展開が理想だと思っています。
 店内の配置を変えて洋生菓子を置くスペースも作りたい。あそこに窓があるでしょ?あの窓はケーキの最後の仕上げなんかを見せたくて作ったものなんです。今はまだできていないけど、作っている姿も見せられるようにしたいですね。
 食べ物を通して人を感動させるって本当にすごいことだと思うんです。それができる店作りを、二人で実現していきたいです。

ハード系のパンも、一味違った表情 シンプルでありながら、作り手の想いが感じられるような美しい商品がところ狭しと並ぶ

須藤秀男氏プロフィール 【須藤 秀男(すどう ひでお)氏プロフィール】

1974年、横浜市生まれ。エコール辻東京を卒業後、メゾン・ド・プティフール、タイユバン・ロブション、ブーランジェリー・ブルディガラなど数々の有名店で経験を積み、2009年、ブーランジェリー スドウをオープン。2006年に開催された第7回キリクリームチーズコンテストでパン部門での金賞と総合での最優秀賞を獲得。同年にガレット・デ・ロワコンテストにおいても優勝を収めている。
須藤枝里子氏プロフィール 【須藤枝里子氏プロフィール】

小田調理師専門学校を卒業後、フレンチのサービスに従事。2002年にペルティエに入社後パン職人に転向。タイユバン・ロブション、マリアージュ・ドゥ・ファリーヌで経験を積む。2009年、須藤秀男氏とともにブーランジェリー スドウをオープン。2005年に開催されたガレット・デ・ロワコンテストでは決勝への出場を果たしている。

対談場所:ブーランジェリー スドウ 東京都世田谷区世田谷4-3-14 tel:03-5426-0175

どの商品も、顔が一番きれいに見えるようにディスプレイされている須藤氏自らデザインした、ブーランジェリー スドウの看板。皿の上に載ったバゲットがコンセプト具沢山のフォカッチャ。パプリカの赤や黄色にフロマージュの白、バジルの緑など彩りも豊か

定休日/日曜日・月曜日(臨時休業あり) 営業時間/9:00~19:00
世田谷松陰神社駅 駅前 http://d.hatena.ne.jp/Boulangerie-Sudo/

茶色と黒をベースにした、センスのいい外観が目をひくブーランジェリー スドウ。すっきりとした印象を与える店内には、テーブル席がひとつ。購入したパンとともにおいしいコーヒーを味わえる人気の席だ。美しいデニッシュや旬の野菜が盛りだくさんのピザやフォカッチャ、色とりどりのジャムに焼き菓子、生菓子と、店内には魅力的な商品が満載で、思わず目移りしてしまう。スタッフの接客も丁寧で、どんなに忙しいときでもお客様への心配りと笑顔が絶えることがない。
丁寧な接客と、シンプルながら作り手の愛情が感じられる商品が詰め込まれたブーランジェリー スドウ。どんな人でも「パンを買うこと」を楽しむことのできる、魅力的なベーカリーである。

人気の「Sバゲット」はシャープな印象。噛むほどにしっかりしたうまみを感じられる手際よく作業を進めながらも、常に笑顔のスタッフ平台にずらりと並ぶ種類豊富な焼き菓子は、価格もお手ごろ

前編 後編

対談を終えて

須藤夫妻  初めて竹谷先生とお会いしお話できるということで夫婦でとても緊張していましたが、楽しく無事に対談を終えてホッとしています。最初はすごく専門的なお話ばかりかと思いきや、終始僕たちに気を使っていただき、パンを作ることだけでなくいろいろなアドバイスをいただきとても勉強になりまし た。これからも少しずつ理想の店づくりをめざし、頑張っていきたいと思います。お忙しい中わざわざお店まで来ていただき、本当にありがとうございました。

竹谷さん  今回須藤夫妻とは初めてお会いしましたが、とても気持ちよくお話を伺うことが出来ました。須藤氏は古いタイプの職人でありながら、パン職人の枠を超えて、パン作りだけでなく、菓子作りにも精通しようとし、加えて趣味で始めたブログ、フェイスブックを上手に、販売活動にも利用しています。普通ならマルチな才能の持ち主はその軸がぶれがちですが、それをコントロールしているのが須藤夫人、お二人の絶妙なコンビネーションの中で繁盛店ブーランジェリー・スドウが有るように感じました。大成功のこれまでとこれからの飛躍、ブーランジェリー スドウの発展が新しいリテールベーカリーの目標となるように思います。

※店舗情報及び商品価格は掲載時点(2012年2月)のものです

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