パン屋さんで活躍する女性たち
パンとお店と“私”のストーリー

VOL.34 お客様に「小さな幸せ」を感じてもらえるようなパンづくり、店づくりをしています
いのパン店 店長 鹿野 美由紀さん

いのパン店 店長 鹿野 美由紀さん

「いのパン店」は、品川駅から京浜急行線で1駅、旧東海道の品川宿近くにある小さなパン屋です。パンのほかにフランスから直輸入のはちみつを販売し、「毎日の食卓にちょっとした幸せを届けるパン店」を目指しています。

子どものころからずっとスタジオジブリ作品が大好きな私、「魔女の宅急便」を見て、パン屋さんになりたい!と夢を抱き、今に至っています。熱しやすく冷めやすい性格ですが、パンに対しての想いだけはずっと変わらず、高校は調理科に進みました。卒業制作の課題にはもちろん「パン」を選び、旧姓に「猪」の字が入るので、「いのパン」と名付けて、さまざまなパンをつくりました。

途中寄り道もありましたけれど、レコールバンタンの製パン科を卒業後、ベーカリーに就職しました。その後、アパートを改装したパン工房でカフェや企業への卸販売をし、結婚・出産で一時休業。でも、このまま休んでいると勘や腕が鈍るんじゃないかと焦りを感じ始め……。ベーカリーで接客のアルバイトから再開しました。毎日がとても楽しくて、やっぱり自分はパン屋という空間に身を置きたいのだな、と再確認して自分の店を持つことを決意したんです。

この店は、もとは事務所だった物件で商店街からは少しはずれますが、近くに小学校や保育園があり、人通りも盛んです。母、美穂子を事業主に仕立て上げ、2013年に開業。私がパンをつくり、スタッフのまなちゃんと、母が接客を担当してくれています。
品川駅まで出れば、有名なベーカリーがたくさんありますが、開業当時は近くに競合店もなくて、「歩いて行けるご近所にパン屋さんができてうれしい」と、とくにご年配のお客様に喜んでいただいています。

私にとっては「パン屋さん=幸せの象徴」で、今でもほかのパン屋さんにいくと、少しでもその幸せな空間に長居したいな、と思ってしまうんです。でも、パンを買うだけだと、そう長くはいられません。ですから、自分の店には絶対イートインスペースをつくろうと思っていました。12坪の小さな店ですけれど、売り場には窓際と厨房前の2カ所に2席・4席のカウンター席をつくってあります。

パンへのこだわり

私自身、パンが大好きで、スーパーやコンビニのパンも食べますし、休みの日はあちこちのベーカリーに出かけます。味や形、素材の使い方など、いいな、と思ったところは大いに参考にします。自分がおいしいと思うパンのイメージに、どんどん近づけていくような商品づくりをしています。
そして、お客様のご意見もすぐ取り入れる方なので、うちのパンはこまかい部分で結構ちょこちょこ変わります。以前はクリームパンにスライスアーモンドをトッピングしていましたが、「子どものナッツアレルギーが心配」という声があり、あられ糖に変えました。
シニアのお客様が多いこともあって、商品名も「ノアカレンズ」を「山ぶどうとくるみ」などどんなパンかわかりやすいネーミングに変えました。にこにこパンは、元は「ブリオッシュ・シュクレ」で出していました。バターを入れる穴を顔の形にしたら、子どもたちが「ニコニコのパン」と喜ぶので、商品名に採用! パンもお店も、私1人ではなくて、お客様やスタッフ、家族、みんなに育ててもらっています。

バゲットは、お客様に好評で、自分も家族もお気に入りのパンです。縦方向に切ると、やさしいクリーム色のクラムに大小の気泡がランダムに入ったおいしそうな内層が現れます。フランスパン用粉「リスドオル」と国産小麦粉をブレンドして、塩はシママース(天日塩を沖縄の海水で溶かして平窯で煮詰めた塩)、微量のイーストで低温長時間発酵させてつくっています。イートインのトーストには、食パンのほかバゲットも選んでいただけます。

開店のときにグリーンレーズンから種を起こして、以来ずっと粉を継いで育てている自家製酵母は、もうすぐ4才になる、うちの3番目の子どもです。この子がいるから、あまり長期間の休みは取れないのですが、店の空気の中に酵母の香りが混ざって、よその店にはない「いのパン店」ならではのいい匂いをつくってくれています。この酵母を使った「山ぶどうとくるみのパン」は、焼いてから少し置くと、酸味が少し出て、よりおいしくなります。毎日食べて味わいが変化するのもぜひ楽しんでみてくださいね。

長時間発酵で小麦粉の香りと甘みをひき出したバゲットは人気のアイテム。 こだわりのハード系。自家製酵母、生イースト、ドライイーストを使い分けてつくっています。
開店以来育てている自家製酵母を使った「山ぶどうとくるみ」 「こどもコーンマヨ」は、ほかに黒コショウを効かせた大人バージョンもあります。

女性ならではの苦労

店を始めたとき、上の子が3才で下が1才。今改めて考えると、いちばん大変な時期だったのかもしれません。でも、私にとっては、「今しかない」というタイミングでした。ずっと自分の店をやる、というつもりでいろいろな繁盛店を見てきましたし、常に前のめりな性格も手伝って、「ここさえ押さえておけば大丈夫」ということはつかめていたと思っています。
夫とは、出会ったときから私はパン屋でしたから、店をやりたい、という私の気持ちは当然だと受け止めてくれていました。会社が休みのときは、ときどき店にも来て、洗いものなどを手伝ってくれます。

子どもが小さいうちは、急な発熱で保育園から呼び出しを受けることもあります。それも長く続けていく中での、1つの通過点。協力してくれる人がいるから切り抜けられる。何より人とのつながりを大切にしていると、自然にまわりにいい人たちが集まって、困ったときには力になってくれます。いずれは私も協力する側に、人と人のつながりの、その拠点になっていきたいと思うのです。
そのためにも、パンをつくる仕事は一生続けていきたいです。体をこわしてはかなわなくなりますから、決してムリはしない。人生がパンをつくるだけ、にならないように、ちゃんと休みも取って、子どもたちのことや、自分の趣味も大切にして、皆さんが喜んでくださるパンをつくり続けたいです。

どんなお店にしていきたいですか?

いいパン屋がある街は、人を惹きつける魅力があります。『いのパン店のある、この街が好き』って、皆さんに言われるような店にしていきたいです。
コンビニでも、お取り寄せでもいくらでもおいしいパンが買える時代です。わざわざ個人店まで足を運んでくださるのは、人と人とのコミュニケーションから生まれる心地よさがあるからじゃないでしょうか。
店のレイアウトもこのことを意識して、厨房で作業をしていても売り場の様子が見えるように、壁に窓を開けました。皆さん、パンや食べ物のことなど、聞きたいことがあったり、ちょっとおしゃべりがしたいな、ということもあると思うんです。そんなときに、窓越しにお互い声をかけやすくなっていると思います。
一方で、対面販売の小さな店って、お客様にとっては結構な緊張感もあると思います。うちの店は角地に建っているので、出入り口を2カ所つくりました。入ってきて、売り場を見て、欲しいパンがないときはもう一つの出入り口から通り抜けていく。パン屋の敷居をできるだけ低くして、いつでも気軽に立ち寄ってもらえたら、と思います。

うちのパンは、都内でやっているにしては価格が安い、とよく言われます。ロスをなるべく少なくすることで、商品価格はある程度抑えられます。パンが売り切れているとお客様をがっかりさせてしまいますが、未来のためにも廃棄は極力出さないほうがいいと考えています。そういったことも含めて、「予約していただくと助かります」と正直にお伝えすると、マイナスがプラスに変わります。「がんばってるのね、えらいね」なんて、かえってほめていただいたり、たくさん残っていると「じゃ、これももらうわ」と買ってくださったり、予約もだんだんと増えています。小さな店が生き残るには、なんだかんだ言っても最後はコミュニケーションの力が大きいと思うのです。

開店から4年間で、いろいろなことがうまく進んでいるな、という実感をもてるようになりました。子どもの成長に合わせて、4月からオープン時間を早くしたのも一歩前進。これからは、サンドイッチ、調理パンの種類をもっと増やしていきたいです。奥久慈卵を使った卵サンドを出したら好評ですし、焼きカレーパンなどもつくって、お客様に「ちょっとした幸せ」をお届けできたら、と思います。

「お近くにお越しの際は是非お立ち寄り下さい!」

鹿野 美由紀さん お気に入りのパン

山ぶどうとくるみ 1本 432円、1/2 216円(各税込)山ぶどうとくるみ 1本 432円、1/2 216円(各税込)
グリーンレーズンから種を起こし、粉をついで、開店以来育てている自家製酵母を使っています。レーズンよりも小粒で甘みの濃い、カレンズとクルミをたっぷり。日がたつにつれて酸味が出るなど、味わいにも変化があります。

はちみつバタートースト 302円(税込)はちみつバタートースト 302円(税込)
イートインメニューの「トースト」は、ほかにあんバターなどもあり、パンは角食、山型食パンのほかバゲットも選べます。角食は水を使わず、牛乳とヨーグルトで仕込んで、しっとりした食感。最近バルミューダのトースターを入れたのでおいしいパンがさらにおいしいトーストに!はちみつはフランスの森で採蜜したままの百花蜜を直輸入し、サーバーで量り売りもしています。トロリと濃厚で自然な甘みは幸せの味!パンと並んで当店の看板商品でもあります。

旅人のパン
1本 992円、1/2 496円、1/4 248円(各税込)旅人のパン 1本 992円、1/2 496円、1/4 248円(各税込)※焼き上がり 水・金 12時半頃
サワー種を使用したライ麦パンの生地に、白と黒のイチジク、クルミ、カシューナッツ、オレンジピールなどがぎっしり入っています。夫が山登りをする人で、ナッツやドライフルーツで滋養満点、日持ちがいい「トレイル用の携帯食」のイメージでつくりました。
でも、あるお客様が「おいしくて、パンが旅に出るかのようにすぐになくなっちゃった。だから『旅人のパン』なのね!?」とおっしゃってくださり、そちらのほうが、夢があってよいかもしれません!

店舗情報

店名/いのパン店
郵便番号/〒140-0002
所在地/東京都品川区東品川1-29-1
最寄駅/京急本線北品川駅
アクセス/:北品川駅から徒歩6分
電話番号/03-3474-1118
営業時間/火曜~金曜9:00~18:30、
土曜10:00~18:30※売切次第終了
定休日/日・月・祝日

※店舗情報及び商品価格は取材時点(2017年7月)のものです

<オススメパン>クリームパン 162円(税込) 発酵バターのクロワッサン 173円(税込) にこにこパン 173円(税込)

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